※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:うん、これだけあれば薬と交換できそう
ベルベット:お店にもって行こう
テイルズオブベルセリア攻略>ロングチャット
キャラクター同士の会話を見ることができるテイルズおなじみの要素。ゲーム中、発生する条件を満たした場合、フィールドで右下にロングチャットのタイトルが表示されて、その時に△ボタンを押すと発生します。TOBでの特徴は、「自動的に発生するチャットが非常に多い」ということ。イベントが発生した直後、フィールドを移動中にある地点に差し掛かった時など、頻繁に発生ます。
「テイルズオブゼスティリア」同様、ねこにんの里へ行くと今まで見たチャットを見返すことができます。カテゴリは「メイン」「サブ」「その他」に分別。今回はねこスピ500と引き換えで未視聴のものを開放することができます。
以下の一覧、△と付くものは△ボタンを押して任意で見ることができるもの。
チャット名クリックで内容表示。文字の外クリックで閉じます。
番号 | 名称 | 発生条件 |
---|---|---|
001 | ウリボア狩り終了! | プロローグでウリボアを狩り終わった時 |
002 | 岬の祠 | 狩り中に岬の祠の前まで移動した時 |
003 | 狩りの後に…… | △で発生:鎮めの森でのウリボア×5戦後 |
004 | 家族の墓前で | プロローグの家の前の墓 |
005 | ラフィのリクエスト | プロローグでのベルベットの家 |
006 | ベルベットの妄想 | 〃 |
007 | 家族だからね | 〃 |
008 | 侵入の痕跡 | タイタニア |
009 | 装備選択 | タイタニアの装備品宝箱開けた時 |
010 | 漂着 | フィガル雪原漂着時 |
011 | 囚われていた者たち | フィガル雪原、ヘラヴィーサに向かう途中 |
012 | 倉庫に出る | ヘラヴィーサの倉庫に侵入した時 |
013 | 商船組合発見 | ヘラヴィーサの市街で商船組合に近づいた時 |
014 | マギルゥの離脱 | ヘラヴィーサの商船組合に話を聞いた後 |
015 | 夜叉ロクロウ | ハドロウ沼窟道中 |
016 | リンゴの味 | ビアズレイ到着時 |
017 | ヘラヴィーサ警戒態勢 | ハドロウ沼窟再訪問時 |
018 | ロクロウの恩義 | ハドロウ沼窟 |
019 | 少年を連れて | ヘラヴィーサで聖隷二号を連れて船で脱出時 |
020 | 利害一致 | 西ラバン洞穴でアイゼンを追う時 |
021 | ヴォーティガン攻略策戦 | 西ラバン洞穴でアイゼン加入後 |
022 | 正門の結界 | ヴォーティガン正門の結界を見た時 |
023 | 業魔病、蔓延す | ヴォーティガン侵入時 |
024 | 爆破準備よし | ヴォーティガンで爆破工作時 |
025 | 管理室 | ヴォーティガンの管理室に入った時 |
026 | 鍵、発見 | ヴォーティガン管理室で鍵発見後 |
027 | 海門を開け | ヴォーティガンで鍵を使って扉を開けた時 |
028 | バンエルティア号突入 | ヴォーティガンで海門を開けた後 |
029 | 海賊団の船止め | ゼクソン港初訪問時 |
030 | 探索船 | ゼクソン港初訪問時 |
031 | 探索の成果は? | 初めて異海探索を行った時 |
032 | 王都侵入 | ローグレスに入った直後 |
033 | 闇ギルドを探せ | ローグレスでアルトリウスの演説見た後 |
034 | 物資の破壊 | 血翅蝶から物資の破壊の依頼を受けた後 |
035 | 聖隷ビエンフー? | ゼクソン港でのエレノア戦後 |
036 | 失踪者の捜索 | 血翅蝶から失踪者の捜索の依頼を受けた後 |
037 | 襲撃者を排除せよ | 血翅蝶から襲撃者の排除の依頼を受けた後 |
038 | 襲撃の理由 | 襲撃者の排除の依頼を達成した後 |
039 | 三つの依頼達成 | 血翅蝶の3つの依頼を達成する |
040 | 空腹 | 離宮に忍び込む依頼を受けた後 |
041 | マギルゥ同行 | ローグレス離宮に乗り込む前 |
042 | マギルゥの占い | 離宮に向かう王都地下道道中 |
043 | 離宮を進む | ローグレス離宮に出た時 |
044 | 聖隷を使役する魔女 | ローグレス離宮でのエレノア戦後 |
045 | サワヤカな朝 | ローグレス離宮から逃亡して夜が明けた後 |
046 | 僕はなんなんだろう? | ローグレス離宮の跡のダーナ街道 |
047 | 暇潰し | ローグレス離宮の後のゼクソン港 |
048 | 偵察の報告 | ゼクソン港で報告を受けた後 |
049 | ごめん、アイゼン | △:ダーナ街道でのアイゼン&謎の聖隷戦後 |
050 | 御座の状況 | 聖主の御座に入った時 |
051 | 聖隷の器 | イボルク遺跡 |
052 | 謎の古文書 | ブリギット渓谷でのライフィセットとの会話時 |
053 | エレノアの誓約 | ブリギット渓谷でのエレノア戦後 |
054 | 珍しい石 | ブリギット渓谷道中 |
055 | 命より大事なこと | ブリギット渓谷での刀斬りのイベントの後 |
056 | 號嵐と征嵐 | ヴェスター坑道 |
057 | ロクロウを追おう | ヴェスター坑道でロクロウ離脱時 |
058 | 彼女の意図 | ヴェスター坑道でのシグレ戦後 |
059 | 対魔士、来襲 | ヴェスター坑道で対魔士襲来時 |
060 | エレノアの限界 | ヴェスター坑道での対魔士戦後 |
061 | 真打ちと影打ち | ヴェスター坑道での対魔士戦後 |
062 | 壊賊病 | 海賊団一行が壊賊病に罹ったことが明らかになった時 |
063 | サレトーマを探せ | レニード到着時 |
064 | 死神の呪い | アイゼンを追う時のノーグ湿原 |
065 | アイゼンのコイン | ワァーグ樹林道中 |
066 | サレトーマの特徴 | ワァーグ樹林道中 |
067 | 謎の男ザビーダ | ワァーグ樹林からレニードに戻った時 |
068 | アイゼンとザビーダ | ロウライネに向かう道中でのノーグ湿原 |
069 | アイゼンとアイフリード | ロウライネに向かう道中でのブルナーク台地 |
070 | 城砦ロウライネ | ロウライネに入った時 |
071 | ジークフリートの力 | ロウライネでのイベント後 |
072 | 壊賊病からの回復 | サレトーマにより海賊団の壊賊病治療後 |
073 | 古文書解読、開始 | グリモワールと会いハリアへ移動した後 |
074 | 真実を求めて | ハリアでのイベント後 |
075 | かぞえ歌の解釈 | パラミデスクリア後 |
076 | ハトマネで | ローグレスに戻る途中 |
077 | 王都再訪 | ローグレスに戻ってきた時 |
078 | 別行動 | ローグレスの酒場に入る前 |
079 | 第一王子パーシバル | ローグレスでローブの人物を預かってから、ゼクソン港 |
080 | 喰魔を探す方法 | タイタニアでデュラハンを倒したあと |
081 | 地脈点感知 | タイタニアで地脈点についての話があった後 |
082 | 喰魔を釣る!? | 地脈点探しでのバンエルティア号の上 |
083 | ラフィ | バンエルティア号での釣りイベント中 |
084 | 釣果・その1 | 〃 |
085 | 釣果:その2 | 〃 |
086 | 落ちていた手紙 | 釣りイベント後のタイタニアで手紙拾った後 |
087 | アイゼンの手紙 | 手紙拾った後タイタニアの港でアイゼンに会った時 |
088 | 裏社会の距離 | ゼクソン港で血翅蝶の使いにあった後 |
089 | 岩山の頂上で | アルディナ草原の岩山の頂上 |
090 | ドラゴンの正体 | シェンロンと戦った後 |
091 | アジトへの帰還 | シェンロンと戦い、タイタニアに戻った時 |
092 | 祈りと加護 | アルディナ草原からタイタニアに戻り、休息をとった後 |
093 | ヘラヴィーサの現状 | 二回目にヘラヴィーサに向かう前 |
094 | 聞き込み開始 | ヘラヴィーサ再訪問時 |
095 | 情報統合 | ヘラヴィーサで情報収集時 |
096 | フォルディス遺跡 | フォルディス遺跡に入った時 |
097 | エレノアの心 | メディサ戦後 |
098 | 母を思う | メディサを連れてタイタニアに戻った後 |
099 | かぞえ歌の二番 | タイタニア監視塔でグリモワールに話を聞いたとき |
100 | 濃霧 | タリエシンに向かう途中の船上 |
101 | タリエシン到着 | タリエシン到着時 |
102 | 幻術の疑惑 | アバル到着後 |
103 | 再び狩りの後に…… | モルガナの森でウリボアを倒して素材入手時 |
104 | 幻術を喰い破って | ベルベットが正気に戻り鎮めの森の奥へ向かう時 |
105 | エレノアへの疑惑 | オルトロスを倒して戻る途中 |
106 | すれ違うふたり | ベルベットが倒れた後 |
107 | リオネル島へ | リオネル島へ向かう前のタイタニア |
108 | 救助信号旗 | リオネル島へ向かう途中の船上 |
109 | テレサとオスカー | 遭難したテレサ救助後 |
110 | 心を凍らせて | オスカー、テレサ撃破後 |
111 | 聖寮の逆襲 | オスカー、テレサ撃破からタイタニアに向かう時 |
112 | 絶望の淵 | 地脈でロクロウとアイゼン合流後 |
113 | 転生者たち | 地脈で大地の記憶を見た時 |
114 | ドラゴン発見 | ザ・カリスでドラゴンを見つけた時 |
115 | 奇跡の脱出 | カースランドから脱出時 |
116 | バンエルティア号の危機 | カドニクス港で休んだ後 |
117 | 迷う死神 | リオネル島へ向かう途中船上 |
118 | 反撃の手がかり | 業魔アイフリード戦後 |
119 | 四聖主復活策戦 | 業魔アイフリードを倒したあとにグリモワールに話を聞いた時 |
120 | 徘徊する聖隷 | ローグレスで天啓の使いとの戦い後 |
121 | 従う対魔士たち | ローグレスの様子を見た時 |
122 | エレノアの懸念 | キララウス火山へ向かうためにヘラヴィーサに向かう途中 |
123 | ノースガンド上陸 | キララウス火山へ向かう道中のヘラヴィーサ到着後 |
124 | 最北の街 | メイルシオ初訪問時 |
125 | メイルシオ占領 | メイルシオ住民退去イベント後 |
126 | 決意、それぞれに | メイルシオでの決戦前イベントの後 |
127 | ロクロウの本心 | キララウス火山でのシグレ戦後 |
128 | 四聖主、覚醒す | キララウス火山でのメルキオル戦後 |
129 | 決戦の地へ! | メルキオルを倒して聖主の御座に向かう途中 |
130 | カノヌシの陪神たち | 八頭竜カノヌシ侵入時 |
131 | 夕飯の献立 | △:プロローグのアバルで発生 |
132 | ウリボアの未来 | △:鎮めの森のウリボア戦後 |
133 | プリンセシアの記憶 | △:プロローグの鎮めの森でライフィセットと合流時 |
134 | りんごぶぅ | △:プロローグの鎮めの森でセーブポイント付近 |
135 | 大魔法使い? | △:タイタニアでマギルゥと出会った後 |
136 | 剣業剣斬 | △:タイタニアで赤眼の剣士と戦った後 |
137 | 少年聖隷の回復術 | △:フィガル雪原で少年と会った後 |
138 | 妙ちくりん | △:フィガル雪原の2エリア目 |
139 | 氷と雪と二人の業魔 | △:ビアズレイに向かう途中のフィガル雪原 |
140 | 聖霊巡察官 | △:ビアズレイでエレノアと会った後 |
141 | 業魔の味覚 | ハドロウ沼窟道中 |
142 | それぞれの剣の型 | △:ハドロウ沼窟の深部 |
143 | 操船は大変 | 業魔ダイルを倒して商船組合に報告後 |
144 | 悪党のやり方 | △:ハドロウ沼窟二回目 |
145 | そういえば…… | △:一晩ハドロウ沼窟で泊まってからフィガル雪原に出た時 |
146 | 本来、聖隷は…… | △:西ラバン洞穴 |
147 | 名は体を表す!? | △:西ラバン洞穴 |
148 | 死神のコイン | 西ラバン洞穴から出る時 |
149 | ミッドガンド王国の技術力 | △:ヴォーティガンで発生 |
150 | 王国兵士と聖寮対魔士 | △:ヴォーティガンで発生 |
151 | ランゲツ流 | △:ヴォーティガンで発生 |
152 | 大事なものはカバンに入れよう | △:ヴォーティガンで発生 |
153 | 囚われのアイフリード | △:ゼクソン港初訪問時 |
154 | なぜついてくる? | △:ゼクソン港初訪問時 |
155 | 巨大な都 | ローグレスに向かう途中のダーナ街道で |
156 | 闇組織と謎の老女 | △:ローグレスで闇組織から依頼を受けた後 |
157 | 美味しい食べ物 | △:闇組織から依頼を受けてダーナ街道に出た時 |
158 | 五番目の聖主? | △:闇組織の「物資の破壊」の依頼をクリアしてローグレスに戻った時 |
159 | 涙目対魔士、再び | △:闇組織の「物資の破壊」の依頼をクリアしてローグレスに戻った時 |
160 | 裏稼業いろいろ | △:闇組織の依頼の大司祭の暗殺を受けた後 |
161 | 悪行三昧 | △:闇組織の「襲撃者の排除」の依頼でテナガザル倒した後 |
162 | お役に立ちます | △:闇組織の「襲撃者の排除」の依頼でテナガザル倒した後 |
163 | 血翅蝶恐るべし | △:王都地下道に入った直後 |
164 | 地下水道の業魔 | △:王都地下道の地下二階 |
165 | ギデオン大司祭の人物像 | △:王都地下道の地下三階 |
166 | マギルゥの呪文 | ローグレス離宮侵入時 |
167 | 聖隷のランク | △:聖主の御座に向かう前のローグレス |
168 | ケンカ屋ザビーダ | △:ダーナ街道でのアイゼン&謎の聖隷との戦い後 |
169 | 憎みの炎 | △:聖主の御座の大階段上 |
170 | ここはどこだ? | △:イボルク遺跡 |
171 | ライフィセットの本 | △:ブリギット渓谷での山賊戦後 |
172 | 女は見た目で…… | △:ブリギット渓谷 |
173 | 男は見かけ通り? | △:ブリギット渓谷 |
174 | 楽しそうだね | △:ブリギット渓谷での山賊戦後 |
175 | 油断禁物 | ヴェスター坑道道中 |
176 | ネコ聖隷ムルジム | △:ヴェスター坑道でのシグレ戦後 |
177 | ランゲツ流の光と陰 | カドニクス港でのシグレ戦後 |
178 | 怖い話 | ワァーグ樹林でサレトーマ捜索時 |
179 | 続・死神のコイン | △:ワァーグ樹林で自動発生するアイゼンのコインのチャットの後 |
180 | サレトーマの花言葉 | △:ワァーグ樹林で自動発生するサレトーマの花のチャットの後 |
181 | 虫の名は!? | ワァーグ樹林でのグロッサアギト撃破後 |
182 | サレトーマの香りと味 | サレトーマの花入手後 |
183 | マズさも味のうち | サレトーマの花をエレノアが飲んだ後 |
184 | 理外の者たち | △:レニードでのサレトーマのチャットの後 |
185 | 対魔士の等級 | △:ブルナーク台地でアイゼン復帰後 |
186 | 不殺のケンカ屋 | △:ブルナーク台地でアイゼン復帰後 |
187 | 異体陸の遺物 | ロウライネに向かう途中 |
188 | アイフリードの失踪 | ロウライネに向かう途中 |
189 | メルキオルの幻術 | △:ロウライネでのイベント後に外に出た時 |
190 | 傘の女の子 | △:ロウライネから戻る途中、ブルナーク台地 |
191 | 器とプライバシー問題 | △:イズルトでオスカーとテレサを見た後 |
192 | 姉と弟 | △:イズルトでオスカーとテレサを見た後 |
193 | 凡霊ノルミン族 | マクリル浜での道中 |
194 | グリモ姐さんは聖主? | △:マクリル浜でグリモワールと会った後 |
195 | ハリア村の噂 | △:ハリア村に入った直後 |
196 | 正反対の二人 | △:マーナン海礁で自動チャット後 |
197 | 海底遺跡のひみつ | △:聖殿パラミデス入った直後 |
198 | 聖主はどこに? | △:聖殿パラミデス入った直後 |
199 | 母の想い | 聖殿パラミデス道中 |
200 | 八つ首のドラゴン | △:マヒナ戦後 |
201 | モアナも一緒に…… | 聖殿パラミデスクリアしてから戻る途中 |
202 | 穢れと聖隷 | 聖殿パラミデスクリアしてから戻る途中 |
203 | 闇のコネクション | △:ローグレスへ戻る途中のダーナ街道 |
204 | 心象文字 | △:ライフィセットのハト真似のチャットの後 |
205 | クンクンしないの! | △:血翅蝶からローブを着た人物を預かった後 |
206 | 暴動事件の黒幕 | タイタニアを制圧するため乗り込んだとき |
207 | 蠱毒とは? | △:タイタニアを制圧するとき、地下二階 |
208 | 喰魔と導師 | タイタニアを制圧するとき、道中 |
209 | ショックです…… | タイタニアでデュラハンを倒した後、エントランス |
210 | タコスミパスタ!? | △:ストーンベリィへ向かう前のタイタニア |
211 | 手紙の相手は…… | △:ストーンベリィへ向かう前のタイタニア |
212 | こだわるアイゼン | △:ストーンベリィへ向かう前のタイタニア |
213 | ミッドガンド領東部 | ストーンベリィに向かう前 |
214 | 対魔士と聖隷 | △:ヘラヴィーサへ向かう前のタイタニア |
215 | 甘ったれ | △:ヘラヴィーサ再訪問時、嘆く住民を見た後 |
216 | 災禍再び | △:ヘラヴィーサ再訪問時、嘆く住民を見た後 |
217 | 呉越同舟 | △:フォルディス遺跡へ向かう途中のフィガル雪原 |
218 | 寒さ対策 | △:フォルディス遺跡へ向かう途中のフィガル雪原 |
219 | ライフィセットの考察 | △:フォルディス遺跡地下一階 |
220 | お母さんってどんなかな? | フォルディス遺跡でメディサと戦った後 |
221 | 古文書は写本 | △:タリエシンに向かう前のタイタニア |
222 | ベルベットの知人? | △:タリエシンで街の人の話を聞いた後 |
223 | ベルベットの故郷って……? | △:プルナハ湖畔崖道に入った直後 |
224 | 囚われた理由 | プルナハ湖畔崖道での道中 |
225 | イーストガンド領の信仰 | △:プルナハ湖畔崖道での橋の上のチャットの後 |
226 | 困惑 | アバルに来た時 |
227 | 側にいたい | △:アバルでベルベットの家に入った後 |
228 | 僕の知らないベルベット | △:アバルで店の男性に話した後 |
229 | かつての暮らし | アバルで買い物をした後 |
230 | 古文書を手に入れろ | △:鎮めの森でオルトロス撃破後 |
231 | 大角の業魔 | アバルでメルキオルと会った後 |
232 | フー・イズ・スパイ? | アバルでメルキオルと会った後 |
233 | 業魔を操る術 | △:アバルからタリエシンに戻る途中 |
234 | オルとロスの世話係 | △:タリエシンでベンウィックに一度話した跡 |
235 | なにが食べたい? | △:タリエシンからタイタニアに戻ってきた時 |
236 | シアリーズの思惑 | △:エンドガンド領が次の目的地に決まった直後 |
237 | 久しぶりですね | テレサ同行後 |
238 | テレサの怒り | テレサ同行後 |
239 | 僕はライフィセット | テレサ同行後 |
240 | テレサとオスカーの実力 | △:ベイルド沼野での道中 |
241 | 聖隷の心 | ベイルド沼野での道中 |
242 | テレサとライフィセット | ベイルド沼野での道中 |
243 | 策戦の確認 | ベイルド沼野での道中 |
244 | 新たな喰魔 | △:ベイルド沼野でのボス戦後 |
245 | 聖寮の計略 | △:ベイルド沼野からリオネル島桟橋に戻ってきたとき |
246 | 神依とジークフリート | △:ベイルド沼野からリオネル島桟橋に戻ってきたとき |
247 | ビエンフーの謝罪 | タイタニアで喰魔救出での道中 |
248 | 非情なる戦い | △:タイタニアで喰魔救出時 |
249 | 金剛鉄征嵐 | △:タイタニアで金剛鉄征嵐を入手直後 |
250 | 導師の神依 | タイタニア道中 |
251 | 氷の獣 | タイタニア道中 |
252 | せめてその傍に | △:地脈 |
253 | カノヌシは弟? | 地脈道中 |
254 | 大地の記憶 | 地脈道中 |
255 | 破滅の際で | △:地脈でアイゼンとロクロウ合流後 |
256 | 浮かび上がる過去 | △:地脈で二回目の過去の記憶を見た時 |
257 | カノヌシの狙い | 地脈道中 |
258 | 導師が生まれた日 | △:地脈で三回目の過去の記憶を見た時 |
259 | 転生の因縁 | 地脈道中 |
260 | ベルベットの牙 | ザ・カリスでの道中 |
261 | 使役聖隷一号 | ザ・カリスでの道中 |
262 | 一号にも名前を! | ザ・カリスでの道中 |
263 | 姐さんはがんばったでフー | △:ザ・カリスで一号の名前をつけるチャットの後 |
264 | 囚われのドラゴン | △:ザ・カリスでドラゴン発見後 |
265 | 僕はベルベットの…… | ザ・カリスでの道中 |
266 | ザビーダの予感 | ザ・カリスでの道中 |
267 | 賭け、続行! | △:ザ・カリスでライフィセットのチャットの後 |
268 | 業魔化したアイフリード | ベイルド沼野でアイフリードのところへ行く前 |
269 | ぶつかりあう流儀 | △:ベイルド沼野でアイフリードについての自動チャット後 |
270 | 船長の死 | △:リオネル島桟橋で出航直前 |
271 | 鎮めの理想 | △:カノヌシの領域が広がった後のローグレス上陸後 |
272 | 広がるカノヌシの領域 | △:カノヌシの領域が広がった後のローグレス上陸後 |
273 | タバサは無事か? | △:パーシバルを救出する時の王都地下道 |
274 | 今、僕にできること | △:離宮でのイベントの後のローグレス市街 |
275 | 氷の大地を進む | △:ヘラヴィーサからフォルディス遺跡に向かう途中のフィガル雪原 |
276 | キララウス火山 | △:ガイブルク氷地に初めて入った時 |
277 | メイルシオの雪は白いか? | メイルシオ初訪問時 |
278 | 緋の夜に想う | 緋の夜が来た時 |
279 | 火山爆発注意 | △:キララウス火山入った直後 |
280 | 決戦を前に…… | キララウス火山でのシグレ戦前 |
281 | 夜桜あんみつ | △:キララウス火山でシグレ戦後 |
282 | 寒い!熱い! | △:キララウス火山で火口に入った直後 |
283 | 変わったもの | キララウス火山でシグレを倒した後 |
284 | 対魔士の影 | キララウス火山でシグレを倒し頂上へ向かう途中 |
285 | 勝率 | △:キララウス火山の火山洞窟上層に入った時 |
286 | 爆発しない……っぽい? | キララウス火山でのメルキオル戦後 |
287 | 仇とケリ | △:キララウス火山でのメルキオル戦後 |
288 | ハングリー? | △:キララウス火山でのメルキオル戦後 |
289 | 四聖主復活と世界の変化 | △:キララウス火山でメルキオルを倒してヘラヴィーサから出港前 |
290 | 現実をかみしめて | △:最終決戦前のゼクソン港 |
291 | 最後の戦いへ | △:八頭竜カノヌシの天上の話上層 |
292 | 天空の聖殿 | △:八頭竜カノヌシの天上の話下層 |
番号 | 名称 | 発生条件 |
---|---|---|
001 | ホワイトかめにん登場 | 西ラバン洞穴でホワイトかめにんと初めて会った時 |
002 | ホワイトかめにんVベルベット | ホワイトかめにんと二度目に会った時 |
003 | ホワイトかめにんVSマギルゥ | ホワイトかめにんと三度目に会った時 |
004 | ホワイトかめにんVSエレノア | ホワイトかめにんと四度目に会った時 |
005 | ホワイトかめにんVSライフィセット | ホワイトかめにんと五度目に会った時 |
006 | 浜辺で散歩 | イズルトでしゃべるペンギョンの話を聞いた後宿屋に泊まる |
007 | 時空の漂流者 | イズルトでジュードと戦った後 |
008 | ミラペンギョン!? | タリエシンの血翅蝶のメンバーからミラペンギョンの話を聞いた時 |
009 | 異世界の術 | フィガル雪原でミラと戦った後 |
010 | もう食べられないかも…… | ノルミン島でジュード&ミラと戦った後 |
011 | 甲種警戒業魔 | ゼクソン港で甲種業魔の噂を聞いた後 |
012 | 強そうなの発見! | ダーナ街道で甲種業魔「オークコング」を発見時 |
013 | ランゲツ一族 | ダーナ街道の甲種業魔「オークコング」撃破後 |
014 | 上意討ち | 東ラバン洞穴の甲種業魔「セルケト」撃破後 |
015 | ランゲツの剣 | ヴォーティガンの甲種業魔「ランスロット」撃破後 |
016 | 聖隷テオドラ | ザビーダのサブエピソード中 |
017 | 死神の呪いを解く方法 | ゼクソン港で「古代アヴァロスト語の古文書」入手後 |
018 | アイゼンの答え | ザビーダのサブエピソード中 |
019 | 死闘の予感 | ヘラヴィーサで白角のドラゴンの噂を聞いた時 |
020 | アイゼンの真意は……? | ガイブルク氷地でのザビーダ戦後 |
021 | ザ・漫才公演! | ローグレスでマジルゥと会った後 |
022 | 相方ベルベット | ベルベットとマギルゥの漫才 |
023 | 相方ライフィセット | ライフィセットとマギルゥの漫才 |
024 | 相方ロクロウ | ロクロウとベルベットとマギルゥの漫才 |
025 | 相方エレノア | エレノアとベルベットとマギルゥの漫才 |
026 | 相方アイゼン | アイゼンとマギルゥの漫才 |
027 | 結果発表 | マギルゥとパーティキャラとの漫才を全員分見た後 |
028 | 師弟の幸せ | ザマル鍾洞でマジルゥ救出後 |
029 | オメガエリクシール | レニードでライフィセット主役のサブイベント発生時 |
030 | ロンダウの虚塵発見 | ヴェスター坑道でロンダウの虚塵を発見時 |
031 | 「生きる者」 | ロンダウの虚塵入手してからレニードでリーブと会った時 |
032 | ユニコーンの角発見 | フィガル雪原でユニコーンの角発見時 |
033 | 十二歳病 | ユニコーンの角発見後にリーブに会った時 |
034 | 雲羊のタマゴ発見 | アルディナ草原で雲羊のタマゴ発見時 |
035 | 十二歳病(後半Ver.) | ユニコーンの角発見後にリーブに会った時(後半時) |
036 | 雲羊のタマゴ発見(後半Ver.) | アルディナ草原で雲羊のタマゴ発見時(後半時) |
037 | 四つ目の素材を探そう! | レニードでオメガエリクシールのレシピ4入手時 |
038 | あの対魔士は…… | ダヴァール森林で世界樹の葉入手時 |
039 | オメガエリクシール完成 | オメガエリクシールの全ての素材を集めてイベントクリア時 |
040 | わがままなモアナ | サブイベント「モアナを救え!」発生後 |
041 | 喰魔を救うために | 「モアナを救え!」のイベント途中 |
042 | ライフィセットの違和感 | 「モアナを救え!」のイベント途中 |
043 | 母との別れ | 「モアナを救え!」のイベント途中 |
044 | 彼女を信じて | 「モアナを救え!」のイベント途中 |
045 | モアナ暴走 | モアナがキララウス火山へ行ったことを聞いた時 |
046 | エレノアの答え | 「モアナを救え!」クリア時 |
047 | ニャスタオルとニャンだ!? | ダーナ街道のねこにんから温泉衣装をもらった時 |
048 | 未知の場所 | 天への階梯初訪問時 |
049 | 聖隷の年齢 | 天への階梯の道中 |
050 | いい湯だった! | 天への階梯最深部での温泉イベント後 |
051 | 地脈の入口 | 鎮めの森の地脈の入り口発見時 |
052 | 完全なる神依のために | 鎮めの森から入った地脈で大地の記憶を見た時 |
053 | 知ることの意味 | 鎮めの森から入った地脈で大地の記憶を見た時 |
054 | お母さんへ | 地脈からタイタニアに出た時 |
055 | 失われた味覚 | 序盤ビアズレイで発生 |
056 | セリカが教えてくれたこと | △:ベルベットの料理レベルが20になる |
057 | 特別なキッシュ | △:ラストダンジョン前まで進めて「クラウ家の特製キッシュ」を作る |
058 | カースランドのドラゴン | ストーンベリィの兵士からドラゴンの話を聞く |
059 | 第四種管理地区 | ロウライネでのイベント後にレニードに戻ってきた時に住民の話を聞く |
060 | 殺気にあふれた島 | 第四種管理地区初訪問時 |
061 | 噂通りの場所 | 第四種管理地区を初めてクリア |
062 | 祓えない穢れ | 全ての第四種管理地区をクリア |
063 | わきたつ憎悪 | 序盤、フィガル雪原でプリンセシアの咲く位置へ |
064 | アルトリウスの師 | 序盤、ローグレスで宿屋に泊まった時 |
065 | クローディン王 | 序盤、ローグレスで宿屋に泊まった時 |
066 | 理を超えて願い思う | 中盤、ヘラヴィーサで宿屋に泊まった時 |
067 | 理想とは…… | 中盤、ヘラヴィーサで宿屋に泊まった時 |
068 | 先代筆頭対魔士 | クリア後に見れる対魔士アーサーのイベント、ロウライネで |
069 | 再びアバルへ | クリア後に見れる対魔士アーサーのイベント、ロウライネで |
070 | 導師になった理由 | アバルの墓で花を発見時 |
071 | 怒りの手紙 | サブエピソード「幸せのノル様人形」発生時 |
072 | ノル様人形 | ノル様人形1つ目発見時 |
073 | 激!怒りの手紙 | サブエピソード「幸せのノル様人形」進行中 |
074 | 届かない返事 | ノル様人形3つ目発見時 |
075 | 超!怒りの果たし状 | ノル様人形4つ目発見時 |
076 | タイタニア上陸 | ノル様人形コンプリート後タイタニアへ行った時 |
077 | お兄ちゃんへ | フェニックス戦後 |
078 | 人知れぬ鍛錬 | 宿屋に泊まった時 |
079 | 人ならぬ鍛錬 | 宿屋に泊まった時 |
080 | 迷いなき迷い | 宿屋に泊まった時 |
081 | アイフリードとの出会い | 聖殿パラミデスクリア後のゼクソン港 |
082 | 追悼、友よ | リオネル島での追悼式を見た時 |
083 | 共食い業魔 | イズルトの酒場で業魔の話を聞いた時 |
084 | 生きる本能 | 甲種業魔「グラトニー」を倒した時 |
085 | ライフィセットの真名は? | アルディナ草原向かう途中 |
086 | 異大陸の宝箱 | イズルトの家にいる血翅蝶メンバーから宝箱の話を聞く |
087 | 解説ジークフリート | マーナン海礁の異大陸の宝箱を開けた時 |
088 | モアナのお礼 | サブエピソード「モアナの宝箱」でメイルシオのモアナの宝箱を開けた時 |
089 | 穢れの質とは? | メイルシオでグリモワールに話す |
090 | 征嵐完成 | キララウス火山クリア後にメイルシオのダイルに話す |
091 | 人間に戻る……? | 商船組合に頼んで船を見に行く時のフィガル雪原 |
092 | ベルベットの正体 | ワァーグ樹林道中 |
093 | 喰魔の力 | タイタニアでデュラハンを倒す道中 |
094 | アイゼンの怒り | ヘラヴィーサの聖堂で兵士から業魔の話を聞いた時 |
095 | 胸に燃える炎 | フォルディス遺跡で甲種業魔「牛頭天王」撃破時 |
096 | 魔女の居場所 | マギルゥ奇術団のイベントクリア後にメイルシオでグリモワールと話した時 |
097 | 奇妙なタマシイ | タイタニアでねこスピ発見時 |
098 | 発見!ねこにんの里 | ねこにんの里初訪問時 |
099 | 異海探索開始! | ゼクソン港初訪問時にベンウィックに異海探索の説明を聞く |
100 | 地図の完成を目指して | 異海探索でエリア発見数が一定以上 |
101 | 異海探索順調! | 異海探索70回 |
102 | 恐怖の島発見!? | 異海探索を続ける(70回以上?) |
103 | 世界地図完成! | 異海探索で全てのエリアを発見する |
104 | 心水と剣 | △:ビアズレイでエレノアと会いフィガル雪原に出た時 |
105 | 聖寮読書指南 | △:ヴェスター坑道での対魔士戦後 |
106 | 混ぜたら危険 | △:「秘伝味噌の味噌おでん」をロクロウが料理する |
107 | 死神の苦手料理 | 中盤でタイタニア制圧後、アイゼンが「ドワーフびっくりハンバーグ」を創る |
108 | アイゼンの改善 | 「死神の苦手料理」を見た後に、アイゼンが料理レベル15以上で「ドワーフびっくりハンバーグ」を創る |
109 | みんなホウレンソウがニガテ? | △:ラストダンジョン前まで進めて「クラウ家の特製キッシュ」を作りチャット「特別なキッシュ」を見た後 |
110 | 爽快!レアボード | △:アルディナ草原でレアボード入手した後 |
111 | ボードの下の力持ち? | 地相樹を一定数発見 |
112 | ビバ!ビエンフー!! | △:全ての場所のレアボード地相樹を獲得 |
113 | 甲種警戒業魔を狩れ! | 甲種狩り担当の血翅蝶メンバーと話した時 |
114 | クロガネの休息 | フォルディス遺跡クリア後にタイタニア地上1階 |
115 | 変なコトワザ | ガリス湖道の岩を転がした時 |
116 | 御座の仕掛け・その1 | 聖主の御座の仕掛けの1つ目作動時 |
117 | 御座の仕掛け・その2 | 聖主の御座の仕掛けの2つ目作動時 |
118 | 盗掘避け? | ヴェスター坑道の燭台の仕掛け発見時 |
119 | 二重結界 | ワァーグ樹林の二重結界を見つけた時 |
120 | 仕掛け扉 | 聖殿パラミデスの奥の仕掛けの扉を調べた時 |
121 | 極め料理人ライフィセット | △:ライフィセットの料理レベルが20以上で「3種合挽き肉のラグーソース」「ノルミンニンジンの生絞り」「マーボーカレー」「海賊王の海鮮丼」のどれかをつくる |
122 | 極め料理人ロクロウ | △:ロクロウの料理レベルが20以上で「アホウドリのから揚げ」「シャキシャキキャベツの野菜炒め」「幻想鳥の卵のオムライス」「特濃ソフトクリーム」のどれかをつくる |
123 | 極め料理人マギルゥ | △:マギルゥの料理レベルが20以上で「ドワーフびっくりハンバーグ」「スジ肉のトロトロ煮込み」「バリボー野菜のバーニャカウダ」「フルーツたっぷり天国パフェ」のどれかをつくる |
124 | 極め料理人エレノア | △:エレノアの料理レベルが20以上で「トカゲの尾肉の厚切りステーキ」「貝殻パスタのミネストローネ」「犬神のパエリア」「凶戦士のパルミエ」のどれかをつくる |
125 | 極め料理人アイゼン | △:アイゼンの料理レベルが20以上で「ブウサギのトマト煮込み」「季節の鮮魚 海賊盛り」「夢見ニシンのさっぱりマリネ」のどれかをつくる |
番号 | 名称 | 発生条件 |
---|---|---|
001 | 武器の手入れ | △:ハドロウ沼窟二回目 |
002 | タンコブ | △:ヴォーティガンで発生 |
003 | 夜叉と死神 | △:ヴォーティガンで発生 |
004 | ロクロウの洞察 | △:ローグレスでのアルトリウスの演説後 |
005 | シルフモドキのひみつ | △:聖主の御座へ向かう前のローグレス |
006 | ペンデュラムの謎 | △:ブリギット渓谷 |
007 | ロクロウは意外と…… | △:レニードで船から降りた時 |
008 | ビエンフーも男の子 | マーナン海礁道中 |
009 | 対魔士純情派 | △:カドニクス港でのシグレ戦後 |
010 | マギルゥの愛称 | △:ストーンベリィへ向かう前のタイタニア |
011 | お揃いのお守り | フォルディス遺跡道中 |
012 | パルミエの思い出 | ストーンベリィまで到達後、アイゼンが凶戦士のパルミエを作っている |
013 | 手紙 | △:ヘラヴィーサへ向かう前のタイタニア |
014 | 立ち入り禁止!? | 中盤でタイタニア制圧後、ローグレスかストーンベリィで宿屋に泊まる |
015 | マギルゥの本 | △:マーナン海礁でのクワブトのチャット後 |
016 | 重い木とは? | △:マギルゥの本を見た後 |
017 | ビエンフーは語る | △:中盤でタイタニア制圧後、タイタニアかゼクソン港 |
018 | ふぅ……はぁ……あっそ | △:タリエシンに向かう前のタイタニア |
019 | 香木の歴史 | パーシバル王子を匿うことになった後 |
020 | アイゼンと海 | △:釣りイベントの後のタイタニアの地上1階でグリモワールに話す |
021 | 宝の地図 | デュラハンを倒した後にタイタニアの宿屋に泊まる |
022 | ネコ派?イヌ派? | △:レアボード入手してからのダーナ街道 |
023 | 釣り勝負の結末 | △:タリエシンに向かう前のタイタニア |
024 | 両表のコイン | △:ストーンベリィへ向かう前のタイタニア |
025 | オルとトロス | メイルシオでサブエピソード「ベルベットの料理」の後に市街にいるモアナに近づく |
026 | グリモワールの助言 | キララウス火山でメルキオルを倒した後にメイルシオの宿屋に泊まる |
027 | 最後の賭け | 八頭竜カノヌシの道中 |
028 | 戦いの先に | △:八頭竜カノヌシの天上の輪上層 |
029 | 今を生きる | △:八頭竜カノヌシの天上の輪上層 |
030 | ベルベットの知恵袋 | 最終決戦前にストーンベリィかローグレスの宿屋に泊まる |
031 | ノルミン族の生態 | タイタニアでのフェニックス戦後 |
032 | ダイルの脱皮 | フォルディス遺跡クリア後のタイタニアの地上1階でモアナに話す |
033 | ダイルのシッポ・その1 | フォルディス遺跡クリア後のタイタニアの地上1階でダイルに話す |
034 | ドラゴンと恐竜 | タイタニアでデュラハンを倒した後にタイタニアの宿屋に泊まる |
035 | アジトの日々・ダイルとクロガネ | タイタニアでデュラハンを倒した後にタイタニアの地上1階にいるダイルとクロガネに近づく |
036 | アジトの日々・クワブト問題 | 釣りイベント後にタイタニアの宿屋に泊まる |
037 | 幸せの王子 | 釣りイベント後にタイタニアの宿屋に泊まる |
038 | 秘密基地のロマン | タイタニアを拠点にした時 |
039 | 船乗りの掟 | フェニックスを倒した後に最終決戦前にタイタニアの宿屋に泊まる |
040 | ダイルのシッポ・その2 | 船乗りの掟を見た後にタイタニアの宿屋に泊まる |
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:うん、これだけあれば薬と交換できそう
ベルベット:お店にもって行こう
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:危ないわね。また崩れて穴が広がってる
ベルベット:柵をつくった方がいいって何回言っても、「触れちゃいけない場所だから」って
ベルベット:セリカお姉ちゃんにも、よく脅かされたっけ。「ここは地獄に繋がってるのよ」……って
ベルベット:そんなの信じるほど、もう子どもじゃないけど!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:あのウリボアたち、兄弟……だったのかな?見逃してあげればよかったかな……
ベルベット:けど、それじゃラフィの薬代払えないし
ベルベット:狩りのおかげで、薬も買えるし栄養だってつけられる
ベルベット:これは仕方のないこと!理性的な判断!
ベルベット:なんて……いちいち悩む時点で、感情に振り回されてるよなぁ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ただいま、セリカ姉さん
ベルベット:もう七年も経つんだよ。姉さんと、お腹の子が亡くなってから……
ベルベット:しまった!プリンセシアの花、お供えするの忘れちゃった
ベルベット:姉さんも、お父さんも、お母さんもあの花が大好きだったのに
ベルベット:生まれてたら、きっとこの子も──
ベルベット:ごめんね。明日、岬で摘んでくるから
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:義兄さんがつくった薪って火付けが楽ね。なにかコツがあるのかな?
ライフィセット:お姉ちゃん……えっと……
ライフィセット:……シチューにホウレン草は入れないでね?
ベルベット:好き嫌いすると大きくなれないわよ?
ライフィセット:う……そうだけど、今日は……
ベルベット:ふふ、仕方ないわね
ベルベット:今日は特別にホウレン草なしで、あんたの好きなカレー味にしてあげる
ライフィセット:わあ!ありがとう
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:これこれ♪辛さはないけど、すごくいい風味なのよね
ベルベット:あ、そうそう。今日ニコに重大な相談されちゃったの
ベルベット:今度、家につれてくるから、よろしくね
ライフィセット:うん。相変わらず仲がいいね
ベルベット:まあね。あの子とは長い付き合いだし
ベルベット:(それにしても、あのニコが恋なんて……)
ベルベット:……ラフィ、あんたも好きな子とかできたら、ちゃんとあたしに相談しなさいよ?
ライフィセット:す、好きな子!?
ベルベット:う〜ん、あんたは、意外に頑固だからちょっと年上がいいかもしれないわね
ベルベット:あと、料理が上手かどうかもポイントよ。上手な子なら、大体間違いないと思うわ
ライフィセット:もう、なにを言ってるの!?お姉ちゃんこそ自分のお婿さんの心配をしたら?
ベルベット:お婿!?あ、あたしはいいのよ!
ベルベット:セリカお姉ちゃんの代わりに、あんたと義兄さんのご飯をつくらなきゃならないし
ベルベット:そもそも、よその男の人を好きになるとか、よくわかんないし──
ライフィセット:ゴホ!ゴホッ!!
ベルベット:!?
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:大丈夫!?今、水をもってくるから──
ライフィセット:平気だよ。お姉ちゃんが変なこと言うから、ちょっとむせただけ
ベルベット:ならいいけど……
ベルベット:ごめん、ちょっと話が飛躍しすぎたね
ライフィセット:ふふ、先が思いやられるよ
ベルベット:でも、仕方ないのよ?
ベルベット:弟の心配するのは、お姉ちゃんの仕事みたいなものなんだから
ライフィセット:わかってる。けどね、弟だって心配してるんだよ
ライフィセット:お姉ちゃんに幸せになって欲しいって
ライフィセット:僕だけじゃない。アーサー義兄さんだって、そう願ってるんだ
ベルベット:……家族だから、ね
ライフィセット:うん、家族だから
ベルベット:ありがとう、ラフィ……
ベルベット:やっぱりあたしは、あんたのためならウリボアを千匹殺したって後悔しないよ
ライフィセット:…………
ベルベット:あっと、いけない!
ベルベット:早く夕飯を用意しなきゃね
※枠外タッチで閉じます。
シアリーズ:騒がれてはいません
ベルベット:……当然ね
シアリーズ:この部屋で装備を整えましょう
※枠外タッチで閉じます。
シアリーズ:囚人から没収した品が保管してあるようですね
ベルベット:ロープか。これは使える
ベルベット:……すごい刀
シアリーズ:その太刀は……號嵐!?なぜこんなところに?
ベルベット:あたしには大きすぎる
シアリーズ:いいのですか?號嵐は希代の名刀ですが……
ベルベット:どんなにすごくても、使いこなせなきゃ意味がない
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:どうやらここはノースガンド領らしいな
ベルベット:ノースガンド領……つまり船を修理しないとミッドガンド領にある王都には行けないってことか
ロクロウ:ローグレスにどんな用があるんだ?
ベルベット:…………
ロクロウ:……脱獄してでも行きたい用だよな
マギルゥ:へぶしょいっ!
マギルゥ:うう〜、立ち話はあとじゃ。どこかに温いスープと、心温まる小話はないかのう?
ロクロウ:近くにヘラヴィーサという街があるはずだ。小話は知らんが、メシも船大工もそこで探せるだろう
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:娑婆はいいな。体を自由に動かせる
マギルゥ:ロクロウや。おぬしは、なにゆえ囚われておったんじゃ?
ロクロウ:家のしがらみで、色々あってな
マギルゥ:ほほう、呑気に恩返しをしとっていいのかえ?
ロクロウ:「借りたものは返す」──それが「ランゲツ家」の教えなんだよ
マギルゥ:なかなかお行儀のいい家族じゃなー
ベルベット:長く捕まってたの?
ロクロウ:三年ほどかな。だから今の世界がどうなってるかは、よく知らん
マギルゥ:儂もじゃよー。聖隷とかいう術を使う奴らがおるとはビックリじゃ
マギルゥ:マジナイとノロイは魔女の専売特許じゃのに。営業妨害もはなはだしいわ
ロクロウ:お前の捕まった理由って……
マギルゥ:うむ。インチキ魔女じゃってしょっぴかれたんじゃ。身内のヒドイ裏切りにあってのう
ベルベット:…………
マギルゥ:聞きたいか?聞くも涙、語るも笑顔の物語
ベルベット:興味ない
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:倉庫……?
マギルゥ:クンクン、この臭いは……「炎石」じゃな
ロクロウ:炎石?
マギルゥ:別名メルキオナイトともいう。ノースガンド領で採れるレアな鉱物じゃ
マギルゥ:硫黄と混ぜれば爆薬に、油と合わせれば燃料になる
ベルベット:ぶっそうなものね。本当なら
マギルゥ:疑うのは自由じゃよー
ロクロウ:あの少年には逃げられたか
ベルベット:とにかく街には入れた
ロクロウ:船関係の組合に行ってみよう
ロクロウ:これだけの倉庫があるなら、その手の組織が、荷や船大工も仕切ってるはずだ
ベルベット:できれば航海士も欲しい
マギルゥ:うむ。それは激しく勧めるぞ。次も漂着で済むとは限らんからのう
ロクロウ:武器も探そう。そうすれば俺も助太刀できる
ベルベット:だから、背中の
ロクロウ:いや。それは断る
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:船員が集まってる。あそこが組合?
ロクロウ:お。よさそうな武具屋がある!船大工の話は任せた
マギルゥ:男って生き物は、オモチャを見るとガマンできんのじゃなあー
ベルベット:ほんと
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:なるほど。ダイルというトカゲの業魔を探すんだな?
ベルベット:とりあえず、ダイルの故郷を当たってみるつもり
マギルゥ:がんばっての〜
ロクロウ:一緒に行かないのか?
マギルゥ:儂も、なかなか忙しい身でな。裏切り者を捜さんといかんのじゃ
マギルゥ:それに、食べられたらかなわんしの
ベルベット:こう見えてもグルメなのよ
マギルゥ:では、なおさら危ないのう〜♪
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:剣捌きはさすがね
ロクロウ:いや、まだまだだ。この程度じゃ──
ベルベット:あんたって、どういう業魔なの?
ロクロウ:夜叉だよ。戦いの鬼神だ
ベルベット:戦いの鬼神……どうりで
ロクロウ:ベルベットこそなんなんだ?ずいぶん変わった業魔みたいだが
ベルベット:喰魔よ
ロクロウ:喰魔?聞いたことないが、どういう業魔なんだ?
ベルベット:敵を喰って力に変える化け物。それ以外は知らない
ロクロウ:ふうむ……女で、敵を喰らうというと──
ロクロウ:オニババの一種かな?
ベルベット:はあ?
ロクロウ:今の顔……ちょっとソレっぽかったぞ……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:しかし、意外に対魔士は信頼されてないんだな
ベルベット:!?
ロクロウ:ん!なかなか美味い
ロクロウ:そんなに腹減ってたのか?
ベルベット:しない……
ベルベット:……なんの味も
ロクロウ:……?
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:魔女って……マギルゥだよな?
ベルベット:聖寮に気づかれたわね。抜け道も見つかったと思った方がいい
ロクロウ:船の手配も、もう無理だな
ベルベット:……手配できないなら、奪えばいい
ロクロウ:奪うって……ヘラヴィーサの船をか!?こっちは二人だぞ
ベルベット:まだ協力できる奴がいる
ロクロウ:ダイルか
ベルベット:あいつは航海士だって言ってた。仲間にできれば一石二鳥よ
ロクロウ:そうかもしれんが……マギルゥはどうする?
ベルベット:……それは聖寮次第ね
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……つきあわなくても恨まないわよ。別に
ロクロウ:そうはいかん。お前が死んだら恩が返せない
ベルベット:変わってるわね
ロクロウ:そうかな。だが、俺は「こう」なんだ
ロクロウ:ベルベット……アルトリウスって誰だ?
ベルベット:……仇よ。弟の
ロクロウ:準備はすんだ。ダイルは出口で待ってるはずだ
ベルベット:……出発しましょう
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
マギルゥ:ベルベットのオヤツ代わりには丁度よさそうじゃの
ライフィセット:オヤツ……
ロクロウ:冗談だからな
ライフィセット:ううん。それが命令なら
ロクロウ:……いいのか?連れていって
ベルベット:この子の術は役に立つ。やばくなったら捨てればいいわ
マギルゥ:じゃの。聖隷なんて道具みたいなもんじゃし
マギルゥ:のう、二号?
ライフィセット:うん
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……利害は一致してる。海賊たちと手を組むしかなさそうね
マギルゥ:まあの。進むも破滅。退くのも無理なら抜け道に賭けるしかあるまいて
ベルベット:手伝う気ないくせに
マギルゥ:当然の〜♪
ロクロウ:あの聖隷はただ者じゃない。まだ力を隠している気がするが
マギルゥ:坊も同じ聖隷じゃろ。なにかわからんか?
ライフィセット:…………
ベルベット:思惑があるのはお互いさまよ。とにかく、あいつを追う
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:要塞を攻略する策があるんでしょ。聞かせて
アイゼン:結論から言えば、ヴォーティガンの守備は鉄壁だ。海から攻めても陸から攻めても落とせない
ロクロウ:おいおい
ベルベット:いや……なら、同時に攻めれば
アイゼン:そうだ。まずバンエルティア号で攻撃をかけ、警備艦隊を海峡から引きずり出す
アイゼン:その際に、俺たちは要塞に侵入し、海門を開く
アイゼン:バンエルティア号は艦隊を振り切って海峡に再突入。俺たちを拾って駆け抜ける
ロクロウ:ひとつ間違えれば全滅だな
ベルベット:けど、間違えなければ勝ち目はある
ロクロウ:死神同伴でか……
アイゼン:策戦はもう始まっている
アイゼン:行くぞ。要塞の入り口は洞窟を抜けた先だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:結界が張られてるのか
アイゼン:警備を変えやがったな
ベルベット:なるほどね。さっきのサソリや、この結界が死神の不幸ってわけか
アイゼン:……この程度で済めばいいんだがな
ロクロウ:正面突破は難しいな。どう攻める?
アイゼン:崖を下りた先に建設時に使われた搬入口があるはずだ。そっちを探る
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ううむ、要塞中に業魔がいるようだな
ロクロウ:まさかアイゼン、お前が業魔病の原因じゃないだろうな?
アイゼン:……いや。偶然蔓延したところに俺たちが来たんだ
アイゼン:死神の道連れとは、こういうことだ。悪く思うな
ベルベット:むしろ好都合ね。敵は組織的な対応ができなくなってる
ロクロウ:こっちは少数だ。確かに乱戦の方が有利に立ち回れるな
アイゼン:…………
ベルベット:アイゼン、海門を開くにはどうすればいいの?
アイゼン:開閉装置は、海門の上部にあるはずだ。それを起動して、合図の狼煙をあげる
ベルベット:了解。海門の上ね
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:アイゼン、火薬は?
アイゼン:仕掛けた。こいつをバンエルティア号への狼煙代わりにする
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ここが管理室のようね。手分けして鍵を探すわよ
アイゼン:俺たちは奥の部屋を探す
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:鍵があったか。これで海門を開けられるな
アイゼン:羅針盤も必要だ。よく見つけた
ライフィセット:うん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:よし、開いた!
ベルベット:今のは?
アイゼン:バンエルティア号が近づいている合図だ。急ぐぞ!
ベルベット:わかった。とっとと海門を開けるわよ
ライフィセット:うん、とっとと!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:船着き場は業魔の巣だ。あれじゃ、船に乗り込まれちまうな
ロクロウ:ちっ、時間がない
ベルベット:アイゼン、船にとまらずに海門を抜けるよう指示できる?
ロクロウ:それなら船は助かるが、俺たちはどうする?
ベルベット:この真下を通る船に飛び移る
ロクロウ:お……おう!?
ベルベット:それしかないんでしょ。アイゼン、なんとか合図を──
アイゼン:必要ない。バンエルティア号は海門を突っ切る
ベルベット:伝えなくても?
アイゼン:俺も同じ策を考えた。アイフリード海賊団の流儀だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:なるほど。情報が船止め(ボラード)の見返りってわけだな
ライフィセット:情報が……見返り?
ベルベット:最新情報をいち早く教えてやれば、商人は儲ける機会を得られるでしょ
ライフィセット:だから、海賊でもかばってくれる
ロクロウ:アイゼンたちは、あちこちの港にこういうコネをもってるんだろうな
マギルゥ:聖寮の規律でも、人の欲までは縛りきれんということじゃ
ライフィセット:……そうなんだ
ベルベット:監獄島に行っても無駄よ。アイフリードはそこにはいない
アイゼン:なぜそれを?
ベルベット:あたしは監獄島から脱走してきたの。監獄の囚人が言ってた
ベルベット:この島から生きて出たのはアイフリードだけ。メルキオルというジジイの対魔士が連れ出したって
ライフィセット:メルキオルさまは、特等対魔士で聖寮の長老。いつもは本部にいるはずだよ
ベルベット:「様」はいらない
アイゼン:……海賊バン・アイフリードは、俺たちの船長だ。あいつの失踪には、聖寮の上層部が絡んでいるようだな
マギルゥ:その本部とやらは王都にあるのかの?
ライフィセット:うん、王都のローグレス離宮に。行ったことないけど
ロクロウ:ベルベットの目的もそこにいる男だろう?
アイゼン:目的は同じというわけだな
ベルベット:謝らないわよ。巻き込んでも
アイゼン:それは死神(こっち)のセリフだ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ところで、お前たちの船だがな。あれも仲間が乗り込んで海門要塞を抜けた
アイゼン:うちの「探索船」として使わせてもらうぞ
ベルベット:好きにして。勝手に乗ってきたものだし
ライフィセット:探索船って……?
アイゼン:探索船の担当はベンウィックだ。あいつから説明を聞いてくれ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:あとは報告を待てばいいのね
ロクロウ:なにが見つかるか楽しみだな!お宝を乗せた沈没船とか
ライフィセット:海底遺跡とか、無人島とか
アイゼン:新航路も見つかるかもしれん
ベルベット:そんなのより美味しい魚がいいわ。きっと高く売れる
マギルゥ:じゃよな〜!マグロとかブリとか、チョウザメとかの〜
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ははは!なかなかの手口だったな、マギルゥ
マギルゥ:あんな子どもダマシは、今回限りポッポ〜
ベルベット:…………
マギルゥ:おお、怖い怖いポッポ〜……
ライフィセット:ハト、すごかった
ベルベット:その子どもダマシで入れた。王都も大したことないわね
マギルゥ:それだけ守りに自信があるんじゃろうて。ライフィセット、王都の戦力を知っておるか?
ライフィセット:王都に配備された対魔士さ……対魔士は千人以上。守備兵士は二個師団
アイゼン:……さすがは王都だな。油断ではなく余裕とみるべきだろう
ベルベット:(通行手形がないと厳しいか……)
マギルゥ:民衆がニコニコなのも納得じゃの。業魔に怯えまくっとった数年前とは大違いじゃわー
ロクロウ:でかい式典があると言っていたしな。そんな余裕があるほど、ここは平和なんだろう
ベルベット:……その平和は……ラフィの……
ライフィセット:ベルベット……?
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:……導師アルトリウス。あれがお前の標的か
マギルゥ:いきなり飛びかかるかと、ヒヤヒヤワクワクしたわい
ベルベット:それじゃ無駄死にでしょ。「理」と「意志」の剣が要るのよ
ベルベット:あいつを殺すためには
ライフィセット:アルトリウス様を……殺す……
マギルゥ:手堅くてつまらんの〜
マギルゥ:そろそろ、儂はおいとまするかの。なごりおしいじゃろうが、捜し物があるでな
ベルベット:お好きにどーぞ
ライフィセット:さよなら
マギルゥ:じゃあの。皆の大願成就、七転八倒を祈っておるぞ♪
ロクロウ:敵は導師様とやらだ。姿を隠すような相手じゃない。じっくりいこうぜ
アイゼン:奴の後ろにいたジジイがメルキオルだな?
ライフィセット:そう
アイゼン:奴らの情報を集めよう。なにをしてるかわかれば隙を突ける
ロクロウ:といっても、王国の最重要人物だ。探るにも手がかりがないとな……
ベルベット:アイゼン、王都に裏の知り合いはいないの?船着場の時みたいな
アイゼン:内陸には無いが……アイフリードが懇意にしていた闇ギルドがあったはずだ
アイゼン:バスカヴィルというジジイが仕切っていて、確か、王都の酒場が窓口だと
ベルベット:闇ギルド……そんなものがあるのか?
ライフィセット:わっ!?
ロクロウ:ははは、とにかく酒場へ行ってみよう。腹ごしらえはできるだろう
ベルベット:そうね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:倉庫の赤箱を破壊せよ……か。穏やかじゃないなぁ
ベルベット:いつもが穏やかだとでも?
ロクロウ:ふむ、それもそうだ
アイゼン:これは請け負い仕事だ。無駄に消耗することはない
アイゼン:バンエルティアに連絡(つなぎ)をつけて警備を引きつけさせておこう
ベルベット:お願い
ライフィセット:なにを壊すのかな?
ベルベット:さてね。なんでも同じことよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ふう……なんとか逃げ切れたな
マギルゥ:よよよ……無念じゃよ〜せっかくあいつを追い詰めたのに〜
マギルゥ:まあ、居場所がわかったからよしとするかの♪
ベルベット:あんた、あの変な聖隷を捜してたわけ?
マギルゥ:そうじゃ。ヤツの名は聖隷ビエンフー
マギルゥ:儂の可憐な乙女心を傷つけおった、憎さあまって可愛さ全開なノルじゃよ
マギルゥ:ふっふっふ……捕まえたらどうしてくれようか〜
ロクロウ:意味がわからん
ライフィセット:わからん……
ベルベット:いいの。わかったら困るわ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ガリス湖道で学者が行方不明、か
ロクロウ:おかしな話だなあ
ライフィセット:消えた場所がわかるなら、探しに行けばいいのに
ロクロウ:だよな。しかも人捜しが、なんで非合法なんだ?
ベルベット:……可能性はいくつか考えられる。けど、こっちは依頼を果たすだけよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ダーナ街道で「王国医療団」を襲撃しようとしている者たちがいる……か
ライフィセット:王国医療団は、あちこちで診察や治療をする「動く病院」
アイゼン:民間の寄付で活動している慈善団体のはずだ
ロクロウ:う〜ん。狙われる理由がわからん
ベルベット:いるんでしょ。慈善とかが大嫌いなひねくれ者が
ロクロウ:だとして、闇組織が守る理由は?
ベルベット:知らないけど……襲撃者の方に原因があるのかもね
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:やつらが欲しがっていたのは、この薬か
ベルベット:教会の封紙……薬……
ライフィセット:それ、奴らのか?
ライフィセット:うん。三人みんなつけてた。なんなのかな……?
ベルベット:……ただの業魔よ。慈善団体を襲うような、ね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:これで婆さんのお使いは全部こなした。ローグレスの酒場へ戻ろうぜ
ロクロウ:はは、マーボーカレーがずいぶん気に入ったんだな
ライフィセット:そう……なのかな?
ベルベット:あたしに聞かないで
ライフィセット:ベルベットは美味しいと思わなかった?
ベルベット:……わからないのよ
ライフィセット:え?
ロクロウ:あいつは、食い物の味がわからないんだ
ロクロウ:いくら食っても満腹感もない。感じるのは血の味だけ……そう言ってた
ライフィセット:そう……なんだ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……ふぅ
ライフィセット:ベルベット、どうかした?
ベルベット:……なんでもないわ
ライフィセット:でも、なんか……
ベルベット:なんでもない!
ライフィセット:…………
ロクロウ:城に忍び込んで襲うなら、徹夜仕事になりそうだな
ロクロウ:今のうちに準備を終えて、酒場で一休みさせてもらおう
ベルベット:……そうね
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
マギルゥ:むふふ、間に合ってよかったわい
ベルベット:あんたも来る気?
マギルゥ:「お主らと一緒におれば、ビエンフーを使う対魔士が現れるぞよ〜」
マギルゥ:……と、マギルゥ占いに出たのでな
ロクロウ:当たるのか、それ?
マギルゥ:儂は昔、王城に入ったことがある。一緒だと便利かもじゃぞ?
ベルベット:ジャマしたら捨てていくわよ
アイゼン:敵の本拠地だ。警備は堅いぞ
ベルベット:けど、闇はあるはず。赤いスカーフをつけた兵士を捜すわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:急がないと夜が明けちゃう
マギルゥ:こんな時はマギルゥ占いの出番じゃよ!
マギルゥ:ど・ち・ら・に・す・す・も・か フィッチ・ウィッチ・フィッチ!
ベルベット:マギルゥ
マギルゥ:おお、怖い怖い〜……坊は、どっちに進めばいいと思う?
ライフィセット:僕は……
ライフィセット:…………
ベルベット:……とにかく上に登る場所があるはず。それを捜しましょう
ライフィセット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……さて、マギルゥ。礼拝堂はどっち?
マギルゥ:さぁて、どっちじゃろ?
ベルベット:ちょっと
マギルゥ:儂は、王城に入ったとは言ったが詳しいとは言っておらん
ベルベット:あたしは言ったわよ。邪魔をしたら捨ててくって
マギルゥ:では、まずゴミ箱を探さんとのう
ベルベット:……あてにしたあたしがバカだった
マギルゥ:そうそう、肩の力を抜け。さすれば道はおのずと見えてくるものじゃ♪
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:対魔士から聖隷を奪うとはな。どうやったんだ、マギルゥ?
マギルゥ:元々ビエンフーは、儂の聖隷なのじゃ。それを裏切って家出しよってからに
ビエンフー:うう……マギルゥ姐さんの聖隷遣いのバッドさに耐えかねたんでフ……
ビエンフー:さすらっていた所をエレノア様に拾われたんでフ……エレノア様は優しかったんでフよ〜……
マギルゥ:そうかそうか。今の発言含めて、どうお仕置きしてくれようかのう〜♪
ビエンフー:ビエ〜ン!またバッドな日々が戻ってきてしまったでフ〜!
ベルベット:あんた対魔士だったのね
マギルゥ:違〜う。魔女じゃよ。こやつは魔法のタネと仕掛け的なアレじゃ
ベルベット:だから聖隷と契約できるのは対魔士だけでしょ
マギルゥ:そんなのは大人が勝手に決めた儚いルールじゃよ〜
ベルベット:…………
ロクロウ:やめておけ、ベルベット。問い詰めるだけ無駄だ
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:う〜ん、晴れやかサワヤカな朝じゃわ〜♪
裏切り者に、みっちりオシオキをしてやったでな
ビエンフー;ビエ〜ん……みっちりすぎでフよ〜……
ベルベット:鍵を殺さないでよ
マギルゥ:そっちも、坊を食べてないじゃろうな?大事な鍵じゃぞ
ベルベット:……わかってるわ
ライフィセット:…………
マギルゥ:じゃが、相手は導師と聖主。導師はともかく、聖主とは世界を創った神様じゃぞ
マギルゥ:戦って勝てると思うのかえ?
ベルベット:聖主なんて偽物に決まってる。アルトリウスは民衆を操るために神話を利用したのよ
ベルベット:本当に神様なら、業魔病くらいどうにかできるはずでしょ?
アイゼン:…………
ロクロウ:カノヌシは存在しないっていうのか?
ベルベット:……ううん。カノヌシと呼ばれている「なにか」はいる
ベルベット:特殊な術で精霊を降臨させた聖隷が
マギルゥ:言い切るのう
ベルベット:三年前にこの目で見た
マギルゥ:ほほう、神様じゃないなら勝ち目はありそうじゃの
ベルベット:もちろんよ。第一、狙いはアルトリウス。それ以外はどうでもいいわ
ライフィセット:アルトリウス様は……弟の仇……
ロクロウ:さあて、ライフィセット。目指す「聖主の御座」はどこにあるんだっけ?
ライフィセット:えっと……ローグレスの北。ダーナ街道を進んだ山の中
ベルベット:対魔士が検問を護ってるなら、聖隷を奪えるかもしれない
アイゼン:仲間に検問の様子を調べるよう、連絡(シルフモドキ)を飛ばしておいた
アイゼン:その情報を元に襲撃計画を立てる
ベルベット:ゼクソン港あたりで合流できそうね
アイゼン:その予定だ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:どうかしたのか、ライフィセット?元気がないみたいだが
マギルゥ:いつものことじゃろーが
ロクロウ:お前は引っ込んでろ
ライフィセット:ロクロウは業魔の剣士、アイゼンは聖隷の死神、マギルゥは変な魔女
ライフィセット:僕は……なんなんだろう?
ロクロウ:ふむう……哲学的な質問だな
マギルゥ:お主は、ベルベットの道具で非常食じゃろ?
ライフィセット:そう言われた……テレサ様にも「道具」って。でも僕は……
ライフィセット:生きてる
ロクロウ:そうか。ライフィセットは自分がなんなのか、気になり始めたんだな
ロクロウ:なら、答えはひとつだ。「自分で決めろ」
ライフィセット:え……?
ロクロウ:自分で決めていいんだ。どうしたいのか全部
アイゼン:それが「生きる」ということだ。お前の舵は、お前の手の中にある
ライフィセット:僕の舵……自分で……
アイゼン:悩めばいい。それも生きている証だ
ロクロウ:答えを出すまでは守ってやるよ。お前の術には、世話になってるからな
ライフィセット:うん。よくわからないけど……わかった
マギルゥ:いい話っぽいが、気を付けい。ゆっとるのは業魔と死神じゃぞ?
アイゼン:邪悪な魔女もとり憑いてるしな
ベルベット:置いてくわよ!
マギルゥ:ひええ〜、怖いお方がお怒りじゃ〜!とりあえず前進に舵をとれ〜
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:坊にも、リンゴをひとつやったわ
マギルゥ:儂って優しいじゃろ〜?
ベルベット:リンゴ……
マギルゥ:お主も欲しいか?ならば、今度はニワトリのマネを──
ベルベット:必要ない
ビエンフー:姐さん、本気でアルトリウス様と戦うつもりでフかー?
マギルゥ:まーの。坊に頼まれてしもうたからのー
ビエンフー:で、でも絶対勝ち目はないでフよ……
マギルゥ:逆らうのう?なんぞお師さんから言い含められたかえ?
ビエンフー:と、とんでもないでフー!
マギルゥ:ならば付きあってもらうぞ
マギルゥ:なぁに、危なくなったら逃げればよい。万一死んでも──
ビエンフー:「それだけのこと」でフね……
マギルゥ:さすがよくわかっておるのう、ビエンフー♪
マギルゥ:とはいえ、なるべく長くあがいて欲しいものじゃ
マギルゥ:儂の暇つぶしのために……の
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:そいつはペンデュラムを使ったんだな?
ベンウィック:うん!しかも検問の対魔士を全員吹っ飛ばした。あいつなら船長とも渡りあえる
アイゼン:……わかった。直接俺が確かめる
ベルベット:ちょっと、どういうこと?
ロクロウ:検問がペンデュラムを使う聖隷に襲われているらしい
ベンウィック:ペンデュラムは、船長が行方不明になった現場に落ちてた武器なんだ
ベルベット:そいつが連れ去ったってこと?
ベンウィック:わかんないけど、無関係とは思えないよ
ベルベット:アイフリードは対魔士が捕らえているはず。なぜ連れ去った奴が聖寮の検問を襲う……?
マギルゥ:どうする?「鍵」が一本独走したぞ
ベルベット:追いかけるわよ。混乱してるなら、もっとかき回して突破する
マギルゥ:ひょえ〜!カゲキ〜!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アイゼン、さっきは……ごめん
アイゼン:戦ったことか?気にする必要はない
アイゼン:殴られた回数を一生覚えて恨むだけだ
ライフィセット:!?
アイゼン:冗談だ
ライフィセット:どうすればいいのか……わからなかった
アイゼン:悩むのはいい。だが、最後は自分で決めろ
アイゼン:その結果が俺と戦うことなら、殺されても文句は言わん
ライフィセット:うん……
アイゼン:逆に、俺がお前を殺すことになるかもしれんがな
ライフィセット:……うん
アイゼン:ふっ、しゃべりすぎちまった
アイゼン:あの野郎のせいで血がたぎっているようだ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:警備は聖隷だけか。人払いをしているのは本当みたいね
ロクロウ:しかし、なんでこんな場所に新しい神殿を?導師様なら、王都にだってつくれるだろうに
ライフィセット:ここって……
アイゼン:お前も感じられるのか
ライフィセット:なんか……地面の中に強い力が流れてる
アイゼン:そうだ。ここは、大地を流れる自然の力──地脈の集中点のようだ
マギルゥ:聖主カノヌシを祀る絶好の場所というわけじゃな
ベルベット:ふん、襲撃にも絶好よ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:しかし、対魔士が聖隷の器とは……
ロクロウ:マギルゥ、お前もそうなのか?
マギルゥ:うむ!清らかすぎる乙女の儂は聖隷が宿りたい器三年連続NO.1じゃよ!
ベルベット:なら、エレノアの代わりに、あんたをライフィセットの器にしてもいいのね?
マギルゥ:却下じゃ。儂はビエンフー一匹で手一杯じゃし
ベルベット:ビエンフーを喰らえば空きができるでしょ
ビエンフー:ビエエ〜ン!?
マギルゥ:空いても無理じゃ。おぬしらも見たじゃろ?
マギルゥ:坊は、あのとんでもないカノヌシ相手に、一瞬なりとも対校しおった
マギルゥ:儂なんぞでは、とてもとても受け止めきれぬわ
アイゼン:結界の時といい、地脈を開いたことといい、ライフィセットには、秘めた力があるようだな
ベルベット:けど、あの女対魔士は器になれた
ビエンフー:エレノア様は、マギルゥ姐さんより頑張り屋さんでフから……
マギルゥ:では、なおさら探し出して倒さねばのう。みすみす強力な敵を増やすことになる
ベルベット:見つけるわよ。絶対
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベルベット、カノヌシのことだけど、これ……
ベルベット:離宮からもってきた本?
ライフィセット:うん。でね、この表紙の紋章って……
ベルベット:神殿にあったのと同じ!これ、カノヌシのことが書いてあるの!?
ライフィセット:うん。古代語だから読めないけど……
マギルゥ:しょげるな、坊よ。グリモワールという儂の知人なら解読できるやもしれん
ライフィセット:ほんとう?
マギルゥ:……かどうかは、聞いてみねばわからんがな
ベルベット:どこにいるの?その知り合いって
マギルゥ:さてのう。最後の便りは、サウスガンド領のイズルトからじゃったが
ベルベット:……当てにならなそうな当てね
マギルゥ:そこをあがいてみせるのが、お主の仕事じゃよ〜
ベルベット:ふん。ご期待通りにやってみせるわよ
マギルゥ:せいぜい折れんようにのう
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:起きたな。具合はどうだ?
エレノア:問題ありません
ライフィセット:あの……もうあんなことしないでね。痛いのは怖い……でしょ?
エレノア:……大丈夫。私は、もう逃げません
ライフィセット:僕はライフィセット。よろしくね、エレノア
エレノア:え……ええ、こちらこそ
ベルベット:逃げようとしたら、あんたの手足を喰って動けなくするわよ
ベルベット:生きてさえいれば、器の役割は果たせるんだから
エレノア:……その必要はありません。私は、あなたとの決闘の前に「誓約」をかけました
エレノア:「負けた場合、相手に従う」という枷によって自身の力を引きあげる術です
エレノア:一度発動した誓約は自分でも解除できない。私は、あなたとの約束を守らざるを得ないのです
ベルベット:ふぅん、誓約……ね
ベルベット:なら、さっそく質問に答えてもらうわよ。聖寮は、カノヌシを使ってなにをする気なの?
エレノア:……もちろん業魔を消し去ることです。開門の日から続く大災厄の時代を終わらせるために
アイゼン:具体的に、どうやって業魔を消す?例えばカノヌシが業魔を皆殺しにするとでもいうのか
エレノア:そこまでは……知らされていません
エレノア:カノヌシの祭祀は聖寮でも機密事項で、メルキオル様が取り仕切っていることくらいしか……
ベルベット:やっぱり、カノヌシの正体を知るにはライフィセットの古文書を解読するしかなさそうね
ベルベット:古代語を読めるっていうマギルゥの知り合いにあたってみるか
マギルゥ:サウスガンド領のイズルトに行けば、そやつの手がかりがあるはずじゃよ
アイゼン:その前に、ここがどこか調べんとな。まずは人か集落を探すんだ
ロクロウ:ははは、わからんことだらけでなんとも頼りないなぁ
ライフィセット:それでも、知ろうとしないと。ずっとわからないままだよ
ロクロウ:応!こりゃ一本取られた
エレノア:こんな聖隷もいるのね……
ベルベット:エレノア、あんたの役目はライフィセットの護衛よ
ベルベット:相手が対魔士でも守り抜きなさい。逆らえば……
エレノア:わかっています!逆らえないと言ったでしょう
ベルベット:いい、ライフィセット。エレノアが妙な行動をとろうとしたら、すぐにとめるのよ
ライフィセット:でも、エレノアは悪い人じゃないと思う。それに誓約で約束は守るって……
ベルベット:誓約なんて嘘に決まってる。あれは命を賭けて使うようなものよ
マギルゥ:じゃ。複雑な儀式と試練を経て、やっと完成するめんどくさい術じゃよ
ベルベット:言ったでしょ。あいつの目的は、あんたを連れ去ることなの。女を見かけで判断しちゃダメよ
ライフィセット:う、うん……
マギルゥ:そうじゃぞ……というか、そもそも悪者はベルベットの方じゃけどな
ベルベット:……否定はしないわよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:この石って……
ベルベット:石なんか拾って
ライフィセット:これ、珍しい気がする。キラキラしてるのは煌鋼かも
ベルベット:キラハガネ……虫?
ロクロウ:剣や武器の素材になる金属だ。限られた地方でしか採れない希少金属(レアメタル)だな
アイゼン:キラハガネの産出地なら、ここはエンドガンド領かアイルガンド領か
アイゼン:どちらにしろミッドガンド領から相当離れた辺境だ。聖寮も、大した人員を配備していないだろう
マギルゥ:さすが海賊。金目のものと警備には詳しいのー
ベルベット:追い立てられる危険は低いってことね。ひとつお手柄よ、ライフィセット
ライフィセット:うん!
ベルベット:でも、手は洗いなさい
ライフィセット:うん……
エレノア:…………
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ライフィセット、さっきは悪かったな
ライフィセット:僕……ロクロウがやられると思って……
ロクロウ:わかってる。あれは、お前の「意志」だったんだよな
ライフィセット:……だと思う
ロクロウ:ならいい。俺も「手を出すな」とは、はっきり言わなかったからな
ロクロウ:次にああいうことがあったら、必ず言う
ライフィセット:助けちゃ、いけないの?死ぬかもしれないのに……
ロクロウ:そうだ
ライフィセット:……どうして?
ロクロウ:俺にもよくわからん
ライフィセット:えっ?
ロクロウ:俺には、どうしても斬りたい奴がいる
ロクロウ:そいつを斬りたい、そいつに勝ちたい。そのために剣の腕を上げなきゃならん
ライフィセット:勝ちたい人……
ロクロウ:剣の勝負でな。あいつに勝つためなら、なんだってする
ロクロウ:どれだけ血を流そうが、命を落とそうが、人の心をなくそうが……
ロクロウ:そう思い続けているうちに、本当に人間じゃなくなっちまった
ライフィセット:……なんで、そんなに勝ちたいの?
ロクロウ:はは、それもわからん
ロクロウ:業魔だからそうなのか、そんなだから業魔になっちまったのか……
ロクロウ:とにかく、命より大事なことなんだ
ライフィセット:命……よりも……
ロクロウ:けど、助けてくれたことは恩にきるよ。死んじまったら、あいつを斬れないからなぁ
ライフィセット:う、うん……
エレノア:今のが命の恩人にかける言葉ですか!
ロクロウ:なにがだ?俺はホントのことしか言ってないぞ
ロクロウ:それに、なぜおまえが怒る?
エレノア:おかしいとすら思わないとは……やはり業魔ですね
ロクロウ:ああ、業魔だ
エレノア:…………
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:むむう〜、聞いた覚えがあるんじゃがのう……
ライフィセット:……エレノア。さっきは、助けてくれてありがとう
エレノア:私は……命令通り、あなたを守っただけです
ライフィセット:命令通り……
エレノア:もちろん、命令されなくても誰かが業魔に襲われていたら助けますけど
ベルベット:おきれいなことね
マギルゥ:思い出した!
ベルベット:な、なにをよ?
マギルゥ:世にも悲しい征嵐の由来をじゃよ。さ〜てお立会い!
マギルゥ:それは、いつ、誰が打ったのか、知る者はおらぬ。じゃが、誰もがその斬れ味を認める太刀があった
マギルゥ:その刃風は猛獣の如く號び声をあげ、山をを吹き飛ばす嵐を呼んだ
マギルゥ:この世にふたつとないその太刀を、人は神の刀──神刀と讃えた
エレノア:神の刀……それが征嵐ですか?
マギルゥ:話はここからじゃ。さような神刀に魅せられた男がおった
マギルゥ:名はクロガネ。希代の才をもつ刀鍛冶じゃ。そやつは、心血を注いで神刀を超える刀を打とうとし
マギルゥ:自らの刀に「征嵐」の名を与えたという……「號ぶ嵐を征する」という意味じゃな
ライフィセット:すごい刀はできたの……?
マギルゥ:いいや。クロガネは何十度も神刀に挑んだが、その数だけ征嵐は折られ、砕け散った
マギルゥ:絶望したクロガネは、神刀の持ち主に首をはねられたとも、自ら命を絶ったとも言われておる
マギルゥ:もう何百年も昔の話じゃ。じゃが、奴の神刀への恨みは征嵐と共に今も生き続けているとかいないとか……
ベルベット:何百年も続く恨み……か
エレノア:よくある怪談話ですね。さっきの刀も、何者かが銘をマネただけかもしれません
マギルゥ:かもの。じゃが、もしあれが本物の征嵐なら、儂らは枕を高くして眠れんぞ
ライフィセット:なんで?
ロクロウ:クロガネが倒したかった神刀こそ、俺の生まれたランゲツ家に代々伝わる太刀──
ロクロウ:號嵐だからな
ライフィセット:…………
アイゼン:野郎が、また襲ってくる可能性があるわけだな。急ぐぞ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベルベット、ロクロウを追わないの?
ベルベット:……あいつの戦いよ。あたしには関係ない
アイゼン:だが、船着き場にはシグレが陣取っている
アイゼン:イカれた野郎だが、俺たちを見逃すようなマヌケとは思えん
エレノア:その通りです。シグレ様は、剣技ならアルトリウス様をも凌ぐ最強の剣士ですから
マギルゥ:ネコににらまれた袋のネズミじゃなー
ライフィセット:クロガネは、なにか考えがあるみたいだった
ベルベット:……わかった。それを聞いてみましょう
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:どういうつもりなの、エレノア?特等対魔士に斬りかかるなんて
エレノア:あれは……
ライフィセット:…………
エレノア:……ああしなければ、ロクロウが殺されると思ったからです
ベルベット:業魔のために、仲間を殺るつもりだった?
エレノア:お、思わず体が動いてしまったのです。自分でもお人好しすぎると思います……
ベルベット:お人好しというよりバカね
ベルベット:あんたはライフィセットの護衛。余計なことはしなくていい
エレノア:仲間の命が危なくてもですか!?
ベルベット:そうよ
エレノア:(よほど大事なのねこの子が)
エレノア:……わかりました
ベルベット:ライフィセット、次はちゃんととめなさい。こいつは、なにするかわからないんだから
ライフィセット:う、うん……
ライフィセット:……ありがとう、エレノア。僕のしたことナイショにしてくれて
ライフィセット:あと、操っちゃってごめん……
エレノア:仲間を大切に思う気持ちはわかります。あの業魔たちがおかしいんです
ライフィセット:でも、ベルベットだって大事に思ってると思う。……弟のことは……
エレノア:それが、あなたが一緒にいる理由?
ライフィセット:それは……わからないけど……
エレノア:(この子を確保するには知る必要があるわね。この一行の事情を……)
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:大変でフ〜!船着き場にいた一等対魔士たちが、こっちに向かってくるでフ〜!
ビエンフー:裏切り者エレノアを粛清するって言ってるでフよ〜
エレノア:粛清……
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:迎え撃つわよ。エレノア、あんたにも戦ってもらう
エレノア:命令……なのですね
ベルベット:そうよ。ライフィセットを護って、対魔士を倒しなさい
エレノア:……わかりました
アイゼン:忘れるなよ。エレノアが壊れたらライフィセットが業魔化するぞ
ベルベット:わかってる。けど、足手まといを連れていく余裕はないわ
ベルベット:あいつの思惑を利用して、こっちの戦力にする
アイゼン:……限界を見誤るなよ
マギルゥ:やれやれ、真面目な対魔士じゃったろうに。お主に絡んだのが運の尽きじゃな
ベルベット:なんとでも言いなさい
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:今のがエレノアの限界ってことか
アイゼン:そのようだ。あれ以上追い詰めれば、心が壊れる
ベルベット:ふん。おキレイね、対魔士様は
アイゼン:だからこそライフィセットの器になれる
アイゼン:それに、屈辱に耐えてまで使命を果たそうとする意気はキライじゃない
ベルベット:へぇ、案外優しいんだ
アイゼン:優しい奴は、そんな人間を利用したりしない
ベルベット:……わかってるわよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ロクロウ、「影打ち」ってなんなの?
ロクロウ:刀鍛冶は、刀を打つ時には一本じゃなくて、何本か同時に打つものなんだ
ロクロウ:そのうちのもっと出来のいいものを「真打ち」、それ以外のものを「影打ち」と呼ぶんだ
ライフィセット:真打ちと影打ち……
ロクロウ:俺の一族では当主となった者に號嵐の真打ちが渡され、それ以外の兄弟の影打ちが渡されるんだ
ライフィセット:真打ちが本物で、影打ちは偽物ってこと?
ロクロウ:……そうだな。シグレの剣が本物で、俺の剣が偽物という意味なのかもな
ライフィセット:そんなつもりじゃ……
ロクロウ:いや、いいことに気付かされてくれた。だから俺は、あいつに勝ちたいのかもしれん
ライフィセット:…………
マギルゥ:ベルベットにとっては、どのライフィセットが真打ちなのかのー?
ライフィセット:!!
エレノア:どういうことです?
ライフィセット:僕の名前は……ベルベットの弟の名前なんだ
エレノア:えっ!?
マギルゥ:アルトリウスに生贄にされた弟の……のう
エレノア:なにかの間違いです!あの方が、そんなことをするはずありません!
ライフィセット:……でも、ならどうしてベルベットはあんなにアルトリウスを憎んでいるの?
エレノア:そ、それは……
マギルゥ:お主の真実とベルベットの真実。これも、どっちが影打ちで、どっちが真打ちなんじゃろうなぁ〜?
エレノア:…………
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:死ぬかもしれないってのに、肝の据わった連中だな
ベルベット:死ぬ?壊賊病って死病なの?
マギルゥ:うむ、原因不明の高熱を発し、最後には砂のごとく崩れて死ぬという奇病じゃ
ライフィセット:人が砂に!?
マギルゥ:かつて四海を制した大海賊団の船で流行し、一味が全滅したことから「壊賊病」と呼ばれるようになったとか
エレノア:そんな病に、私たちも感染した……?
ロクロウ:人間はな
マギルゥ:壊賊病に罹るのは人間だけなんじゃよ
ライフィセット:じゃあ……マギルゥもでしょ?
マギルゥ:うぅ……そうじゃった……儂の人生もここまでのようじゃあ〜……
ベルベット:器に死なれちゃ困るわ。発症したら、すぐに言いなさい
エレノア:……ええ
ロクロウ:さて、俺たちは助っ人に行くぞ。エレノア以外は、みんな働けよ
エレノア:えっ……
マギルゥ:エレノア以外とはひどいではないか!儂だって感染しとるかもしれんのにー
ベルベット:あんたは魔女でしょ。黙って働きなさい
マギルゥ:やれやれ……これも「死神の呪い」か。魔女にまで迷惑かけるとは、けしからんのー
エレノア:死神の呪い?
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さて、薬屋はどこだ?たしか、壊賊病には特効薬があるんだよな
アイゼン:「サレトーマ」という野草の花だ。その絞り汁を飲めば、壊賊病は治る
ロクロウ:今回は大事にならずに済みそうだな
ベルベット:安心するのは薬草を手に入れてからよ
アイゼン:ああ。行くぞ
エレノア:待ってください。感染している者が街に出たら壊賊病が広まってしまいます
マギルゥ:案ずるには及ばん。不思議なことに、壊賊病は海の上でしかうつらんのじゃ
マギルゥ:空気中の塩分濃度が関係しとるとも、海水に潜む微生物のせいとも言われている
アイゼン:真相はわからんが、陸で壊賊病が広まった例はない
エレノア:……そうですか。本当に奇病ですね
アイゼン:すぐに戻る。お前たちは船で待ってろ
ベンウィック:お願いします、副長!
アイゼン:急ぐぞ
エレノア:でも、サレトーマ……あれを……飲まないといけないのか……
ライフィセット:エレノア?
エレノア:いえ、高熱の病気によく効く薬草なのですが……
エレノア:この世の物とは思えないほど不味いの。「業魔も泣く」っていうくらい
ライフィセット:でも楽だから……死ぬよりイヤ?
エレノア:あ……泣き言ではありませんよ。子どもの頃のことを思い出しただけです
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:あの、ライフィセット、死神の呪いってなんなのですか?
ライフィセット:……アイゼンは自分の周りの人たちを不幸にする力をもってるんだって
エレノア:それは……聖隷の特殊な力ですか?
マギルゥ:ただの不幸ではないぞ
マギルゥ:海門要塞では、突然業魔病が大発生したし、海賊団にも、多くの死者が出ておる
エレノア:そんな話……にわかには信じられません
ビエンフー:死神の呪いは本物でフー!!
ビエンフー:ボクがエレノア様から引きはがされ、マギルゥ姐さんにフん捕まったのも呪いのせいでフー!
エレノア:そう……なの?
ビエンフー:エレノア様の涙が渇くよう、頬をフーフーした日々が、恋しいでフー
エレノア:えっ!?ちょっと……!
ビエンフー:ここでエレノア様にフタタビ会えたのもフシギなご縁。あらためえエレノア様のもmとへ……
マギルゥ:好きにするがよい
ビエンフー:いいんでフか!?
マギルゥ:とめはせぬ。乙女の秘密をペラペラしゃべる聖隷が欲しいならのー
エレノア:結構です!私にはライフィセットという守るべき聖隷がいますから
ビエンフー:そんなぁ〜!今はライフィセットに、涙をフーフーしてもらってるのでフーか〜?
エレノア:してもらってませんってば!もう、あなたなんて知りません!
ビエンフー:ビエ〜〜ン……!
エレノア:ふぅ……
エレノア:なんですか?
ベルベット:ライフィセットには、そういうことさせないでよ
エレノア:させません!というか、以前もそのようなことは……!
エレノア:ああ、もう〜!
マギルゥ:これも死神の呪いかの……
アイゼン:…………
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:…………
マギルゥ:やはり裏か。死神の呪いも律儀に作用するのー
エレノア:呪いとは……金貨の裏表にまで関わるのですか?
アイゼン:まあな
マギルゥ:聖隷の力は、モノに影響を及ぼしたり、モノが持つ波長と同調することがあるんじゃよ
エレノア:あなたの場合は、その金貨だと?
アイゼン:ああ。だから必ず裏が出る
エレノア:こんなことが……
アイゼン:信じる信じないは、お前の自由だ
マギルゥ:付け加えるなら、その金貨はアイゼンの器じゃよ
エレノア:……ライフィセットが羅針盤を持っているのも、その、波長のせいなのですか?
アイゼン:そうとも言えるが、あの羅針盤はあいつが男である証のようなものだ
エレノア:証?
ライフィセット:錆びないように、よく磨いておかないと
エレノア:よくわかりませんが……
マギルゥ:やれやれ、一等対魔士のクセにな〜んも知らんのじゃのうー
エレノア:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:サレトーマって、どんな花が咲くのかな?
マギルゥ:むらさき色の花に、赤茶色の茎や葉っぱというなんともシュミの悪い花じゃ
ライフィセット:サレトーマはシュミが悪い……わかった
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ザビーダの使っていた道具……あれ、なんだったんだろう
エレノア:元はアイフリードの持ち物のようでしたね
マギルゥ:あんな道具も聖隷術も見たことがないわ
マギルゥ:別の大陸から、アイフリードが持ち帰ったものかもしれんのう
ライフィセット:別大陸の技術……アイゼンは大丈夫かな?
エレノア:あの聖隷、なかなかの手練れと見ました。無暗に事を構えない方がよさそうですが……
ロクロウ:そもそもザビーダの奴、御座の時といい、今回といい、なにが目的なんだ?
エレノア:デートなんてウソぶいていましたけど、相手はアゴヒゲのカワイコちゃんって?
ライフィセット:アイフリードと同じ……
ライフィセット:ベンウィックが言ってたんだ。アイフリードは「アゴヒゲの人」だって
ベルベット:……そうか
ロクロウ:樹林で聞いた「手配聖隷」ってのは、ザビーダだな。聖寮は奴を捜している
ベルベット:ザビーダはそのことに気付いてる
ベルベット:その上で、アイフリードの存在を匂わせてアイゼンが追ってくるように仕向けた
ロクロウ:アイゼンも、それを読んだうえで追った。……ただじゃすまないかもな、こいつは
ライフィセット:アイゼンが危ない?
ベルベット:……だとしても、壊賊病を手当てしないと、どうにもならない。とにかく船へ急ぐわよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
エレノア:どうしたのですか、ライフィセット
ライフィセット:うん……アイゼンもザビーダも、どうして一緒にアイフリードを捜せないのかなって
マギルゥ:いい年こいた独身男はメンツだのなんだのが多くて面倒な生き物なんじゃよ〜
ライフィセット:そうなのかな……?
ロクロウ:確かに否定しづらいな
エレノア:女だって……いえ、皆同じかもしれません
エレノア:人は、抱えている思いをわかり合わなければ、誰かと一緒には歩けない
ライフィセット:もし、わかり合えなかったら……
エレノア:それは……
ロクロウ:ザビーダの言う通り、拳で語り合うんだろうさ
ライフィセット:難しいな……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:わからない
ライフィセット:……なにが?
エレノア:死神の呪いを受け入れたアイゼンと、呪いを知って船に誘ったアイフリードがです
エレノア:結局、なにも解決しない。「理」にあわないわ
ライフィセット:僕に「死神の呪い」があったら、ベルベットやエレノアが死んじゃうかもしれないんだよね?
エレノア:……そういうことでしょうね
ライフィセット:だとしたら……一緒にいたくてもいちゃいけないって思うと思う
ライフィセット:それで……自分がすごく嫌になると思う
エレノア:……アイゼンも?
エレノア:けれど、アイフリードが受け入れてくれた。呪いの力を乗り越えて……
ライフィセット:僕も、よくわからないけど
エレノア:ひとつわかった気がします。アイフリードは、きっと強い人なのですね
エレノア:もちろん、違法で無法な海賊ですけど
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:警備もおらぬとは罠まる出しじゃな
ベルベット:こっちが罠を警戒するのは織り込み済みなんでしょ。その上でどんな手を打ってくるか……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:また考え事してるのか、ライフィセット
ライフィセット:うん……ジークフリートは別大陸から来たものみたいだけど、ロクロウは知ってる?
ロクロウ:いや、俺はもっぱら剣ばっかりでな。あの手の道具には疎いんだ
ライフィセット:……そっか。でも、すごい道具だったね
マギルゥ:ザビーダの使い方からの推測じゃが、あれは「力を増幅させる道具」じゃな
ライフィセット:力を増幅……確かに自分に撃った時、強くなったね
マギルゥ:瀕死のレジェンドワイバーンも逃げる力を得た
ロクロウ:だが、メルキオルの幻術は弾け飛んだぞ?
マギルゥ:あれも増幅じゃ。術の源である聖隷の力を限界以上に膨らませて……バン!
ベルベット:さじ加減ひとつで、毒にも薬にもなるってことか。扱いの難しい道具ね
マギルゥ:問題は、アレを使って何を企んどるかじゃが……ま、どーでもいいがのー
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アイフリードのことは残念だったけど……海賊団のみんな、元気になってよかった
アイゼン:サレトーマは二度と飲みたくないと言ってたがな
ライフィセット:あははは
ベルベット:エレノアは?
ライフィセット:エレノアも飲んだ後、ずっと不味い〜って顔してたよ
ベルベット:顔じゃなくて体の方
ライフィセット:あ……うん、元気みたい
ベルベット:ならいい
ライフィセット:エレノアが心配なんだね
ベルベット:そんなんじゃない
マギルゥ:坊、覚えておけ。年頃の乙女は、自分の気持ちを素直に出せぬものなのじゃ
ライフィセット:ベルベットは年頃の乙女ってこと?
ベルベット:マギルゥ、ライフィセットに妙なこと吹き込まないで!
マギルゥ:ふひひ、坊のことには素直じゃの〜♪
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:じゃあ、解読を始めるわ……
ロクロウ:姐さんが集中できるように、俺たちは外で待とう
ライフィセット:あの……僕、残ってもいいかな
ライフィセット:古代語、勉強したいんだ。静かにするし、グリモ先生のジャマはしないから
グリモワール:……坊やm今なんて言った?
ライフィセット:えっと……静かにするし──
グリモワールじゃなくて、あたしをなんて呼んだ?
ライフィセット:グリモ先生……「姐さん」はいらないって言ってたから
グリモワール:それ、気に入ったわ。あんたに古代アヴァロスト語、教えてあげる
ライフィセット:ありがとうございます、グリモ先生!
ベルベット:……話はついたみたいね。なにかあったら声をかけて
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:エレノア、どういうつもりなの?
エレノア:母娘の件は、私が個人的に捜します
ベルベット:それはいい
エレノア:では、なんのことですか?
ベルベット:あたしが聖寮の計画をつぶそうとしてるのに、なぜ積極的に古文書の解読を手伝うの?
エレノア:……私が故意に誤った方向へ誘導し、罠にかけようとしている……と?
ベルベット:そうなの?
エレノア:そんな罠でどうにかできるほど愚かな相手とは思っていません
ベルベット:…………
エレノア:私は、アルトリウス様がなされようとしていることを……
エレノア:今、この世界で起こっている真実を知りたいのです
エレノア:悔しいけど、私は真実を教えてもらえるほど信頼を得ていませんでした
エレノア:だったら、自分で見つけ出すしかない
ベルベット:自己分析はできてるのね
エレノア:聖寮が表の道なら、あなたたちは裏の道。表裏は違っても辿り着く先は同じはずです
ベルベット:だから、あたしたちにウソをつく必要はないって?
エレノア:はい
ベルベット:……真実が、あんたの信じていることと違ったらどうするつもり?
エレノア:今は……わかりません
ベルベット:はっきり言うのね。けど、もうしばらくは協力できそうね
エレノア:ええ。今は
ロクロウ:俺も、お前に訊きたいんだが
ベルベット:なに?
ロクロウ:喰魔についてだ
ロクロウ:お前、前に自分のこと喰魔だって言ってたよな?なにか知ってるんじゃないのか
ベルベット:……知らない。アルトリウスがそう言ってただけだから
ロクロウ:気にならないのか?
ベルベット:あんたは気になるの?
ロクロウ:いや、全然。お前が気にしてないならそれでいい
ベルベット:妙な奴ばかりね
ベルベット:けど、シアリーズがあたしを選んだ理由はおそらく……
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:かぞえ歌の二段目……覚えてる?
ライフィセット:四つの聖主に裂かれても御稜威に通じる人あらば不磨の喰魔は生えかわる 緋色の月の満ちるを望み
グリモワール:そう。それについて話しとかなきゃと思って、集まってもらったわけ……
ベルベット:「選ばれし者によってカノヌシと喰魔が甦る」って、解釈したわよね
グリモワール:どうにも「生えかわる」が引っかかるのよね……で、少し考え方を変えてみた……
グリモワール:カノヌシに選ばれた誰かが喰魔をつくるのではなく、カノヌシが喰魔になる誰かを選ぶ……としたら?
エレノア:…………?
グリモワール:「御稜威に通じる人あらば不磨の喰魔は生えかわる」……ここはどう読める?
ベルベット:……カノヌシの力に適合した人間が喰魔に生まれ変わる
エレノア:モアナ……!
ロクロウ:聖寮は人間を喰魔につくり変える方法を得て、実践してるってわけか
エレノア:そんな……
ベルベット:驚くこと?「個よりも全」──それがアルトリウスのやり方でしょ
ベルベット:(アルトリウスの……)
グリモワール:しかも「生え変わる」ではなく、あえて「生えかわる」と書かれている
グリモワール:「生え変わる」と「生え替わる」の二つの意味が込められていると読み解けるのよ……
ベルベット:……喰魔は生まれ替わる。それなら「不磨」……不滅という意味が通じる
マギルゥ:どうやら、全よりも「子」を優先してモアナを殺さなくて正解じゃったようじゃの
ベルベット:……「殺さない」じゃな。カノヌシの覚醒を阻止するためには──
ベルベット:──喰魔は「殺せない」
ライフィセット:ええっと……
アイゼン:殺したら、別の適合者が喰魔に生れ替わるということだろう
ベルベット:けど、穢れを喰らう口は七つ──喰魔の数は決まっているらしい
ライフィセット:殺さなければ、次は生まれない
アイゼン:そうだ。つまり俺たちは、七体の喰魔を地脈点から引きはがした上で
アイゼン:聖寮に奪還も殺害もされないよう、守らねばならん
マギルゥ:難易度高すぎじゃろー
ライフィセット:僕の虫も守らないと
ロクロウ:ああ。ますます大事に扱えよ
ライフィセット:うん。ますます
ロクロウ:しかし、こうなってくるとアジトが欲しいな。アイゼン、秘密基地とかないのか?
アイゼン:男のロマンだが……ない
ベルベット:人知れない場所で、かつ安定した「食事」を供給できる「穢れ」に満ちた場所
マギルゥ:人気がないのに、穢れに満ちた場所か。難儀なトンチ問題じゃのー
エレノア:聖寮が管理するこの大陸に、そんな都合のいい場所なんて……
ベルベット:こうしている間にもカノヌシは覚醒し続けてる。アジトを捜しながら、残りの喰魔を集めるしかないわ
ベルベット:まずはローグレスよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ローグレス……初めて行った時は入るの大変だったな
ロクロウ:大変というか面白かっただろ
マギルゥ:おお、ベルベットのポッポ〜♪じゃな
ライフィセット:からかうとベルベットが怒るよ
マギルゥ:いい子ぶってからに〜。実は、坊も面白いと思ったじゃろう?
マギルゥ:気持ちをはっきり言わん子は悪い子じゃぞ?
ライフィセット:……ちょ、ちょっとだけ……
マギルゥ:ハトマネで!
ライフィセット:面白かったポッポ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……やっぱり、王都は大きくてすごいな
エレノア:歴史的な建造物や工芸品もあるし、好奇心の強いあなたには面白い街でしょうね
ライフィセット:うん
ベルベット:ライフィセット、よそ見してはぐれないでよ
ライフィセット:あ……ごめん……
エレノア:大丈夫。しっかりしてますよ、この子は
ベルベット:……それはわかってるわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:エレノア、あんたは外で待ってて
ベルベット:対魔士が一緒にいることは「血翅蝶」のボスも知ってる。でも──
エレノア:……わかりました。聖寮に顔を見られたくない客もいるでしょう
ベルベット:ライフィセット、あんたはエレノアについてなさい
ライフィセット:うん
ベルベット:すぐに戻るから
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:なかなかの食わせモノじゃな、あの王子サマは
エレノア:パーシバル殿下は、穏やかで公正無私。智と徳を併せもったと評判の御方です
エレノア:あの方がいれば、次代のミッドガンドも安泰だと皆が──
ベルベット:とぼけてたけど、あの香りは、最初からこっちに気付かせるためにつけてたのよ
ベルベット:自分の地位を明らかにして利用価値があると知らせるためにね
エレノア:……私は乗せられたのですね
ロクロウ:監獄島への誘導も罠か?
アイゼン:その可能性は捨てないでおくべきだな
ベルベット:いざとなれば、王子を人質にする
マギルゥ:その王子の命を狙ってる者が相手なら盾にはならんがのー
ロクロウ:ま、気を抜くなってことだな
ライフィセット:王子様……もう戻れないって言ってた
エレノア:戻れない……?
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さて、俺たちは次の喰魔を捜そうぜ!
ロクロウ:……と、いきたいところだが、手がかりがないな
マギルゥ:エレノアが聖寮から喰魔の情報を盗んでくる、というのはどうじゃ?
エレノア:それは……
アイゼン:無駄だ。裏切り者に機密を漏らすほど聖寮はマヌケじゃない
ベルベット:そうね。ライフィセットを危険に巻き込むわけにもいかないし
ベルベット:というか、エレノアにスパイなんて無理でしょ
エレノア:……否定はしませんが
ライフィセット:昨日行った一番地下の特別監房
ライフィセット:行ってみよう。試してみたいことがあるんだ
ベルベット:……わかったわ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:さあて、目的はここと似た大きさの地脈点
ベルベット:タイタニアから近い順に調べるわよ。方角はどっち?
ライフィセット:近い順……それなら西の方角にひとつあるよ
ベルベット:わかった。しっかり案内頼むわよ
ライフィセット:うん!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ここ!ここが地脈点だよ!
マギルゥ:……見渡す限りの大海原じゃな。地脈点は海の底かえ?
ライフィセット:あう……
アイゼン:世界の大半は海だ。海底にある地脈点も多い
エレノア:いくら聖寮でも、海底に喰魔を捕まえておくのは難しいですね
ベルベット:ここはハズレみたいね
ライフィセット:……ごめん
ロクロウ:いや、虫喰魔がいたんだ。魚の喰魔ってこともあるんじゃないか?
アイゼン:……一理あるな。奥の手を使って調べてみるか?
ベルベット:奥の手?
アイゼン:これだ
ライフィセット:ええっ!?
アイゼン:なんだ、その反応は?これは「フジバヤシの船竿」だぞ
アイゼン:長さ九尺三寸の一本竿。材は五年物の伊賀栗竹。生き物の如く粘る四分六の胴調子に
アイゼン:腕と一体化するような握りの巻き具合。そして蝋色漆の品格ある仕上げ……
アイゼン:文句のつけようのない名竿だ
エレノア:そ、そういうことではなく、喰魔相手に、なぜ釣りなのかと──
アイゼン:喰魔だからこそだ。……忘れるなよ
エレノア:……はい?
ベルベット:ちょっと、釣りなんてしてる場合じゃ……
ロクロウ:まあ、やってみようぜ。丁度腹も減ったし、魚が釣れたらメシにしよう
マギルゥ:儂は、コイかヒメマスが食べたいの〜♪
ベルベット:……つっこまないわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:針の付け方……こうだっけ?
ロクロウ:ははは。なんだ釣りは苦手か?
ベルベット:久しぶりでド忘れしただけよ。昔は、弟と時々行ってたんだから
ライフィセット:僕、釣りなんて初めてだ
ベルベット:なら、あたしと一緒に──
エレノア:じゃあ、私が教えてあげますよ
ライフィセット:エレノアは、釣りできるんだ
エレノア:ええ。子供の頃、同じ村のデネブおじさんが教えてくれたんです
エレノア:トリエットドジョウを百匹釣ったこともあります
ライフィセット:百匹!すごい!
ロクロウ:仲がいいな。器とかじゃなくて姉弟みたいだ
マギルゥ:エレノアは面倒見がいいからのう。大事な坊をとられてしまうやもしれんぞ?
ベルベット:……ライフィセット
エレノア:まず仕掛けをつくりましょう。針に糸をこう結んで……
ライフィセット:難しそうだな
ベルベット:ちょっと……
エレノア:覚えてしまえば、目をつぶってもできるようになりますよ
ライフィセット:わかった。やってみる
ベルベット:ラフィ!!
ライフィセット:え、僕……?
ベルベット:あ……っと……その……
ベルベット:気を付けなさいよ。海に落ちないように
ライフィセット:……そんなに子どもじゃないよ
ベルベット:ラフィは落ちたのよ。昔
ライフィセット:ラフィって……ベルベットの弟のこと?
ベルベット:そ、そうよ。さっきのは、うっかり間違っただけ
ライフィセット:うっかり……
ライフィセット:用はそれだけ?
ベルベット:……それだけよ
ライフィセット:じゃあ、僕はエレノアと釣るから
マギルゥ:やれやれ……キモノを重ねるようにイキモノは重ねられぬぞ?
ベルベット:誰が……
ベンウィック:あ!ベルベット、そんな軽い仕掛けじゃダメだよ。ちょっと貸してくれ
ベルベット:え?なんなの、もう……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:!!
ライフィセット:エレノア、引いてる!
エレノア:焦らないで。釣りは力じゃなくてタイミングです
ライフィセット:う、うん……!
アイゼン:来るぞ。準備はいいな?
ロクロウ:応!空中で刺身にしてやるぜ
ベルベット:喰魔だったら殺しちゃだめよ!
エレノア:今です!
ライフィセット:ええーいっ!
ベルベット:魚でも喰魔でもなかったわね
ロクロウ:腹の足しにはならんなぁ
ライフィセット:…………
エレノア:でも、ライフィセットに似合いそうですよ。着けてみたら?
マギルゥ:名案じゃ。坊だけの個性が出るかもしれんぞ
ライフィセット:僕だけの個性……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:むむう……釣れんなぁ……
アイゼン:愚痴るな。思い通りにいかないのが釣りと人生だ
ロクロウ:つれないなぁ
エレノア:あっ、私の方にきました!
エレノア:ええいっ!
マギルゥ:ぬぅぅ、儂もなんか来とぉぉぉぉる!
マギルゥ:のあぁ〜〜〜!!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:さ、喰魔をさがしに行きましょ
ライフィセット:うん。次に近そうな地脈点は、ミッドガンド領の真ん中あたりだと思う
ベルベット:ミッドガンド領か……
ベルベット:近くに王都があるけど、グリフォンがいなくなったしどうなってるのかしら?
ロクロウ:行ってみればわかるさ
エレノア:行くのはいいですが、アイゼンがいません
マギルゥ:さっきからおらんのー。ベンウィックに聞いてみい
ベルベット:そうね
ロクロウ:ん……?待った、手紙が落ちてるぞ
ロクロウ:ずいぶんかわいい便せんだな。なになに──
ロクロウ:「拝啓。寒さ厳しい折、いかがお過ごしでしょうか。霊山の雪深さを思い返して、あなたを案じています」
ロクロウ:「私の方は相も変わらずですが、先日とても珍しい品を手に入れたので、あなたに贈り──」
ベルベット:ロクロウ、他人の手紙を読むなんてどうなの?
ロクロウ:だが、落とした人は困るだろうに
エレノア:差出人の名は?
ライフィセット:ええと……「ウフェミュー=ウエクスプ」
ロクロウ:誰だそれ?
ベルベット:この島の誰かでしょ
ベルベット:誰かー!手紙を落とした人いないー?
マギルゥ:そんなお上品な手紙を書くやつがおるように見えるか?
ベルベット:……確かに
エレノア:海賊の誰かかもしれません。船着き場へ行って聞いてみましょう
ベルベット:いいけど……そもそもの目的を忘れないでよ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:今回も返事は……
ホワイトかめにん:ないっす。でも、お元気でしたっすよ
アイゼン:そうか。ならいい
ホワイトかめにん:で、壺のラッピングっすが、新作の「ひまわり柄」はいかがっすか?
アイゼン:ふむ……なかなか可愛いな。それで頼む
ロクロウ:か、可愛い……?
アイゼン:なにか用か?
ベルベット:手紙が落ちてたんだけど、心当たり──
アイゼン:読んだのか……っ!?
ベルベット:あ、あんたのだったの!?
ロクロウ:読んでないぞ
ロクロウ:……ちょっとしか
アイゼン:本当だな?
ライフィセット:う……ううん!!
アイゼン:こいつも一緒に送ってくれ
ホワイトかめにん:まいど!「かめにん急便」が責任と愛情をもってお預かりするっす!
ベルベット:用が済んだなら出発するわよ。行先はミッドガンド領
アイゼン:準備はできている
ライフィセット:誰かへの贈り物かな?手紙までつけて……
ロクロウ:相手は女だな。間違いない
ライフィセット:そうなの……?でも、丁寧でキレイな字だったね
ロクロウ:な。アイゼンのヤツ、意外に達筆でマメなんだなぁ
アイゼン:おい、お前ら
ロクロウ&ライフィセット:あ
(殴る音)
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:喰魔がいる可能性が高まったな。今の情報、確認してみようぜ
ベルベット:ええ、まずはストーンベリィに行ってみる
ライフィセット:アイゼン、僕、なんか失敗した?
アイゼン:いや。血翅蝶にタダで情報をくれてやつ必要はないと思っただけだ
ライフィセット:?
ロクロウ:地脈点のことだよ。俺たちだけが知っている情報だろ
ライフィセット:でも、血翅蝶は味方でしょ?
アイゼン:敵ではないが、味方とはいいきれん
マギルゥ:裏同士というだけじゃ。それも、時と場合によってクルリと変わる
エレノア:こちらが信頼しなければ、相手も信用しないでしょう
アイゼン:初めて会った遣いの者が、俺たちの顔を知っていた。告げてもいない行き先に、先回りしてな
ライフィセット:あっ!
ベルベット:こっちは血翅蝶のことをろくに知らないのに、向こうは全部お見通しってわけね
マギルゥ:儂らを売るのは造作もないと、暗にいうておるわけじゃな
アイゼン:俺たちが聖寮に対抗する「戦力」であるうちは協力できるだろう。だが、切り札は多いほどいい
ベルベット:互いにナイフを突きつけ合っているのを承知で背中を預ける……
ベルベット:それが裏社会の「信用」ってことね
ライフィセット:……厳しいね
ライフィセット:タバサのお店の料理の味は、簡単に信用できるけど
アイゼン:ああ、それは同感だ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ここ!僕が感じてた地脈点だ
エレノア:喰魔もいないし、結界もないようですね
ライフィセット:またハズレかな……
ベルベット:決めつけるのは早いわ
ベルベット:ドラゴンが結界を破ったか、聖寮が制御しきれていない可能性もある
アイゼン:……ありうるな。ドラゴンは最強の業魔だからな
ロクロウ:問題は、ドラゴンが喰魔かどうかだ
ベルベット:そこね。予定通りストーンベリィで情報を得ましょう
マギルゥ:やれやれ、一番の問題は敵がドラゴンというトコじゃろうに……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:なるほどの……あのドラゴンはケンカ屋と因縁のある者のようじゃな
エレノア:因縁って……相手はドラゴンですよ?
マギルゥ:だからじゃよ
ライフィセット:だから……?
アイゼン:ドラゴンは、穢れに冒された聖隷のなれの果てだ
ライフィセット:じゃあ、さっきのドラゴンは……ザビーダの知り合いだった聖隷!?
エレノア:……以前、願掛けをしていた相手
アイゼン:おそらくな
ロクロウ:聖隷も人間のように穢れを発するっていうのか?
アイゼン:いや、聖隷が穢れを発することはない
アイゼン:だが、穢れを出す人間や業魔に接し続けていれば、やがて冒されてドラゴンになってしまう
マギルゥ:坊は、聖主の御座から地脈に飛ばされた時、調子がおかしくなったんじゃろう?
ライフィセット:なった
マギルゥ:あの空間に穢れが漂っておった。カノヌシへ送られる途中のものがの
ライフィセット:あのままだったら、僕もドラゴンに……
エレノア:器を得ても防げないのですか?
アイゼン:影響は軽減できる
アイゼン:聖寮の対魔士どもは、さらに聖隷の意識を奪うことでドラゴン化を防いでいるようだ
アイゼン:だが、完全なものなどこの世にはない
ベルベット:ドラゴンになった聖隷を元に戻すことは?
マギルゥ:業魔と同じじゃよ。二度とは戻れぬ
エレノア:聖隷だった時の心は……?
アイゼン:……お前にはどう見えた?
エレノア:それは……
ロクロウ:それでも殺せない。ザビーダの流儀の理由か
ベルベット:……あんたやザビーダがドラゴンをどうしようが、興味ないし、好きにすればいいわ
ベルベット:けど、さっきみたいに巻き込まれるのは御免よ。覚えといて
アイゼン:わかった
ベルベット:ならいいわ
ベルベット:さ、喰魔探し続行よ。タイタニアに戻りましょう
ライフィセット:今の話が本当なら……いつかはドラゴンになっちゃうのかな?
ライフィセット:僕やアイゼンも
エレノア:……それは……
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ふぅ……
ベルベット:さすがの死神もドラゴン戦は厳しかったようね。少し休んだ方がいいわ
アイゼン:……全員な。次の出航準備は進めさせておく
ベルベット:頼むわ
ベルベット:ライフィセット、あんたも──
ライフィセット:……僕は平気。それより次こそ喰魔を見つけなきゃ
ライフィセット:地脈点の場所、もう一回調べてくるよ
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:僕が喰魔を探せるかもて言い出したのに、全然ダメで……
ライフィセット:ねえ、アイゼン。聖隷の力を強くする方法ってないの?
アイゼン:……お前には教えてもいいだろう
アイゼン:今、大半の聖隷は意識を封じられて対魔士に使役される道具と化している
アイゼン:だが聖隷は本来、人の「祈り」を受けて人や自然に「加護」をもたらす存在だった
ライフィセット:聖隷は、人間に祈ってもらうとすごい力が出る……ってこと?
アイゼン:そうだ。まあ、中には加護が反転して不幸を与えてしまう、俺のようなひねくれ者もいるがな
ライフィセット:そうなんだ
ライフィセット:でも、僕に祈ってくれる人なんて……
ベルベット:ハズレだったけど、無駄じゃないわよ
ベルベット:対シグレ用の金剛鉄が手に入ったし、ドラゴンとだって戦えることがわかった
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:次はどこに行けばいい、フィー?
ライフィセット:ノースガンド領!ヘラヴィーサの北の方に大きな地脈点があるよ
ベルベット:わかった。アイゼン──
アイゼン:俺はすぐに出発でもかまわんぞ
ベルベット:あたしもよ。港へ行きましょう
アイゼン:祈りとは、崇めるという意味じゃない。聖隷に向けられた純粋な意志や感情のことだ
ライフィセット:うん。僕は、もう祈りをもってるんだね
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:目的地はヘラヴィーサの北……フォルディス遺跡のあたりですね
エレノア:今までの情報と照合すると、喰魔がいる確率は高いと思われます
ライフィセット:今度こそ!
アイゼン:ヘラヴィーサ港から向かうのが最善だな
ロクロウ:前に大騒ぎを起こしたから、街に入るのは難しいかもな
アイゼン:ベンウィック、ヘラヴィーサは今どうなっている?
ベンウィック:前に俺たちの船止めだった商会組合はガタガタだよ。けど、なぜか聖寮の管理も弱まってるみたいだ
ベンウィック:救援物資を運ぶ不定の船があるみたいだから、輸送船のふりをすれば入り込めると思う
ベンウィック:その物資を横流しすれば、新しい船止めも見つかるはずだし
ベルベット:……救援物資か。あきれた自作自演ね
アイゼン:だからこそつけ入る隙もある
ベルベット:そうね。その策でいきましょう
ベンウィック:了解!ソッコーで用意するよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:以前のヘラヴィーサとはかなり状況が変わっているようですね
アイゼン:聞き込みをして現状を知るべきだな
ベルベット:そうね。特に聖寮と北の遺跡……それからメディサって女の情報が欲しい
ロクロウ:北の遺跡は地脈点かもしれないからわかるが、メディサはなんでだ?
ベルベット:勘よ。なんかひっかかる
ロクロウ:ふむ、そういう感覚には従うべきだな。案外、生死の分かれ目だったりするもんだ
マギルゥ:災禍とやらの情報はいいのかえ?
ベルベット:……結構よ。そいつのクセまでもう知ってる
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:業魔化して対魔士に殺された娘ディアナと、そのことで聖寮を恨む母親メディサ
ベルベット:そして、聖寮の収容所といわれる北のフォルディス遺跡……か
ライフィセット:なんか、モアナの時と似てるね
エレノア:お母さんが娘を愛するのは当然ですよね。それが罪になるなんて……
ベルベット:気になるのはメディサにかけられた適合者って言葉よ
アイゼン:「御稜威に通じる人あらば不磨の喰魔は生えかわる」
アイゼン:俺たちの古文書の解釈が正しければ、カノヌシの力に適合するって意味だろうな
ロクロウ:つまり地脈点である北の遺跡に適合者のメディサを送り喰魔にした
マギルゥ:そう考えれば全部つながるのう
マギルゥ:しかも、聖寮を恨むメディサとやらが喰魔にされたなら、好都合じゃな
ロクロウ:ああ、こっちに協力してくれそうだ
ロクロウ:少し話がうますぎる気もするが
ベルベット:確かにね。でも、どの道行ってみなきゃ裏か表かわからない
アイゼン:だな。フォルディス遺跡に向かうぞ
マギルゥ:いやいや、裏目確定じゃろ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:かなりの聖隷を配備してるわね
ライフィセット:喰魔を守るため……だよね?
ベルベット:ええ、おそらくね
エレノア:操っている対魔士がいるはずです。警戒してください
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ね、エレノア。僕……メディサを苦しめちゃったのかな?
エレノア:そうかもしれません
エレノア:でも、私もあなたと同じことを思いました。お母さんが死んだら……哀しいです
エレノア:だから、とめてくれてうれしかった
ライフィセット:……うん
ベルベット:エレノアのヤツ、ずいぶん無駄な責任を背負おうとしてるみたいね
ベルベット:無理をしすぎて、穢れる危険が高くなってるんじゃないの?
アイゼン:……穢れとは人間の心にあるエゴや、矛盾から目をそらす独善から生まれるものだ
アイゼン:だがエレノアは、自分のエゴを自覚し、矛盾と向き合おうとしている
マギルゥ:それこそが対魔士になにより必要な資質──穢れを生む感情に染まらない純粋さというものじゃ
ベルベット:つまり、大丈夫ってこと?
アイゼン:今はな。だが、人の心は一瞬で移ろう
アイゼン:この先どうなるかは誰にもわからん
マギルゥ:ま、さほど心配せずともよかろうて。大抵の対魔士の純粋さは理で造りあげたものじゃが
マギルゥ:あの娘のは天然のようじゃからの
ベルベット:ふん、対魔士の才能ってわけね
アイゼン:貴重な才能だが、特殊な資質でもある
アイゼン:エゴや矛盾をもたない者などいないし、己が醜さと正直に向き合うことも簡単にはできん
アイゼン:程度の差はあれ、穢れをもって生きてるのが普通の人間というものだ
ベルベット:穢れは、必然に存在するもの……か
ベルベット:でもアルトリウスは──
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:モアナとメディサ……寂しくなくなるといいけど
ベルベット:そうね。泣きやませるのも大変だし
ライフィセット:聞いてもいい?ベルベットのお母さんって……
ベルベット:亡くなったわ。あたしがあんたより小さい頃に
ライフィセット:あ……ごめん
ベルベット:別にいいわ
ベルベット:つまり、あたしも、あんたと似たようなもの。だからひとりえ寂しがっちゃダメよ?
ライフィセット:ぼ、僕は平気だよっ!寂しくなんかないんだから!
ベルベット:なんで怒るわけ?変な子ねぇ
ライフィセット:変じゃないよ、もう……!
ベルベット:……エレノア、モアナとメディサの監視は任せるわよ
エレノア:は、はい!ありがとうございます
ベルベット:いいの?対魔士が災禍のなんとかにお礼なんか言って
エレノア:い、いいじゃないですか。魔王が細かいことを気にしないでください
ベンウィック:ベルベット、グリモワールが呼んでたぜ。ライフィセットを連れて監視塔に来てくれって
ベルベット:わかったわ
ライフィセット:すぐに行こう
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:来たわね
ライフィセット:グリモ先生。解読が進んだの?
グリモワール:ええ。「かぞえ歌」にはね。二番があったのよ……
グリモワール:読み下しておいたから……坊や、読んであげて
ライフィセット:うん。ええと……
ライフィセット:八つの穢れ溢るる時に嘆きの果てに彼之主は無間の民のいきどまりいつぞの姿に還らしめん
ライフィセット:四つの聖主の怒れる剣が御食しの業を切り裂いて二つにわかれ眠れる大地緋色の月よは魔を照らす
ライフィセット:忌み名の聖主心はひとつ忌み名の聖主体はひとつ
マギルゥ:おふぅ……なんじゃか不吉な文句ばかりじゃのー
ベルベット:二番の歌詞は……カノヌシの性質を表してる?
グリモワール:おそらくそうよ
ベルベット:八つの穢れ溢るる時に嘆きの果てに彼之主は無間の民のいきどまり……か
アイゼン:世界に穢れが満ちた時、カノヌシがその力で「民のいきどまり」をもたらす……と読めるな
エレノア:人間を亡ぼすというのですか!?
ロクロウ:おいおい、聖寮はそんな目的でカノヌシを復活させようとしてたのか?
ベルベット:違う!アルトリウスはそんな男じゃない!
ベルベット:……あいつの理想は「個より全」、「理と意志による秩序の回復」よ
ベルベット:だから、世界を守るためにラフィを犠牲にした
マギルゥ:お主の知っとるアルトリウスはじゃろ?
マギルゥ:じゃが、人は変わるぞ。導師とて絶望したのやもしれん
マギルゥ:業に流されて穢れを出し続ける、愚かな人間どもに……のう
ベルベット:……そんな奴じゃない。もしそうなら、ラフィはなんのために……
エレノア:古文書の続きには、なにか書かれていないのですか?
グリモワール:それが、この古文書は完本じゃなかったの。まだ続きがあるはずだけど欠けてしまっているのよ……
グリモワール:だから、いまできる解読はここまで
ベルベット:ちっ……
ロクロウ:だが、原本はどこかにあるんだよな?
アイゼン:あってこそのカノヌシ復活計画だろう。聖寮はカノヌシの性質を完全に把握している
ライフィセット:でも、王都の離宮にあったのがこれだし、原本の手がかりはないよ……
エレノア:今日はもう遅いです。ここまでにして休みましょう
ベルベット:……そうね
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:霧が出てきましたね……
マギルゥ:……じゃの
ベルベット:そういえば、エレノア。ひとつハッキリさせておきたいんだけど
エレノア:なんですか、改まって
ベルベット:ライフィセットは「あんたの」じゃないから
エレノア:え……?
エレノア:言いたいことって、それですか!?あなたのでもないでしょう!
ベルベット:そうよ。あの子は、あの子。誰のものでもないわ
エレノア:そうですね。聖隷は対魔士の道具じゃない
エレノア:以後気を付けます
ベルベット:わかればいいけど
マギルゥ:くくく……危ない、危ないのう。ベルベットや、儂との賭けを覚えておるか?
ベルベット:ああ……あたしが折れたら100ガルドってやつ?それが?
マギルゥ:忠告しておくぞ。人は苦痛には耐えられるが、幸福には逆らえん
マギルゥ:賭けに勝ちたかったら、似合わぬ夢など見んことじゃ
ベルベット:あいにく、見るのは悪夢ばかりよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:霧も、すっかり晴れましたね。迷わなくてよかった
アイゼン:当然だ。俺たちをなんだと思ってる
エレノア:違法で無法で、腕のいい海賊だと
アイゼン:……わかっていればいい
ベンウィック:しかし、普段は霧が出る海域じゃないんだけどなぁ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:あの子が……ラフィが生きてる……
ライフィセット:どうしたの?
ロクロウ:ぐはっ!!
アイゼン:……解けないか
ロクロウ:幻術を疑うなら、自分で試せよ……
ライフィセット:僕たちみんな、幻を見てるかもってこと?
アイゼン:可能性だ。前に一度かけられたからな
エレノア:でも、村全部が厳格だなんてありえません
マギルゥ:普通は……の
ロクロウ:どうする?かたっぱしから斬り倒してみるか?
アイゼン:……いや、敵も俺たちも目的は同じだ
アイゼン:喰魔を探す。手伝え
ロクロウ:わかった
ライフィセット:……僕は、ベルベットと一緒にいく
アイゼン:好きにしろ
ロクロウ:側で見ててやれ、あいつ、ちょっと普通じゃないからな
ライフィセット:うん
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:これだけあれば充分かな
ライフィセット:…………
ベルベット:どうかした?
ライフィセット:うん……ちょっと可哀想だなって……
エレノア:わかります。このウリボアたちも家族だったのかもしれません
エレノア:残酷ですね、人間も
ベルベット:……そうね。そんな感じ、忘れてた
ベルベット:けど、仕方のないことよ。生きるためには、食べなきゃならないんだから
マギルゥ:……仕方ないことじゃな、確かに
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……こっちよ!祠は森を抜けた先!
ロクロウ:おい、なにがどうなっている?
マギルゥ:敵の罠じゃよ。全部ベルベットの夢を利用した幻じゃ
アイゼン:悪趣味な術だ
ロクロウ:ベルベットが見破ったんだな
エレノア:はい。でも、夢とはいえ、あんなに容赦なく……
マギルゥ:驚くべきはそこじゃないわい。あやつが夢を振り切ったことの方じゃ
マギルゥ:夢と現の区分けなぞ、己が心のさじ加減にすぎんというに……
ライフィセット:え……?
マギルゥ:大したヤツということじゃよ。急ぐぞ、者ども!
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:エレノア、ひとつ聞きたいことがある
エレノア:……なんですか?
アイゼン:俺たちの策戦を聖寮に流したか?
エレノア:!!
ライフィセット:そんなことしてないよ、エレノアは
アイゼン:だが、メルキオルは前もって幻術を仕掛けていた。それを、どう説明する?
エレノア:私は……自分で真実を見極めるまであなたたちに協力すると約束しました
エレノア:今更、卑怯なマネはしません
マギルゥ:やましい人間は、みんなそういうんじゃよなー
ロクロウ:お前の方が、よっぽど怪しいんだが
マギルゥ:儂は、卑怯なマネはせんぞ〜
エレノア:…………
ベルベット:もういいわ。エレノアが情報を流したなら、タイタニアが襲われているはずよ
ロクロウ:そうだな。聖寮は喰魔を取り戻したいだろうし
アイゼン:だが、敵は俺たちを待ち伏せていた
ベルベット:こっちが喰魔を集めてることは、とっくに聖寮も気づいてる
ベルベット:残りの喰魔の居場所には、当然罠を張ってる
アイゼン:……そういう覚悟か。わかった
エレノア:信じてくれるのですね
ベルベット:違うわ。聖寮がなにを企もうが突破するって言ってるの
エレノア:…………
マギルゥ:こりゃ、勇ましいの〜♪
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:うう……あたし……?
ライフィセット:無理しないで。三日も眠ってたんだよ
ベルベット:……三日も無駄にしたのね。状況は?
ライフィセット:えっと、古文書はグリモ先生に渡して解読してもらってる
ライフィセット:前の本で欠けてたところが、全部書いてあるみたいだって
ライフィセット:あと、犬たちは、モアナと仲良くなったよ
ベルベット:わかった。じゃあ、最後の喰魔を探さないと……
ライフィセット:無理したらダメだってば!
ベルベット:あんた、もしかして……食べてないの?
ライフィセット:……ベルベットも……食べてないから……
ベルベット:なにバカなことしてるの!
ベルベット:食べないと、あんたも死んじゃうのよ!
ライフィセット:でも、僕は──
マギルゥ:死にぁせんよ。聖隷は食事で命を維持しておるわけではないからの
マギルゥ:物を食うのは一種の趣味みたいなものじゃ
ベルベット:……ならいい
ベルベット:趣味で我慢するのは勝手だけど、あたしに付き合う意味なんてないから
ライフィセット:…………
ロクロウ:元気は戻ったようだな。とっくにタイタニアに着いてるぞ
ベルベット:待たせたわね。みんなを集めて
ロクロウ:また派手にやられたな
ライフィセット:ぼくは……苦しんでるベルベットの気持ちをわかりたかったんだ……
ライフィセット:だって、一人で苦しむのは辛いでしょ?
ロクロウ:ふぅむ……なんというか、真面目な奴だなぁ
マギルゥ:じゃが、下手な同情ほどイラつくものもないぞえ
ライフィセット:どうすればいいんだろう……
ロクロウ:とにかく飯を食おうぜ。食える時に食っておくのは戦士の鉄則だ
ロクロウ:聖隷だって、ハラペコより満腹の方が力が湧くだろう?
ライフィセット:……うん
マギルゥ:空いた腹はメシで満たせるが、欠けた心を満たすには……
マギルゥ:さてさて、どーすればいいのかのう……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:フィー、次の地脈点を探知して
ライフィセット:……地脈点、見つけた。すごく通り……北東のずっと先……
エレノア:北東の先……おそらくエンドガンド領ですね
アイゼン:エンドガンド領は小島の集まりだ。リオネル島という比較的大きな島があるが
ライフィセット:……うん。地脈点は、そこだと思う
マギルゥ:エンドガンドといえば幽霊船が出るという海域じゃよなー
ライフィセット:幽霊船……
マギルゥ:うむ。後悔を抱えた罪人を捕らえて、永遠の航海へ連れ去るといわれておる
ライフィセット:罪人を連れ去る……
アイゼン:エンドガンド沖は世界をめぐる海流が何本も合流する。各地で難破した船が最後にたどり着く場所だ
ロクロウ:なるほどな。それが幽霊船の正体か
マギルゥ:なんじゃよ〜、夢のない奴らめ〜
ロクロウ:幽霊船が夢なのか?
ライフィセット:気を付けていこうね
ベルベット:平気よ。幽霊だろうが対魔士だろうが、みんな引導を渡してやる
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:もうすぐリオネル島だよ
ベルベット:幽霊船は出なかったわね
ロクロウ:待ち伏せへの対策はどうなった?
アイゼン:血翅蝶を使って、俺たちが別の聖寮施設を襲撃するという噂を流した
ベルベット:効果は、やらないよりましって程度だろうけど
ロクロウ:強行突破なら、わかりやすくていいさ
ベンウィック:副長!前方に漂流中の船を発見!
マギルゥ:幽霊船かの!
ベンウィック:聖寮の船です!救助信号旗をあげてます!
アイゼン:……わかった。接触しろ
ベルベット:助ける気?敵の船よ
アイゼン:救助信号旗に敵も味方もない。これは船乗りの鉄則だ
ベルベット:罠に決まってる
ベンウィック:海賊だって救助信号旗で騙し討ちなんてしないよ。助けた後、身ぐるみ剥ぐけど
アイゼン:万一、罠なら皆殺しにする。それだけのことだ
ベルベット:ちっ、面倒ね……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:さぁて、あやつの言うことを信用するのかや?
ロクロウ:聖隷の力を限界を超えて引き出す術……か。本当なら手強そうだ
アイゼン:メルキオルの野郎がつくったと言っていたな
マギルゥ:ジークフリートを追っていたと件と関係あるのかものー
アイゼン:……もしそうなら、まともにぶつかるのは得策じゃないな
ロクロウ:しかし、なぜテレサはあそこまでオスカーを守ろうとするんだ?
エレノア:オスカーは、アスガード王家を祖にもつ名門貴族ドラゴニア家の次男
エレノア:聖寮との結びつきを強める思惑から聖寮に入れられたそうです
ロクロウ:家の都合か。よくある話だな
エレノア:テレサも、彼を追うように聖寮に入りずっと陰日向にオスカーを助けてきました
マギルゥ:つまり、あやつも貴族か。大人しくお嬢様しとればいいじゃろうにー
エレノア:いえ、テレサの母は正式な妻ではなく……その……身分が……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:大丈夫か?
ベルベット:一気に喰べすぎただけ
エレノア:あの二人は、仲のいい姉弟でした。幼い頃から互いに支えあって──
ベルベット:やられたことをやり返しただけよ
エレノア:それで誰かが救われるのですかっ!!
ベルベット:ええ。殺されたラフィの魂がね
エレノア:…………
ライフィセット:…………
マギルゥ:とにかく喰魔の回収は失敗じゃ。今頃、新しい喰魔が生まれているじゃろうて
アイゼン:行くぞ。港に戻ってそいつを探す
ベルベット:……そうね
※枠外タッチで閉じます。
ベンウィック:大変だ、副長!ゼクソン港から緊急連絡!
ベンウィック:数十人の対魔士を乗せた船がタイタニアに向かって出航!
ベンウィック:目的は「災禍の顕主の討伐」だって!
マギルゥ:ぷしゅ〜、隠れ家がば〜れ〜た〜……
エレノア:違う!密告なんてしていません!
ベルベット:だったら、手伝ってもらうわよ。喰魔たちを救出しなきゃ
エレノア:させません。モアナに、またあんなこと……
アイゼン:待て。その情報の出所は血翅蝶か?
ベンウィック:ううん。いつも取引してる商人からです
アイゼン:本来、作戦情報は開始するまで部下にも知らせない機密だ。それが一般人にバレてやがる
ライフィセット:罠ってこと?
ベルベット:退く選択肢はないわ
アイゼン:事情は敵も見抜いている。その上で罠を仕掛けるのは、必勝の手段があるからだ
ライフィセット:神依!!
アイゼン:今度の敵は、神依を使う対魔士どもかもしれん
マギルゥ:あれは業魔手でも喰いはがせん。いわば、お主の天敵じゃぞ?
ベルベット:喰えないなら、普通に殺すまでよ
ロクロウ:だな。神依は受けきれば勝てる
アイゼン:オスカーのように……か。確かに、まだあれは未完成のようだ
マギルゥ:どうyら、一定時間を過ぎると融合した聖隷がドラゴン化してしまうらしいの
マギルゥ:ドラゴンの暴走を防ぐために、限界を超えた時、対魔士(うつわ)と聖隷を自壊させる術を組み込んでいるようじゃ
エレノア:自壊……そこまでやるのですね
ライフィセット:…………
マギルゥ:すべては推測にすぎんが、できるだけ準備を整えてゆこうぞ
マギルゥ:思い残すことがないようにのう……
ビエンフー:…………
マギルゥ:……………
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ロクロウ、怪我は大丈夫なのですか?
ロクロウ:ああ、打たれ強いのが取り柄でな
ロクロウ:俺よりも、ベルベットは大丈夫なのか?
ライフィセット:…………
エレノア:平気なわけがありません。カノヌシの正体が、あんな……
ロクロウ:ただ硬いだけじゃ、不測の力を受けたら割れちまうってことか……
ロクロウ:本当の強さを見誤っていたのかもしれんな。あいつも俺も
アイゼン:他人の心配をしている場合でもないがな
アイゼン:ここは、完全にカノヌシの領域に覆われている。奴の体内といっていいだろう
ライフィセット:うん。だから僕の力じゃ出られない……
アイゼン:用心しろ。大地の記憶も奴が再生しているのかもしれん
アイゼン:奴らの狙いはベルベットだからな
ライフィセット:ベルベットの中にある二つの穢れ
アイゼン:そうだ。それを逆手にとれば脱出の機会がつかめるかもしれん
ライフィセット:ベルベットを利用するっていうの!?
アイゼン:必要ならな
ロクロウ:なんにせよ進もうぜ。とまっていても埒が明かん
ロクロウ:マギルゥも捜してやらんとかわいそうだしな
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:今の聖隷って!
ライフィセット:……僕?
エレノア:覚えていないのですか?
ライフィセット:全然……
ロクロウ:聖隷に転生したって言ってたぞ。つまり……どういうことだ?
アイゼン:死んだ人間の魂が、なんらかのきっかけで聖隷に生れ変わることを転生という
ロクロウ:ライフィセットは、アルトリウスの子供が転生して生まれたっていうのか?
アイゼン:さっきの記憶が本物なら、な
ベルベット:…………
ライフィセット:…………
エレノア:じゃあ、一緒に生まれた女性の聖隷は……
ベルベット:あたしの姉の転生ってことね。もうとっくに喰らったけど
エレノア:し……知らなかったからでしょう?
ベルベット:……知ってたわ。あたしはシアリーズの正体に気付いてた
エレノア:ベルベット……
ベルベット:けど関係ない。だったら何?
ベルベット:目的のためにはなんだって喰らう。姉さんだって、弟だって、世界だって
ベルベット:それが……あたしなのよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ドラゴン!
ベルベット:……捕まってるみたいね。喰魔と同じように
エレノア:なんのためにそんな……?
マギルゥ:ふうむ。地脈につながる術が動いているようじゃ。儂らがここに飛び出したのも、そのせいじゃろうて
ライフィセット:地脈……つまりカノヌシと関係してる?
マギルゥ:そう考えるのが自然じゃな
ザビーダ:話が見えねえよ。説明しろ
ベルベット:いいわ。あんたも無関係じゃない
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:大丈夫よ。もう
ライフィセット:……うん
ザビーダ:……なるほど、カノヌシの正体はわかった
ザビーダ:で、あんたは、それでも戦うのかい?
ベルベットだからこそ、導師と聖主を殺す
ザビーダ:……怖えぇ女だな
ロクロウ:ひとつ疑問があるんだが
ロクロウ:カノヌシは穢れを喰らって目覚め、その力で人の業を鎮めるんだよな
ロクロウ:で、人が穢れを生まなくなったらカノヌシはどうなるんだ?
ライフィセット:食べる物がなくなって……死ぬ?
エレノア:いえ、再び眠りにつくのでは?
ロクロウ:だがそれじゃ、カノヌシの力が消えて、人間は、また穢れを生むだろう?
ライフィセット:カノヌシに、ずっと業を鎮めさせるには……
ベルベット:穢れを喰わせ続ければいい。例えば、不死身のドラゴンが発する強力な穢れを
アイゼン:ここは、人間を制御し続けるためのドラゴン牧場というわけか
エレノア:まさか!?
マギルゥ:あくまで仮説じゃが、辻褄は合うのう
ザビーダ:とことん聖隷を道具にしやがって
エレノア:平穏な世界のために、一体どれだけの犠牲が……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:いやあ、いい修行になったが
ロクロウ:神依と聖主とドラゴンとぶつかって生き残るなんて奇跡だな
ベルベット:……フィーのおかげよ
エレノア:まだ眠っています。力も気力も振り絞ったのでしょうね
ライフィセット:…………
マギルゥ:穢れを焼く炎……とんでもない力をもっておるのう
ベルベット:この子がカノヌシの一部だから?
マギルゥ:じゃろうな。最高の切り札じゃが、同時に……
ベルベット:…………
マギルゥ:なんでもいいが、儲け損ねたわい。賭けは儂が勝つはずじゃったのにー
ベルベット:どーでもいいでしょ、100ガルドくらい
マギルゥ:ち〜〜〜ともよくない!
マギルゥ:100ガルドを笑う者は1000ガルドで大爆笑!この恨みは深いぞよ〜……
ロクロウ:……で、次はどうするんだ?
ベルベット:変わらないわ。カノヌシを封じてアルトリウスを討つ
ベルベット:カノヌシが覚醒したということは、封印する方法もあるはずよ
エレノア:やはり手がかりはグリモワールの古文書ですね。ベンウィックたちと合流しましょう
ベルベット:……いいのね?
エレノア:正解かどうかは、わかりません……
エレノア:でも、アルトリウス様が必要とする犠牲を「仕方ない」と済ませることもできない
エレノア:だから、自分の心に従って戦います。例え間違っても、後悔しないように
ベルベット:とことん面倒くさい性格ね
エレノア:あなたに言われるのは心外です
ロクロウ:アイゼン、ベンウィックたちへの連絡を頼む
アイゼン:やはり、あの業魔は……
ロクロウ:アイゼン?
アイゼン:……まずは休息をすべきだ。かなりの連戦だったからな
マギルゥ:じゃの。坊もザビーダも起きんしのー
ベルベット:今日は宿で休みましょう
ベルベット:エレノア、ライフィセットをお願い
エレノア:あなたが背負ってあげたら?ライフィセットはあなたのために──
ベルベット:お願い
エレノア:……わかりました
※枠外タッチで閉じます。
ザビーダ:アイゼン!てめぇ、なんで黙ってやがった!
アイゼン:…………
ロクロウ:落ち着け!お前が気絶してたからだろう
ザビーダ:ちっ、俺は行くぜ!「あいつ」をとめる!
エレノア:何事ですか?
アイゼン:……バンエルティア号から連絡が届いた
ライフィセット:よかった、みんな無事?
アイゼン:今は、まだな
ライフィセット:?
ロクロウ:ベンウィックたちは、逃げる途中でアイフリードがエンドガンド領にいるという情報を掴んだらしい
ロクロウ:リオネル島で合流しようと伝えてきたんだ
ベルベット:その情報って……
アイゼン:罠だ。仕掛けたのは、あの大角の業魔──
アイゼン:おそらくアイフリード自身だ
ライフィセット:あの業魔がアイフリード!?
マギルゥ:マジなのかえ?
アイゼン:おそらくだ
ベルベット:リオネル島に向かうわよ
ベルベット:相手が誰だろうと、手がかりとバンエルティアを失うわけにはいかない
マギルゥ:足はどうする?ここへ来た船は多分ザビーダが乗って行ったぞ
ベルベット:港で適当なのを奪う
ベルベット:災禍というにはセコイけどね
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:…………
ライフィセット:アイゼン、順調?
アイゼン:もうすぐ到着するはずだ。この船は、いい羅針盤がついていたからな
ライフィセット:うん
アイゼン:だが……俺の針は揺れているようだ
アイゼン:初めてあの業魔を見た時から、アイフリードの気配を感じていたはずなのに
アイゼン:無意識に認めまいと押し込めちまった
ライフィセット:アイフリードが大事な友達だから……でしょ?
ライフィセット:「死神の力もアイゼンの流儀だ」って言ってくれたんだよね
アイゼン:「冒険を盛り上げる、いい道連れだ」ともな。一緒に二十日も漂流して、死にかかった海の上で
ライフィセット:……すごい人だね
アイゼン:お前も、同じことをベルベットにやっただろう
ライフィセット:アイゼンが教えてくれたからだよ。「自分の舵は自分で取れ」って
アイゼン:そうだな。それが──
ライフィセット:リオネル島が見えた!
アイゼン:まずい……バンエルティア号がもう着いてやがる
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:四聖主を起こす……か。あやつ、面白いことを言っておったのう
エレノア:でも、どうやって?
マギルゥ:さぁて、それはグリモ姐さんにでも聞いてみれば──
ベンウィック:みんな!
ベルベット:回復したようね
ベンウィック:なんとか。それよりあの業魔は?
ベルベット:……倒したわ。あいつは──
アイゼン:俺から話す
アイゼン:お前たちはグリモワールに四聖主の件を問い質せ
ベンウィック:副長……
ライフィセット:アイゼン……
アイゼン:頼むぞ。あいつが残した反撃の手がかりだ
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:四聖主の復活か……確かに、それがかなえば、カノヌシの領域を抑えることができるでしょうね
エレノア:カノヌシが封じている聖隷の意思も解放されるかもしれません
ライフィセット:きっと対魔士に従わない聖隷も出てくるよ
ベルベット:対魔士の戦力を大きく削げるわね
マギルゥ:そもそも、カノヌシによる霊応力の増幅がなくなれば
マギルゥ:ほとんどの対魔士は、以前のように聖隷そのものを認識できなくなるはずじゃ
マギルゥ:儂のように元から才能があれば別じゃがのー
エレノア:私も……ライフィセットが見えなくなる?
マギルゥ:それはやってみねばわからん
ライフィセット:エレノア
エレノア:……なら、やってみましょう。どんなことになっても後悔はしません
ロクロウ:しかし、四聖主って神様だろ?叩き起こして平気なのか?
マギルゥ:地水火風をつかさどっている奴らじゃ。自然のバランスが大きく乱れるやもしれん
ロクロウ:平気じゃなさそうだなぁ
マギルゥ:しかも復活させる方法は、おそらく──
ベルベット:開門の日と同じだとすれば、緋の夜に地脈点に生贄を捧げること……
ライフィセット:誰かを殺すの!?
グリモワール:殺すことが生贄の本質じゃないわ……必要なのは穢れなき魂よ
マギルゥ:ふぅむ……じゃとしたら、ベルベットはすでにもっておるのではないか?
ベルベット:喰らった対魔士たち……!
マギルゥあつらえたように、お主は喰らった力を撃ち出せる喰魔じゃ
マギルゥ:高位対魔士どもの魂なら生贄として申し分あるまいて
エレノア:オスカーやテレサの魂で四聖主を……
ベルベット:試してみる価値はある
ベルベット:次の緋の夜はいつ?
グリモワール:暦によれば、降臨の日の三年後……もうすぐよ
ロクロウ:う〜ん時間が足りるかな。四聖主は別々の場所に眠ってるんだろ?
グリモワール:ええ。各々地脈の奥底に眠っているはず……
グリモワール:でも、「地脈浸点」を利用すれば、一気に全員を目覚めさせられるかもしれないわ……
ライフィセット:地脈浸点?
グリモワール:地脈の流れは基本水平なんだけど、ごく稀に縦の流れがあるの
グリモワール:力が地脈の底に潜ってく場所を地脈浸点……
グリモワール:逆に奥底から力が吹きあがってくる場所を「地脈湧点」というのよ……
マギルゥ:ふむふむ。その地脈浸点を使えば、地脈の底におる聖主どもに、一度に生贄を届けられるやもしれんの
ベルベット:場所は?
グリモワール:ミッドガンド領の北部に、浸点がひとつあるわ。最近大きな神殿が建ったらしいけど……
マギルゥ:そこは聖主の御座じゃ!カノヌシがおる本拠地じゃし〜
グリモワール:あら、まずいわね……
ライフィセット:……湧点じゃダメかな?
ライフィセット:同じように地の底に繋がってるんでしょ?流れに逆らうことになるけど──
ベルベット:押し込んでみせろって言うのね
ロクロウ:湧点はどこにあるんだ?
アイゼン:おそらくキララウス火山あたりだろう
ライフィセット:アイゼン
アイゼン:大丈夫だ。話は済んだ
マギルゥ:キララウスといえば、ノースガンドの最北にある火山じゃな。氷と溶岩の地獄じゃが
グリモワール:まさに。キララウス火山こそ最大の湧点よ
ロクロウ:要するに、その火山に対魔士の魂をぶち込めばいいんだな
エレノア:そうすれば四聖主が復活し、カノヌシの領域を封じられる
エレノア:あくまで推論ですが……
ベルベット:あたしは賭けるわ
ライフィセット:僕も
アイゼン:ノースガンド領に向かうぞ。キララウス火山はヘラヴィーサの北だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さっきのは業魔じゃなくて聖隷だったな
エレノア:……はい。意思を残している人間を集めるよう、命じられているのでしょう
マギルゥ:カノヌシは、未だ不完全ゆえ鎮静しきれぬ者もでる
マギルゥ:そやつらは、聖隷を使って強制的に処理する……ということじゃろうな
エレノア:処理……
ベルベット:例えそれが、王子でも子どもでもか
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:エレノア、対魔士たちは、このことを知ったうえでアルトリウスに賛同してたのか?
エレノア:そんなはずは!
エレノア:私の知る対魔士たちは、人々が笑って暮らせる世界を夢見て戦っていました
アイゼン:だが、対魔士たちがこの状況を受け入れていることをどう説明する?
エレノア:私が、そう信じていただけだったのでしょうか……
ライフィセット:カノヌシの鎮静化は、対魔士にもおよんでるんじゃないかな?
アイゼン:対魔士たちも、カノヌシに意思を制御され、道具になっているということか
ロクロウ:ありそうな話だ。対魔士は融通のきかない奴らばかりだからな
エレノア:あのまま聖寮にいたら、私もこんな世界を受け入れてたのかも……
エレノア:ありがとう、ライフィセット
エレノア:きっとあなたの力が私の心を守ってくれているんですね
ライフィセット:そう……なのかな?
エレノア:そうですよ。自身をもってください
ベルベット:ふふ、あたしに捕まってよかったこともあったのね
エレノア:そうですね。あなたにも感謝します
エレノア:ありがとう
ベルベット:本気で?
エレノア:ええ。心に感じたことを伝えられるのは素晴らしいことですから
ベルベット:……あんたにはあきれるけど、同意するわ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……ええ、あたしもよ
エレノア:今なにか……?
ベルベット:夢の話よ。自分の業の深さを思い知ったわ
エレノア:ベルベット……前から話したいことがあったんです
エレノア:その……あなたたち喰魔とライフィセットのことですが……
ベルベット:気付いたのね?カノヌシ本体との関係に
エレノア:はい。実際にやってみなければどうなるかわからないことですが……
ベルベット:あんたが悩まなくてもいいわ
ベルベット:前にも言ったけど、悪いことは全部災禍の顕主のせいにしとけばいいのよ
エレノア:勝手にひとりで背負い込まないでください!
エレノア:こんなことになったのは、対魔士の責任でもあるんです
エレノア:だから、モアナたちのことは私が考えます。でも、ライフィセットには、あなたが……
エレノア:話は、それだけです!
ベルベット:どっちが勝手なんだか……
ベルベット:けど……ちゃんと伝えなきゃいけないわよね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:キララウス火山は、ノースガンド領の北端じゃ。ここからまだだいぶあるぞ
ロクロウ:途中で補給をしたいところだな
アイゼン:火山の麓にメイルシオという街がある
アイゼン:海に面しているものの、近頃は流氷が押し寄せて接触できん
アイゼン:だが陸路からなら入れるだろう
エレノア:ノースガンドだけでなく、大陸全体で寒冷化が進んでいるようですね
ライフィセット:寒冷化……カノヌシの鎮めの力が関係してるのかな?それとも四聖主が眠ったせい?
マギルゥ:どちらの可能性もありえるが……
マギルゥ:考えすぎると、事の大きさに寒気が増すぞ
ライフィセット:そうだね。けど……
ベルベット:どの道目的は変わらないわ
ベルベット:まずはメイルシオに向かいましょう
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:すごい……北の果てにもたくさんの人が棲んでるんだね
アイゼン:キララウス火山だけで採れる「炎石」の採掘で生計を立てている街だ
マギルゥ:つまり、火山に異常が怒れば壊滅するのう
エレノア:二人の魂を使った上に、この街まで……
ベルベット:非道よね。ののしっていいわよ
エレノア:そんな資格はありません。私たち聖寮も同じことをしてきたのですから
ライフィセット:こんな厳しい場所でも人が生きていけるのは、きっと、寒さを感じて寒さと戦う心があるからだよ
ライフィセット:だから僕は、混乱が起こっても、混乱を感じなくなるより、ずっといいと思う
マギルゥ:じゃな。心が動かぬ生なぞクソくらえじゃ
エレノア:……はい。クソくらえです
アイゼン:問題は、ベルベットが溜めた魂で四聖主全員を起こせるかどうかだな
アイゼン:四聖主の休眠とカノヌシの覚醒が関係しているならヤツを封じるには四聖主全員の力が必要と考えるべきだ
ベルベット:多分、二体しか起こせない
ベルベット:あたしの中に残っているのはテレサとオスカー。二人の魂だけだから
アイゼン:確かなのか?
ベルベット:……ええ。わかるの
マギルゥ:聖主に対でカノヌシに対抗できるか否か……
エレノア:責任は取ります。不足は私の魂で──
ロクロウ:足りなきゃシグレを呼び出せばいい。あいつの魂なら生贄に丁度いい
マギルゥ:ならばメルキオルのジジイもじゃな。カチコチに凍っておるゆえ、けがれてはおらんぞ
エレノア:特等二人を相手にする気ですか!?
ロクロウ:俺は元々そのつもりだ。見逃してくれるようなタマでもないしな
アイゼン:むしろアルトリウスとカノヌシが動けない今が、奴らを倒す好機だ
エレノア:安全策なんてクソくらえ……ですか
マギルゥ:そういうことじゃの〜♪
ベルベット:わかった。あたしに任せて
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はぁ〜!すっきりさっぱりしたのー♪
ベルベット:そうね。けど……
マギルゥ:痛っ!なんじゃのー!?
ベルベット:骨なんかしゃぶらないわよ。躾は、姉さんにちゃんとされたの
マギルゥ:そりゃ、もったいないのー。骨周りの肉が一番美味いんじゃぞ?
ライフィセット:ふふ、そうだね
エレノア:とにかく、これで私たちの戦いにメイルシオの人を巻き込まずに済みますね
ベルベット:もう十分巻き込んでるわ。今まで築いてきた生活を奪ったんだから
ベルベット:そもそも、特等どもを呼び寄せるためにやっただけよ
エレノア:それでも感謝します。災禍の顕主
ベルベット:聞かなかったことにしておくわ。一等対魔士様
ベンウィック:南に集団が逃げてったけど、何事だよ?
アイゼン:ベンウィック、どうしてここへ?
ベンウィック:副長に届け物ができたんです。クロガネやモアナたちも一緒だよ
エレノア:モアナまで!?
ベンウィック:どうしても追いかけるってきかないんだ。エレノアが死ぬ夢を見たんだって
エレノア:モアナ……
ロクロウ:シグレたちが来るまでどれくらいかかるかな?
マギルゥ:そうさな……到着は緋の夜あたりじゃろうて
ロクロウ:なら、ちょっと時間をもらうぜ。クロガネは、俺に用があるんだろ?
ベンウィック:うん、そう言ってた
アイゼン:丁度いい。各々休息をとっておけ
ベルベット:そうね。戦いの準備も必要だし
マギルゥ:最後の自由時間かもしれん。例によって思い残すことがないようにの
ライフィセット:…………
ベルベット:フィー、なにがあるかわからないから街から出ちゃダメよ
ライフィセット:僕……ベルベットと一緒にいてもいい?
ベルベット:いいけど……いいの?
ライフィセット:うん
ベルベット:なら好きにしなさい
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:僕の力で、カノヌシを封じられれば……
ロクロウ:気合い入ってるな、ライフィセット
ロクロウ:けど、気負いすぎるなよ。お前は、まじめすぎるところがあるからな
ライフィセット:僕は、真面目なんかじゃないよ
ライフィセット:すごく自分勝手な悪者なんだ
ロクロウ:ほう、そうなのか?
アイゼン:だが、自分勝手とわかったうえで自分で決めたんだろう?
ライフィセット:うん
アイゼン:だったら俺と同じだ
アイゼン:あとは自分の流儀を貫く。それだけだ
ロクロウ:俺も、業魔だからなぁ。例えお前が極悪人でも、別にかまわないさ
ライフィセット:ありがとう、アイゼン。ロクロウ
ベルベット:…………
エレノア:ベルベット……
エレノア:あきらめないでくださいね。ライフィセットのこと
ベルベット:宿で立ち聞きしてたわね?
マギルゥ:おやおや、一等対魔士ともあろうものが、なんとハレンチな〜
エレノア:そ、そうですが、違います!
エレノア:私が言いたいのは──
ベルベット:わかってるわよ
ベルベット:見ててくれる人がいなかったら、どんな自分勝手も空しいし
エレノア:……はい
マギルゥ:まったくじゃの
ベルベット:……なによりあきらめたくないのよ。あたし自身が
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ロクロウ、最後になんか言ってたよね
ロクロウ:シグレにか?
ライフィセット:うん。僕が聞いていいことじゃないかもしれないけど……
ロクロウ:別にかまわない。ただの昔話だ
ロクロウ:シグレが主家に謀反を企てたって話な。あれはウソなんだ
ロクロウ:俺が、嘘の密告をした
ライフィセット:なんで……
ロクロウ:上意討ちの大義名分を手に入れる為にさ
ロクロウ:號嵐、シグレの名、当主の地位──昔の俺は、そんなものが欲しかったんだよ
ライフィセット:……後悔してるの?
ロクロウ:まさか。シグレにも気づかれてたしな
ロクロウ:それより、あの時、なんでシグレに勝てると思ってたのかがわからん
ライフィセット:あの人……強かったね
ロクロウ:当然だ。最強剣士の一族ランゲツ家の当主だからな
ライフィセット:ロクロウは後を継ぐの?
ロクロウ:いや、俺は業魔だしな。それに……
ロクロウ:兄貴に勝てれば、それだけでよかったんだ。俺は
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:助かったわ、マギルゥ。メルキオルに隙をつくってくれなかったら終わってた
マギルゥ:儂は儂のケリをつけただけじゃよ
マギルゥ:じゃが、感謝するなら物でおくれ♪
ベルベット:前言撤回
ライフィセット:花を傷つけない……誓約だったの?
マギルゥ:……いいや
マギルゥ:あのクソジジイは草花が好きだったんじゃよ。生きている人間よりも、ずっと……の
マギルゥ:それだけのことじゃ
ベルベット:心は自由にならないのね。特等対魔士でも
マギルゥ:魔女でものう。生きるということは、まっこと難儀じゃわ
エレノア:四聖主は目覚めたのでしょうか?
ロクロウ:さてなぁ。だが、これで起きないマヌケなら当てにしても無駄だ
アイゼン:その悪口、聞かれたかもしれんぞ。カノヌシの領域が変化している
ライフィセット:うん、四人とも起きたよ。カノヌシは地脈から押し出された
マギルゥ:これで増幅されていた霊応力は低下し、多くの聖隷の意思も解放されるじゃろう
マギルゥ:対魔士どもの数は激減するはずじゃが……
ロクロウ:エレノア、お前まで戦えなくなってないだろうな?
エレノア:残念ながら、まだ見えています。悪い業魔も、聖隷も、魔女も
ベルベット:……わかるのね
ライフィセット:感じるんだ
ライフィセット:あいつの本体は地脈から出たよ
ライフィセット:聖主の御座の上だ。導師アルトリウスもそこにいる
ライフィセット:けd、カノヌシは四聖主の力をすごい勢いで押し返そうとしてる
マギルゥ:四聖主が押し負けたら、今度こそ打つ手なしじゃ。まったりしとる時間はなさそうじゃぞ
ベルベット:行くわよ。決着をつけに
ライフィセット:うん!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:鎮静化は解除されたようね
マギルゥ:業魔の被害と引き換えに、のう
ベルベット:……それも予定通りよ
ベルベット:世話になったわね
ベンウィック:したいことをやっただけさ!礼なんかいるかよ
アイゼン:行くぞ。導師と決着をつける!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:どうやら対魔士はいないようね
エレノア:でも、かなりの聖隷がいます
アイゼン:カノヌシと直接契約した聖隷──陪神たちだ
アイゼン:気を付けろ。奴の力を分け与えられているはずだ
ベルベット:やっかいそうね
ロクロウ:そうでもないさ。全部斬り倒すだけのことだ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:そういえば、アーサー義兄さん、最近夕飯に「あれを食べたい」ってリクエストしないなぁ
ベルベット:いろいろ物騒で、村の仕事にも駆り出されてるし疲れてるのかな……?
ベルベット:……よし。今晩はセリカ姉さん直伝の「ウリボアの肉たっぷり、なのにさっぱりシチュー」にしよう!
ベルベット:栄養満点のお肉を食べれば、疲れも熱も、ふっとぶわよね
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:最近冷害がひどいけど、ウリボアの肉を街向けに売れるようになったのはありがたいわね
ベルベット:ラフィと義兄さんも、村をあげて飼育できればとか話してたけど……問題はウリボアの気性が荒いことよね
ベルベット:おとなしいブタと掛け合わせたらいけるかな?そしたら名前は……「ブウリ」?
ベルベット:なんかクサそうね。あとは……「ウリタ」?
ベルベット:うん!「ウリタ」がいいわ、かわいいし!
ベルベット:……けど、かわいすぎてちょっと食べにくいかも……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:セリカお姉ちゃんたちのお葬式の朝も、二人でプリンセシアを摘みに行ったわね
ライフィセット:うん。四歳だったけど、よく覚えてる。村にも岬にも花がなかったんだ
ベルベット:そう、業魔に荒らされてたから。そしたら突然、あんたが崖から降りようとして
ライフィセット:お姉ちゃんは、慌てて僕を捕まえて、すっごく怖い顔をして怒った
ベルベット:当たり前でしょ!あんたまでいなくなったら、あたし、どうしたらいいか……
ライフィセット:アーサー義兄さんがいるよ。お姉ちゃんのことも、この世界のことも……
ライフィセット:義兄さんが、きっとなんとかしてくれる
ベルベット:それはそうだろうけど。あんたがいなきゃ、寂しいのは同じなんだからね!
ライフィセット:……わかってる。ごめんね
ベルベット:でも、あんたが下りようとした崖の下にプリンセシアが二つだけ咲いてたんだよね
ライフィセット:あの時、風がふわっと吹いてきてセリカお姉ちゃんと同じ香りがしたんだ
ベルベット:そうだったね。だから、あたしは思ったんだ。あの花は、お姉ちゃんからのメッセージだって
ベルベット:知ってる、プリンセシアの花言葉?
ライフィセット:えっと……「かけがえのない宝物」「幾々年も健やかに」
ベルベット:そう。あたしの気持ちも同じよ、ラフィ
ライフィセット:……うん。僕もだよ、お姉ちゃん
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ラフィ、家に帰ったら「りんごぶぅ」つくってあげよっか?
ライフィセット:「りんごぶぅ」……ってなに?
ベルベット:すりおろしたリンゴのことよ
ベルベット:小さい頃、風邪をひくと、セリカお姉ちゃんがつくってくれたの
ベルベット:甘ずっぱくて、果肉がシャリシャリのトロトロでそれを食べると、すぐに風邪が治っちゃった
ライフィセット:リンゴが体にいいのは本当だけど……どうして「りんごぶぅ」なの?
ベルベット:赤ちゃんのあたしが、リンゴを食べたがって「ぶぅぶぅ」言ってたからだって
ライフィセット:それで「りんごぶぅ」か
ライフィセット:でも、りんごを見て「ぶぅぶぅ」言うなんて、お姉ちゃんはヘンな赤ちゃんだったんだね
ベルベット:あんたも、赤ちゃんのとき言ってたのよ
ベルベット:それを見て、セリカお姉ちゃんとあたしは大笑いしたんだから
ライフィセット:ぶぅ〜……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:背後をとられた。あいつは……?
シアリーズ:やはりここは特別監獄。囚人ひとりとて油断はできませんね
シアリーズ:大魔法使いと名乗っていましたが
ベルベット:……あいつ、聖隷を使役してた?
シアリーズ:いいえ、聖隷の気配はありませんでした。ただの人間……のはずです
ベルベット:なら、魔法使いじゃなくて奇術師ね
ベルベット:次に仕掛けてきたらタネごと潰す。それで終わりよ
※枠外タッチで閉じます。
シアリーズ:「號嵐」……まさか、あの業魔は……
ベルベット:なに?
シアリーズ:いえ、あの剣士の業魔に少し驚いただけです
シアリーズ:もの凄い殺気だったのに、太刀の話が出た途端、別人のようになったものですから
ベルベット:真面目に考えても仕方ないでしょ。業魔のことなんか
シアリーズ:それにしても風変わりな囚人ばかりですね
ベルベット:…………
シアリーズ:あ……あなたのことでは……
ベルベット:別にいいわ。聖隷なんかにどう思われようとね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ベルベットは、さっきの坊と知り合いなのかえ?なにやら呼びかけておったろう?
ベルベット:別に。聖隷に知り合いなんていないわ、もう
マギルゥ:もう……のう
ベルベット:なに?
マギルゥ:なにもマギもないが、あの坊は変わっておったのー
ロクロウ:確かにな。命令もないのに回復術で業魔を助けやがった
マギルゥ:おまけに羅針盤を盗んでいきおった。対魔士に従う聖隷のくせに、我欲のあるヤツじゃわー
ロクロウ:まあ、こっちもあいつの地図をいただいちまったけどな
マギルゥ:いやはや悪党ばかりじゃなー、儂以外は
ロクロウ:うむ、まったくだな
マギルゥ:ちょい〜!そういうボケ潰が一番の悪じゃよ〜!?
ロクロウ:そうなのか?
ベルベット:脱獄囚が、いい気なものね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:しかし、マギルゥ。お前の話し方、見た目通り妙ちくりんだな
マギルゥ:魔法使いに相応しい威厳と年輪を感じさせねばならんからのー
マギルゥ:儂も、魅惑のキャラづくりには、なかなかクロウしてきたんじゃて
ロクロウ:なにごとも修行ということか……
ロクロウ:ところで、魔法使いと魔女ってどう違うんだ?
マギルゥ:厳密にいえば色々区分けはあるが、おおざっぱに言えば、ニュアンスの違いじゃな
マギルゥ:倹約家とケチの違い、と言えばわかるかや?
ロクロウ:応!つまり役に立つやつが「魔法使い」で、役立たずが「魔女」ってことか
ロクロウ:……だとすると、今のお前は魔女だな
マギルゥ:くっは〜、にべもない!というか、キャラづくりが役に立っておらん!
マギルゥ:北国の風が、余計にしみるわい……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:やれやれ、どこまでも氷と雪ばかりだな
ベルベット:寒いの?
ロクロウ:いいや。お前は、ヘソでも冷えるのか?
ベルベット:別に……っていうか、どこ見てるわけ!?
ロクロウ:おっと、すまん。そういうつもりはなかった
ロクロウ:そうか。お前は、まだ恥じらいとかそういう感情が残ってるんだな
ベルベット:お前は……って、じゃあ、あんたは?
ロクロウ:応、人間らしい感覚が大分なくなってる。業魔ってのは、そういうもんだと思ってたよ
ベルベット:人間の感覚が消える……
ロクロウ:それでも、俺が俺である根っこはかわらないがな
ロクロウ:相変わらず心水も旨いのも、ありがたい
ベルベット:……そう
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:聖寮の巡察官か
ロクロウ:王国の各地を回って、業魔対策の状況を確認したり、対魔士たちの行動を検めたりする精鋭らしい
ロクロウ:いわゆる憲兵みたいなものだな
ロクロウ:民衆にあれこれ我慢を強いてる以上、自分たちにも裏がないことをアピールしたいんだろう
ベルベット:そんななのを置いてる時点で、白じゃないって言ってるようなものでしょ
ロクロウ:逆に、そっちの方が「誠実」って考え方もある。理想だけじゃ、世界は変えられないからな
ロクロウ:だから泣いたんじゃないか?志の高い巡察官殿は
ベルベット:……そうね。いかにも、って感じだったわ
ロクロウ:ま、女の涙ってのは、簡単に信じるもんじゃないがな
ベルベット:…………
ロクロウ:ただの一般論さ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:お前、味がしないって言ってたが匂いはどうなんだ?
ベルベット:なんで?
ロクロウ:味覚ってのは嗅覚とセットみたいなもんだ。鼻をつまんで食うと、味がわからなくなるだろ
ベルベット:……匂いは、人間だったときよりも敏感かもね。あんたは違うの?
ロクロウ:俺も五感は鋭敏になってる
ロクロウ:しかし、匂いはするのに味はしない、か。ううむ……
ロクロウ:お前は、自分のことを喰魔と言っていたが、ずいぶん寂しい食生活だな
ベルベット:そういうあんたは、なにを食べてるのよ?
ロクロウ:主に「心水」だな
ベルベット:飲み物じゃない。寂しいのはあんたもでしょ
ロクロウ:ばかを言うな!心水ほど奥深いものはないぞ。素材も製法も千差万別、甘いも辛いも融通無碍
ロクロウ:舌の上に広がる熟成された味わい。鼻をくすぐる芳醇な香り。お子様にはわからん世界さ
ベルベット:あっそ
ロクロウ:業魔になって以来、回るのが早くなったのが玉にキズだがな
ベルベット:業魔の味覚って……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:お前の剣技、どこの流派は?誰に教わった?
ベルベット:我流よ
ロクロウ:それにしては太刀筋がいいし、基本もきちんとしてる
ロクロウ:それなのに、いきなり蹴り技を使ったりするのが面白い
ベルベット:だから、我流って言ってるでしょう
ベルベット:あんたこそ、なんなのその二刀流?「命の太刀」とやらを抜きもしないで
ロクロウ:抜かないからいいのさ
ベルベット:……は?それも、ランゲツ家の教えってヤツ?
ロクロウ:応、「借りたものは返す」──すべてはその為にある
ベルベット:わけわからない……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:船の修理はなんとかなりそうね
ロクロウ:それで問題が解決するわけじゃない。船をまともに操れなきゃ、また難破するだけだぞ
ベルベット:航海士なんて探してるヒマはないし、かといって定期船は許可なしじゃ乗れないわ
ロクロウ:俺たちだけで、なんとかするしかないってことか。だが、俺の操船の腕は、前の通りだぞ?
ベルベット:無理強いはしないわ。独りだってやるだけよ
ロクロウ:とっかにフリーの航海士はいないもんかなぁ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:お前って、徹底してるよなぁ
ベルベット:なにが?
ロクロウ:行動がだよ。ダイルを利用し、商船組合を脅し、マギルゥを見捨てる……自覚してるだろ?
ベルベット:別に見捨ててない。気にしてないだけよ
ロクロウ:……やっぱり徹底してるな
ベルベット:よくわからないヤツだけど、マギルゥは、そう簡単には殺せないわよ
ベルベット:第一、あいつは、こっちの手の内を全部聖寮にバラしてるはず
ロクロウ:……それはそうかもな
ベルベット:だから、あいつも知らない手札が必要なのよ。例えば「死んだはずの業魔」……とかね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:そういえば、あの羅針盤をもって逃げた少年、どこ行っちまったんだろうな?
ベルベット:たぶんヘラヴィーサでしょ。聖隷は対魔士に使役されてるんだから
ロクロウ:となると、襲撃の時に出くわすかもな
ベルベット:治療してもらった恩があるから斬りたくないとでもいうの?
ロクロウ:否、立ちはだかるなら斬るだけだ。ただ……
ベルベット:ただ……?
ロクロウ:礼を言うのを忘れないようにしなきゃな
ベルベット:……そうね
ロクロウ:お前は心が痛まないのか?
ベルベット:……別に。聖隷はあまりおいしくないって思っただけよ
ロクロウ:ほう、聖隷は不味いのか。ひとつ賢くなった
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:対魔士が聖隷の意思を封じてるって言ってたよな
アイゼン:ああ。本来は人間同様、それぞれが自我を持つ存在として、ずっとこの地で生きてきた
アイゼン:俺たちの存在を知覚できるのは、対魔士のように霊応力が強い、一部の人間だけだったが……
ロクロウ:あの「開門の日」で変わったんだな
アイゼン:聖隷は並の人間たちにも見えるようになり、意思を奪われ、命令通りに動く道具にされた
アイゼン:業魔に対抗する術を得たと人間どもは喜び、アルトリウスの奇跡だと讃えたが聖隷はモノじゃない
ライフィセット:聖隷はモノじゃない……
ベルベット:モノよ……
アイゼン:?
ベルベット:アルトリウスにとっては、聖隷も業魔も人間もみんな御大層な「理」を実現するための道具でしかない
ベルベット:モノにしか見えないのよ……弟すら……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:かめにんってなんだ?
アイゼン:名前の通り、かめにんだ
ロクロウ:だから、なんなんだ?
アイゼン:かめにんは、かめにんだ。行商が得意な種族だと考えればいい
ロクロウ:ま、ウミガメみたいな甲羅をしょってたし、名は体を表すってヤツか
ロクロウ:俺は六番目でロクロウだしな
ライフィセット:僕は二番目の使役聖隷だから、二号……
アイゼン:それは名前じゃない、ただの称号だ
ライフィセット:…………?
ロクロウ:いい加減、少年にも名前をつけてやらんとなぁ
ライフィセット:……僕の、名前……
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:…………
ベルベット:アイフリード海賊団の副長は妙な験を担ぐのね
アイゼン:癖みたいなものだ。どうせ裏しか出ない
ロクロウ:その金貨って、どこの国のものなんあ?表は女神、裏は死神なんてのは、初めて見た
アイゼン:裏側は厳密には死神じゃない。これは「魔王ダオス」だ
ロクロウ:なんか、どっかで聞いたような名前だな
ライフィセット:……女神マーテルと……魔王ダオス……「ラグナロック」第765章「ユグドラシル戦記」より
アイゼン:ほう、良く知っているな
アイゼン:これは、異国の古代遺跡から発掘されたカーラーン金貨と呼ばれる貨幣だ
アイゼン:柔らかい金でできているが、特殊な加工で硬度が高められていて、傷がつきにくい
ロクロウ:へえ、ずいぶん珍しいものなんだな
ベルベット:あんた、本が好きなの?
ライフィセット:好き……?テレサ様の部屋にたくさん本があって僕はいつも本を読んでいた……
ライフィセット:「ラグナロック」は神話時代の戦記で、何回も読んだ……
ベルベット:…………
ベルベット:それにしても、そんな珍しいコイン、どこで手に入れたの?
アイゼン:話せば長くなるが……
ベルベット:ならいい
ロクロウ:ちなみにさっきは、コインでなにを決めたんだ?
アイゼン:…今、話すようなことでもない
ロクロウ:そうか、余計な詮索だったな、すまん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:海底要塞か……海峡ごと鉄の門で塞いじまうなんて聖寮もとんでもないものを作りやがるな
ベルベット:少し前には、こんなの考えられなかったのに
アイゼン:聖隷を道具として使えば、造作もないことだ
ロクロウ:聖隷は、業魔を斬る刃にもなれば、鉄を鍛える金槌にもなるってわけだな
ベルベット:そうやって聖寮や王国は、自分たちの力の大きさを民衆に知らしめてるのよ
ベルベット逆らうな、従えってね
アイゼン:胸糞悪い話だ
ライフィセット:むなくそわるい……
ベルベット:まったくだわ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さて、ここからが本番だが、攻略の算段は立ってるのか、副長
アイゼン:この要塞に詰めているのは、ほぼ王国兵だ。対魔士はかぞえるほどしかいないとみていい
ロクロウ:海に鉄門まで作ったってのに、ずいぶん手緩いな
ベルベット:外海で暴れる賊を取り締まるのに、対魔士を厚くする必要なんてないってことでしょ
アイゼン:そうだ。人間相手なら王国兵でも役に立つ
ロクロウ:指揮官として対魔士を置けば十分ってわけか
アイゼン:国王の顔こそ立ててはいるが、もはやこの国の実情はアルトリウスが握っているようなものだ
アイゼン:各地の警備、防衛は聖寮主導で行われ、王国兵たちは対魔士の指揮下に置かれている
ロクロウ:狙うは対魔士だな。少しは骨のある奴がいると楽しめるんだがな
アイゼン:折るのか?
ロクロウ:俺は斬る専門だ
ライフィセット:…………
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:剣術、背中の大太刀……お前はランゲツの血を引く者か
ロクロウ:ああそうだが、それがどうした?
アイゼン:クシヤマタという名を聞いたことはないか?ランゲツにゆかりのある鍛冶職人らしいが
ロクロウ:ああ、遠縁にあたる包丁職人の一族だが……あんた、料理好きなのか?
アイゼン:いや、逸品だと聞いたんでな。贈り物に良さそうと思っただけだ
ロクロウ:やめておけ。クシヤマタは呪いの包丁だ
アイゼン:……?
ロクロウ:包丁自体は立派なモノだったそうだが、握った奴は皆、誰彼かまわず人を斬りたくなっちまうんだとさ
ロクロウ:噂じゃ、鉄を打つときに好きな女の血を使っただとか、火にくべたとか言われているが真相は闇の中だ
ロクロウ:職人どもが斬り合って一族は滅んじまって、包丁は皆、炉で溶かされて鉄クズになったらしい
アイゼン:……それで、クシヤマタに関する話をほとんど聞いたことがなかったのだな
ロクロウ:ランゲツ家の宿命……いや、血なんだろうな
アイゼン:噂以上の一族のようだな
ロクロウ:まあ、噂以下よりはマシだけどな
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
ロクロウ:随分気に入ったようだな。だが、今は羅針盤はカバンにいれておけ
ライフィセット:……カバンに入れる
ロクロウ:そうだ。見たところ作りもしっかりしてるし、いいカバンじゃないか
ライフィセット:マウリッツ織り
ロクロウ:マウリッツ織りってなんなんだ?
アイゼン:ダンダラチュラという蜘蛛からとった動物繊維を織った上質な生地だ
アイゼン:品位あるほのかな艶、赤子の肌の如き滑らかな手触り、軽くて伸びもあり、通気性も耐久性にも優れている
アイゼン:だが、それだけではない。特筆すべきは、この生地の持つ衝撃吸収力で──
ロクロウ:あんた、色々と詳しいんだな
アイゼン:知識と経験の裏付けが、宝の目利きに役立つ
アイゼン:奪った宝をなんでもかんでも積み込めば、船が傾くからな
ロクロウ:なるほどなぁ
アイゼン:というわけで、羅針盤を入れておくには、そのカバンは最適だ
ベルベット:ちゃんとしまっておきなさい。大切なものなんでしょ?
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:アイフリードの話を監獄島で聞いたと言っていたな
ベルベット:メルキオルっていう特等対魔士が連れ出した、それ以上のことは知らないわ
ロクロウ:俺も聞いたことはない。マギルゥ、お前はどうだ?
マギルゥ:連れられてきたのは一年ほど前じゃったか?囚人どもがざわついたのを覚えておるが
マギルゥ:よほど極秘扱いのようでのー、どの房に入れられたのかすら漏れてこんかったな
ロクロウ:アイフリードって、普通の人間だよな?
アイゼン:そうだ。対魔士の能力もなければ、業魔でもない
マギルゥ:海賊つぶしが目的ならば、愉快な仲間たちを野放しにしておくのもおかしな話じゃしのー
ロクロウ:聖寮がそこまでこだわる理由がわからん
アイゼン:俺たちも情報収集を続けているんだが、聖寮の狙いが一向に見えん
アイゼン:だが、必ず救い出す。海が、あいつと俺たちの生きる場所だからな
ベルベット:生きてると確信してるみたいね
アイゼン:海賊が邪魔なら、殺せば済む
ロクロウ:聖寮には、生け捕りにして聞き出したい、大事な用事があるんだろうな
アイゼン:だが、生き方を他人に曲げられて、おとなしく従うような奴じゃない、あの男は
ライフィセット:自分の舵は自分の意志でとる……
アイゼン:そういうことだ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:お前、なんでまた戻って来たんだ
マギルゥ:主らが寂しがるかと思ってのー
ベルベット:ぜんぜん寂しくないけど
ロクロウ:裏切り者を捜すとか言ってたのはどうなった?
マギルゥ:取り逃がした……手がかりもない
ベルベット:魔女なんだから、魔法で探せばいいでしょ?
マギルゥ:あいにくと儂の魔法は二人三脚方式でのぉ、裏切り者のあやつがおらねば発動せぬのじゃ
ロクロウ:共犯者ありきのペテン魔法というわけだな
マギルゥ:ちがわい!!
ベルベット:その裏切り者とやらを捜す手伝いはしないわよ
マギルゥ:バナナで釘が打てるほどの冷たさじゃのー
ロクロウ:そいつの他に仲間はいないのか?
マギルゥ:はて……おらぬのー
ロクロウ:帰りたい故郷はないのか?
マギルゥ:ないのぉ……
ロクロウ:魔法のほかに、やりたいことはないのか?
マギルゥ:ないのぉ……
ライフィセット:あ……
アイゼン:どうした、ライフィセット
ライフィセット:うん……マギルゥ:の話聞いてたらなんか胸がもぞもぞして……鼻がつんとした……
アイゼン:友も居場所も目的もない空っぽの人生を送る魔女を、お前は憐れだと感じたんだ
ライフィセット:憐れ……?
アイゼン:相手をかわいそうに思う気持ちのことだ
ライフィセット:……マギルゥは憐れ……
マギルゥ:そういう目で儂を見るでない〜〜!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:わぁ……あの壁……すごく大きい……
アイゼン:この国の王都ローグレスだ
アイゼン:巨大な城壁で街を囲み、業魔の侵入を防いでいる
マギルゥ:聖隷をこき使うことによって、人は身の丈以上の文明を手に入れたのじゃよ
ロクロウ:初めてじゃないだろ、ライフィセット?
ライフィセット:前にも来たことあるけど、その時は、僕は今みたいじゃなかったから……
ロクロウ:そうか。対魔士に使役されてる聖隷は、景色を見ることもままならないんだな
マギルゥ:次にままならなくなるのは、儂らじゃがのー
ライフィセット:……?
マギルゥ:王家も聖寮の本部もある国の中枢じゃ
マギルゥ:王国兵も対魔士もあちこちで見張っておる。儂ら悪党にとっては、居場所のない街じゃ
ベルベット:居場所なんていらない。アルトリウスの居所さえわかれば、それでいい
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:優しそうな顔して、したたかなばあさんだな
ベルベット:奇術団のことも、あたしのことも知ってた。情報源は本物のようね
アイゼン:情報だけじゃない。偽造と言っていたが、通行手形も本物だ
ロクロウ:王国内にも仲間を潜り込ませてるってわけか
アイゼン:先代のバスカヴィルは、反権力の塊のような男だとうわさに聞いたことはあるが……処刑されていたとはな
ロクロウ:カリスマを失っても組織は揺らいでない。底が知れない連中だな
ベルベット:それくらいの連中でなきゃ、聖寮とは渡り合えない。情報を手に入れるためにも、依頼を成功させないと
ロクロウ:旨い心水を、もう一杯呑むためにもな
アイゼン:……気が合うな。あの店は、いい心水を出す
ライフィセット:……あ
ベルベット:あんたもがんばりなさい。またマーボーカレーを食べるために
ライフィセット:……うん!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ライフィセット
ライフィセット:なに、ロクロウ?
ロクロウ:マーボーカレー
ライフィセット:えっ……?(お腹の鳴る音)
ライフィセット:あ……
ロクロウ:はははは、お前、面白いなぁ。そんなにマーボーカレーが気に入ったのか?
ライフィセット:……香ばしくて、ときどきピリッとして、ふわっとして、食べたらうれしい気持ちになった
ロクロウ:大好きってことだな。聖隷って、そんなに食いしん坊なのか?
アイゼン:人間や業魔と同じように大食いも小食もいる。味覚も好みも、それぞれ違う
ライフィセット:アイゼンは、好きな食べ物があるの……?
アイゼン:俺は心水と……
ライフィセット:心水となに?
アイゼン:……いや、主に心水だ
ライフィセット:主じゃなく好きなのは……
アイゼン:心水だけじゃだめか?
ライフィセット:……ちょっと、気になっただけ
ロクロウ:俺は、心水とイモケンピが好きだぜ!!
ライフィセット:イモケンピ……サツマイモを短冊切りにして油で揚げて、砂糖を表面にからめたお菓子だよね
ロクロウ:おう、これがなぁ、いくら食っても飽きないんだ
アイゼン:お前は、心水呑みなのに、甘い物も好きなのか
ロクロウ:ああ、どっちも好きだが、ダメか?
アイゼン:いや
ライフィセット:イモケンピ……食べてみたいな
ライフィセット:あっ……
ベルベット:恥ずかしがらないでいいわ。言ったでしょ。おなかが空くのは生きてる証拠よ
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:王都にきてよくわかった
アイゼン:聖寮──そして導師アルトリウスは、思っていた以上に支配力を増しているな
ロクロウ:王国そのものって感じだな。なにより民衆の支持が圧倒的だ
ベルベット:人類の救世主、導師様か
アイゼン:さらに気になるのは、アルトリウスが「聖主カノヌシの加護をもたらす」と言っていたことだ
ベルベット:聖主……教会が祀ってる神様よね?
ベルベット:演説でも言ってたけど、本当にそんなものの力をどうにかできるの?
アイゼン:わからん。俺たち聖隷にとっても聖主は、話でしか聞いたことのない伝説上の存在だ
アイゼン:しかも演説では「五番目の聖主カノヌシ」と言っていた
アイゼン:聖主は、地水火風を司る四柱のはずだが……
ベルベット:新しい聖主ってこと……?
ロクロウ:ライフィセットは、なにか聞いてないのか?
ライフィセット:ごめん、僕もわかんない……
ベルベット:いいわ。アルトリウスの言葉にとらわれすぎると奴の術中にはまる危険がある
ベルベット:あいつは聖人なんかじゃない。目的のためにはなんだってする男よ
ベルベット:神様をどうこうできるはずがないわ
アイゼン:奴らを甘く見るなよ
ベルベット:甘くなんて見てない。だから闇ギルドの力を借りて追い詰めるのよ
ベルベット:あいつを確実に殺すためにね
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:エレノアという対魔士と、なにか因縁があるのか?
ロクロウ:ノースガンドで初めて会った時にあいつが泣いてたのをベルベットが茶化したんだ──涙目対魔士ってな
アイゼン:対魔士がなぜ泣く?
ベルベット:全を守るためには個の犠牲もよしとするアルトリウスの理に、後ろめたさを感じたんでしょ
ベルベット:甘ちゃんなのよ
アイゼン:……それであれだけやれるのか。一等対魔士の肩書は伊達じゃないようだな
ベルベット:……?
アイゼン:油断はするな、という話だ
ロクロウ:ところで、マギルゥが追っかけてたビエンフーとかうのは、本当に聖隷なんか?
アイゼン:俺たちとは異なる種族だが、聖隷だ
ロクロウ:なら、マギルゥは対魔士ってことか。魔女とか魔法使いとか言ってたのはなんだったんだ?
ベルベット:監獄島に捕まっていたことを考えれば、聖寮からはじき出された奴なのかもね
アイゼン:あるいは、ただのペテン師か
ベルベット:そうね。対魔士じゃなくても、あの妙な聖隷がいれば奇術ごっこくらいはできる
ロクロウ:エレノア様は、ビエンフーが守るでフよ〜!かかってこいでフ〜!だもんな
ライフィセット:ふふっ……
ロクロウ:おっ、笑った!
ライフィセット:……!ごめんなさい
ロクロウ:なんで謝るんだよ。ビエンフーが面白かったんだろ?
ライフィセット:……うん
ロクロウ:笑いたいときは笑えばいいんでフ〜!!
ライフィセット:はは……はははは
ロクロウ:そんなにおかしいなら、お前もやってみろ。ほら、僕はライフィセットでフ〜!!
ライフィセット:あ、うん……僕はライフィセットで──
ベルベット:やめなさい!
ライフィセット:えっ!?
ロクロウ:なんでだよ?
ベルベット:……ほら、人が見てる。目立つのは困る
ライフィセット:……ごめんなさい
ロクロウ:まったく余裕のないやつだな。ライフィセット。あとで二人でやってみような
ライフィセット:う、うん……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:赤精鉱の「赤聖水」って、体によくないから禁止されてるのに、どうしてつくったのかな……?
ロクロウ:禁止されてるからさ
ライフィセット:えっ……?
ロクロウ:国や聖寮が、世のため人のためだと規律をつくっても、その全部に納得がいくとは限らないだろ?
ロクロウ:タバサのマーボーカレーが禁止されたら、お前はずっと我慢できるか……?
ライフィセット:嫌だけど……禁止だし……
ライフィセット:あっ……
ロクロウ:ははは、禁止されようとなんだろうと腹は減る。欲しい客はいるってことだ
アイゼン:だが、禁制品だけに世に出回る品は限られ、値がつり上がる
ライフィセット:だから、つくるんだね
ベルベット:きれいごとだけじゃすまない。世の中には、そこらじゅうに「裏」があるのよ
ライフィセット:裏……
アイゼン:金で請け負う殺し屋、密造の武器商人、莫大な利子をつけて金を貸す高利貸し
アイゼン:俺のような海賊も、情報の見返りに船止め(ボラード)になる奴も、ヘラヴィーサの商船組合も、同じ裏社会の住人だ
ロクロウ:ひよこを青く塗って高く売りつけてる奴も、路地裏で虫を戦わせて賭け事している連中もな
ライフィセット:…………!
ロクロウ:笑顔を向けてくる奴にも、裏の顔がある。出し抜かれたくなければ、気を抜かないことだ
ライフィセット:……どんな虫が戦うのかな……
ロクロウ:そこかよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:そういや、さっきすれ違った街の奴らが俺たちのこと話してたぜ
ライフィセット:僕たちのこと……?
ロクロウ:ヘラヴィーサを焼き落して、海門要塞を潰した業魔が王都近辺まで迫ってるから、気を付けろってな
アイゼン:派手にやらかした割りには、静かなもんだ
ベルベット:そのうちもっと有名になるわよ。導師を殺した世界の仇としてね
ロクロウ:そうなったら、楽しいぜ
ライフィセット:どうして……?
ロクロウ:俺たちを捕まえようとする連中が賞金を懸けて指名手配書をあちこちに貼るようになるんだ
ロクロウ:その似顔絵が、描き手によって全然違ってくるんだ。なあ、アイゼン
アイゼン:ああ、俺も自分の手配書を何十枚とみてきたが、化け物にされたり、美少年にされたり味わい深いぞ
ライフィセット:僕も、早く指名手配されたいな……
ロクロウ:だったら、がんばって、世の中かき回さないとな!
ライフィセット:うん、がんばってかき回すよ
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
ロクロウ:どうした、いつも以上に元気がないな?
ライフィセット:……僕、役に立ってるのかな
ロクロウ:ん?
ライフィセット:ロクロウはなんでも斬れるし、アイゼンは誰でも殴る。ベルベットは強いし、なんでも食べる……
ベルベット:……ん?
ライフィセット:でも、僕は格闘術は得意じゃないし、いつも元気がないって言われるし……
ロクロウ:そこに引っかかるか?
アイゼン:戦いというのは、攻撃だけ強くても意味がない。攻守のバランスが大事なんだ
アイゼン:お前の回復術があるおかげで、俺たちは迷わず戦えている
ベルベット:……そうね。なにもしなかったマギルゥに比べたらあんたは十分戦力になってるわ
ライフィセット:なにもしなかったマギルゥと比べて……
ベルベット:違う。今のは、いかにマギルゥが役に立たなかったかを言おうとしただけで……
ライフィセット:…………
アイゼン:いきなり一人前になれると思うな
ライフィセット:えっ……
アイゼン:心が解放されて間もないお前が、ここまで戦い続けていられるのは、十分に凄いことだ
アイゼン:力というのは、心と体を鍛えて培うものだ。お前がその努力を怠らなければ、必ず強くなれる
ライフィセット:アイゼン……
アイゼン:大切なのは強くなりたいという気持ちだ
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:こんな道を知ってるなんて、やっぱり「血翅蝶」って凄いんだね
ロクロウ:その情報を活かすための仲間が城の中にまでいるんだから、大したもんだ
アイゼン:王国全土に支部を置き、犬や猫さえも情報集めに使うノウハウをもっているという話だ
マギルゥ:儂も聞いたことがある。連中は仲間の死体すら無駄にはせんとな
ライフィセット:仲間の死体……!?
マギルゥ:その昔、城に忍び込んだ「血翅蝶」の男が警備兵に追われ、この地下道に逃げ込んだそうじゃ
マギルゥ:男は水に潜って追っ手をやり過ごそうとしたが……パ〜クパクパク〜〜ッ!!!
ライフィセット:!!
マギルゥ:ほどなくして、ワニに食われた男の腕だけがお堀に流れ着いた
マギルゥ:それを見て、血翅蝶の連中は二つの情報を得たという
ライフィセット:二つ……?
マギルゥ:一つは人が通れる地下道の存在。もう一つは……ワニ料理がこの街でもつくれること
マギルゥ:ワニの肉は人の血で揉むと柔らかくジューシーになり、マーボーカレーには最高に合うそうじゃて
ライフィセット:……僕が食べたのは!!
ベルベット:へえ、そんなに美味しいなら、試してみようかしら。ウソしか言わない魔女の血で
ロクロウ:俺も食ってみたいなぁ
アイゼン:戦力ダウンにはならん
マギルゥ:……坊の緊張を解くためのかわいいジョークじゃて
ライフィセット:ウソ……なんだよね?
マギルゥ:ワニというのは真っ赤なウソじゃがのう、坊が食うたマーボーカレーには人食いナマズの──
ベルベット:…………(マギルゥを突き飛ばす)
ベルベット:行くわよ
ライフィセット:うん
マギルゥ:こら〜〜ッ、この魔女殺し〜〜ッ!!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:業魔から市民を守るための城塞都市じゃというに王家の足元に業魔がおるとは、聖寮の怠慢じゃ!
ロクロウ:確かに、聖寮にしてはわきの甘い警備だよな
ロクロウ:巨大な防壁で街を囲って、その内側を守るってのが、王国と聖寮の対業魔政策だもんな
アイゼン:壁の内側で発生した業魔にとって、外に逃げるのは容易じゃないともいえる
ライフィセット:王宮は広いし、建物も大きいから、隠れる場所もたくさんある
ライフィセット:取水口を通り抜けるのは業魔にとって難しいことじゃないよね
マギルゥ:そのくらいのことは、聖寮もわかっておろう。むしろ、誘い込んで一網打尽にすればよかろう
ベルベット:業魔の存在に気付きながら放置してる?でも、そんな理由なんて……
マギルゥ:さぱらんのぉー
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ベルベット、浮かぬ顔じゃのー。小悪党とはいえ人間を殺すのは気が重いかえ?
ベルベット:別に……あんたみたいにヘラヘラしてる奴がどうかしてるのよ
マギルゥ:儂は裏切り者を探しに行くのであって、人殺しに行くわけではないからのー
ベルベット:…………
ライフィセット:殺さないといけないのかな……赤聖水をやめさせるだけじゃダメなのかな
ロクロウ:話が通じる奴ならいいんだがな
ライフィセット:……?
ロクロウ:酒場の噂話じゃ、あの大司祭は相当なくせ者だぞ
ロクロウ:今でこそ、聖主教も聖寮も民衆から支持されてるが、三年前まで、閑古鳥が鳴いてたそうだ
ロクロウ:そんな苦しい時代にも、ずっと聖主教会に尽くしてきたのが、あの大司祭ギデオンだったとか
アイゼン:だが、「降臨の日」を境に聖隷が見えるようになり、聖隷術が業魔退治に有効だと知って、掌を返した
マギルゥ:目に見えぬものしか信じられぬ、愚か者の群れじゃからのー、人間というのは
アイゼン:民衆の支持を得た聖主教会の連中は浮足だって、醜い権力争いが起こったらしい
アイゼン:名ばかりの司教や、権力目当てに入信した新参者、大司祭の座を狙った連中は、みんな消えた
ライフィセット:……教会を辞めたの?
ロクロウ:いや、みんな、死んじまったそうだ。病気だの事故だの死に方は色々らしいがな
ロクロウ:その結果、ギデオンが大司祭になった
ライフィセット:……!!!
マギルゥ:そうまでして大司祭になったと言うに、今や民は「導師アルトリウス様」の大合唱
マギルゥ:心穏やかではなかろうのー
ロクロウ:ま、俺たちにも色々仕掛けてくるかもしれん。用心したほうがいいだろうな
ベルベット:どんな奴だろうと関係ない。やるべきことをやるだけよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……ふぅ
ロクロウ:緊張してるのか、ライフィセット
ライフィセット:……少し
マギルゥ:ならば、儂がまじないを教えてやろう
ライフィセット:フィッチ、ウィッチ、フィッチ……ってやってたあれのこと?
マギルゥ:あれは、運勢や未来を視る占いじゃ
マギルゥ:まじないと言うのは、自分にかける幸運の魔法のようなものじゃよ
マギルゥ:この呪文を唱えるんじゃ
マギルゥ:マギンプイ!
マギルゥ:ほうれ、効き目抜群じゃ!
ライフィセット:どういうこと……?なんの魔法なの?
マギルゥ:どーでもいいことが、どーでもよくなる魔法じゃよ
ロクロウ:どうでもいいなら、最初からどうでもいいだろ?
マギルゥ:人は気づかぬうちに、どーでもよいことに捉われる生き物なんじゃて……
マギルゥ:とにかく儂の後について唱えるのじゃ、よいな
ライフィセット:う、うん……
マギルゥ:マギンプイ!
ライフィセット:マギンプイ……
マギルゥ:声が小さい!もう一度……マギンプイ!
ライフィセット:マギンプイ
マギルゥ:もっと心を込めて!マギンプイプイッ!
ライフィセット:マギンプイプイ!
マギルゥ:もっと!
ライフィセット:マギンプイプイ!!
マギルゥ:しーっ!静かに……儂らは侵入者じゃぞ
ライフィセット:ええーーっ!?
マギルゥ:くくく……これがお約束なんじゃ
アイゼン:うるせぇ!
マギルゥ:イテテテ……なんじゃなんじゃ!和ませようとした儂の心がわからぬかー
ベルベット:今は和む必要なんてない
マギルゥ:まったく、業魔と聖隷には余裕がなくて困る
ライフィセット:マギンプイ……
マギルゥ:……?
ライフィセット:どーでもよくなった?
マギルゥ:くぅ……坊に慰められるとは……もー、どーでもいいわい……
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:あらためましてみなさん、聖隷ビエンフーでフ〜!よろしくお願いしまフね〜♪
ビエンフー:ちなみにボクの聖隷ランクは「A」でフ!
ビエンフー:ライフィセット、同じAランク同士仲良くしようでフね〜
ライフィセット:聖隷ランク……僕もAランクなんだ
ロクロウ:不思議はない。見かけによらず、なかなか力があるからな
ロクロウ:アイゼン、お前もAランクなんだろう?
アイゼン:らしいな。だが、聖寮が俺たちを使役するために決めた胸クソ悪い物差しにすぎん
ロクロウ:そういうものか
ライフィセット:ごめん……
アイゼン:いや、いい
アイゼン:ただ、自分の価値を、他人の物差しに任せて喜ぶような男にはなるんじゃないぞ
ライフィセット:うん、わかった
ビエンフー:ビエーン!ボクのよりどころ全否定でフか〜?
マギルゥ:海賊や業魔の言うことなど気にするでない。お主は儂にとって「特別なエーキュー」じゃよ
ビエンフー:特別なA級!?
ビエンフー:感動でフ〜!マギルゥ姐さん、そんな優しい言葉をかけてくれる人になったんでフね〜!
マギルゥ:昔から変わらぬぞ。主が「永久」に儂のしもべでらうことはの〜♪
ビエンフー:そっちのエーキューでフか〜!?そーバーッド!
ベルベット:緊張感のないヤツが、また増えたわね……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ふ〜む、さっきのケンカ屋は潜り込んでおらんようじゃな
ビエンフー:あいつの気配は、バア〜っと遠くへ去っていったでフ
アイゼン:風のザビーダ……か
ロクロウ:なかなか強かったな。アイフリードを知ってるようだったが?
アイゼン:……わからん。奴に聞け
ライフィセット:ザビーダの武器、ペンデュラムだったね
ロクロウ:そういえば、アイゼンは初めて会った時もペンデュラムのことを言っていたな
ベルベット:あれを頼りにアイフリードを捜していたのね。そんなあいまいな手がかりで、よくやるわ
ライフィセット:ザビーダが、アイフリードの失踪に関わってるのかな?
ビエンフー:バーット、ザビーダからは、ちっとも殺気を感じなかったでフけど?
マギルゥ:わからんが、多分また会うじゃろうて。聖寮にも因縁があるみたいじゃったしのう
ライフィセット:僕……あの人、嫌じゃないけど……
ロクロウ:ああ。なんとなく嫌いになれんヤツだったな
ベルベット:好きでも嫌いでも、また邪魔したらぶっとばすけどね
ビエンフー:い、今すごい殺気を感じたでフ〜!?
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:マギルゥ姐さん……あのベルベットという業魔本気で導師アルトリウス様を殺す気なんでフか?
ビエンフー:一体なにを考えてるんでフ〜??
マギルゥ:さぁての。案外な〜んにも考えておらぬのではないか
ライフィセット:違うよ……「殺した」って言ってた
アイゼン:演説の時だな
ロクロウ:俺も効いた。アルトリウスは「仇」だと
ビエンフー:それにしたって、すっごい憎しみでフよ。アルトリウス様とは、どんな関係なんでフか……?
マギルゥ:様はいらんぞ
ビエンフー:ワット?
アイゼン:その時がくれば、わかるだろう。生きてアルトリウスに牙を突き立てられればな
マギルゥ:その通り。すべてを焼き尽くす憎悪の炎が、一体だれを焼くかも……のう
ライフィセット:!!
ロクロウ:危ない橋だが、つきあうのも恩返しだ。行こうぜ、ライフィセット
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ここは遺跡みたいだが、どこなんだ?
アイゼン:……壁や柱の様式から考えると、ここは聖主ウマシアを祀った古代の地下聖殿のようだな
マギルゥ:ウマシアは、地を司る聖主様じゃったのー
アイゼン:そうだ。俺たちが、地脈からこの聖殿に出てきたことも無関係ではない
ロクロウ:人間たちが聖殿をつくろうと掘った穴が、たまたま地脈に繋がったってことか?
ロクロウ:こう……ボコッと
アイゼン:地脈というのは、そういうものじゃない。普通の人間には知覚できない自然の力の流れだ
アイゼン:だが、古代には見えない存在を感じ取れる人間が多くいた
アイゼン:人間は彼らの導きによって、聖主に近づくべく地脈の近くに聖殿をつくった
ロクロウ:ほほう……
ベルベット:聖主は自然の力を操る存在。地脈を聖主と同一視して「ご神体」にしたってわけか
アイゼン:そうだ。聖主信仰が強かった時代には、こういった聖殿は、あちこちに点在していた
マギルゥ:つまり、どこも似ておるゆえ、外に出てみん限り、ここがどこかはわからん……ということじゃの
アイゼン:そうなるな
ロクロウ:ふうむ……穴を掘った時、いい刀になりそうな鉱石とか見つからなかったのかな?
アイゼン:……お前には説明しても意味がなさそうだな
ベルベット:前からちょっと思ってたけど、アイゼンって案外説明好きよね
アイゼン:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
エレノア:その古文書……あなた、読めるの?
ライフィセット:ううん。いろんな言葉を勉強したけど、これは見たことない言葉で書いてあるから
ライフィセット:エレノア……は、読めるの?
エレノア:私も、この言語は初めて見ます。このような珍しい古文書をどこで……?
ライフィセット:えっ……そ、それは……
ベルベット:王都で掘り出し物を見つけたのよ。この子、本を読むのが好きだから
エレノア:意外ですが、聖隷は読書好きなのですね。ビエンフーも、しばしば読書をしていました
ライフィセット:そうなんだ
エレノア:ええ。なにを読んでいたのかは知りませんが……
ビエンフー:ボクを読んだでフかー♪
ライフィセット:ビエンフーも本が好きなの?
ビエンフー:イエ〜ス!本は素晴らしい知識を与えてくれまフからね〜
ビエンフー:でも、Aランクの僕が読む本は、ライフィセットのようなお子様には、難易度が高いかもでフけど〜
ライフィセット:「好みの人間女子を口説いて器にする方法」「かわいこちゃんと好き好きスキンシップ」
エレノア&ベルベット:!?
ビエンフー:……ビエッ!?
ライフィセット:口説くって……どういう意味?
ベルベット&エレノア:知らなくていいから(です)
ライフィセット:は、はい……
ベルベット:とりあえず、この本は全部没収
エレノア:問い質したいことがあります。ビエンフー、あとで厳しく尋問させてもらいますよ
ビエンフー:ビエ〜〜〜ン!!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……うーん……
ロクロウ:どうした、ライフィセット?
ライフィセット:女を見かけで判断しちゃだめって言われたんだけど、僕、どうしていいかわからないんだ
ロクロウ:それは男の永遠のテーマだよな、アイゼン
アイゼン:ああ……女という生き物は実に厄介なものだ
アイゼン:息をするように嘘をつけるのが女、女の嘘を決して見抜けないのが男……
ロクロウ:……わかる……わかるぜ
ライフィセット:二人とも……とてもつらい思い出があるみたいだね
ロクロウ:刀で斬られた傷よりもm、女に付けられた傷のほうが治りが遅いのさ
ライフィセット:……そんなに!?
アイゼン:女の涙には気を付けろ。決して女には油断をするな。これだけは覚えておけ
ライフィセット:女の涙には気を付けろ……油断するな
ベルベット:ちょっと、あんたたちライフィセットに変なこと教えないでよね
アイゼン:真実だ
ベルベット:あんまり余計なことを吹き込むなら、あんたたちを喰らうから
ロクロウ:おお、コワイコワイ
マギルゥ:剣士も海賊も、女でクロウしとるようじゃのー。ま、そのめんどくささが女というものじゃよ
マギルゥ:儂は、お主らに強い同調と深い同情を感じるぞ
ロクロウ:今のベルベットとマギルゥをどう思った?
ライフィセット:ベルベットはロクロウたちを食べたりしないし、マギルゥにわかってもらえてる感じはしなかった
ロクロウ:女を見かけで判断するなというのは、そういうことだ
アイゼン:そして、お前はそれができているようだ
ライフィセット:……うん!
エレノア:……私は違いますからね
ライフィセット:えっ?
エレノア:感情と関係なく、涙を自在に操る女性はいますが、みんながそうではありませんし、私はウソが嫌いです
エレノア:アイゼンやロクロウの出会った女性が極端だっただけです
ライフィセット:エレノアは嘘が嫌いなんだね
エレノア:えっ……あ、はい
アイゼン:ライフィセットが俺たちのようにならないようにお前が見本を示してやってくれ
エレノア:いわれなくても、そうさせていただきます
ライフィセット:(エレノアも見かけより、気が強いよね……)
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……うーん……
ベルベット:どうしたの、ライフィセット?
ライフィセット:女のひとが見かけ通りじゃないとして、男は見かけ通りなのかな……と思って
ベルベット:そうね。男は単純な生き物だから
ライフィセット:男は単純……
マギルゥ:ほう、まるで男のことならなんでもわかっているような口ぶりじゃのー
マギルゥ:どうせサンプルは、家族だけじゃろーて
ベルベット:そうやって人を下に見てればいいわ
マギルゥ:ほう、その口ぶり……お主の恋人はさぞや素敵な殿方なんじゃろーのー
ベルベット:そうね
マギルゥ:顔はどんなじゃ?背は高いのか低いのか?
ベルベット:あんたに教える必要ない
マギルゥ:いつもスイングドアの向こうにいた人ゆえ、足元しか見たことなかった……とか言うまいな?
ベルベット:!!
マギルゥ:図星かえ……ステキな片思いじゃのー
ライフィセット:……その話、読んだことある。たしか……「足だけおじさん」っていう小説
ベルベット:へえ、そんな小説があるんだ
エレノア:私も読んだことあありますが、切なくて甘酸っぱくて、とても面白い小説です
エレノア:未読なら、一度読んでみることを強くすすめます
ベルベット:……アルトリウスを殺してヒマになったら読むわ
エレノア:…………!
マギルゥ:くふふふふふふ……
ライフィセット:僕が聞きたかったのは、男が見かけ通りかどうかなんだけど……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:破ッ!!……斬ッ!!
ライフィセット:ロクロウ、なんか楽しそうだね
ロクロウ:俺は「夜叉」だからな
ライフィセット:夜叉……戦いの鬼神……
ロクロウ:応、斬ってなんぼって業魔なのさ
ライフィセット:でも、「刀斬り」は異国の刀で対魔士も倒したって……怖くないの?
ロクロウ:死ぬのがか?
ライフィセット:……うん
ロクロウ:死ぬのは怖くないが、「生きたい」とは思う
ライフィセット:……?
ロクロウ:斬ることが俺の存在そのもので、欲なんだ。それを満たすために斬る……「生斬る」なんてな
ライフィセット:…………
エレノア:他者を斬り殺すことが生きがいだなんて……業魔はどこまでいっても業魔なのですね
ロクロウ:身も蓋もない言い方だなぁ。ははは
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……ライフィセット、ちょっと
ライフィセット:なに……?
ベルベット:命令じゃなくても助けるなんて言葉、真に受けちゃだめよ
ベルベット:対魔士は、聖隷をモノとしか思ってないんだから
ライフィセット:でも、助けてくれたのは本当だから……
ベルベット:恩を感じるのは仕方ないけど、あんまり嬉しそうな顔をしないの
ライフィセット:……ごめん
ベルベット:謝ってほしいわけじゃなくて……あいつには、こっちの警戒が鉄壁だって思わせておきたいの
ベルベット:いくらあんたと親しくなっても、あたしの方が優先だって意識させたいわけ
ライフィセット:ええっと……どうすればいいの……?
ベルベット:つまり……わかりやすくいうと……
ベルベット:あたしを一番、エレノアは二番にしなさいってこと
ライフィセット:……わかった。ベルベットが一番で、エレノアは二番
ベルベット:そう、あたしが一番……
ベルベット:……って、なに言ってるのよ、あたし……
ライフィセット:大丈夫、ちゃんとわかったよ?
ベルベット:そうじゃなくて……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:シグレが連れてたあのデブネコ、なんなの?
エレノア:ムルジムのことですね……あんな見た目ですが、れっきとした聖隷です
ベルベット:それで?
エレノア:それでって……聖隷としての能力の話ですよね
エレノア:話したくないとか、虚偽ではなく、あの聖隷のことは名前以外の情報はありません
ベルベット:…………
エレノア:特等対魔士でありながら、シグレ様は聖隷術を使わずとも対魔士や業魔と渡り合えるほどの武人……
エレノア:シグレ様が術を放つところを見た者はおらず、ムルジムは聖寮七不思議のひとつとされているのです
ライフィセット:聖寮七不思議……
エレノア:ムルジムの能力はおろか、シグレ様がムルジムと契約した経緯すら、知る者はいません
ビエンフー:バ〜〜ット!!ボクは知ってるでフよ〜〜!!
エレノア:!?
ビエンフー:これはトップシークレットなんでフけど〜、ムルジムはとーってもめんどくさがり屋で
ビエンフー:毛づくろいとノミ取りを条件にシグレ様と契約したんでフよ〜〜!
ベルベット:それで?
ビエンフー:ああ、あとこれはナイーヴな話でフけどね、デブじゃなくてぽっちゃりさんでフよ
ビエンフー:敵でフけど、女の子同士なんでフから、傷つけあっちゃダメでフよ〜〜!!
ベルベット:…………
ベルベット:他には?
ビエンフー:あの太眉は、聖隷界では憧れの個性でフね〜もうすぐつけ眉が商品化されるともっぱらの噂でフー
ベルベット:はあ……あの強さに聖隷術が加わったら……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ロクロウとシグレ様は同じランゲツ流なのに、戦い方が違うよね?
ロクロウ:ランゲツ流には、大太刀一刀の表芸と、小太刀二刀の裏芸──二つの剣技があるんだ
ベルベット:シグレが表で、ロクロウが裏の業ってわけね
エレノア:通常の武術では、裏芸は表芸を補助する技のはずですけど
ロクロウ:ランゲツ流でもそうさ。小太刀は、大太刀の修行相手として覚える技だ
エレノア:そんな不利な技で、シグレ様に挑む気なのですか?あの方の剣は尋常では──
ロクロウ:嫌ってほど知ってるさ。シグレが本物の天才だってことは
ロクロウ:ガキの頃から十年……あいつの修行相手をしたのは俺だからな
エレノア:…………
ロクロウ:あいつの大太刀はまさに神技だ
ロクロウ:だから俺は……シグレに勝つためにあいえて小太刀を選んだ
ロクロウ:この身に一番染み込んだ裏芸をな
アイゼン:間合いの不利は明白だぞ
ロクロウ:恐怖を消せば、可能性はある
ロクロウ:一刀両断にされる恐怖を制止てあいつの間合いに深く踏み込めれば……
ロクロウ:手数は二倍だ
ベルベット:恐怖を消す……か。人間じゃなくなった業魔ならではの剣ね
ロクロウ:だろう?
マギルゥ:この兄弟は、もっておる刀そのものじゃのう
ライフィセット:え……?
マギルゥ:最強の誉れも高い神の剣「號嵐」とそれに打ち勝とうと足掻き続ける業をもつ「征嵐」
マギルゥ:陽向を歩く対魔士の兄と、日陰を歩く業魔の弟。正反対の二人が求めるのは、ただひたすらに──
ライフィセット:相手を斬ることだけ
マギルゥ:じゃろ♪
エレノア:どちらも名刀……でも、対魔士と業魔が似ているなんて……?
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:エレノア、気分は悪くない?
エレノア:ええ、今のところは大丈夫です
ライフィセット:ならいいけど、アイゼンの「死神の呪い」は甘くみたらダメだよ
エレノア:その呪いって、本当なんですか?どうも信じられないんですが……
マギルゥ:そういうことを言っておると、急に腹痛になったり、靴擦れしたり、口の中に虫が飛び込んだりするぞ
エレノア:虫……!?
ビエンフー:姐さん、テキトーなこと言ってエレノア様を怖がらせちゃダメでフ〜!
ビエンフー:これまでにバンエルティア号を取り締まった海軍の軍艦が四隻も行方不明になってるとか
ビエンフー:アイゼンが泊まった島の男が業魔病になったとか、肩がぶつかった人が笑いが止まらなくなって死んだとか
エレノア:やめてください。そっちの方が怖いです……
アイゼン:つくり話だ
アイゼン:軍艦は七隻、島民は男だけじゃなく全員、ぶつかった奴は笑いじゃなくしゃっくりだからな
エレノア:ひえ……っ!?
ビエンフー:こ、こわいでフ〜……!
ロクロウ:だが、壊賊病に関しては心配いらんだろう。サレトーマの花を絞って飲めばいいんだから
ベルベット:花が咲いていれば、ね
ロクロウ:ああ、それはそうだ
エレノア:嫌な予感がしますね……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:(死神の呪い──聖寮もしらない未知の情報……よく調べておく必要がありますね)
エレノア:それにしても、裏面しか出ないコインなんて。聖隷の力が、そこまで影響を及ぼすものなのですか?
マギルゥ:疑り深い女じゃのー
ライフィセット:でも、アイゼンのコインは本当に裏しか出ないんだよ
エレノア:マギルゥ……ひょっとして、あなたが術でイタズラしているのでは?
マギルゥほう、そうくるか?
エレノア:ええ、疑り深い女ですから
マギルゥ:根に持つ女でおまったけ。じゃが、残念ながらはずれじゃ
マギルゥ:むしろ、術で表を出そうと試してみたが、ど〜してもできんかったわい
アイゼン:コインに種も仕掛けもない。確かめてみるか?
エレノア:あっ!これは……魔王ダオス!
アイゼン:よく知ってるな。これはカーラーン──
エレノア:カーラーン金貨ですね!本物を見るのは初めてです
エレノア:はるか古代の貨幣なのに、つい最近つくられたみたいにきれいですね
アイゼン:ふっ……それには理由がある。一見柔らかい金でできているが特殊な加工で硬度を──
エレノア:はい、傷がつきやすい金の表面に、指の温度に反応する特殊な形状記憶合金をメッキしてあるんですよね
エレノア:だから傷がつきにくい
アイゼン:そう……か
エレノア:私たちにはマネできない未知の技術です。これに仕掛けをするのは無理ですね
エレノア:死神の呪い……認めざるをえないかも……
ロクロウ:ん?表面を硬くする加工じゃなかったか?
アイゼン:……勘違いだろう
ライフィセット:でも、前にアイゼンは……
ベルベット:そういうことにしておきなさい
ライフィセット:……うん
アイゼン:形状記憶……ううむ、そんな技術が……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:そういえば、サレトーマの花言葉がなにか知っておるか?
エレノア:確か……「偽りの共生」でしたか?
ベルベット:花言葉までシュミが悪いのね
ライフィセット:偽りの、共存……
マギルゥ:くくく、今の儂らにはピッタリな花じゃのー
ライフィセット:…………
ロクロウ:どうした、ライフィセット
ライフィセット:マギルゥの言う通り……なんだよね?
ロクロウ:まあな。エレノアは聖寮の人間だし、俺たちと心から仲良くするってのは無理な話だろうな
ライフィセット:だよね……
エレノア:あ、でも、いがみ合うばかりではなく、その……共通項というか、落としどころはあると思いますけど
ビエンフー:偽りの共存でも、ノープロブレムでフよ〜!!エレノア様にはボクがいるでフ〜!!
ビエンフー:ボクとエレノア様は、一度は永遠を誓い合った仲なんでフから〜♥
エレノア:あなたを使役する契約をしただけです。誤解を招くような言い方はやめてください
ビエンフー:ビエ〜〜ン!!エレノア様……ソー・クール……
マギルゥ:泣くなビエンフーよ。お主には儂がおるではないか!
ビエンフー:おお、マギルゥ姐さん!やっぱりボクには姐さんしかいなでフ〜……
マギルゥ:よしよし、儂のありがた〜い恩を思い知って文句を言わず働くのじゃぞ♪
ビエンフー:はいでフ〜!新しい愛を見つけるまでそこそこ頑張るでフよ〜
ベルベット:ライフィセット。偽りの共存って、ああいうのを言うのよ
アイゼン:業魔と対魔士、聖隷と海賊と魔女……
アイゼン:確かに俺たちは、一心同体にはなれんが、互いの立場を偽りなく理解しているはずだ
ライフィセット:うん、偽りの共存じゃないよね
ベルベット:まあね。「勝手な共存」といったところよ
ライフィセット:あはは、そうかもね
エレノア:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:この虫……強そうだなぁ
ビエンフー:でフね〜。ボクもたいがい長生きしてまフけど、こんなヤツ初めて見たでフ〜
ライフィセット:たぶん新種だと思う
ロクロウ:そりゃあすごいな!
アイゼン:もし新種なら、発見者の名前を付けるのが通例だ。さしずめ「ライフィセットオオカブト」か
ロクロウ:カブト?おいおい、どう見たってクワガタだろ!
アイゼン:いや、これは一見ハサミだが、実は角とみた。新種の三つ角カブトとして昆虫学会に衝撃が走るはずだ
ロクロウ:いやいや、普通にハサミでいいだろう?なかなかの名刀だぞ、こいつは
ロクロウ:「ライフィセットオオクワガタ」!ほら、こっちのが名前もしっくりくるし
アイゼン:どこがだ?
ロクロウ:どこがって全部だよ。クワガタは最強の昆虫だからな
アイゼン:……聞き捨てならんな。昆虫界の王者、カブトを舐めるなよ
ロクロウ:カブトが舐めるのは樹液だけだろう?
アイゼン:あ?それはクワガタも同じだろうが
ライフィセット:アイゼン、ロクロウ……
ビエンフー:け、険悪な空気でフ〜……
ロクロウ:すくい上げしかできないカブトの角と違って、クワガタは相手を挟み切ることもできるからな
ロクロウ:その太刀筋は変幻自在。まさに昆虫界の名剣士だ
アイゼン:小細工だな。圧倒的なパワーで我が道をゆく、それがカブトの生きざまだ
ロクロウ:でも、一年で死ぬだろ?そこへいくとクワガタは越冬できるぞ
アイゼン:死ぬのはあえてだ。太く短く──カブトの美学がなぜわからん!?
エレノア:男の人って、どうして虫の話なんかで盛り上がれるんでしょうね……
マギルゥ:カブトでもクワガタでもチョウチョでも、どーでもよかろうにのー
ベルベット:……ゴキブリとどこが違うのかしら
ロクロウ&アイゼン:一緒にするな!
ビエンフー:……名前はどうするんでフか?
ライフィセット:うん……「クワブト(仮)」にしておくよ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……サレトーマの花、ラズベリーみたいないい匂いがする
ロクロウ:どれどれ……お!美味そうな匂いじゃないか
ライフィセット:本当に不味いのかな?
アイゼン:その匂いにつられて口に入れたが最後、花汁が口の中で変質し、おぞましい味になるんだ
ロクロウ:おぞましい味?
アイゼン:花びらはミントの数千倍のスパイシー液となり、葉や茎は超濃厚な牛タン味となる
アイゼン:二つの味が、舌の上で猛烈に絡み合い発泡し、むせかえるような刺激と苦みが全身を襲う!
ライフィセット:ええっ!?
ロクロウ:マジか!?
アイゼン:……と、以前、アイフリードが言っていた
エレノア:それ……本当です
エレノア:まさに、そういう味なのです……
ライフィセット:エレノアは飲んだことがあるんだよね?不味くない飲み方はないの?
エレノア:直搾り、煎じて煮だす、はちみつに漬け込む……なにをやっても花汁の味を消すことは不可能です
エレノア:焦げ風味や甘みが加わるだけで、人によってはより飲みづらくなります……
ライフィセット:もう飲んだの?
エレノア:いえ、船に戻って、海賊のみなと一緒に飲みます
ロクロウ:ひょっとして……嫌なことは後回しにするタイプか?
エレノア:違います。信じて待っている人たちを差し置いて自分だけが先に飲むわけにはいきません
アイゼン:発病後は、花汁を飲む量が倍になるが?
エレノア:そうなのですか!?
マギルゥ:意地を張らず、さっさと飲むのが吉じゃぞ?
エレノア:……あなたはもう服用したのですか?
マギルゥ:船に戻ってからじゃが、飲むのは儂ではない。使役聖隷に飲ませれば効能だけ吸収できるのじゃ
エレノア:聖隷にとってサレトーマの味は……
マギルゥ:もちろん、かわいさ余ってまずさ一万倍じゃ!
マギルゥ:むふふ、エレノアや。対魔士でよかったの〜
ライフィセット:僕が……飲む?
エレノア:そ、そんなことさせませんよ。私は、自分でサレトーマの苦痛を乗り越えますから
マギルゥ:な〜んじゃ、つまらん
ライフィセット:ほ……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:うう、さすがサレトーマ……後味も最悪ですね……こんなものを、また飲むことになるなんて……
ライフィセット:大丈夫、エレノア……?
ロクロウ:お前、二度目の壊賊病なのか?
エレノア:いえ、新人対魔士は、入寮式後の歓迎会でサレトーマを飲むのが慣習なのです
ベルベット:悪趣味な新人イジメね
エレノア:衝撃的に不味いものを蝕したという体験を共有し、結束力を高めようと言う前向きな儀式です
ベルベット:あっそ
エレノア:もう、一生飲まずに生きていけると思っていたのに……
エレノア:ハッキリ言って、うらみます
マギルゥ:不味い不味いと言えるのは幸せじゃぞ。美味いものの味もわかるということだからのー
マギルゥ:じゃろう、ベルベット
ベルベット:…………
エレノア:どういうことですか?
ライフィセット:ベルベットは……血以外の味がわからないんだ
エレノア:えっ!?
エレノア:(そんなことが……業魔になったから……?)
ベルベット:もうひとつわかる味もするマギルゥ:、残ったサレトーマをプレゼントするわ
マギルゥ:い、いやじゃ〜〜〜!!
ベルベット:逃がすか
マギルゥ:うええぇぇ〜〜!!マッズゥゥゥゥゥ〜〜ッ!!
エレノア:な、なるほど。他人の不幸は蜜の味……ですか
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:海賊たちもベルベットたちも、どうしてこんなに理不尽なんでしょうか……?
ビエンフー:でフよね〜。負けるとはわかっても戦うなんて普通じゃないでフよ
エレノア:あなたは……自分が危うかったら仲間を見殺しにしますか?
ビエンフー:したくはないでフけど……負けたら結局助けられないでフし……
エレノア:……はい。「理」に合わない
ライフィセット:理に合わないのは、ダメなことなのかな?
エレノア:それは……
ライフィセット:聖主の御座でのベルベットは、痛くて苦しいのに立ち上がった
ライフィセット:ロクロウは、兄弟のシグレを斬るために強くなろうとしてる
ライフィセット:クロガネは、自分の頭を使って強い刀を打とうとした……
エレノア:みんな理にあわないこと……ですよね
ライフィセット:うん。でも僕は、うまく言えないけど……
ライフィセット:すごいなって思った
ベルベット:…………
マギルゥ:なんじゃのー?儂はスルーかえ?
ライフィセット:あっ……ええっとマギルゥは……どーでもいい」のに一緒に旅をしてる
ライフィセット:そういうのって……
マギルゥ:ふんふん、そういうのって?
ライフィセット:……よくわkんない
マギルゥ:ズコーッ!!
ビエンフー:ああ、姐さん!お気を確かに〜!
エレノア:ふふふ!
エレノア:よくわからないけど、すごいのは確かですね
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ロウライネの城塞は、対魔士の訓練施設だと言ったな
エレノア:はい。古代遺跡を利用した巨大な塔です
ベルベット:ライフィセット、テレサと契約した時に、あんたもそこに行ったんじゃないの?
ライフィセット:……テレサ様と初めて会った頃のことは、あまりよく覚えてないんだ
ベルベット:そう
アイゼン:どういう訓練をしてるんだ?
エレノア:対魔士の適性試験と、霊力に応じて聖隷の付与。並びに、聖隷術の修練と規律を教授する施設です
ロクロウ:下級の対魔士たちが聖隷術特訓をして、上級を目指すための道場なんだな
エレノア:いいえ。対魔士の霊力は訓練で強化する類のものではありません
エレノア:私たちは生まれ持った才能に応じた聖隷を与えられ、自らに適した技術を学ぶだけです
ベルベット:二等対魔士は、一生、二等対魔士ってことか
エレノア:はい
ロクロウ:そんなんじゃ張り合いがないだろう。強くなりたいとか、出世とか思われないのか?
エレノア:出世に意味などないですし、等級の上下は使役する聖隷の種類や数といった「適性の違い」にすぎません
エレノア:人々を業魔から守り、この世界を救うという想い、ただそのために私たちは聖寮の門をたたくのです
ロクロウ:そこまで献身的で、禁欲的な生き方をするのか
マギルゥ:まこと穢れなき誇り高き志じゃのー
ベルベット:あんたたちも、聖隷と同じように意志を抑え込まれてるんじゃないの?
エレノア:正しい志を持たないあなたたちには決してわからないことでしょうね
エレノア:ともかく城砦ロウライネには、そういう対魔士たちが待ち受けているはずです
ロクロウ:応、手洗い歓迎を期待するぜ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:しかし、ザビーダってのは、よくわからん奴だよなあ
マギルゥ:うむ。以前もそうじゃったが、相手を殺さぬことに、こだわりがあるようじゃな
ライフィセット:だから、怖い感じがしないのかな?
ライフィセット:アイゼンと戦いそうになった時でも、嫌な感じがしないんだ
マギルゥ:それは、坊がベルベットに毒されておるかrではないかえ?
マギルゥ:ベルベットに比べたら、大抵のヤツは怖くないわい
ライフィセット:そ、そうなのかな?
ベルベット:あたしにきかないでよ
ロクロウ:ははは。ザビーダを怖く感じないのは、多分あいつに殺気がないからだろう
エレノア:ケンカ屋……だから?
アイゼン:……ふん、ただの甘ちゃんかもしれんがな
ベルベット:そんなケンカ屋が、アイフリードの失踪に絡んでいて、聖寮にも戦いを挑んでいる……
ベルベット:本当、よくわからないわね
アイゼン:まったくだ
マギルゥ:のー
エレノア:……わからないという点なら、あなたたちも相当ですけどね……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アイゼン……ザビーダがもってた道具のこと、聞いてもいい?
エレノア:アイフリードの持ち物なのですよね?
エレノア:聖寮の書庫で武具に関する資料を読みましたが、あんな不思議なものは、初めて見ました
アイゼン:……あれは異大陸へ行った時に手に入れたものだ。大昔に滅んだ古代文明の遺物らしい
アイゼン:俺もそうだが、アイフリードもお宝には目がなくてな。中でも「アレ」は奴のお気に入りだった
ライフィセット:どういうものなの?
アイゼン:わからん。武器なのだろうが、アイフリードは、もったいぶって触らせてくれなかったからな
アイゼン:独りで試した後、次に俺と戦う時の切り札ができたと楽しそうに笑っていやがったが……
エレノア:未知の古代兵器……なのでしょうか?
エレノア:でも、なぜザビーダはアイフリードを捜しているのでしょう。盗んだお詫びをしようとしているとか?
アイゼン:そんな殊勝なヤツには見えんがな
ライフィセット:本当に奪ったのかな……?
アイゼン:なに?
ライフィセット:なんとなくだけど……ザビーダは人の大事なものを奪うような聖隷じゃない気がするんだ
エレノア:拾ったと言ってましたし、アイフリードにアレを孵そうとしているのかもしれませんね
アイゼン:……どうだかな……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:アイゼン。アイフリードはいつ、どのようにして失踪したのですか?
エレノア:そもそも、あなたとアイフリードの出会いは……
アイゼン:前から思っていたが、お前は、やけに俺たちを詮索するな?
エレノア:ひょえ!?そういうつもりはないのですが……すみません、巡察官の職業病というやつでしょうか??
エレノア:(しまった……あからさまに情報収集しすぎた!)
アイゼン:……まあいい。アイフリードが失踪したのは約一年前だ
エレノア:ほっ……
アイゼン:あいつは何者かに決闘の呼び出しをうけ、俺たちに隠して、ひとりで指定された場所に向かった
アイゼン:気付いた俺たちは決闘の場所に駆け付けたが、そこには激しい戦いの痕跡とペンデュラムだけがあった
エレノア:その決闘の相手が、ザビーダ……?
アイゼン:武器、そしてアイフリードとやり合える戦闘力を考えると、おそらくな
マギルゥ:解せんのは、ノラ聖隷と戦ったアイフリードが、なぜ聖寮に捕まって監獄島送りになったのか、じゃな
エレノア:監獄島に週間されていたのですか?
マギルゥ:そのようじゃ。そして、対魔士メルキオルが別のどこかへ連れ去ったらしいわ
エレノア:!?またメルキオル様が……?
アイゼン:聖寮がアイフリードを捕獲したから、一年前に大きな動きがあったはずだが?
エレノア:いえ……私は巡察官で、そういった戦闘策戦には関わっていないのです……
エレノア:あ!でも、その頃大勢の対魔士が負傷した事件がありました
エレノア:詳細が不明だったので調べようとしたのですが、対魔士部隊の出動記録すら確かめられなかった
エレノア:そして突然、調査を打ち切るよう命令されました。……メルキオル様から
アイゼン:匂うな
マギルゥ:隠したいなにかがあったからじゃろうな。点がつながり、うっすら線になってきたのー
エレノア:その線には……聖寮が絡んでいる……?
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:それにしても驚いたのう。メルキオルの幻術は、販促じゃわ
ベルベット:戦いにはんそくもなにもないでしょ
マギルゥ:正義の対魔士が使うにはえげつなさすぎる……ということじゃよ
ロクロウ:確かに幻とは思えないほど現実味があった
ロクロウ:かけ続けられたら、現実と幻の境目がわからなくなっちまうだろうな
マギルゥ:もっとも……現実と変わらん幻の中で生きられるなら、かけられた本人は幸せかもしれんがのう
アイゼン:ふん、そんな幸せクソくらえだ
マギルゥ:そうかえ
エレノア:幻術なら、肉体手kダメージを与えずに済むという見方もあります
ベルベット:人道的ってわけ?さすが聖寮ね
エレノア:メルキオル様は、聖寮創設以前よりアルトリウス様の右腕として活動されてきた立派なお方です
エレノア:組織編制から防衛戦略、政治的折衝まで、あらゆる実務を統括、遂行されてきた
エレノア:敵対する相手にさえも、最大の配慮を払っていると考えれば……
ベルベット:味方の聖隷はドラゴンに変えたわよ
エレノア:あ、あれは……
マギルゥ:体の傷は治るが、心の傷は癒えぬぞ
エレノア:その通り……ですが……
ロクロウ:そうしょげるなよ、エレノア
ロクロウ:えげつないのは事実だが、責めてるのは業魔や魔女。どっちもどっちだ
エレノア:励ましてくれるのはありがたいですが、対魔士としては喜べませんよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……あの、ライフィセット。ひとつ訊いてもいいですか?
ライフィセット:なに?
エレノア:……メルキオル様の幻術で現れた傘の女の子……あの子は、アイゼンとどういう関係なのでしょう?
エレノア:アイゼンには、直接聞ける雰囲気ではなくて
ライフィセット:わかんない。僕も気になってたんだけど……
ライフィセット:でも、かわいい感じの子だったよね
マギルゥ:ほっほぅ〜♪坊は、ああいうちょっとすましたキレカワ系がタイプだったのかえ?
ロクロウ:そうだったのか?俺は、てっきりベル──
ライフィセット:うわあ、やめて!
ベルベット:どうしたの?
マギルゥ:ちょいとデリケートな話をしとったんじゃよ。具体的にいうと、坊の初恋相手について
ベルベット:へえ
ライフィセット:違うってば!幻術で粗会われた傘の女の子は誰かって話だよ
ベルベット:傘の子か……あのアイゼンが虚を突かれ動きをとめた
ベルベット:よっぽど大切な人なんでしょうね
マギルゥ:じゃな。しかもかなり複雑で深い関係と見た!
ロクロウ:おいおい……
エレノア:つまり……別れたくても離れられない奥方?もしくは清算不可能な愛人?
ロクロウ:極端すぎるだろ……ていうか、若すぎる!
マギルゥ:いやいや、勝手気ままな海賊にふさわしいのは
マギルゥ:ボロクズのように吸った、もしくは捨てられた偽りの名しか知らぬ女との間にできた娘とか
ベルベット:実は、結ばれなかった初恋相手が亡くなってて、その娘を、なにも言わずに引き取った可能性も……
エレノア:それなら、お互い別の人と結婚した後に真の恋心に気付いてしまった幼馴染……とか!
ロクロウ:……こいつら、どんな恋愛観してるんだ?
ロクロウ:ライフィセット、とにかく女には気を付けろよ
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:実際のところ、どうなの?
ライフィセット:えっ?
ベルベット:聖隷と「器」の関係。意識や感覚の共有みたいなものはあるの?
ライフィセット:あ……うん。体の中に入っているときには、エレノアが見たり聞いたりしたことはわかるよ
ライフィセット:でも、気持ちや考えてることまではわからない。箱に入っても、箱の気持ちは分からないでしょ?
ベルベット:そういう感じか……なら、できるだけエレノアを一人にする時間は作りたくないわね
ライフィセット:い、一緒にお風呂に入るのはイヤだよ?
ベルベット:わかってる。あんたも年頃の男の子だもんね
ベルベット:お風呂はビエンフー……あいつは違うか。あたしかマギルゥがなんとかするとして……
ライフィセット:…………ふぅ
ベルベット:あんたとエレノアの間で、どんな線引きしてるの?寝るときは?
ライフィセット:寝る前に話をすることはあるけど、ベッドで隣に寝たりはしないよ
ライフィセット:エレノアの身体の中に入ってるほうが、えれのあが起きた時にも気づき易いし
ベルベット:夜中に起き出したことがあったの?
ライフィセット:ううん、今のところはないよ。それに……すごくよく寝てる
ベルベット:……?
ライフィセット:ベルベットたちと一緒にいるときは顔が怖いけど、寝てるときは、もっと優しい顔っていうか……
ライフィセット:髪もおろしてるし、なんか可愛いって思った
ベルベット:(へえ……ああいうのが好みなんだ)
ベルベット:でも、それはそれ、監視は監視
ライフィセット:でも?
ベルベット:年上の女には気を付けなさい
ライフィセット:えっ?
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:テレサとオスカーって、中のいい姉弟なんだね
エレノア:訓練生時代から二人を知っていますが、ケンカしているのは一度も見たことがありません
ライフィセット:ベルベットは、弟とケンカしなかった?
ベルベット:……そうね。叱ったりすると弟が拗ねて、口をきかなくなったりしたけど、それも可愛かった
ライフィセット:可愛い……?
ベルベット:意地を張っても、背伸びして大人びたことを言っても、気づくとあたしの後をついて来てて……
マギルゥ:まるで子犬じゃのー
ベルベット:犬のほうが、よっぽど言うことを聞いてくれるわ。でもm、やっぱり放っておけなくて
ベルベット:弟って、不思議な生き物なのよ
ライフィセット:……ロクロウも、可愛いのかな?
ベルベット:えっ!?
ベルベット:自分を斬り殺そうとしてる弟なんて、可愛いわけないでしょ?
ライフィセット:でも、シグレは、楽しそうだったよ
ベルベット:あんた、時々、理解の外へ飛んでいくわね
ライフィセット:ええっ、そうかな……
エレノア:ふふっ。弟か……
マギルゥ:お主、兄弟姉妹は?
エレノア:ひとりっこです
マギルゥ:ならば、ちょうどよいではないか。この際、坊を弟にすればよかろうて?
ライフィセット:えっ?
エレノア:それは極端な話ですが、ライフィセットと話していて弟がいたらこんな感じかなと思うことはありますよ
ライフィセット:僕がエレノアの弟……
ベルベット:ライフィセット、そんな戯言本気にしないで
ベルベット:聖隷を道具として扱う対魔士が、あんたを弟みたいに思うはずがないでしょ?
ライフィセット:……あ、うん
エレノア:道具扱いの件に関しては、すでに考え方を改めています。だからこそ、弟を感じるのです。本当ですよ
ライフィセット:……う、うん
ベルベット:信じちゃだめよ、こんなうわべの言葉
エレノア:自分の言うことを押し付けているあなたの方が、よほど道具扱いしているように思えますけど?
マギルゥ:おーおー、弟をめぐって二人の姉の対決じゃ。坊の好みはフィッチ・ウィッチ・フィッチ?
ライフィセット:……お兄さんがいいよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:あたしたちが捜してるグリモワールもビエンフーみたいな聖隷なのよね
ベルベット:正直、アレがライフィセットやアイゼンと同じ聖隷だとは思えないんだけど?
マギルゥ:疑問はもっともじゃが、色々と微妙な話が多くてのー
ビエンフー:話せる範囲で、説明するでフよ〜〜!
ベルベット:なら……前から気になってたんだけど、その帽子、取ったらどういう顔なの?
ビエンフー:オーノー!それだけは言えないでフ〜!
ベルベット:いきなりダメなわけ?
ロクロウ:そのハットのリボン、ビラビラしてジャマだろう?ほどいていいか?
ビエンフー:バーッド、バーッド!!絶対にダメでフー!!このリボンだけはほどいちゃダメなんでフ〜!!
ライフィセット:どうして?
ビエンフー:それも、絶対に言えないでフ〜!!
ベルベット:話せないことばっかりじゃないの。なんなら話せるわけ?
ビエンフー:たとえば、ボクたちがどんな種族かとか。聖隷界における位置づけとか能力とか
ライフィセット:あ、それ聞いてみたい
ビエンフー:では、教ええてあげまフから、よく聞くでフよ〜
ビエンフー:僕たちは「ノルミン族」というれっきとした聖隷の一種族なんでフ〜
ビエンフー:他の聖隷と比べると、自然を操る霊力は落ちるでフが、他社の力を引き出し強化する能力に秀でてるんでフよ
マギルゥ:お便利パワーアップ聖隷ということじゃな
アイゼン:別名「凡霊」だ
ビエンフー:オーバッド!!その呼び方は、ノルミン族のトラウマでフよ!
エレノア:どうしてトラウマなのです?
その呼び名のせいで平凡だと思われるんでフ。それが嫌で、みんな個性を出すのに必死なんでフよ
エレノア:それで、あなたは妙な話し方をするのですね……
ロクロウ:なんだか平凡な悩みだなあ
ビエンフー:ビエ〜〜ン!!平凡ってゆうな〜!!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ぶしつけな質問で恐縮ですが、グリモワールは聖主アメノチ……ではありませんよね?
グリモワール:そんなわけないでしょ……どういう流れで、あたしが聖主になるわけ?
エレノア:あなたにそっくりな「アメノチ様人形」がイズルトの土産屋で販売されていたものですから
グリモワール:ああ、あれね……あの店主が寝てるときに、耳元で「勝手に売るな」って囁いたんだけどね……
ビエンフー:夢にまで出てきたら、それはむしろホンモノのお告げだと思ってしまうでフよ〜〜
ビエンフー:ここはひとつ、肖像権侵害にクレームつけて、あの店主から姐さん使用料を取り立てるべきでフ!
グリモワール:そんなの放っておきなさい
ビエンフー:そうでフね、どうせ対して売れないでフもんね!
グリモワール:へえ、あたしの人形って売れないんだ……
ビエンフー:姐さんはアンニュイで渋いでフから。人形っていうのは、ボクみたく可愛くないと!
グリモワール:じゃあ、売ってあげるわ、あんたを……
ビエンフー:ホントでフか!!
グリモワール:ええ……ただし、はく製の一点モノだから、ちょっと値段は張るけどねえ……
ビエンフー:は、はく製って……姐さん、堪忍でフ〜〜!!
グリモワール:はあ……ほんと、疲れる……で、なんの話してたっけ……?
エレノア:あなたが聖主アメノチかどうかという話です
グリモワール:ああ、そうだったわね。あたしは、聖主じゃない。ただの、女よ……
エレノア:……はぁ
グリモワール:あたしみたいのが聖主じゃ、崇める側もやりにくいでしょ?
エレノア:そうですね……
グリモワール:…………
エレノア:あ、いえ……その、あなたにはなにもかも見透かされているような気がしてしまって……
エレノア:むしろ、聖主を崇拝するほが安いというか、気軽な感じさえするものですから
グリモワール:聖主よりも、あたしのが怖いわけ?
エレノア:怖いというより……世の中を知っている大人の女、という感じです
グリモワール:悪くない答えだけど……なにもでないわよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:イズルトで聞いた限りじゃ、村を襲う業魔が出たり、聖寮への不満を抱く住民も多いって話だったが
ロクロウ:想像していたよりも落ち着いた印象があるよな。このハリア村ってとこは
エレノア:対魔士の私が同行していることで、村人たちも警戒しているのかもしれません
ベルベット:へえ、世の中には裏表があるってこと、あんたもわかってはいるのね
エレノア:表層しか見えていないようでは、聖寮の巡察官は務まりませんから
エレノア:私だって、色々とみて来たのです。人の世の、光も闇も
ベルベット:…………
エレノア:でも……いえ、だからこそ、私はその闇から目をそらさず、正直に向き合いたいのです
エレノア:その上で、信じたいと思っています。人の心にある光を
ベルベット:闇ね……
エレノア:はい、あなたのような闇です
ベルベット:……案外、はっきり言うのね
※枠外タッチで閉じます。
まったく、ベルベットはエレノア様にきついでフー!
ビエンフー:正反対なお二人がぶうtかるのは仕方がないとしても、ベルベットの当たり方はカジョーでフ〜!
ライフィセット:正反対かな……
ビエンフー:エレノア様が白百合なら、ベルベットは漆黒の薔薇
ビエンフー:エレノア様が空駆ける天馬なら、ベルベットは闇夜の狼
ビエンフー:エレノア様がカルボナーラなら、ベルベットは浜海苔イカスミひじきうどん
ライフィセット:……わかりにくいけど、うん、わかる気がする
ビエンフー:フフ〜、わかってくれたでフね。正反対な2人には。共通点などないんでフ
ビエンフー:そーゆー意味では、ぶつかるのは仕方がないのかもしれないでフね〜
ライフィセット:……でも二人とも髪は綺麗だよ
ビエンフー:心優しき対魔士とお、クールな業魔でフよ?
ライフィセット:エレノアだってビエンフーには冷たいところはあるし、ベルベットは僕を何度も助けてくれたよ
ビエンフー:エレノア様は人々を救うために身を尽くし、ベルベットはかたき討ちのために必死でフよ?
ライフィセット:二人とも、誰かのために一生懸命ってことだよね
ビエンフー:ほがらかに人と話をするエレノア様と無駄口はたたかないベルベットは同じでフか?
ライフィセット:僕と二人のときは、ベルベットもエレノアも、自分のこと話してくれるよ
ビエンフー:あーいえばこーゆー子でフね〜、キミは!
ライフィセット:でも、僕は本当にあったことを話してるだけだし
ビエンフー:てゆーか、ビエ〜ン……ボク、ぜんぜんエレノア様に相手されていない気がしてきたでフ〜〜!!
ライフィセット:エレノアが話してくれなくても大丈夫だよ。僕が相手になるから泣かないで、ビエンフー
ビエンフー:よけいに悲しいでフよ……ビエ〜〜ン!!
マギルゥ:お主らも、たいがい正反対じゃのー
ライフィセット&ビエンフー:……えっ?
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:わぁっ、窓の外……海だよ!
マギルゥ:ここは、水の聖主アメノチを祀った聖殿じゃ
マギルゥ:地の聖主ウマシアの聖殿が地底にあったのと同じ理由で古代の人間たちは、水中に聖殿を作ったんじゃろうの
ライフィセット:でも、海の底に作るのは難しいよね?
アイゼン:ああ。掘ればいいだけの地底聖殿とは異なり、海水との戦いに勝たねばならん
ロクロウ:どうやったんだ?剣で海を両断したってわけじゃないだろ?
アイゼン:まず、岩から切り出した巨石を浅瀬に積み上げる。壁で囲いを作り、海水をかきだしたら、囲いを広げる
アイゼン:それを繰り返し、ある程度の広さを確保したうえで、海底を掘削して行ったんだ
ロクロウ:気が遠くなるような作業だなぁ
アイゼン:人間たちは、困難を乗り越えて聖殿を築くことが、聖主の信仰心を示すことになると考えたんだ
エレノア:補足させていただくと、最近の研究では、もともとこの聖殿は海岸んにあったと言われています
アイゼン:……?俺の説明が間違っているというのか?
エレノア:いえ、私が読んだ学術書には、そのように書いてあったものですから
ロクロウ:海岸にあった遺跡がどうやって海に潜ったんだ?
エレノア:四聖主が眠りについた際の地殻変動でこの聖殿は海中に沈んでしまったそうです
エレノア:ですが、石の重さと海の砂のおかげで建物は密閉されていることが判明しました
エレノア:そこで、人々はここにつながる海底洞窟を掘って、現在のような形になったということです
ライフィセット:そういえば、僕も読んだことがある。「最新版・古代遺跡建築理論」だよね
エレノア:はい。アイゼンは読んだことありますか?
アイゼン:……いや、俺がよんだのは初版だ
エレノア:石を積んで囲いを広げていく場合、内側に残った石を取り除く作業が必要ですよね
エレノア:それが非効率すぎるのではないかと指摘があり、そこから研究がすすめられたんです
エレノア:最新版は、定説がいくつも覆されていて、とても興味深いので、ぜひ読んでみてください
アイゼン:お、おう
ロクロウ:なんか……アイゼンの説明、全否定してないか?
エレノア:あ、いえ……そういうつもりでは……
アイゼン:……考古学というのは、疑問と検証の繰り返しで、日々、学説がヘナするものだ。気にするな……
ベルベット:どっちだっていいわ。先を急ぐわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ここには聖主はいないのよね、アイゼン
マギルゥ:気がかりならば、コインで占ってみればよかろう。表が出たら聖主はおらぬ、裏が出たら眠っておる
ロクロウ:裏しか出ないだろ!
アイゼン:前にも言ったかもしれんが、聖殿というのは聖主信仰のために人間が作った祈りの場に過ぎん
アイゼン:自然の力に畏れを抱いた人間が、四聖主という神を祀り上げたのが聖主教の始まりと言われている
アイゼン:ここに眠っているいないの前に、存在そのものが伝説なんだ
エレノア:でも、あの御座に確かにカノヌシは存在しました
アイゼン:だが……俺が知る限り、聖主が姿を現したなどという話は、一度も聞いたことがない
アイゼン:カノヌシが特別な存在だと考えるべきだろうな
ベルベット:そうよね
ロクロウ:まあ、そうだよなあ、あんなのが他に四つも出てきて、敵に回ろうもんなら、完全にお手上げだよな
ベルベット:……そうよね
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:あの業魔……娘さんを捜しているうちに業魔病になっちゃったんだよね
ロクロウ:ああ……宿屋の娘が、そう言ってたな
ライフィセット:業魔になっても、娘さんのこと捜してるんだよね
ライフィセット:ロクロウやクロガネ、ダイルは業魔になっても人間だったときにやりたかったこと覚えてるでしょ?
ライフィセット:お母さんだったら、やっぱり娘さんのことずっと捜してるんじゃないかなって……
ロクロウ:そうかもしれんが、そうじゃないかもしれん
ライフィセット:……そうだったらいいな
エレノア:人間だった頃は、きっとそうだったでしょう。でも、業魔には、そのような母性などありません
エレノア:あの暴れぶりを見たでしょう?もうあれは元のマヒナさんではありません
エレノア:業魔に成り果て、心も愛情も失ってしまった。哀しいことですが、それが現実なのです
ライフィセット:(ベルベットやロクロウには心があるけど……)
エレノア:一体の業魔を放置すれば、百人の命が奪われます。ましてや、聖寮の施設で暴れ、対魔士を襲う業魔です
エレノア:百人どころか、村や町を亡ぼしかねないのです。私の村もそうでした
ライフィセット:!!!
エレノア:……だから、私は
ロクロウ:ま、そうだよな。エレノアの言う通り、元には戻せないんだ
ロクロウ:斬って成仏させてやるのも、情けってもんかもな
ライフィセット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:カノヌシって、本当に聖主なのか?
マギルゥ:いきなりな疑問じゃのー
ロクロウ:グリモ姐さんが解読してくれたかぞえ歌の通りなら、カノヌシは八つ首のドラゴンなんだろ?
ロクロウ:喰魔を使って穢れを喰うなんて、禍々しくて「聖」なる存在とは程遠り感じがするんだよなぁ
エレノア:確かに……聖主は聖隷のひとつなのに、他の聖隷やノルミンとは印象が違いますよね
エレノア:ましてや、八つ首のドラゴンだなんて……
アイゼン:……そうか?
ライフィセット:喰魔が集まっちゃったら、どうなるんだろ?
ロクロウ:そりゃあもう大変だろうな。俺の想像じゃあ、喰魔が合体して巨大な化け物になる!
ロクロウ:でもって、大蛇みたいに長い八つ首のドラゴンが口から炎を吐いて、襲ってくるんだ!
ライフィセット:ええっ……
エレノア:それ、少しわかります……
ロクロウ:だろ?問題は、首が八つとなれば、俺たち六人じゃ手が回らないってことだ
マギルゥ:分身の術でも使うしかないのー
ロクロウ:できるのか?
マギルゥ:できぬ!
ロクロウ:なんだよ……
ライフィセット:あっ!!
ベルベット:どうしたの、ライフィセット?
ライフィセット:八つの頭は、別々の意志や思考を持ってるのかな
ライフィセット:もしそなら、戦いのときにぶつかり合ったり、好き勝手に動いたりして、隙が生まれるはず……
ライフィセット:僕たちが心を一つにして戦えば、きっと勝てるよ!
エレノア:ええ、手と手を取り合って戦えば、きっと勝てます!そうですよね、みなさん!
エレノア:…………
マギルゥ:儂らが、一つになれると思うか、坊よ?
ライフィセット:え……えっと、それは……
※枠外タッチで閉じます。
モアナ:どこ行くの?お母さんは?
エレノア:……モアナ、お母さんはまだ遠くにいます
モアナ:じゃあ、おうちでまってないと。ハリア村にもどろうよ
ライフィセット:村では怖い業魔が暴れていて、とっても危ないんだ
モアナ:でも、モアナ、お母さんにあいたい……
ライフィセット:……モアナが業魔に襲われたら、お母さんが悲しむよ。元気でお母さんに会うために、今は一緒に行こう
モアナ:……わかった、モアナ、いっしょにいく。お母さんを悲しませたくないから……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:グリモワール、さっきの話を詳しく聞かせて
グリモワール:穢れの件?禁忌だって言ったでしょ……
ベルベット:人の感情──業が「穢れ」という毒を生んで人間を業魔に変えていることはわかった
ベルベット:穢れの発生を防ぐ方法はないの?
グリモワール:……人が人である限り、ないわ。言った通り、穢れは感情から生まれるものだから……
ベルベット:あんたたちは、なんらかの対応をしてるはずよ。聖隷だって、心も感情もあるんだから
グリモワール:聖隷は穢れを生むことはないのよ。人と違ってね……
ベルベット:うそね。あたしは聖隷が業魔化するのを見た
グリモワール:それは、外部の膨大な穢れにさらされたからよ
ベルベット:!!
ベルベット:(……確かに、監獄島は囚人と業魔であふれていた)
ベルベット:(それにメルキオルは聖隷になにかを撃ち込んでレジェンドワイバーンに変えた……あれは穢れか)
グリモワール:聖隷にとって、穢れは、まさに毒なのよ
グリモワール:だから聖隷は、正常な存在を「器」にして、穢れから身を守る必要がある
グリモワール:もっとも、それも完全な対策じゃないけどね……
ベルベット:……「器」が穢れたら、聖隷も業魔化する
グリモワール:ご名答
ベルベット:つまり、エレノアが穢れたらライフィセットも……
ベルベット:アイゼンが言ってた「器が壊れたら」って、穢れたらって意味だったのか
グリモワール:その通りよ。小さな心のほころびが、大きな志を砕くことはよくある……
グリモワール:ピュアピュアな対魔士のお嬢さんを、あまりいじめちゃダメよ
ベルベット:……忠告として聞いておくわ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:「血翅蝶」……王国の陰で暗躍するという闇組織。でも、噂ばかりで聖寮も実態をとらえ切れていない
エレノア:あなたたちは、そんな集団ともつながっていたのですね
マギルゥ:狭くて暗い、裏世界。声は聞こえど影法師、顔は見えねど紙一重……というところじゃ
エレノア:以前ギデオン大司祭を襲ったのも、彼らの手引きですか?
ロクロウ:ああ、血翅蝶が大司祭の始末を持ち掛けてきたんだ
ベルベット:アルトリウスの居場所の情報と交換で受けたのよ
エレノア:情報……?それだけのために暗殺をしようとしたのですか!
ベルベット:ええ。世界を統べる導師の情報よ。悪い取引じゃないわ
アイゼン:互いの利害が一致すれば手を組む。それだけのことだ
エレノア:……裏の人間らしい考え方ですね
ライフィセット:でも、血翅蝶は、大司祭のせいで街の人に被害が出ているのを知ってたんだよ。それで……
エレノア:確かに赤聖水の件は……教会に非があります
エレノア:それにしても、血翅蝶は、噂以上の情報網をもっているようですね……
ロクロウ:御座の結界のことも知ってたしなあ
マギルゥ:ベルベットのハトマネのことものう
ベルベット:ちょ……しつこいわよ!
エレノア:ハトマネ?なんのことです?
ライフィセット:ぼ、僕は……知らない
ベルベット:王都の検問近くにハトがいたの。それだけよ
エレノア:はあ……?
マギルゥ:そうそう♪あれは黒くて胸の大きなハトじゃったポッポ〜♪
エレノア:(黒くて胸の大きなハト……裏の社旗の暗号かなにかでしょうか??)
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:カノヌシの古文書って、そんなに難しいの?グリモワールが、何とも言えない顔をしてたけど……
ライフィセット:うん。グリモ先生が言うには、古代アヴァロスト語に使われているのは「心象文字」なんだって
ベルベット:心象文字……初めて聞く言葉ね
ライフィセット:感情を表現した文字で、同じ文字でも読み方が色々あって、そのつながり方で意味も変化するんだって
ライフィセット:つながりの法則はある程度記録に残されているんだけど、そもそもの感情を判別する方法がわかってないんだ
ライフィセット:だから解読には、まず感覚的な部分で筆者の感情と同化する「起点」が必要なんだって、先生は言ってた
ベルベット:なるほど……あんたは、その同化のセンスがあるのね?
ライフィセット:そうみたい
エレノア:それにしても感情の文字なんて……現代の言葉とは、まるで別物ですね
ライフィセット:うん、全然繋がりがないんだって
ロクロウ:繋がりがないって、どういうことだ?
マギルゥ:言葉どころか、人間の文明そのものが消えたのじゃよ。「アヴァロストの調律」時代の後にのー
アイゼン:花が満開を迎えた後に散るように、発達しすぎた文明も終焉を迎え、途絶えた
アイゼン:今の技術では再現できない遺跡や古代の道具が存在するのは、文明の断絶に原因がある
ベルベット:なんにせよ、古文書の解読にはまだまだ時間がかかりそうね……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:あのマントの人、どういう人なんだろう……?
エレノア:わかりません。けど、連れている鷹は、とてもよく訓練されているようですね
ライフィセット:鷹狩りに使う鷹……かな?
エレノア:おそらく。育てるには、おカネも時間も相当かかるはずです
ライフィセット:…………
エレノア:ライフィセット?
ライフィセット:やっぱりいい匂いがする
エレノア:…………
エレノア:ですよね。この匂い、前にもどこかで……?
ライフィセット:…………
エレノア:…………
エレノア:まさか……
ベルベット:……なに?ふたり並んでクンクンしちゃって?
マギルゥ:わかった。犬の姉弟ごっこじゃろー
ライフィセット:違うよ、犬じゃなくて鷹が問題で……
ベルベット:はぁ?
エレノア:すみません。行儀が悪かったですね
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:マギルゥ、暴動の原因が「誰かさん」と言っていましたが、ここでなにがあったのですか?
ロクロウ:なんだ。巡察官なのに聞いていなかったのか?
エレノア:大きな暴動が起こったとは聞きましたが、あなたたちを追いかけ始めたために詳細までは……
マギルゥ:それほどの事件でもないわい。ベルベットも儂もロクロウも、この島に捕まっておっての
マギルゥ:脱獄するためにベルベットが囚人たちをそそのかして、暴動を起こさせただけじゃよ
エレノア:囚人たちを利用したのですか!?
ベルベット:そうよ。あたしらしいでしょ
エレノア:…………
ライフィセット:暴動はどうなったの?
ロクロウ:最後まで見届けたわけじゃないが、鎮圧されかかっていた
ロクロウ:はずなんだが……なぜか対魔士たちは消えちまってる
エレノア:オスカーは報告のために帰還しましたが警備対魔士たちは、駐屯を続けていたはずですが……
アイゼン:……撤退したのでなければ、駆逐されたと考えるべきだろうな
マギルゥ:「首のない騎士の業魔」とやらにかえ?
マギルゥ:やれやれ、自業自得、因果応報とはいえやっかいそうじゃのー
ベルベット:後始末はつけるわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:蠱毒……業魔を喰らいあわせて強力な業魔を生む外法か
ロクロウ:アイゼン。蠱毒ってのは、業魔を何匹喰えばできるんだ?
アイゼン:蠱毒に必要なのは数より質──強力な業魔の強い穢れだと聞いている
マギルゥ:そう、蠱毒の本質は喰らった穢れと己が穢れを混ぜ合わせ、暴走させることじゃ
マギルゥ:異常な力を得られる代わりに、自己というものは完全になくなるがのう
ロクロウ:ふむ、馬券のを通り越して、ただの力と穢れの塊となるわけか
エレノア:ロクロウ……まさか蠱毒を試してみようなんて考えてませんよね?
ロクロウ:いや、当然考えたぞ。強くなる手段だからな
エレノア:本気で言っているのですか!?
ロクロウ:今更驚くことでもないだろう?ベルベットだって散々業魔を喰ってる
エレノア:あなたという人は……
ベルベット:ロクロウの言う通りよ。復讐を果たせるなら、なんでもないわ
ライフィセット:ベルベット……
エレノア:まさか、蠱毒を行うつもりじゃ……?
ロクロウ:心配はいらん。蠱毒なんて使わないさ
ロクロウ:化け物になるのはかまわんが、仇を倒すのは自分じゃなきゃダメなんだ
ロクロウ:俺もベルベットも
エレノア:ロクロウ……
ロクロウ:それに、蠱毒で生まれた業魔をぶった斬れば、自分でやる必要はないしな!
エレノア:あなたという人は……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ベルベットが喰魔じゃったとはのー。前々からミョーな奴じゃとは思っておったが
エレノア:それより、ベルベットが叫んだ言葉が気になります
エレノア:ライフィセット、ベルベットがアルトリウス様の「いもうと」というのは本当なのですか?
ライフィセット:……ボクも初めて聞いた
エレノア:もし事実なら、アルトリウス様の戦訓を知っていたのも納得ですが……
ロクロウ:気になるなら聞いてみればいいだろう
ロクロウ:ベルベット、お前とアルトリウスはどんな関係なんだ?
エレノア:ちょ……無神経すぎますよ、ロクロウ!
ベルベット:……いいわ。全部聞こえてるし
ベルベット:アルトリウスは、死んだあたしの姉セリカの夫っよ。あたしと弟にとって、あいつは義理の兄だった
ベルベット:十年以上、一緒に暮らしたわ
マギルゥ:やはりそういう関係じゃったか
アイゼン:アルトリウスは、義弟を生贄に、義妹を喰魔にしたということだな
エレノア:そんな……自分の家族を──
ベルベット:関係ないのよ。家族なんて、あいつの「個」の問題
ベルベット:「個よりも全」理想の「理」を実践しただけなんでしょう
エレノア:…………
ベルベット:おしゃべりは終わり。港に急ぐわよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ライフィセット……あなたに誤らなくてはなりません
ライフィセット:どうしたの急に
エレノア:スパイの件です。あなたを聖寮に連れて行こうと画策していたこと……本当にごめんなさい
ライフィセット:それが、エレノアの任務だったんでしょ?それに、なんとなくわかってた……
エレノア:えっ、そうなのですか?
ライフィセット:詳しいことは知らなかったけど、ベルベットがすごくエレノアのこと気にしてたし
ライフィセット:エレノアは悪いことやろうとする時、すごく汗をかいてるから……なんか変だなって
エレノア:……いつ頃から、そのことを?
ライフィセット:エレノアが僕の器になってくれた時から、ずっと。たぶん、ベルベットも……
エレノア:はぁ……ちょっとショックです……
エレノア:スパイ任務ひとつ、まともにこなせないなんて、情けない……本当に、情けないです
ライフィセット:僕は……エレノアのそういうところ、いいと思う
エレノア:えっ……?
ライフィセット:平気で騙せる人より、うまく騙せない人の方が優しい人だって、僕は思うから
エレノア:……ありがとう。あなたこそ、本当に優しい子ですね
ライフィセット:そんなこと……
ライフィセット:……ん?
エレノア:……ビエンフー、なぜあなたがここに?
ビエンフー:ボクもお仲間に入りたくて〜
エレノア:今は大切な話をしているのです。すみませんが、帰ってください
ビエンフー:だまって見てるだけにしまフから、ここにいるくらい、認めてほしいでフ
エレノア:ごめんなさい
ビエンフー:ビエ〜ン!!エレノア様のへちま〜〜!
ライフィセット:へちま……?
エレノア:ライフィセット……
エレノア:あらためて。これからもよろしくお願いしますね
ライフィセット:僕こそ、よろしくお願いします
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:アイゼン、壺から出てきたタコはどうしたんだ?
アイゼン:ダイルとクロガネが、モアナの晩飯をつくると言って調理場へもっていった
エレノア:タコ業魔をモアナに食べさせるのですか……?
ロクロウ:喰魔は穢れを喰わないといけないからな
マギルゥ:ゆえに、生け捕りにして持ち帰ったんじゃ
ベルベット:あの二人、なにをつくるつもりなの?
アイゼン:タコスミパスタをメインに、タコ焼きとタコカラ、ヘラヴィーサ風ゆでダコのカルパッチョだ
マギルゥ:タコ焼き器なんぞ、監獄島にあるのかえ?
アイゼン:パスタ用の大鍋と一緒に、クロガネが鉄のカタマリを叩いてつくっていたぞ
ロクロウ:ははは、自分の顔はそのままのくせになぁ。しかし、タコ焼きは俺も久々に喰いたいぜ
ベルベット:タコスミのパスタか……
ライフィセット:タコもイカも、敵に襲われたときに身を護るためにスミを吐くけど、成分も目的も違うんだ
ライフィセット:イカスミは、粘り気が強くて分身みたいな塊になるけどタコスミは、水に広がりやすく煙幕代わりになる
ライフィセット:でも、タコスミはイカスミと比べると、うまみ成分が三十分の一しかないから、あまりパスタには使われない
ベルベット:……ラフィも同じこと言ってた。だからタコスミのパスタは美味しくないんだって
ライフィセット:ラフィが?
ベルベット:うん……結局、つくらなかったけど、どうなんだろ。もう、味が分からないし、どっちでもいいけど
ライフィセット:……味見するよ、僕が。だからタコスミパスタつくってね
ベルベット:……業魔じゃない、本物のタコが釣れたらね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:なあ、アイゼンが手紙と壺を送った相手って、いったいなにものなんだろうな?
ライフィセット:もうその話はやめようよ。アイゼンにゲンコツされたところ、まだ痛いよ……
ロクロウ:でも気になるだろ、お前だって
ライフィセット:……少し
ロクロウ:あのかしこまった文面からして、よほど大切な相手だ。おそらく……恋人
ライフィセット:恋人……アイゼンの……
ロクロウ:あんな壺をもらって喜ぶ子どもはいないし、「可愛い」ラッピングを喜ぶ男もいない
ロクロウ:となれば、アイゼンと同じ感性を持った妙齢の女……そんな奇跡みたいな女に惚れるのは当然だろう?
ライフィセット:そうかなぁ。ボクは、あの黄色い傘の女の子だと思うけど……
ロクロウ:お前、よっぽどあの女の子が気に入ったんだな
ライフィセット:ち、違うよ!!そんなんじゃないよ
エレノア:では、どのようなんですか?
ライフィセット:ええっ!?
マギルゥ:エレノア……盗み聞きとはお行儀悪いのー。ライフィセットが誰を好きになろうと自由じゃろ?
ライフィセット:マギルゥも聞いてたんじゃないか……
ライフィセット:僕はただ、ラッピングのひまわり柄はあの子のイメージだなって……
ベルベット:そういわれればそうね。でも、誰だっていいじゃない。手紙を出せる相手がいるんだから……
エレノア:そうですね……少し、うらやましいですね
ロクロウ:なんかきれいにまとめてるが、お前も盗み聞きしてたんだな、ベルベット
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:どう思います、アイゼンのこと……
マギルゥ:なんじゃお主、ああいうのが好みなのかえ?
ベルベット:へえ、そうなんだ。意外
エレノア:違います、アイゼンの贈り物のセンスというか、収集物へのこだわりが、少々風変りというか……
マギルゥ:そんなことか、つまらん
ベルベット:ほんと。男は多かれ少なかれ、よくわからないこだわりを持ってるものよ
エレノア:その話は聞きましたが、こだわりが強すぎる傾向があると思いませんか?
ベルベット:言われてみれば、あの解説は度が過ぎている気もするわね
マギルゥ:収集品だけではないからのー、こだわりは
エレノア:そうなのですか?
マギルゥ:毎週の休息日の夕食は決まってカレーじゃし、船着場のボラードも必ず「三番」と決まっておる
ベルベット:そういえば、調理場で海賊たちが嘆いてたわ。パスタのゆで時間と湯加減にうるさいって
マギルゥ:服も靴も、いつも同じ仕立て屋に同じ物をつくらせて納めさせているそうじゃ
マギルゥ:ミリ単位のサイズ指定に、素材の色味にもうるさい。ダメ出しも多いと、かめにんが嘆いておったわ
ベルベット:もはや、こだわり屋ではなく面倒な男って感じね
エレノア:……でも、少し見直しました
エレノア:海賊って、もっと雑で不衛生な人たちだと思っていましたけど、あんがい繊細なのですね
ベルベット:……どんな再評価よ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ストーンベリィは行くの初めてだよね
ロクロウ:なんで通行止めされてたんだ?業魔か?
エレノア:いえ、アルディナ草原で巨大な竜巻が発生して、輸送キャラバンが何百人も行方不明になったのです
アイゼン:寒冷化の影響による異常気象だな。雷が頻発した地域や、豪雨に見舞われた街もある
エレノア:ええ……そういった地域への街道は、聖寮によって厳しく往来が制限されています
ベルベット:解除されたてことは、竜巻は収まったって想っていいのよね
ライフィセット:どんな街なのかな……
ビエンフー:けっこういい所でフよ〜〜!!
ビエンフー:東に広がる森林地帯では、宝石が採取できるし、珍しい植物も昆虫もたくさん生息してるでフ〜〜
ビエンフー:数少ない住民たちは、動物の肉や毛皮を必要な分だけ売り買いして暮らしてるし、静かで良いところでフよ
ライフィセット:ずいぶん詳しいんだね
マギルゥ:こやつの初恋相手のノルミンの故郷なんじゃよ
ビエンフー:ビエ〜〜ン、姐さん、恥ずかしいじゃないでフか〜〜
ビエンフー:今は離れ離れになってしまったでフけど、あの娘とは、心が通じ合っているんでフよ〜〜
マギルゥ:儂とお主が契約して旅に出た直後、あの娘は男前のノルミンと恋仲になり村を出たがのー
ビエンフー:ええええっ!?そんなの初めて聞いたでフよ!!姐さん、いつその話を?
マギルゥ:儂から逃げだしたお主を探す旅の途中じゃったか?
マギルゥ:いや、村を出て数分後、忘れ物を取りに戻った時じゃったか……ま、どーでもいいがのー
ビエンフー:よくないでフ〜!!
アイゼン:男が女にふられたぐらいで泣くな。ストーンベリィへ急ぐぞ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:エレノア、聖寮の対魔士たちは、使役してる聖隷に祈ったりしないよね……
エレノア:誓約のこととは違いますよね?
ライフィセット:誓約って、自分に特別な規律を課して、限界を超えた力を得る術式でしょ?
エレノア:ええ……簡単に言えばそういうことになりますが
ライフィセット:人の祈りを受けて、聖隷は人や自然に加護をもたらす……
ライフィセット:人間に祈ってもらうと聖隷は強くなるって、アイゼンが教えてくれたんだ
エレノア:祈りと加護……そのような話は、初めて聞きました
エレノア:以前の私がそうだったように、聖寮の対魔士にとって聖隷は術技を使うための道具に過ぎません
ライフィセット:やっぱり、そうだよね
エレノア:……でも、聖主カノヌシは別です。対魔士は皆、聖主の大いなる力を信じ崇めています
エレノア:そればかりか、この国の人々も、聖主の救済を願っています……アルトリウス様の導きのもとに
ライフィセット:……あっ!だからなんだ!
マギルゥ:坊は、からくりに気付いたようじゃのー
エレノア:……えっ?
アイゼン:アルトリウスが聖寮を聖主教会の内部組織にしたのは、人間の意識をカノヌシに向けるためだった
アイゼン:人間たちがアルトリウスを英雄視したとしても、その向こうにカノヌシの存在を感じるように
ライフィセット:世界中の人たちがカノヌシを信じて、その心が……祈りが集まってるってことは……カノヌシの力は
エレノア:聖主教を人々が信じなくなっていたこの数百年間とは比べものにならないほどに、高まっていると?
マギルゥ:そうじゃろうのー
マギルゥ:誓約も、祈りも加護も、業魔化も……この世の沙汰はココロ次第。心とは実に便利で難儀な魔法の力じゃ
エレノア:……私たちは、本当にすべてを相手に戦いを挑もうとしているのですね
ライフィセット:エレノア、そんなに困った顔しないで
ライフィセット:がんばって強くなるから、僕を信じて。僕だって聖隷なんだから
エレノア:ライフィセット……なんだか、急に頼もしくなりましたね
ライフィセット:……そうかな?
エレノア:そうやって照れるところは、かわいいですけどね
ベルベット:どうしたの、顔が赤いわよ
ライフィセット:えっ……そ、そんなことないよ
ベルベット:…………?
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:エレノア様、大丈夫でフかー?市民の言葉に心を傷めてないでフか?
エレノア:大丈夫です。気遣ってくれてありがとう。あ、でも涙フーフーは要りませんからね
ビエンフー:では、よしよし、をしてあげまフ〜〜!
エレノア:それも結構です
エレノア:……それにしても、ますます荒んでしまいましたね
ロクロウ:町は焼け落ち、商船組合は解散。聖寮も事実上の撤退。まともな港として機能するのは、難しいだろうな
マギルゥ:今まで吸っておった甘〜い蜜を奪われ、気落ちするのも仕方あるまいが、蜜同様、甘ったればかりの街じゃ
ライフィセット:甘ったれの街……?
アイゼン:ヘラヴィーサはもともと、少数の人間が拓いた漁村だ。資源豊かな北海での漁業だけで、十分商売dけいる
アイゼン:だが、炎石が発掘され、楽に儲かる商売の味を覚えると町の連中はあっさりと漁業を捨てた
エレノア:そのツケが回って来たと?
エレノア:ですが、近年の気候寒冷化のせいで、北海の大半に流氷が広がって、漁が難しいという報告もあります
ライフィセット:流氷が微生物を運んだり、溶けて沈んで海水をかきまぜたりするから、漁場は豊かになるんだよ
エレノア:それは……そうかもしれませんが
ロクロウ:町を荒らした俺たちが言えた義理じゃないが、楽な道に逃げて文句しか言わない連中は──
ライフィセット:甘ったれ……だよね
ロクロウ:ほう、言うようになったな、ライフィセット
ライフィセット:……僕のお腹も……甘ったれかも
ロクロウ:ははは!それはいいさ。生きてる証拠だ
アイゼン:北海の「キョダイオウイカ」は今が旬だ。ベンウィックたちに頼んでおくか?
ライフィセット:うん!あ、あと普通のタコも!
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:「災禍」って……僕たちのことだよね
ロクロウ:あちこちで聖寮相手に大暴れしてるからなぁ。しかもまた、次の騒ぎを起こそうとしているときた
アイゼン:次の喰魔を地脈点から引きはがせば、モアナの村と同じことが起きてもおかしくはない
エレノア:また、あの村のようなことが……
マギルゥ:災禍の次は、なにに昇格するんじゃろうのー?
エレノア:笑いごとではありません……!
ロクロウ:業魔になる人間にも穢れっていう原因はある。自業自得と言えなくもない
ロクロウ:だが、モアナみたいにカノヌシの口にされちまってる喰魔がいるのなら、お前はそいつを助ければいい
エレノア:それは……そうですけど
ベルベット:あんたは気にしなくていい。結界を喰らって、手を下すのはあたしよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……ヘラヴィーサも、ずいぶん変わってしまいましたね
マギルゥ:お主も随分変わったしのー
エレノア:ですね……初めてあなたたちと会った時は、まさかこんなふうに旅をすることになるとは思いませんでした
ライフィセット:僕は、思うこともうまくできなかった
ライフィセット:でも、ベルベットがこれを持たせてくれて……アイゼンとロクロウが、意志を持てって教えてくれた
マギルゥ:そうじゃったのー
アイゼン:ダイルも今じゃ、バンエルティア号の航海士だ
ロクロウ:ちょこまかしていたビエンフーもグリモ姐さんも気づけば俺たちと一緒にいるし
ビエンフー:ムフ〜〜!!
マギルゥ:儂は……儂は?
ライフィセット:うん、王子とワシ……じゃなかった鷹もいるし、クロガネも、モアナも一緒だもんね
マギルゥ:儂は、儂のことはどーなっとるんじゃー?
ベルベット:なに言ったって、どーでもいいって言うんでしょ?
マギルゥ:……儂のことがわかってきたよーじゃの。マギンプイ♪
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:くしゅん!ふうぅ……ノースガンド領って、こんなに寒かったんだね
エレノア:でも……テレサの管轄はノースガンド領でしたし、その頃、あなたもここにいたはずでは?
ライフィセット:多分、意識を抑制されていた時は、他の感覚も鈍くなっていたんだと思う
エレノア:なるほど……でも、アイゼンがさむがっている様子は一度も見たことはありませんね……
エレノア:というか、みなさん、平気そうですよね?
アイゼン:この程度の寒さでガタガタ言うようでは、海賊などやってられん
ロクロウ:俺は子どもの頃から、夏は炎天下、冬は吹雪の中で素振りさせられてたから慣れっこなんだ
ロクロウ:もっとも、業魔になってからは、暑いも寒いも関係なくなっちまったがな
ベルベット:あたしも、喰魔になってからは関係なくなった。冬は苦手だったから、都合がいいわ
マギルゥ:かくいう、お主こそ、平気そうじゃぞ?
エレノア:いえ……とても寒いのです。あなたが平気そうにしているのが、信じられません
マギルゥ:三度の飯より寒さが嫌いな儂じゃぞ?全身くまなく、防寒用の秘密兵器を忍ばせておるわ
マギルゥ:服の裏から靴の中まで、薄くて貼れて温もりキープ。その名も「ポッポカイロ」じゃ〜〜♪
エレノア:そんな素晴らしいものがあるのですか?
マギルゥ:ハトマネするなら分けてやってもよいぞ?
エレノア:えっ?
マギルゥ:ハ・ト・マ・ネ!
エレノア:ポッポカイロをわけてほしいポッポ……
マギルゥ:ベルベットほどの衝撃はなかったのー
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……この遺跡は、なにか哀しい感じがする
エレノア:哀しいって……どういうことですか?
ライフィセット:うん……ここで辛い思いをしたり、亡くなった人の哀しい気持ちが溜まってるような気がするんだ
ライフィセット:遺跡を見て、そんな風に感じるなんて、なんかヘンだよね
アイゼン:いや、その感覚を否定する必要はない。案外そういうものが真実を導く場合がある
アイゼン:ライフィセットの観点でこのフォルディス遺跡を見てみると、説明がつくものがあるな……
ライフィセット:本当……?
アイゼン:この遺跡の造りは、派手さや豪華さよりも、通路や建造物としての堅牢さが優先されているようだ
アイゼン:それはつまり──
ライフィセット:火山性の地震を考慮しているのと……
ライフィセット:この通路で、誰かが暴れるような状況が考えられたってことかな……
アイゼン:悪くない考察だ。そして、そんな猛者どもがここを素通りするとは考えにくい
ライフィセット:……つまり、ここには通路だけじゃなくて、もっと奥に部屋や施設があるってことだね
ライフィセット:凶悪犯の牢屋とか……闘技場みたいなものかな
アイゼン:哀しいと感じた理由は、それで説明できるな
ライフィセット:闘技場だとすると、勝者に与えられる宝みたいななにかが隠されてるかもしれないね……
アイゼン:なぜかくしてあると思うんだ?
ライフィセット:だって、猛者たちがいい人とは限らないし、ここを設計した人は、用心深い感じがするから
アイゼン:隠し財宝か……お前はその隠し場所をどう──
ベルベット:二人とも、考察は後にして。今は喰魔が最優先よ
ライフィセット:あ、ごめん……
アイゼン:…………
アイゼン:宝の隠し場所だが……
ベルベット:アイゼン!
アイゼン:…………
アイゼン:ライフィセット、続きは必ず後でするぞ
ライフィセット:う、うん………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ね……ロクロウたちは、お母さんいる?
ロクロウ:ん、急にどうした?
ライフィセット:うん。モアナやエレノアもだけど、ベルベットにも両親がいないってわかったからきになって……
ロクロウ:俺の母親も、メチャクチャ厳しくて怖い人だったが、やっぱりずいぶん前に死んじまったよ
ライフィセット:そう……
マギルゥ:儂に親はおらん
マギルゥ:儂を拾った悪〜い魔法使いによれば、川を流れていたモモの中か生まれたそうじゃよ
ロクロウ:お前なら本当にそうかもな……
ライフィセット:ア、アイゼンは?
アイゼン:俺たち聖隷は、清浄な霊力が集まって生まれる存在だ
アイゼン:まれに人間から聖隷に転生する者もいるが、生前の記憶を維持することは、まずない
アイゼン:つまり、人間と同じような血縁関係はないということだ
ライフィセット:そっか……僕も気づいた時には二号って呼ばれて使役されてた
ライフィセット:その前のことが思い出せないのは、お母さん自体がいないからなんだね
ライフィセット:僕はメディサに「お母さんが死ぬのはすごく悲しいこと」なんて言ったけど
ライフィセット:本当の辛さは、わからないのかもしれない……
マギルゥ:子どもにも容赦ないの〜
アイゼン:単なる事実だ
アイゼン:だがな、ライフィセット。血縁関係がないからといって、特別な絆を感じられないわけじゃない
アイゼン:聖隷であっても、かけがえのない存在を──家族や友とのつながりをもっているんだ
ロクロウ:だよな。お前の言葉が本気じゃなかったら、メディサはとまらなかったはずだ
ライフィセット:そうなのかな……
ロクロウ:きっとそうさ
アイゼン:桃から生まれた魔女よりは、ずっとな
マギルゥ:こりゃあ!桃生まれを舐めるでないぞ!
マギルゥ:儂にじゃって、イヌ、サル、キジとビエンフーとの特別すぎる絆があるわいー!
ライフィセット:そうだといいな……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……嘆きの果てに彼之主は、無間の民のいきどまり
エレノア:カノヌシのかぞえ歌、気になっているのですね?
ライフィセット:何度読んでも、悪い意味にしか思えないんだ
エレノア:古代アヴァロスト語の解読は難しいんですよね?別の解釈はないのでしょうか?
エレノア:例えば「無間の民のいきどまり」の部分は、「人間の永遠のために災いを止める」というような
ライフィセット:うん。そういう可能性もあると思う。でも、判断するための材用が足りな過ぎて……
アイゼン:古文書の後半か、カノヌシがらみの別の資料が手に入ればいいんだがな
ベルベット:そんなてがかりもないものを探してる時間はないわ
ビエンフー:そもそも、古文書は写本でフ。写す時に、描き間違えた可能性もあるんじゃないでフか?
ロクロウ:応お前にしては、的を射たことを言うじゃないか
ビエンフー:経験者は語る、でフよ!
ビエンフー:僕も姐さんに魔術書の写本を命じられた時、テキトーに書きましたでフから〜
エレノア:そんなことをして問題はなかったのですか?
ビエンフー:姐さんが、そのテキトー魔術所の術を使おうとして爆発しましたけど、自業自得でフ
ビエンフー:三日で百冊写本しろとか、ありえないでフからね〜!
マギルゥ:……それは酷いのー
ビエンフー:ホントでフ!聖隷遣いが荒すぎる悪魔のような魔女でフよ〜〜!
マギルゥ:ビエンフー……ちょいと人気のないところへ行こうぞえ
ビエンフー:ぎゃー!!姐さん!!?
マギルゥ:なぁに心配はいらぬ。写本の謝罪をテキトーにするだけじゃよ♪
ビエンフー:ビエ〜〜〜ン!!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ベルベットは、アバル村は全滅したみたいに言っていましたが、行商にきている人がいるようですね
エレノア:新たな人々が住み着いたということでしょうか?
ライフィセット:ベルベットは、行商にきてるニコって人を知ってるみたいだった……
ロクロウ:アルトリウスが村を救ったと言っていたな。地脈点だからか?
アイゼン:……わからん。どうも情報が錯綜しているな
ビエンフー:なんだかすご〜く嫌な予感がするんでフが……
マギルゥ:ここで悩んでおっても真相は闇の中じゃ。進むしかあるまいの
アイゼン:だな。今更引き返す選択肢はない
ビエンフー:姐さん……進んだ先が闇だったらどうするんでフか?
マギルゥ:闇の中で仲良くお昼寝じゃろうな。多分永遠に……のう
ビエンフー:そぉぉ〜……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベルベットの故郷……どんなところなんだろう
アイゼン:アバル村か。すいぶん昔だが、船乗り仲間から噂を聞いたことがある
アイゼン:特別なものはなにもないが、素朴で愛想のいい人たちが多いとか
ビエンフー:それは……どこにでもある田舎の村でフね
ライフィセット:昔のベルベットも素朴で愛想がよかったのかなぁ
マギルゥ:ほっほう〜?つまり「今は凶悪で愛想が悪い」と!
ライフィセット:そうじゃないよ!?
ロクロウ:ははは!いいじゃないか、大体事実だ
エレノア:きっと……素朴で真面目な少女だったんじゃないでしょうか
マギルゥ:おや、そんな風に思うのかえ?
エレノア:あ……いえ、なんとなくですけど
ライフィセット:……僕も、明るくて弟思いのお姉さんだったと思う
ロクロウ:ああ、そうかもな
アイゼン:…………
マギルゥ:それがいまでは、災禍の顕主とはの
マギルゥ:昔の仲間と会えれば、今のベルベットが失ったものが浮かび上がるやもしれんのう
ライフィセット:ベルベットが失ったもの……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:そういえば、ベルベットはなんで監獄島に入れられてたんだろうな?
ライフィセット:それは……監獄島の囚人の穢れをカノヌシに送るため……だよね
ロクロウ:だが、アバル村も地脈点なんだろう?そこに配置すれば、手っ取り早いだろうに
マギルゥ:餌がなかったからじゃろう。ベルベットは村人を全員喰い殺したと言っとったからの
エレノア:あの話は事実……ということですか?
マギルゥ:儂は知らんよ。アイゼンのコインで占ってみい
エレノア:だから、それでは──
アイゼン:別の理由も考えられる。ベルベットがアルトリウスが初めてとらえた喰魔だったとすれば……
エレノア:まさか…古文書の情報を確認するために!?
アイゼン:そうだ。アルトリウスは、地脈点と穢れがそろった監獄島に特別房をつくり
アイゼン:ベルベットを使って喰魔の実態を確かめたのかもしれん
ロクロウ:なるほど。導師の立場としては、ありうるな
エレノア:でも、家族を実験台にするなんて……
アイゼン:推測にすぎん。だが、義弟を生贄にする男は、義妹にも手加減はしないだろう
ライフィセット:なんで、そんなことができるのかな……?
マギルゥ:そうまでして救いたい世界があるからか……そうまでしないと救えない世界があるからか……
ライフィセット:え……?
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:今度の地脈点にも遺跡、あるかな?
エレノア:パラミデスの海底聖殿やイボルクの地底聖殿みたいな物を想像しているなら、期待外れだと思いますよ
ライフィセット:エレノアは行ったことがあるの?
エレノア:いえ。でも聖寮の資料で、そのような遺跡の情報を見た記憶がないものですから
エレノア:イーストガンドは、長らく辺境の地で、文明があまり発達しなかったんですよ
エレノア:しかも、大地の東方は地盤が不安定で、大きな建造物を建立するのが難しいそうです
アイゼン:聖殿があったとしても、人が去って埋もれたり、地殻変動で崩壊している可能性が高いだろう
アイゼン:今でこそ、カノヌシ信仰は盛んだが、数年前までは聖主教自体が消えそうだったほどだからな
ライフィセット:そうだね……
ロクロウ:けど、今後遺跡調査が進めば、とんでもない遺跡が見つかるかもしれないぜ
ロクロウ:地底と海底ときたから……空中聖殿とかな!
ライフィセット:空中聖殿!
エレノア:夢はありますけど、いくら古代の文明が発達していたといっても……
ロクロウ:さすがに空飛ぶ聖殿は無理か、はははは!
マギルゥ:いやいや、夢のようじゃが、聖殿が空を飛んでも、カメが腹筋してもおかしくはないぞよ
マギルゥ:夢と現実の境界なぞ、所詮曖昧なものなのじゃから
ロクロウ:……それは、お前が寝ぼけてるからじゃないのか?
マギルゥ:かものー♪
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:こんなはずないのに……この村はあたしが……あいつがラフィを殺した日に……
ライフィセット:ベルベット、大丈夫?
ベルベット:……もちろんよ
ベルベット:こんなことあるはずないって、あたしはちゃんとわかってるんだから
エレノア:とにかく、落ち着いて確かめましょう
ベルベット:落ち着いてるわよ……あたしはちゃんと……
ロクロウ:別人がニコって娘になりすましてるようには見えなかったが……
アイゼン:本物だからこそ、逆に不自然ということ。ロクロウ
ロクロウ:応、ここは「用心堅固」だな
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:アイゼンたち、喰魔を見つけたでしょうか?
ライフィセット:それは……アイゼンとロクロウに任せておこうよ
エレノア:気にならないのですか?
ライフィセット:もちろんなるけど、今はベルベットの傍にいたいんだ
ライフィセット:なんか、すごく嫌な感じがして……
エレノア:喰魔探しよりも大事なほど?
ライフィセット:……うん。胸がモヤモヤして、体の芯が冷たくなるみたいで……
ライフィセット:すごくこわいんだ
エレノア:……わかりました。あなたの感覚を信じます
エレノア:喰魔のことはロクロウたちに任せて、私たちはベルベットと一緒にいましょう
ライフィセット:ありがとう、エレノア
エレノア:マギルゥ、あなたはどうします?
マギルゥ:もちろん儂は、どっちでもいいわい!
エレノア:ですよね
ライフィセット:でも、マギルゥもありがとう
ビエンフー:……いいんでフか、姐さん?
マギルゥ:どーせ、なるようにしかならぬ。なるようにしかならぬのじゃよ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:エレノアは、ホウレン草が苦手だったんだね
エレノア:ええと、あれは……
エレノア:……実はそうなんです。ナイショですよ?
ライフィセット:それにしても、お店でのベルベット、楽しそうだったね
エレノア:本当に。栄養のバランスがとれた無駄のない食材選びも見事でしたが
エレノア:なにより明るくて自然だった
ライフィセット:きっと、あれが本当のベルベットなんだね
エレノア:……ええ。家庭的で弟思いな普通の女の子
ライフィセット:あのままでいられたらよかったのに
ライフィセット:そしたら、友達と「苦しゅうない」って笑っていられたのにな……
エレノア:アルトリウス様の義妹のベルベット・クラウとして……
ライフィセット:あ……普通の女の子は、あんまり「苦しゅうない」なんて言わないのかな?
エレノア:ふふ、そういう普通じゃない会話を普通にできるのが「幸せな普通の女の子」なんですよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:買い物をして、狩りをして、友達と笑って……ベルベットはこんな風に暮らしてたんだね
エレノア:はい、私も昔を思い出します
ライフィセット:え?でもエレノアの村は業魔に……
ライフィセット:あ……ごめん
エレノア:いいんです。家族と過ごした幸せは、今も大切な思い出なんです
エレノア:それに、家族を失った後にも、うれしいことはちゃんとあったんですよ
エレノア:お腹いっぱいご飯を食べたり、新しい友達ができたり……
ビエンフー:そして恋をしたり
エレノア:そう、恋を……
ライフィセット:恋……!?
エレノア:あっ……なにを言わせるんですか、ビエンフー!
ビエンフー:照れなくてもいいんでフ。普通の女の子の幸せ第一位は「初恋の思ひ出」なんでフから〜
ビエンフー:多分ベルベットにも、思いを寄せた男子がいたんじゃないでフかね〜?
ライフィセット:初恋の想いで……ベルベットにも……
エレノア:そういう言い方はやめてください、ビエンフー!はっきり言ってオジサンくさいですよ!
ビエンフー:ガーン!ボクはまだ150歳なのにオジサン扱いされたでフ……
ビエンフー:ビエ〜〜ン!
エレノア:……とはいうものの、ベルベットの初恋の相手には会ってみたい気もしますね
ライフィセット:僕は、別に……
エレノア:ふふ、そうですか
エレノア:男の子ですね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:今までのが全部幻だったとは……
ロクロウ:すごいな。ここまでの幻術を操る奴がいるのか
アイゼン:多分、俺の「死神の呪い」と同系統の特殊な力をもった聖隷を使役しているんだろう
アイゼン:こんな悪趣味な罠を仕掛けるのは、おそらく奴だ
ロクロウ:だが、おかげでカノヌシの手がかりが手に入るかもしれん
ロクロウ:ライフィセット、カノヌシの古文書を見つけたんだよな?
ライフィセット:うん、ベルベットの家で……
アイゼン:よし、ベルベットの家へ急ぐぞ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:あの角の野郎は……
ロクロウ:応、メルキオルが連れていた奴だな。あの気迫は只者じゃないぞ
ロクロウ:しかし、あいつは聖隷じゃなかったよな?
アイゼン:…………
ライフィセット:うん、業魔だと思う。だけど変だよね。聖寮が業魔を使うなんて
エレノア:……喰魔という可能性はありませんか?メディサや、モアナの例もありますし
ベルベット:それはないはず。結界まで張って地脈点に繋ぎとめておきたいのが喰魔よ
ベルベット:地脈点から剥がして連れ歩いたら、カノヌシに穢れを送ることができなくなる
エレノア:……そうですよね。そもそも、ここにはオルトロスがいたわけですし
マギルゥ:なんにせよ、メルキオルには幻術に加えて手強そ〜な用心棒がおるということじゃ
マギルゥ:そう簡単には倒せんぞ
アイゼン:……ああ、それが事実だな
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:みんな、エレノアは本当にスパイなんかしてないよ
ライフィセット:僕はずっと一緒にいたし、僕が見ていない時にはベルベットが近くにいた
ライフィセット:それにエレノアは、約束は守る人だよ。ウソなんてつかないから──
エレノア:ライフィセット……
ロクロウ:わかってるさ、ライフィセット
ロクロウ:エレノアのことだ。自分にウソをついてスパイを続けてたら、後ろめたさでとっくに穢れてるはずだ
ライフィセット:そっか……そうだよね。僕がドラゴン化してないのが証拠なんだ
エレノア:二人とも……ありがとうございます
ベルベット:あたしも、エレノアが故意に情報を流してるとは思ってないわ
アイゼン:だが、メルキオルのような幻術使いもいる
アイゼン:無意識のうちに考えを読まれている可能性も捨てきれん……ということだ
ロクロウ:まあそれも、ライフィセットたちがずっとついていたなら大丈夫だろう
エレノア:…………
マギルゥ:では次は、儂の潔白をみんなで説明してくれる番じゃの〜♪
ライフィセット:えっと……それはちょっと難しいかも……
マギルゥ:なんとー!?
ロクロウ:じゃあ、まずヘラヴィーサで俺たちをテレサに売った時のことを正直に話してくれ
マギルゥ:ぎょぎょ!また古い話を〜!?お主が、そんなに執念深い男じゃったとは〜〜!
ロクロウ:おっと、今頃気付いたのか?そんなことじゃあ、スパイ失格だな
ライフィセット:あはは、そうなっちゃうね
マギルゥ:な、なんという嫌な証明……差別じゃよ〜!
エレノア:ふふふっ!
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:エレノア、聖寮には業魔を操る術が存在するのか?
エレノア:いえ、そんな術は聞いたこともありません
エレノア:そもそも、業魔を操れるならカノヌシを復活させる必要はないでしょう?
アイゼン:……その通りだな
ロクロウ:だが、メルキオルが操ってたのは事実だ。あのじいさんは、どんな手を使ったんだろうな?
マギルゥ:聖隷を使役するのとは違ってのー、契約や霊力で動かしておるのではないのじゃ
マギルゥ:心を支配するとでもいえばよいかのー
アイゼン:心を支配する……だと?
マギルゥ:例えれば、相手の欲望を読み取り、目の前に幻のニンジンをぶら下げて走らせるようなものじゃよ
ライフィセット:ええっと……業魔を直接操るんじゃなくて、幻術を使って心を制御するってこと?
マギルゥ:うむ。もっともこれは、精神にただならぬ負担を強いる。心が壊れてしまえばそれまでじゃ
ライフィセット:心が壊れたら、どうなるの?
マギルゥ:空っぽの器になるか、欲望に呑まれて暴走するかは本人次第のフィッチ・ウィッチ・フィッチじゃ♪
アイゼン:……随分詳しいな
マギルゥ:言われてみれば、なんで儂はこんなことを知っとるんじゃろ……?
マギルゥ:ハッ!ひょっとして儂も心を操られて言わされておるのやもしれぬ〜!コワ〜ッ!!
エレノア:話半分に聞いておいた方がよさそうですね……
アイゼン:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:オルとトロス、ちゃんと世話をしてあげないとな
ベルベット:任せるわ。あたしは近づけないから
ライフィセット:あ……
マギルゥ:じゃの。ワンコらにとってベルベットは飼い主の仇。放っておくのがせめてもの思いやりじゃろうて
ライフィセット:……大丈夫だよ。僕が面倒をみるから
ビエンフー:それは危険でフよー!あいつらかなり凶暴でフから!
ビエンフー:さっき、仲よくしようと話しかけたら、いきなり噛みつかれたんでフ!
マギルゥ:そーせ「僕の子分にしてあげるでフ〜」とかイラッとくる言い方をしたんじゃろ?自業自得じゃ
ビエンフー:よ、読まれてるでフ〜……!
ロクロウ:しかし、ライフィセットは喰魔探しをしなきゃならん。面倒を見続けるわけにはいかんだろう?
ライフィセット:そうか……どうしたらいいかな?
ロクロウ:モアナとメディサに頼んだらどうだ?モアナは、昔犬を飼っていたと言っていたし
ロクロウ:万一犬たちがあばれても、メディサがついていれば安心だろう
ライフィセット:二人にお願いするのがよさそうだね。僕、頼んでおくよ
ベルベット:よろしくね。喰魔を殺すわけにはいかないし、なにより……
ベルベット:あの子たちは、ニコの形見だから
ライフィセット:ベルベット……
ビエンフー:ライフィセットは、犬も飼ってみたいんでフか?なら、聖寮に行くといいでフよ〜!
ライフィセット:聖寮に?なんで?
ビエンフー:お上のイヌがワンさかいるだワン♪
ライフィセット:そ、そうなんだ……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さぁて!メシを食うぞ、ライフィセット!なにが食いたい?
ライフィセット:ええっと……
マギルゥ:儂は「キョダイオウイカのイカめし」か、「カンゴクガニのシュウマイ」か「ウミヘビ丼」かの〜
ロクロウ:お前は三日ぶりのメシなんだろ?いきなり刺激的なものを食べると体によくない
ロクロウ:「リゾット」とか「雑炊」がいいんじゃないか?
ライフィセット:そうだね……
マギルゥ:「ボルシチ」も食べたいしー。「フカヒレの卵スープ」もアリじゃしー
マギルゥ:デザートには「和風あんみつ」と「バケツパフェ」と、「トリプルベリーケーキ」をセットで食べたいのー♪
ロクロウ:マギルゥ、お前は黙ってろ
マギルゥ:うむ。想像だけで満腹になったからのー
ライフィセット:……僕は、おかゆが食べたいな。梅干しとジャコのトッピングで
ロクロウ:おお、なかなか渋いな
ライフィセット:あとリンゴも
ベルベット:……なら「りんごぶぅ」がいいわよ
ライフィセット:りんごぶぅ……?
マギルゥ:なんじゃそれは??
ベルベット:ただリンゴをすりおろしたものだけど……弟に食欲がない時、よくつくってあげてたの
ライフィセット:僕、それ食べてみたい
ベルベット:どうしてもっていうなら、つくってあげる。アレなら味がわからなくてもできるから
ライフィセット:うん。どうしても
ベルベット:……わかったわ
マギルゥ:それなら、ついでに儂の分も──
ロクロウ:マギルゥ、お前は黙ってろ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:残る喰魔はあと一体か……
ベルベット:脱獄の時、シアリーズは言ってた。「今ならアルトリウスを殺せる」って
ベルベット:つまり、あいつは、カノヌシが完全じゃないことを……喰魔の仕組みを全部知ってたんだ
ベルベット:でも……なぜあいつはアルトリウスを裏切ったの?あたしに力をくれたの?
ベルベット:消したくても消せない炎がある……だとしても、なんで自分を喰らわせてまで、あたしを?
ベルベット:ねえ……どうしてなの、おね──
ベルベット:あたし、なにを……?
ベルベット:シアリーズは聖隷よ……聖隷だった
ベルベット:余計なことを考えるな。喰魔が集まったら、今度こそあいつの息の根をとめる
ベルベット:それだけでいい。考えるのは、そのことだけで……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:テレサ……久しぶりですね
テレサ:会うのは御座以来になりますか。ですが、それほど久しぶりとも思えません
テレサ:裏切り者エレノア・ヒュームの情報は、よく耳に入ってきましたから
エレノア:……壊賊病は大丈夫ですか?
テレサ:問題ありません。サレトーマはちゃんと飲みました
エレノア:相変わらずひどい味だったでしょう?新人対魔士の歓迎会で飲まされたことを思い出しますね
テレサ:なぜ聖寮を裏切ったのですか?巡察官という重職を任されていたのに
テレサ:本当なら巡察官にはオスカーがなるはずだった。内示だって出ていたのに
テレサ:あなたが強く希望したせいで、優しいあの子は役目を譲ったのです
エレノア:知らなかった。オスカーに内定していたなんて……
テレサ:その結果、オスカーは危険な監獄島にまわり、あんな大けがを負ってしまった
テレサ:そして今、あなたはオスカーを倒した敵の元にいる。私には理由を知る権利があるはずです
エレノア:人々を救いたいと言う思いは今も変わりありません。ただ、私は聖寮とは別の道を見つけたいんです
テレサ:……許せる理由ではありませんね
エレノア:許してもらえるとは思っていません
エレノア:あなたが、オスカーのことで妥協しない人なのは、よくわかっています
テレサ:……その通り。私がそういう人間であることを仲間によく伝えておいてください
テレサ:オスカーを守るためには、あなた方に信用してもらう必要がありますから
テレサ:……話すことは、それだけです
エレノア:……わかりました
※枠外タッチで閉じます。
テレサ:(二号……御座で発揮したあの力……あれほどの力を秘めていたなんて)
テレサ:(メルキオル様は、一号にも高い潜在能力があるとおっしゃられた)
テレサ:(私に使いこなす才能があれば……!!)
ライフィセット:!!
ライフィセット:テレサ……様……怒ってますよね……?
テレサ:は?なにをですか?
ライフィセット:僕が逃げ出して、ベルベットの仲間になったこと……です
テレサ:それは、私の油断が原因です
テレサ:敵に道具を奪われた。自分の無能さが腹立だしいだけです
ライフィセット:道具……
テレサ:今は自分のことさえどうでもいい。私は弟の……オスカーさえ救えれば、それでいいのです
ベルベット:その大事な弟に傷をつけたのはあたしよ。仇に助けを頼んでいいわけ?
テレサ:……ええ、傷をつけてくれた。あの子の顔にも、経歴にも……心にも
ベルベット:恨みは忘れてないようね。けど、寝首をかこうとしてるなら無駄よ
テレサ:今の私は、聖隷をもたないただの人間。災禍の顕主にキズをつける力すらありません
テレサ:自分の無力さは、痛いほどわかっています
ベルベット:……なら、せいぜい大人しくしてることね
ライフィセット:テレサ様、ベルベットも同じなんです。ベルベットも弟のために……
テレサ:災禍の顕主の情報は心得ています。でも、なんだろうと関係ない
テレサ:無力な私は、こうするしかないのです
テレサ:……オスカーのために
ライフィセット:テレサ様……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:聖隷は道具……
エレノア:何を考え込んでいるのですか?
マギルゥ:わかったぞ。ベルベットにエレノア、テレサ……誰の弟になりたいか悩んでおるのじゃろう?
マギルゥ:ならば、儂が一番優しいぞえ〜♥
ビエンフー:それは最凶最悪の選択でフよ……
ライフィセット:違うよ。テレサ様に、ちゃんと言いたいことがあって
テレサ:言いたいこと……?なんですか、二号?
ライフィセット:……そのことなんです。二号じゃなくて、僕は……
ライフィセット:ライフィセットです
テレサ:ライフィセット……?
ライフィセット:ベルベットがつけてくれた僕の名前、とっても大切なことなんです
テレサ:大切……そんなことを想うのですか?
ライフィセット:うん、感じるんだ。聖隷は……道具なんかじゃないから
テレサ:……わかりました。これからはライフィセットと呼びます
ライフィセット:ありがとう、テレサ様!
マギルゥ:存外優しいのじゃのう、テレサお姉さまは
エレノア:ありがとう、テレサ
テレサ:……いえ、大事の前に波風を立てたくないだけですよ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ベルベット、テレサとオスカーの情報を教えろ。俺は奴らの実力を知らん
ベルベット:ええ。テレサとオスカーは……
ビエンフー:聖隷ツウのボクがご説明しまフ〜♪
ビエンフー:テレサ様もオスカーも「ゼロナンバー」と呼ばれる一等対魔士のトップクラスでフー
ビエンフー:世界にたった百くらいしかいない一等対魔士の中でも指折りのエリートなんでフよー
エレノア:ゼロナンバーは、戦闘力はもちろん、統治能力にも優れ、都市や施設の責任者を任される聖寮の要です
ロクロウ:問題なのは戦闘力だ。エレノア、お前よりも上なのか?
エレノア:はい。私は「テンナンバー」という彼らより一格下のクラスでした
エレノア:模擬戦でも、テレサの術、オスカーの剣術に圧倒されて一度も勝利できなかった……
ビエンフー:あの二人は訓練生の時、コンビを組んで一晩で数十匹の業魔の群れを退治したんでフよ
ビエンフー:以来、メルキオル様に目をかけられているんでフ
アイゼン:なるほど。手強いな
ベルベット:二人そろったらやっかいだったわ。けど、今度の相手はオスカー一人よ
ビエンフー:でも、オスカーはメルキオル様が開発した新しい術を身につけているはずでフ
ビエンフー:多分、やっかいでフよ〜
ベルベット:……あんた、本当によく知ってるわね
ロクロウ:なんか妙だな
ビエンフー:そ、そうでフか?ボクは聖寮にいたから……
ロクロウ:お前、どうしてオスカーだけ「様」をつけないんだ?
ビエンフー:そこでフか!?
ビエンフー:それは同じイケメンとしてオスカーをライバル視しているからでフー!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ライフィセット、新しいクワガタを見つけたんだって?
ライフィセット:うん。テレサ様がとってくれたんだ
ロクロウ:ほほう……鋭いハサミ。アイゼン、こいつは完璧にクワガタだぞ!
アイゼン:……いいや、新種の二本角カブトの可能性はある
ライフィセット:二人とも、ケンカするなら、この虫は「新種のカナブン」ってことにしちゃうよ
ロクロウ:おっと!そいつは勘弁
アイゼン:ライフィセットに一本とられたな
ライフィセット:ふふふ!
テレサ:エレノア……あれは、あなたが言わせているのではないのですか?
エレノア:いいえ、私はライフィセットと器の契約をしましたが、使役はしていません
テレサ:聖隷が、まるで人間みたいに……
エレノア:私も聖寮にいた時には思いもしなかった。聖隷にも人と同じ心があるなんて
エレノア:でも、ライフィセットやアイゼンと出会って、知ったんです
エレノア:彼らも嬉しい時には笑い、哀しい時には涙を流すと。お腹だって鳴るんですよ
テレサ:お腹が……?
エレノア:今では聖隷だけでなく、業魔や喰魔にも心があると自然に思えるのです
テレサ:あなたは業魔を憎んでいたはずです
エレノア:もちろん、憎しみがなくなったわけじゃない
エレノア:けど、憎しみだけじゃなくなったんです
テレサ:聖隷の心……業魔や喰魔の心……
エレノア:テレサも、ライフィセットに心を感じたから、クワガタを獲ってあげたのではないですか?
エレノア:喜んだあの子の笑顔は、幼い頃のオスカーと変わらなかったでしょう?
テレサ:……一緒にしないでください
※枠外タッチで閉じます。
テレサ:(「あの術」には命の危険がある……絶対にオスカーに使わせてはいけない)
ライフィセット:テレサ様、具合が悪いの?
テレサ:いえ、問題はありません
ライフィセット:でも今、すごく辛そうな顔をしていたよ
テレサ:あ……それは少し考え事を……
ライフィセット:壊賊病が治ってすぐに出発したし、無理はしないでね。テレサ様は自分にも厳しい人だから……
テレサ:「他人にはもっと厳しい」というわけですね?
ライフィセット:そ、そういう意味じゃないです……
テレサ:かまいません。冷酷な女だと自覚しています
テレサ:ですが「器の心、聖隷知らず」ですね
テレサ:私は、あなたがこっそり出歩いたり、書庫に入ったりするのを見逃してあげていたのですよ?
ライフィセット:知ってたんですか!?
テレサ:当然でしょう。放し飼いの子犬と同じと思って放置していただけです
テレサ:一号の方は、ほとんど動かないでじっとしていたのになぜこうも違うのかしら?
ライフィセット:……ごめんなさい
テレサ:まあ「男の子らしい」ということなんでしょうけど
テレサ:あのまま勝手を続けるようなら、お仕置きをするつもりでしたよ
ライフィセット:どんな……?
テレサ:それは、聞かない方がいいでしょう。多分、あなたの具合が悪くなってしまいますから
ライフィセット:テレサ様……
テレサ:ふふふ
マギルゥ:ずいぶん打ち解けたようじゃのう。本当に協力するとみるかえ?
アイゼン:すべてが嘘とは思えんが、全部正直に話しているとは、もっと思えん
アイゼン:ベルベット、わかっていると思うが……
ベルベット:ええ、油断はしないわ
ベルベット:妙な動きをすれば殺す。対魔士じゃないなら、簡単なことよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:テレサ。敵陣に乗り込む前に、策戦を確認しておくわ
テレサ:……はい
ベルベット:あたしたちは、あんたを人質にして、オスカーの武装と聖隷を解除させる
ベルベット:オスカーを拘束して喰魔を回収した後、港まで撤退
ベルベット:喰魔を船に乗せ、出航準備が整った時点であんたを解放する。あとは好きにしなさい
テレサ:結構。ですが、ひとつだけ約束してください
テレサ:決してオスカーを傷つけない、と
ベルベット:……それはオスカーの出方次第よ。約束はできない
テレサ:…………
ライフィセット:ベルベット
エレノア:私からも頼みます、テレサの願いを……
ベルベット:オスカーを助けたいなら、テレサ、あんたが死ぬ気で説得しなさい
ベルベット:弟を守るのは、姉の役目なんだから
テレサ:……ええ、必ず守ります。私の命に代えても……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:まさかベルベットが、テレサを喰らってしまうとはのー
アイゼン:仕方ない。そもそもテレサが喰魔になったのが想定外だ
ライフィセット:弟のことが、すごく大事だったんだ……ベルベットもテレサ様も
ロクロウ:ああ、兄貴を斬りたがる弟もいれば、あんなに思われる弟もいる
ライフィセット:…………
アイゼン:問題は、これからどうするかだ
マギルゥ:テレサに代わって、どこかで生まれるであろう新しい喰魔を捜すのが、既定路線じゃがのー
ライフィセット:喰魔になれる人間って、すぐに見つかるものなのかな?
ロクロウ:う〜ん世界を統一して動いている聖寮が、未だにカノヌシを覚醒させられないんだ
ロクロウ:そう簡単にいくとは思えんがな
ライフィセット:だよね
アイゼン:喰魔の再生に時間がかかるなら、今が、カノヌシと闘うチャンスかもしれん
マギルゥ:結果的に、七つの喰魔をカノヌシから引きはがせたということじゃよ
マギルゥ:もっとも……それでカノヌシが弱くなったかどうかは、確かめてみんとわからんがのー
ライフィセット:喰魔はボクも探知してみる。だから、いったん、監獄島に戻ろうよ
ライフィセット:今は……ベルベットを休ませてあげたい
ロクロウ:そうだな。アルトリウスを倒すにしてもベルベットがいなくちゃ意味がないもんな
ライフィセット:うん……
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:……今回の聖寮の行動……どうにも腑に落ちん
エレノア:はい。情報を漏らしたのがわざとだとして、私たちを放置するのはおかしいですよね
エレノア:普通、私たちを追い込む策戦を同時に進行するはずです
アイゼン:監獄島の仲間を人質にとったつもりなのかもしれんが、計略に穴がありすぎる
ロクロウ:俺たちがモアナたちを見捨てて逃げたら、ベルベットを取り逃がしちまうもんな
マギルゥ:やつらは本当に喰魔を取り返したいのかのー?
アイゼン:……なにが引っかかる?
マギルゥ:なぜ、メルキオルはアバルに幻術をかけ、ベルベットを追い込んだのか……じゃ
ライフィセット:それは……ベルベットを捕まえるためでしょ?
ロクロウ:それが無理なら、あいつを殺して別の喰魔をつくろうって腹づもりじゃないのか
マギルゥ:じゃが、そこまで喰魔を確保したいなら、なぜオルトロスをほっぽっておいたのじゃ?
ロクロウ:確かにおかしいな。メルキオルがいたってのに、オルトロスを守ろうとしてなかった
ライフィセット:意味が分からない……なんか嫌がらせみたいだ……
エレノア:それこそ意味がないですよ。嫌がらせで、私たちが諦めるはずもないですし
アイゼン:いや……案外、正解に近いかもしれん
アイゼン:タイタニアへのしゅうげきも、俺たちへの揺さぶりが目的だとすれば、つじつまは合う
マギルゥ:なんにせよ、不吉な予感がするのう……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:エレノア、オスカーが使った神依ってのは、前から研究されてたもんなのか?
エレノア:私は巡察官なので、兵器開発のことはわかりませんが、極秘の研究部門の存在は聞いたことがありました
エレノア:王国各地から、様々な文献や古文書が集められ、解読が行われていたそうです
エレノア:古代語に精通していたテレサが、応援要請を受けて解読に参加したことがあったと
ライフィセット:カノヌシの古文書かな?
エレノア:いえ、詳しいことは教えてくれませんでしたが、聖隷の力の制御に関する文献だったとか……
ロクロウ:たしか、ザビーダのジークフリートも力を制御する道具だったな
アイゼン:おそらく、その過程でジークフリートの存在を知り、神依に応用することを思いついたんだろう
マギルゥ:メルキオルが、ザビーダを追い回した挙句に術式を読み取ったのも、説明がつくのー
アイゼン:すべては神依を生み出すためか
ライフィセット:アイフリードは大丈夫かな……
ロクロウ:未完成とはいえ、神依が実戦で使われた以上、アイフリードにこだわる理由はなくなったな
アイゼン:…………
ライフィセット:急いでタイタニアに行こう、アイゼン!ボクも船の事、手伝うよ!
アイゼン:……ああ、急ぐぞ
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:こんな時でフが、みなさんんいお話がありまフ
ビエンフー:ごめんなさい!!ボクは、メルキオル様のスパイだったんでフ!
エレノア:あなたが……聖寮に情報を流していたのですか?
ビエンフー:そうでフ……ごめんなさい!!
ロクロウ:おお、すげえとこに仕掛けたな、メルキオルは。まさかマギルゥの傍にスパイなんて……
ロクロウ:いや、「木を隠すには森の中」怪しい奴は、怪しい奴の傍にってことか
ライフィセット:マギルゥの契約術の上から、命令を強制する術をメルキオルがかけてたんだって
アイゼン:ちっ……やってくれたな
ビエンフー:……ビエ〜〜ン、許してくださいでフ〜!
アイゼン:お前じゃない。メルキオルだ
ビエンフー:えっ……?
ライフィセット:自分の舵を自分でとれないようにするのは、アイゼンの流儀に反することだから
ライフィセット:ビエンフーの意志じゃないってことはわかってるよ
ビエンフー:でも……僕が密告したせいで、みなさんが危機に陥ったのは事実でフ……
ロクロウ:血翅蝶にだって、バレてたんだぜ。お前抜きでも、聖寮は俺たちの動きをつかんでいたさ
ロクロウ:で、他にはどんな情報を漏らしたんだ?
ビエンフー:それは……ベルベットが意外といいお嫁さんになりそうなこととか
ビエンフー:アイゼンの釣り竿へのこだわりや、マギルゥ姐さんの寝言の内容、それにダイルのシッポの再生スピードも……
ライフィセット:えっ、そこ……?
アイゼン:もういい、終わったことだ。だが、けじめはつけねばならんな
ビエンフー:けじめ……?
アイゼン:エレノア、疑ったことを謝る。すまなかった
エレノア:アイゼン……!?
ビエンフー:そうでフよね……ボクが、まずしなくちゃならないのはそれでフよね
ビエンフー:ごめんなさい、エレノア様
エレノア:……はい。二人の気持ち、確かに受け取りました
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:対魔士たちは、死ぬかもしれないってわかって神依を使ってるのかな……
エレノア:はい……私も、聖寮にいたら、同じように神依を使っていたかもしれません
エレノア:自分の命を危険にさらすことで大勢の人を救えるなら、それは「理」にかなっている……
エレノア:でも、あれほど危険なものを、しかも大量に実践投入するなんて、絶対に間違っています
ロクロウ:聖寮も、尻に火がついたってことだろ
エレノア:だとしてもあまりに犠牲が多すぎる……
ロクロウ:連中は、それだけ喰魔が大事で、俺たちがジャマだと考えてるんだろうさ
ロクロウ:あるいは、狙いが俺たちではなく神依を使った実戦にあるとしたら、どうだ?
エレノア:まさか……実験をしているというのですか!?
ロクロウ:戦いをかいくぐっておれずに残った太刀こそが「名刀」になる……
ロクロウ:対魔士だって似たようなもんだろう?
エレノア:……否定できないのが、くやしいです
アイゼン:ここを切り抜けたとしても、神依完成まで残された時間は多くはなさそうだな
マギルゥ:時間がないのは神依だけではないぞ。気付いておろうな
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:……なんでもいい……ジャマする奴は殺すだけよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ついに完成したんだね、金剛鉄の征嵐!
ロクロウ:応、この世で一番硬い……「最硬」の剣だ
エレノア:素人目に見ても、この剣が発する威光は尋常ではありませんね
ビエンフー:クロガネは、いい仕事しまフね〜〜♪
アイゼン:神剣・號嵐と金剛鉄の征嵐の一騎打ちか。これは見ものだな
マギルゥ:最高の結果が出るか、再考の結果となるか、神のみぞ知る、といったところじゃの
ロクロウ:神なんて関係ない
ロクロウ:斬るか斬られるか、決めるのはこの俺だ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アルトリウスも神依を使うのかな
アイゼン:わからん。聖寮のトップが自壊する危険のある術を使うとは思えんが……
マギルゥ:自壊の原因が術式の不具合ならば、導師サマとて壊れるであろうが
マギルゥ:対魔士の能力に起因するなら、特等どもは神依を使いこなしてくるやもしれんぞ
ロクロウ:となると、アルトリウスが使うのは……
ロクロウ:やっぱり「カノヌシの神依」か
エレノア:聖主の神依……できるものなんでしょうか?いくらあの方でも……
ベルベット:あいつは、やるわよ。じゃなきゃ、なんのために聖主を復活させたの?
エレノア:ですが、相手は聖主──
ベルベット:あいつは絶対にカノヌシを使いこなす。だから「神依」なんてふざけた名前をつけた
ベルベット:相手が神様だろうと悪魔だろうと自分の意志を貫く──それが導師アルトリウスよ
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:けど、関係ない。神の力を手に入れようが必ず殺す……あたしがこの手で……!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……大丈夫なのかな……
マギルゥ:人質策戦が……ではないの?
ライフィセット:うん。それもだけど……ベルベット、全然普通じゃないよ
マギルゥ:元々普通じゃないがのー
ライフィセット:マギルゥ!
マギルゥ:儂に怒っても、状況は変わらんぞ
マギルゥ:今のあやつの殺気は、まるで氷じゃ。同時に手負いの獣のように余裕をなくしておる
マギルゥ:はたしてあんな状態で、無事に脱出できるかどうか……
ライフィセット:ベルベットは、ずっと切り抜けてきたよ……今度だって……
マギルゥ:……じゃといいがの。しかし、どんなものにも限界はある
マギルゥ:絶対に折れぬ刀がないように、絶対に壊れん心もない
マギルゥ:「いざという時」にどうするか……今のうちに算段しておいた方がいいぞよ
ライフィセット:いざという時……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:大丈夫ですか、ライフィセット?
ライフィセット:うん……僕は。でも、ベルベットは……
エレノア:(もう限界かもしれない……無理もないけれど)
エレノア:ライフィセット、あなたは一旦私の中に避難してください
ライフィセット:……いやだ
エレノア:ですが、いつまたさっきみたいに……
ライフィセット:うん、わかってる
ライフィセット:でも、僕が逃げ出したら、ベルベットはもっと傷ついちゃうと思う……
ライフィセット:だから、せめて側にいたいんだ
エレノア:ずいぶん頼もしくなりましたね
ライフィセット:違うよ。悔しいけど、今の僕はベルベットのためになにもできない……
エレノア:そんなことはありません。人は、誰かが側にいてくれるだけで救われる時があります
エレノア:母を失った私もそうだった
ライフィセット:エレノア……
エレノア:今はベルベットから目を離さないようにして、三人で、ロクロウたちを捜しましょう
エレノア:でも、忘れないでくださいね。あなたの傍には、私がいます
ライフィセット:……もちろんだよ。ありがとう!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:カノヌシと名乗ったあの少年は……本当にベルベットの弟なのでしょうか?
ライフィセット:ベルベットを苦しめるために、カノヌシが見せた幻かもしれない……エレノアはそう思ってるの?
エレノア:はい。だってベルベットのもくてきは、殺された弟の復讐でしょう?
エレノア:その想いの強さは、今まで私たちが見てきた通り……
エレノア:なのに、肝心の弟が実は生きていたなんてありえないと思います
ライフィセット:……カノヌシの力がどんなものかわからないけど、僕はきっと本物の弟だったと思う
ライフィセット:メルキオルの幻覚に耐えたベルベットがあんな風になっちゃったんだから
ライフィセット:でも、本物のラフィが、あんなことをしたなんて信じたくないけど
エレノア:弟の身体を依りしろにして、カノヌシが復活したという可能性があるのでは?
ライフィセット:わからない
ライフィセット:けど、それならベルベットはあんなに苦しまないんじゃないかな?
エレノア:……そう……ですよね……
エレノア:カノヌシがベルベットの本物の弟──そう考えるのが一番「理」に合う……
エレノア:でも、残酷すぎます……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さっき言ってた「大地の記憶」ってのはなんなんだ?
アイゼン:前にも話したが、地脈は大地を流れる自然の力だ
アイゼン:風が吹き、水が流れ、鳥が羽ばたき、草花が咲く。それら自然の営みは、地脈にも伝わり痕跡を残す
アイゼン:痕跡は、人の記憶のように大地に刻まれ、地脈の中に溜まり続けている
ロクロウ:それが大地の記憶か
ライフィセット:人間や聖隷の行動も……?
アイゼン:大地の上で起こるすべての事象を自然と呼ぶ。当然、人間も聖隷も、業魔すらも自然の一部だ
エレノア:では、今こおうして、私たちが話していることも、大地の記憶に刻まれているのですか?
アイゼン:俺が人知れず行った悪事も、お前が漏らした悪口も、大地に見られている、そういうことだ
エレノア:私は悪口なんて……!?
アイゼン:ただのたとえ話だ。動揺するな
ライフィセット:カノヌシは、大地の記憶からベルベットに関係するものを呼び出して、見せてるってこと?
アイゼン:おそらくな。だから、別の場所にいたロクロウと俺も、同じ物をみたんだろう
アイゼン:大地を器とするカノヌシならでは芸当だ
ロクロウ:聖主なんて名乗っているくせに悪趣味な野郎だな
アイゼン:だが、今のベルベットには効果的な攻撃だ。地脈を脱出するまで、あいつから目を離すなよ
ライフィセット:う、うん……
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ベルベットの、精神的ダメージは相当なものだな
エレノア:はい……ギリギリで踏みとどまっていますが……
ロクロウ:今のところは、な
エレノア:今のところって……!?
ロクロウ:言葉通りさ。言っただろ。硬いだけじゃ、割れちまうって
ロクロウ:このまま心を揺さぶられ続ければ、ギリギリにも踏みとどまれなくなるだろう
エレノア:……私たちはどうすれば……
アイゼン:われるなら、そこまでのこと。目的の遂行を優先するまでだ
ライフィセット:そんな!ベルベットを見捨てるっていうの!?
アイゼン:一時の道場で視界を曇らせば、船が暗礁に乗り上げることだってある
ライフィセット:そうかもしれないけど……!あんなに苦しんでるのに、あんまりだよ!
ロクロウ:ベルベットがアイゼンの立場でも同じことを言うと思うがな
ライフィセット:……っ!ロクロウも、同じように思うの?
ロクロウ:俺か?俺は、まだベルベットに恩を返していない。それは必ず返す
ロクロウ:けどな、あいつがこれからどうなっちまうのかは、結局、あいつ自身にしか決められないことだ
エレノア:そうでしょうけど……
ライフィセット:……なら、僕も決めるよ
ライフィセット:僕は、ベルベットを見捨てない。なにがあっても
ロクロウ:そうか。お前がやりたいようにやれ
アイゼン:とめはせん
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:さっきのは、まだ「開門の日」以前のことか……
ライフィセット:うん。セリカさんがいて、アルトリウスの腕もまだケガしてなかった
ライフィセット:対魔士の活動もしていないように見えたね
エレノア:アバルにいたころのアルトリウス様は、あんなにやさしく笑う方だったのですね……
ロクロウ:そんな男が対魔士に戻り、導師として世界を背負う覚悟を決めたのは──
アイゼン:愛する妻を失ったからか……
ロクロウ:まあ、ほっといてもわかるさ
ロクロウ:この調子なら、そろそろくるんじゃないか。「その時」ってやつが
ライフィセット:その時……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アルトリウスとセリカさんのことって、今までベルベットが知らなかったことだよね
ロクロウ:多分な。馴れ初めや、二人きりの想いでのようだったからな
ライフィセット:……見た目は暖かい家族の風景ばかりなのに、すごく嫌な気分になった……
エレノア:私もです。これを見せているカノヌシの狙いを、はっきり感じました
ロクロウ:ベルベットの心を逆撫でするため、だな
エレノア:ベルベットは、アルトリウス様のことが心から好きだったのだと思います
エレノア:幸せだった過去と、変わってしまった今を同時に突きつけられることが、どんなに苦しいか……
ロクロウ:そうだろうな。業魔の俺にはわからんが
エレノア:ベルベットの境遇は過酷すぎて人間の私も想像するしかありませんよ
エレノア:でも……少しは分かる気がするんです。私もベルベットと同じ、あの方の教え子だから……
アイゼン:……アルトリウスは、カノヌシの覚醒には二つの質の穢れが必要だと言った
アイゼン:アバルの幻覚、監獄島討伐の情報漏えい、そして、弟の姿そのままのカノヌシの登場
アイゼン:全部それを手に入れるための仕込みだったとすれば……
アイゼン:腹をくくる必要がありそうだな
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:あれが……あの日がすべての始まりだったんだね……
ロクロウ:ああ。開門の日……カノヌシが半分復活して業魔が見えるようになった理由だな
アイゼン:カノヌシの力で、ほとんどの聖隷の意思が封じられた日でもある
エレノア:アルトリウス様が、世界を変えたいと願った背景に、あんな悲劇があったなんて……
エレノア:村の人たちが、野盗にアルトリウス様たちを差し出したりしなければ!
ロクロウ:確かに酷いが、珍しい話でもない
ロクロウ:人間、必要とあればなんでも切り捨てるものさ。集団のためっていう大義名分があれば、なおさらな
ロクロウ:あの夜のことも、多分ベルベットの一家が、村の輪の一番外にいたってだけなんだろう
エレノア:そんな身勝手な理由で……!!
アイゼン:人間は、そういう身勝手な生き物だと、お前もわかっているはずだ
アイゼン:だから今、無意識に口にしたんじゃないのか?
アイゼン:アルトリウスの願いは人間を救うことではなく、世界を変えることだと
エレノア:……っ!!そ、それは……
アイゼン:お前を責めてるわけじゃない。ただの事実だ
ロクロウ:あの夜の最大の悲劇は、世界を変える力をもった男が人間の限界を見限ったことなのかもしれんなぁ
エレノア:…………
ライフィセット:救世主アルトリウスは……人間に絶望したってこと……?
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:アイゼン、死んだ人間の魂がなんらかのきっかけで聖隷に転生するって言ってたよな?
ロクロウ:そのきっかけってのは、ポンポン起こるようなものなのか?
アイゼン:……わからん、としか言えん
アイゼン:人が聖隷に転生した事実はあるが、その原理は解明されていない
アイゼン:霊応力の高い人間が、転生しやすい傾向はあるが、生まれ変わりの方法が確立しているわけじゃない
ロクロウ:ふむ……つまりは、そう簡単に起こるものでも、起こせるものでもないってことだよな。普通なら
エレノア:でも、ベルベットのお姉さんは、シアリーズに、お腹の子供はライフィセットに転生した
エレノア:どうしたら、こんな偶然が起こるのです……?
アイゼン:偶然ではないのかもしれん
アイゼン:二人の死は、緋の夜……カノヌシの生贄儀式に絡んで起こったものだからな
エレノア:つまりカノヌシの意思がかかわっていると?
アイゼン:あくまで状況からの推測だ
アイゼン:いかに聖主とはいえ、人や聖隷の生死を自由に操れはしないはずだ
ロクロウ:偶然じゃなくて因縁なのかもしれないぜ
エレノア:ベルベットは、シアリーズを喰らったと言っていた。自分のお姉さんだった聖隷を……!
エレノア:そんなひどい因縁があるっていうんですか!?
ロクロウ:すまん、嫌な言い方をしちまったか
ロクロウ:だが、いいもわるいも、誰かの意思も関係なく、繋がっちまうのが因縁ってもんじゃないか?
エレノア:そうですね……でも、こんなのって……
アイゼン:落ち着け、エレノア。事実を知って一番動揺しているのはベルベットとライフィセットだ
アイゼン:こんな時こそ、あいつらに一番近いお前が見守ってやれ
エレノア:……はい。私が冷静にならないとですね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ベルベットや、調子はよさそうじゃのー?
ベルベット:問題ないわ
ベルベット:……あんたにも世話になったみたいね
マギルゥ:なんの。柄にもない礼なぞ、どーでもいいから、ちょっと「あーん」してみぃ
ベルベット:は……?
マギルゥ:そう、歯じゃよ!
マギルゥ:儂は、お主の牙が折れるほうに100ガルド賭けたじゃろ?
マギルゥ:ゆえに、お主の牙が折れたかどうか確認せねばならん
マギルゥ:坊よ、出番じゃぞ
ライフィセット:うん。糸切り歯を確認すればいいんだよね?
マギルゥ:そう、人間の牙といえば、犬歯こと糸切り歯じゃ。しっかりばっちり見極めるのじゃぞ
ベルベット:そういう具体的なことじゃないでしょ?しかも、なんでフィーにやらせるわけ!?
マギルゥ:なんじゃ、乙女の純情かえ?
マギルゥ:確かに、口の中を見せるのは、ある意味ハダカより恥ずかしいという説もあるが
ライフィセット:ええっ、そうなの!?
ベルベット:そんなこと言われたら変に意識するでしょ!
マギルゥ:ホレホレ、見せるのか?見せぬのか?
マギルゥ:判定できなければ、結果は確定できぬぞよ〜♪
ベルベット:……わかった。牙が残ってる証拠は、あたしの左手でみせてあげるわ
マギルゥ:うむ!それは、ビエンフーに確かめてもらおうかのー
ビエンフー:こ、ここで僕でフか〜!?フ条理きわまりないでフ〜〜!!
ビエンフー:ビエ〜〜!ニギニギされてるでフ〜〜!すっごくキバキバでフよ〜〜!!
エレノア:ベルベット、もう大丈夫みたいですね
ロクロウ:ああ、目が生き返った。だが……
ロクロウ:……口の中を見せるのは、そんなに恥ずかしいのか?
エレノア:な……!?デリカシーのないこと聞かないでください!
※枠外タッチで閉じます。
ザビーダ:なあ。あの少年は、どういうヤツなんだ?
ライフィセット:前は、僕と一緒にテレサ様っていう対魔士に使役されてたんだ
ライフィセット:あの子が一号で、僕は二号
ザビーダ:ほう、お前のツレか。で、そのテレサ様とやらが倒されて、野良になっちまったと
ライフィセット:うん。僕はベルベットたちと会えたけど、一号は、どこにも行く場所がないと思う……
ザビーダ:ああ、心を押さえつけられた聖隷の行き先なんざ、業魔の胃袋ン中くらいだよな
ザビーダ:……それにしても、俺が出会うのは子供ばっかりだなぁ
ザビーダ:こっちは、フリーでべっぴんのお姉さんを待ち望んでんのに
ライフィセット:……なんかごめん
ザビーダ:ははは、冗談だって!お前、くそ真面目だなぁ!
ザビーダ:安心しろ。あいつの封じられた心が解放されるまでは、俺が面倒みてやっからよ
ザビーダ:そのためにも、聖寮をぶっ潰さなきゃな!
ライフィセット:うん!ありがとう、ザビーダ
※枠外タッチで閉じます。
ザビーダ:なあ、ライフィセット。あいつの名前、なにかいいのないか?
ライフィセット:一号に名前つけてくれるの!?
ザビーダ:おう。聞いたら、真名も思い出せないっていうしな。一号なんて番号じゃ、かわいそうだろ?
ライフィセット:うん。僕はベルベットが名前をつkれてくれてうれしかった
ロクロウ:よし、俺に任せろ
ロクロウ:ハジメってのはどうだ?一号だから、一番初めの「ハジメ」だ
ザビーダ:なら素直に「イチロウ」とかでいいんじゃね?
ロクロウ:却下だ。それじゃあ、シグレの幼名になっちまうだろ
ザビーダ:なっちまうだろって、知らねえし
エレノア:もっと可愛い感じがいいですよ。「イッちゃん」とか「イッチー」とか「ナンちゃん」とか
ベルベット:どっから「ナン」が出てきたのよ?
エレノア:ナンバー1の「ナン」です
ベルベット:……拾うトコ間違ってるでしょ
ライフィセット:別に一号にこだわる必要はないと思う
ベルベット:じゃあ……「オカパ」とかどう?
ライフィセット:ええ〜……!?
マギルゥ:前髪パッツンのオカッパだからかえ?それは、あまりにもあまりじゃろうて……
エレノア:いえ、かなり可愛いですよ。まんまじゃダメなら「オカップ」とか?
ベルベット:あ……それはアリな気がする
エレノア:ですよね!では、元使役聖隷一号の名前は「オカップ」で──
ライフィセット:ダメだよ!二人とも全然わかってない!
ライフィセット:そんな可愛い名前、男子的には、ちっとも嬉しくないんだから!
エレノア:そ、そうなんですか……
ベルベット:そこまで主張するほど……!?
ザビーダ:はははっ……坊主の言う通りだぜ、お嬢さんたち。もっとこう、イブシ銀のかっこよさがないとな
アイゼン:……「シルバ」はどうだ?
ザビーダ:シルバ?
アイゼン:あいつの髪も首元のプレートも銀色だからな
ロクロウ:なるほど、なかなか渋くていいんじゃないか?
ライフィセット:「シルバ」……うん、かっこいい!
ザビーダ:元ツレのライフィセットが納得したから、「シルバ」に決まりだな
ザビーダ:礼を言うぜ、副長
アイゼン:……お前に礼を言われる筋合いはない
ザビーダ:はっ!シルバの代わりに言っただけさ
ザビーダ:早速、あいつに知らせてやらなきゃな!
ザビーダ:おーい、元・一号!お前の名前が決まったぜー
ライフィセット:よかった、いい名前がついて
アイゼン:……お前の時も、名前を考えてやるべきだったかもしれんな
ライフィセット:いいんだ。自分の舵は自分で取る……それがアイゼンでしょ?
ライフィセット:僕は、そのことをアイゼンに教えてもらったし
アイゼン:ふっ……一人前の口を利くようになったな。元・二号
ライフィセット:えへへっ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:マギルゥ、俺たちが地脈をさまよってた時、お前は、なにをやってたんだ?
マギルゥ:鐘を鳴らしておったのじゃよ。開きっぱなしの地脈の裂け目から聞こえんかったかえ?
エレノア:鐘なんて、どこにもなかったと思いますが?
ビエンフー:姐さんはメルキオル様と戦ってたんでフよ〜!姐さんは……とってもがんばったんでフ〜!!
マギルゥ:こりゃ、ビエンフー!そんな言い方をすると、こやつらが勘違いするではないか!
ビエンフー:だって、ずっと耐えてたじゃないでフか!ボクは……ボクはカンゲキしたでフ……
マギルゥ:ああ、耐えた耐えた♪笑うのを必死での〜
ロクロウ:あのジジイから笑い話でも聞かされたのか?
マギルゥ:にらめっこをしておったのじゃ。昔から、あのジジイはジジイ顔でのー
マギルゥ:若い身空から、ああまで老け顔じゃったかと思うと、笑いがこみ上げてたまらん
マギルゥ:儂もまだまだ修行が足りんでの。百と八つの笑いの発作を、鐘の音で砕いておったのじゃ
マギルゥ:バリーン、グシャーンと、景気よくの〜!
ライフィセット:もしかして砕けたのってマギルゥの……
マギルゥ:儂がジジイへの恋に破れて乙女心が砕けた……などとあさっての同情をするでないぞえ?
ライフィセット:そんな妄想してないよ!?
エレノア:……あなたが、地脈の裂け目を守ってくれたのですね
マギルゥ:違うと言うておろうに!勝手に儂に「がんばったで賞」を授けるでない!
ベルベット:受け取っておきなさい。どうせどーでもいいでしょ?
マギルゥ:……ま、そうじゃの♪
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:私の信じていた聖寮はなんだったのか……足元から崩れていくようなことばかり……
ビエンフー:エレノア様、元気をだしてくださいでフ……ボクも元気なくなるでフ〜……
ライフィセット:ドラゴン牧場のこと?
エレノア:はい……聖寮といえど、ドラゴンを想いのままに操って導くことは不可能なはずです
エレノア:つまりあのドラゴンは──
ライフィセット:ここに来るまでは、ドラゴンじゃなかった!?
アイゼン:そう考えるのが自然だな。おそらく聖隷を拘束し、その後ドラゴンに変えたんだろう
ザビーダ:……前にメルキオルの野郎がやったようにか
ザビーダ:どこまでも聖隷を踏みにじりやがって!
エレノア:言葉もありません……
ビエンフー:エレノア様のせいじゃないでフよー……
マギルゥ:しかし、喰魔だけでなくドラゴンまで生み出すとは……
マギルゥ:そのうち人間を生み出す方法も発見するかもしれんのー
エレノア:……はい
エレノア:って、それはわかってるでしょ!?
エレノア:あ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベルベット……
ベルベット:なに?
ライフィセット:僕って、ベルベットのお姉さんの子供……だったんだよね?
ライフィセット:お父さんは……
ベルベット:転生のこと、ね
ライフィセット:……うん
ベルベット:生れ変わるってことがどんなものか……正直、あたしにはよくわからない
ベルベット:でも、あたしにとって大事なのは、自分で見て、聞いて、感じたことよ
ベルベット:例え、誰かの生まれ変わりだったとしても、あたしはあたしで、あんたはあんた
ベルベット:それだけだと思う
ライフィセット:ベルベット……
ロクロウ:そうそう、アイゼンが言ってたが、聖隷の前世は、必ずしもにんげんとは限らないらしいじゃないか
エレノア:それじゃあ、動物や鳥や魚の生まれ変わりということもあるのですか?
マギルゥ:なくなくなくなくなくない〜〜♪
マギルゥ:じゃが、仮にワンコの生まれ変わりじゃとして、今の坊が、自分をワンコの兄弟だとは思わんじゃろ?
ライフィセット:うん……僕は僕だし……
マギルゥ:ベルベットのかわいいワンコじゃがのー
ベルベット:マギルゥ
ライフィセット:あとで噛みつくから、覚悟しといてね
マギルゥ:ひええ、ご勘弁を〜!前言撤回、噛みつき撤退じゃ〜〜!
アイゼン:前世とは「大地の記憶」のようなものだ。過去の積み重ねの上に、お前は生まれた
アイゼン:だが、特別なことじゃない。誰もが、過去の繋がりの上に生きている
ライフィセット:僕は僕なんだね
ベルベット:そ。他の誰でもない。あんたはフィーよ
※枠外タッチで閉じます。
ザビーダ:おい、副長。ジジイが連れてた角の業魔は、なんなんだ?
アイゼン:……わからん
ザビーダ:一瞬だったが、妙な気配を放ってやがった。お前は感じなかったのか?
アイゼン:わからんと言っている
ザビーダ:……そうかい
ザビーダ:やっぱり、てめえとは合わねえな!
ベルベット:あの大角の業魔には前にも会ったのよ。まともには戦わなかったけど
ベルベット:おそらくメルキオルが、幻術で操ってるんだと思うわ
ザビーダ:そうか。戦わなかったのは正解かもな
ザビーダ:正面からやりあったら、ただじゃすまなかったはずだ
ベルベット:……なぜわかるの?
ザビーダ:勘さ。ただ、なんだかやけに匂うのさ
ザビーダ:キナくせえ、不吉な匂いがよ……
アイゼン:……あの顔の傷……あいつは……
ライフィセット:大丈夫、アイゼン?顔色が悪いよ
アイゼン:……いや、どうということはない
アイゼン:今はここを出ることが先決だ。急ぐぞ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:マギルゥ、お前、賭けに勝てなくてよかったな
マギルゥ:か〜っ!負けて喜ぶ魔女がどこにおる!
マギルゥ:儂が負けたのは、主らがベルベットを甘やかすからじゃぞ!
ロクロウ:そうか?別に、なにもしてないけどな
アイゼン:俺たちは、な
マギルゥ:なにもせんのがやさしさなんじゃよ〜!
マギルゥ:せっかく開いたベルベットの傷口に、塩やらサトウやら擦り込まぬとは、甘すぎるわ!
マギルゥ:賭けの損失は、主らに払ってもらうからの!
アイゼン:なら、俺たちを混ぜて賭けの続きをしてみるか?
マギルゥ:ほう、おもしろいの
ロクロウ:俺は、ベルベットが折れる方に1万ガルド
マギルゥ:ほうほう
アイゼン:俺も、折れる方1万ガルド
マギルゥ:ほうほう……って、コラ!
マギルゥ:儂が、ベルベットが折れる方に賭けたいのをしっとるじゃろ〜〜が!?
ロクロウ:それは早い者勝ちだ
アイゼン:駆けるのをやめてもいいぞ?
マギルゥ:……いやいや、賭けから逃げたとあっては勝負師マギルゥの名が号泣するわい
マギルゥ:仕方がないから乗ってやるわ
マギルゥ:儂は、ベルベットの心が折れぬ方に10万ガルドじゃ
アイゼン:ふっ……
ロクロウ:ははは!
マギルゥ:なぜ笑う!?
ロクロウ:いやあ、お前って素直じゃないけど、案外かわいいところがあるよな
マギルゥ:な……かわいい……じゃと!・魔女に対してなんという褒め言葉を……
マギルゥ:不名誉棄損じゃ!主らが賭けた2万ガルドは賠償として没収じゃ〜!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:本当に、あの業魔はアイフリードなのかな……
ロクロウ:本人を一番よく知ってるアイゼンが言うんだから、間違いないだろうな
エレノア:でも、あなたやクロガネのように、強い意志を持った人間は、業魔になっても自分を失わないのでは?
エレノア:アイゼンの話を聞く限り、アイフリードも相当な意思の持ち主だと思いますが
ロクロウ:自分を失わないといっても業魔は業魔だ。残った自分ってのも、人間の時と同じじゃない
ロクロウ:人間だった頃の気持ちは忘れちまったが、多分人間のロクロウから見たら、今の俺は立派な化け物さ
エレノア:………
ベルベット:業魔化したアイフリードに残った自分が聖寮への服従を選ぶこともありえるわけか……
マギルゥ:いや、メルキオルとあやつの呼吸はいまいち合っておらんようじゃった
マギルゥ:多分、幻術を利用して操っておるのじゃろう
ベルベット:ロウライネやアバルで見たような幻?それで業魔を操れるの?
マギルゥ:現にできておる。ま、操ることよりも
マギルゥ:あのアイゼンが認めたほどの強靭な精神の持ち主を業魔に落とすほうがよっぽど難しそうじゃがの
ロクロウ:おそらくメルキオルは、相当えげつない幻術を使ったんだろうな
ライフィセット:アイフリード……アイゼン……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:急がないと!ザビーダ一人じゃ危ない!
ロクロウ:いや、ザビーダが味方とは限らんぞ。あいつも流儀を曲げないからな
ロクロウ:白角のドラゴンの時のように、アイフリードを守ろうとするかもしれん
ライフィセット:それは、アイゼンだって同じでしょ?だって相手はアイフリード──
ロクロウ:業魔になったアイフリードだ。アイゼンの親友のアイフリードじゃない
ライフィセット:…………
ライフィセット:人間に戻せないとしても、なにか方法はないかな?せめて心だけでも取り戻せたら……
ロクロウ:肝心の心そのものが変わっちまうのが業魔なんだよ
ロクロウ:現にアイフリードはベンウィックたちを襲った。あんなにあいつを慕っている仲間たちを、な
ライフィセット:アイゼンは……どうするつもりなんだろう?
ロクロウ:わからん。決めるのはあいつだ
ロクロウ:最悪、アイゼンとも戦うことになるかもしれん。お前も、覚悟はしておいた方がいいぞ
ライフィセット:……そんな……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:バンエルティア号の雰囲気……見た目はいつも通りですけど、全然違いますよね
ライフィセット:うん……ベンウィックの目も、赤かった
ロクロウ:そりゃそうだろう。だが、ここで取り乱したら、アイフリードの流儀を否定することになっちまう
ベルベット:だから、怒りも悲しみも呑み込んで前に進む……
ロクロウ:ああ。流儀を貫くってのも、楽しいばかりじゃないな
ライフィセット:……僕、聖寮のこんなやり方、許せないよ
エレノア:ええ。心を壊して操り人形にするなんて認められません
マギルゥ:じゃが……心を完全に操ることはできはせん
マギルゥ:例えバラバラに砕いたとしても、消し去れはせんのじゃ
ライフィセット:アイフリードもそうだったよね
エレノア:はい。体は消えてしまいましたが、あなたや海賊たちに心を託していった
エレノア:マギルゥの言う通り、心は消えないんですよ
ベルベット:心は消えない……そうよね
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:これが、カノヌシによる鎮静化……聖寮の目指していた理想の世界だというのですか
ビエンフー:ビエ〜〜ン!!みんな目が死んでるでフ〜〜!こんな世界、ちっとも楽しくないでフよ……
ライフィセット:心を押さえつけるだけじゃなくて、死ぬのを強制するなんて……おかしいよ
ロクロウ:死ななきゃならない、なんて理想があるかよ
マギルゥ:無理矢理心を抑え込んだところで、今度はそれがあらたな業を生みかねん
マギルゥ:ならば、命ごと心を断てばいいというのは、いかにもジジイどもの考えそうな「理」じゃな
アイゼン:なにが理だ……
ベルベット:……とにかくローグレスへ向かうわよ
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:この世界は、どうなってしまうんでフ?カノヌシの力はどこまで広がってるんでフか……
ライフィセット:カノヌシの領域が広がった瞬間、すごく遠くから力が近づくのを感じた
ライフィセット:広がった力は、空を覆いつくすような感じ……だからきっと他の街にも
マギルゥ:少なくとも、この国すべての人間に届く範囲で領域を広げたはずじゃ……
マギルゥ:さもなくば、鎮静化の意味はないからのー
エレノア:今頃、ゼクソン港と同じようなことが起こっている……のですね
ベルベット:操り人形のようになるか、あるいは
アイゼン:自ら命を絶つか
ロクロウ:あの一瞬で「理想の地獄」をつくり上げるとは、聖主カノヌシ、恐るべしだな
エレノア:私たちは、それほど強大な存在に立ち向かおうとしているのですね……
ベルベット:降りるなら、今が最後のチャンスよ
エレノア:地獄に降りろと?
ベルベット:この先に進んでも地獄なのは変わりないわ
エレノア:ええ、でもこの道には心も意志もあります。同じ地獄なら、「生き地獄」を私は選びます
ベルベット:泣いても知らないわよ
エレノア:先を急ぎましょう
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:タバサは、大丈夫かな……
ベルベット:あの人の心は、簡単につぶせやしないわよ
アイゼン:ああ。その辺の兵士より、よほど気骨はある
エレノア:鎮静化には耐えられても、また聖寮に見つかってしまったら……
マギルゥ:連れ歩く方がよほど目立つわ
マギルゥ:あの女は闇組織のボスじゃ。己ひとりを隠すくらい造作もないじゃろうて
ロクロウ:案外、あのばあさんは影武者だったりしてな
ライフィセット:……えっ!?僕、あのタバサのつくる料理が好きだったのに
ロクロウ:冗談だって。あんな肝の据わったばあさん、世の中に何人もいないさ
ベルベット:あたしたちが生まれるずっと前から、この国の裏社会で生きてる人よ
ベルベット:心配なんかしても、余計なお世話だって笑われるだけよ
エレノア:そうですね。離宮に急ぎましょう
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:カノヌシが完全に覚醒していないのに、世界に影響が及んでる
マギルゥ:他の街も、これまでに見た街と同じか、もっと別な問題が起きとるかもしれんのー
ライフィセット:マギルゥ……聖隷を覚醒させうような術はないの?
マギルゥ:覚醒させる術じゃと?
ライフィセット:うん……あの城下の炎を、僕がちゃんと使えたら……
マギルゥ:あの力は、この世界の道理をも覆しかねんものじゃ。その反動は、坊自身をも破滅させるやもしれんぞ
マギルゥ:それでも、坊は覚醒したいのかえ
ライフィセット:……力が、欲しいんだ
マギルゥ:ベルベットのためにか?
ライフィセット:それもある……けど
ライフィセット:僕は今、聖寮がやろうとしていることが、すごく嫌なんだ……こんな世界、楽しくない
ライフィセット:だから……自分にできる限りのことをしたいって、自分の意志で……そう思うんだよ。だから──
マギルゥ:そんな術など儂は知らぬ。たとえ知っておっても、今の坊には無意味じゃ
ライフィセット:えっ……
マギルゥ:坊にはもう「心の力」が生まれておる。じゃが、魔法では心を強くすることはできぬ
マギルゥ:坊に必要なのは、決意と覚悟……あとは……勇気じゃ
ライフィセット:……うん。ありがとう、マギルゥマギルゥ:言葉などいらぬから、100ガルドおくれ
ライフィセット:えっ……お金とるの?
マギルゥ:魔女に、柄にもないことを言わせて辱めたんじゃぞ。慰謝料としては安いくらいじゃ
ライフィセット:マギルゥって、ほんと素直じゃないよね
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:びえ〜〜っくショん〜〜!前に来た時より寒くなってるでフ……
エレノア:確かに……以前は肌寒い程度でしたが、今は体の芯から冷えてくるようです……
ビエンフー:ボクが温めて──
エレノア:けっこうで……くしゅん
マギルゥ:おや、クシャミが伝染しとるのか……へぶしょいっ!うう〜さぶぅぅぅ……
マギルゥ:ここが、これほどに寒いとなると、先のガイブルク氷地が思いやられるのー
ベルベット:キララウス火山に続く氷雪地帯よね。そんなに寒いの……?
ロクロウ:俺も修行で何度か山籠もりをしたが、雪も多いし、なかなか寒い場所だろうな
ロクロウ:……ヘクション!
ベルベット:なんであんたがクシャミをしてるの?業魔は寒さなんて感じないでしょ
ロクロウ:いや、今のは雪が鼻に飛び込んできて──
ベルベット:くしゅん
ロクロウ:お前もしているじゃないか
ベルベット:風で髪が流されて、鼻がくすぐったかったのよ
ライフィセット:でも、僕が読んだ古文書には、ガイブルクのあたりはあまり雪は降らない場所だって……
アイゼン:火山から流れ出たマグマや、地熱の影響だな。古文書には「平原」と記されていたはずだ
ライフィセット:うん。キララウス火山は噴火活動も活発で、温泉地としても人気があったみたいだね
アイゼン:だが、今では……
アイゼン:……なんだ?
ライフィセット:どうしたの、みんな?
ベルベット:待ってるんじゃない?あんたたちのくしゃみを
ビエンフー:そうでフ!この流れはいわゆる「天丼」でフ!
マギルゥ:景気のいいのが欲しいところじゃの〜〜!
ライフィセット:あっ……
ライフィセット:……はぁ……はぁ……!
ライフィセット:……はぁ。ごめん、くしゃみ出そうにない
ライフィセット:……今度、くしゃみ練習しておくよ
アイゼン:……やれやれ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:北の街メイルシオまで、もうあと少しだね
ロクロウ:そのメイルシオを抜ければ、いよいよ決戦の地、キララウス火山だ
エレノア:……寒いとは聞いていましたけれど、本当〜〜に寒いですね
アイゼン:地脈融点で四聖主を復活させれば、この気候にも変化が現れるはずだ
マギルゥ:儂らが生きておる間に、どれだけ暖かくなるかはわからんがのー
ベルベット:急ぐわよ。どんなに過酷な寒さだろうと、険しい山だろうと進むしかない
ベルベット:四聖主を復活させるまで、足を止めるわけには行かないわ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:静かで、美しい街ですね……
ロクロウ:雪で白いだけだろ?
エレノア:その白さがいいんじゃないですか
ライフィセット:僕も、きれいだなって思うけど
アイゼン:住んでる連中が美しいとは限らんがな
エレノア:もお、アイゼンまで……
マギルゥ:サボった男を、極寒の外に三日も立たせておくような優しい連中じゃからのー
ベルベット:あの男がろくでなしかもしれないし、どの街にだって、日向もあれば日陰もあるでしょ
エレノア:それはわかってますけど……
ベルベット:ここで話し込んでてもしかたがないわ。様子を見ながら、街の一番奥まで行くわよ
ベルベット:巡察官なんだから、自分の目で見て考えたら?
エレノア:ええ、そうしてみます
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:空も、地面の雪も……みんな赤い。これが「緋の夜」なんだね
ベルベット:不思議な光景よね
ライフィセット:うん、なんかすごい
ベルベット:…………
ライフィセット:あ……緋の夜を喜んでるわけじゃないよ
ベルベット:ラフィやセリカ姉さんのことなら、気にしなくていいわ
ベルベット:どうしてあの月は、あんなに赤いんだろうって、思ってただけだから
エレノア:緋色の月は、この世とあの世を繋ぐ門とか、人間の罪の証と言われているんですよ
ロクロウ:罪の証か……悪人が流した血を、月が吸い上げてるのかもしれんなぁ
マギルゥ:ぞわ〜……ずいぶんと猟奇的じゃの〜
エレノア:しみじみと怖いこと言わないでくださいよ
アイゼン:緋の夜は、ある周期で満月が特別な位置をとる度に起こる
アイゼン:大地と月が引き合い、地脈の力が空に流れ出るせいで、赤く染まって見えるんだ
マギルゥ:そう。そして、その異常な力場だけが、聖主に通じる特殊な霊力条件を満たすといわれておる
ライフィセット:だから、緋の夜に儀式を行うんだね
アイゼン:……ただ、人の世は流血の歴史。惨劇によって流された血は、すべて記憶として地脈に沁み込んでいる
アイゼン:そういう意味では、月が血を吸い上げているという表現も、あながち間違いじゃないかもしれんな
ロクロウ:おお!俺の妄想があってた!
エレノア:はしゃがないでください
ライフィセット:……そう思うと、哀しい色だね
ベルベット:そうね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:さあて、ベルベットや
マギルゥ:そろそろ、火山が爆発した時の回避策を試してくれてもいいんじゃぞ?
ベルベット:策なんてないわよ
マギルゥ:な、な、なんじゃとー!?それでは四聖主が起きても、全滅するじゃろうが!
ベルベット:あたしは死なないわ
マギルゥ:お主は平気でも、儂らが死ぬわい!
ベルベット:大丈夫よ、あんたたちなら
マギルゥ:さわやかな顔で無責任発言すなー!
ライフィセット:……多分、火山は爆発しないと思う
ライフィセット:火山にある地脈湧点を利用して、地脈に魂を流し込むだけだから
ライフィセット:火山の活動そのものには、大きな影響は出ないんじゃないかな
マギルゥ:な〜んじゃ。それならひと安心じゃの♪
アイゼン:だが、太古の時代より四聖主の覚醒時には大きな地殻変動があったといわれている
アイゼン:強引な覚醒に聖主がキレて、火山を爆発させる可能性は否定できんぞ
マギルゥ:やっぱりダメじゃろうがー!
ライフィセット:ダメじゃないよ、僕たちなら。火山が爆発したって、なんとかしてみせる
ロクロウ:はは!ベルベットに似てきたなぁ
エレノア:頼もしい反面、心配ですけど……
マギルゥ:こりゃあ、遺言を書いておいた方がよさそうじゃな……アイゼン、ペンと紙はあるかの……?
アイゼン:悪いが使用中だ
マギルゥ:ぐぬぬ〜〜!
ベルベット:小芝居はもういいわよ。どーせ全部知ってて言ってるんでしょ?
マギルゥ:なんじゃ、ばれてたかえ♪
ベルベット:当然でしょ。だってあんた、遺言残す相手なんていないし
マギルゥ:おふう……今のは地味に傷ついたぞえ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……シグレとの戦い、もうすぐだね
ロクロウ:応、いよいよだな!
ロクロウ:……こんな時だが、ライフィセット。お前に聞いておきたいことがあるんだが
ライフィセット:いいよ、なんでも聞いて
ロクロウ:……お前なら、そう言ってくれると思ったよ
ロクロウ:で、メイルシオでの風呂はどうだった?
ライフィセット:は……?
ロクロウ:ベルベットと一緒に風呂に入ったんだろ?ここだけの話で感想を教えてくれよ
ライフィセット:な、な、なにを言ってるんだよ、ロクロウ!?
アイゼン:そのここだけの話、俺も混ぜてもらおうか
ライフィセット:アイゼンまで!?
アイゼン:恥ずかしがることはない。人生には、幾度か覚悟を決めねばならない時が来る
アイゼン:お前の覚悟の成果を、確認したいだけだ
ロクロウ:そうそう、確認だ♪
ライフィセット:も〜!一緒になんて入ってないってば!
ロクロウ:なんだよもったいない。大人になったら無理なんだから、行っておくべきだったのに
ライフィセット:……だからだよ
ライフィセット:僕は……ベルベットに子供扱いされるのはイヤなんだ
ロクロウ:はははは!そうか!
アイゼン:ふっ確認できたな
ロクロウ:ああ、もう俺が守ってやる必要はなさそうだ
ライフィセット:二人とも、なんで笑ったの??
ロクロウ:うれしいからさ、お前の成長がな
ライフィセット:意味わかんないよ!?からかうなら、もう話さないからね!
ロクロウ:すまん、すまん。だが、笑ったおかげで肩の力が抜けたよ
ライフィセット:ロクロウ……緊張してたの?
ロクロウ:自分でもびっくりだがな。だが、これでいつもの俺で戦える
ロクロウ:ありがとよ、ライフィセット
ライフィセット:う、うん。どういたしまして
アイゼン:次は、お前が覚悟を見せる番だな
ロクロウ:応!
ロクロウ:ライフィセット、アイゼン。俺の覚悟、しっかり見届けてくれよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……っく……
ロクロウ:どうした、なにを泣いてるんだ?
エレノア:泣いてなど……いません
ロクロウ:そうか
エレノア:そうかって……それだけですか
ロクロウ:なんよ、お前……やっぱり泣いてるんじゃないか
エレノア:だって……あなたとシグレ様は……兄弟なのに……
ロクロウ:ああ、そのことか。別に泣くような話じゃないだろ
エレノア:どうしてそんな平気な顔で言うんですか?どうせ、業魔だからって言うんでしょうけど!
ロクロウ:質問しといて、自分で答えを言うやつがあるかよ
エレノア:……やっぱり、業魔だからと言うんですね
ロクロウ:いや、その答えは不正解だ
ロクロウ:業魔だからじゃない。悲しまないのは、俺たちが剣士だからだ
エレノア:…………?
ロクロウ:互いに本気で斬り合う時の、あの研ぎ澄まされた、心を刺すような感覚……
ロクロウ:あいつに勝ちたいのに、永遠に斬り合っていたい、そういう、たまらない感じがあったんだ
ロクロウ:シグレとの斬り合いにはな
エレノア:……シグレ様も楽しそうでしたよね
エレノア:少し、わかるような気がします。理解はできませんけど……
ロクロウ:それでいい。理解したら、俺たちみたいになっちまうからな
エレノア:そうですね
ロクロウ:次はいつ、あんな斬り合いができるんだろうな……
エレノア:心配いりませんよ
ロクロウ:ん?
エレノア:あなたがシグレ様にしたように、今度は、あなたを倒すために技を磨く剣士が、きっと現れます
ロクロウ:応、そうだな!
ロクロウ:ははは、お前のその前ムキさ、シグレみたいだな。なんか、急に「夜桜あんみつ」が食いたくなってきたぜ
エレノア:夜桜あんみつ……?
ロクロウ:ご先祖様の国の甘味でな。シグレの好物だったんだ
エレノア:へえ……どのようなものかは知りませんが、食べてみたいです
ロクロウ:よし、全部終わったら食いにつれてってやる
エレノア:楽しみにしてます
ロクロウ:そのためには、この戦いに勝って、生きて帰れよ
エレノア:ロクロウこそ!約束ですよ、夜桜あんみつ
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:チョロいぜ甘いぜチョロ甘ですネ……熱いぜ寒いぜアチャ冷たいぜ……
ベルベット:なにぶつくさ言ってるの?
マギルゥ:火口で熱いと言ったら、騒ぐなと叱られたでのー
エレノア:……根に持ってるんですか?
マギルゥ:熱しやすくて冷めにくいんじゃよ。こっちは好きにやっておるから、放っておいておくれ
ベルベット:かえってうっとうしいわよ
ベルベット:だいたい、熱くて寒いなら、アチャ冷たいじゃなくて、アツサムでしょ……
マギルゥ:それでは、儂のニュアンスは伝わらぬわ!というか問題はそこではない
マギルゥ:寒冷化で外側はキンキンに冷えておるくせに、内側は溶岩でアツアツというのが気に食わぬ
マギルゥ:そういうあいまいミーなモノが、儂はキライなんじゃ
ロクロウ:ほう、じゃああれはどうだ?酢豚の中に入ってるパイナップル
マギルゥ:許さん!
ライフィセット:甘い卵焼きは?
マギルゥ:弁当のおかずにならん!
エレノア:チョコレートがけレーズン!
マギルゥ:干しブドウの存在そのものが許せぬ!
ロクロウ:仕方ない、それならピーチパイはどうだ?
マギルゥ:質問の前提がわからんわ!
ベルベット:あんた自身のことは……?
マギルゥ:……大嫌いじゃよ
ベルベット:なら、あんた自身もあいまいなんだ
マギルゥ:じゃから、ジジイをお主に喰わせて、地脈湧点に叩きこませるんじゃ
ベルベット:好きになれるといいわね、自分を
マギルゥ:……ふん、恥ずかしいことを言うな
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:四聖主を目覚めさせるために必要な魂は、あとひとつ……
ライフィセット:ベルベット、大丈夫?
ベルベット:必ずメルキオルを喰らって、贄は揃えるわ
ライフィセット:そうじゃなくて、ベルベットの身体のことだよ
ライフィセット:テレサとオスカーの時は、具合が悪くなって倒れたでしょ
ベルベット:ああ……シグレを喰らって、平気なのかってこと?それなら大丈夫よ
ライフィセット:シグレの力は、テレサ様たちよりも、ずっと強いんじゃないの?
ベルベット:でも、この通りよ。具合悪そうに見える?強がってるように見える?
ライフィセット:ううん……
ベルベット:きっと慣れたのよ、身体も……心も
ライフィセット:……慣れたんじゃなくて、変わったんだと思う
ベルベット:ん?
ライフィセット:僕が心を持って、変わったみたいに、ベルベットも旅を通して変わって、強くなったんだよ
ライフィセット:哀しいことも、辛いことも、まっすぐぶつかって、乗り越えてきたから
ベルベット:……そうなのかな
ライフィセット:そうだよ。だから、僕は──
ライフィセット:あっ……
ベルベット:あとて、キッシュつくってあげる
ライフィセット:プディングもつけてくれる?
ベルベット:いいけど……あんた、あたしに料理させるために褒めてくれたわけ?
ライフィセット:そんなんじゃ……
ライフィセット:あ……うん、ばれちゃったね
ベルベット:……ほんとに強くなったわね
ベルベット:さあ、行くわよ。メルキオルを喰らいに
ライフィセット:うん!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:メルキオルの本性がいまいちわからんな。一体どういう奴なんだか
マギルゥ:ひとことで言うなら「対魔士の影」じゃよ
ロクロウ:影……か
マギルゥ:穢れなき心を持つ対魔士とて、所詮は人間。そして、救わんとする相手もまた人間
マギルゥ:まっすぐな誠意だけで、世界を救えるはずもない
マギルゥ:対魔士が穢れぬためには、その影を……汚れ仕事を担う影が必要なのじゃよ
アイゼン:なるほど。それがメルキオルか
エレノア:……聖寮にいた頃は、気づけませんでした。あの方がなにをしていたのか……
ロクロウ:だが、なんでメルキオルは穢れないんだ?
マギルゥ:世界を救う対魔士を支える……その信念と覚悟は、純粋で迷いのないものじゃからな
マギルゥ:そりゃあもう、煮ても焼いても砕けんガチガチの氷山のようにのう
マギルゥ:あんな氷の心には、とてもとてもなれなんだよ……
ライフィセット:あ……もしかしてマギルゥは……
マギルゥ:そう。儂は次代の筆頭対魔士──アルトリウスの影になるべく、メルキオルに育てられたんじゃ
マギルゥ:ところが目論見は大失敗。儂はその期待に応えることはできんかった……
ロクロウ:予定通りにいってたら、メルキオルじゃなくお前と戦ってたわけか
ライフィセット:そうじゃなくてよかった
ベルベット:まあね。マギルゥが聖寮を動かしてたら……
アイゼン:まったく出方が読めん恐るべき組織になっていただろうからな
マギルゥ:それはそれで面白そうじゃがの〜♪
エレノア:……あの方は……私の影でもあったんですね
マギルゥ:ジジイに同情して、戦いづらくなったかえ?
エレノア:いえ、そんなことは……
マギルゥ:お主が気に病むことはない。影を消すのは影の仕事じゃ
マギルゥ:もっとも儂は影にもなれず、闇に落ちた魔女じゃがの〜♪
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:私たちは勝てるのでしょうか……あの特等対魔士メルキオル様に
マギルゥ:ズバリ、勝利は二割じゃな
エレノア:二割……!?そこまで望み薄ですか?
マギルゥ:儂の術も、今ある対魔士どもの術や技も、ほとんどあのジジイが伝え広めたものじゃ
マギルゥ:儂が同時に三つの術を張れば、ジジイは六つの術を巡らせる
マギルゥ:手の内はすべて知られ、力の差は歴然。理で考えれば、二割でも甘いやもしれん
エレノア:……た、確かに……
マギルゥ:じゃが、儂らにはベルベットや坊、ロクロウらがおる。感情をむき出しにして暴走するあやつらに計算はきかん
マギルゥ:不確定すぎる要素じゃが、出目によっては勝利を跳ね上げてくれるじゃろうて
エレノア:ですね。敵としては、この上なくやっかいですし
マギルゥ:……といっても、あくまで正面からぶつかった場合で、当然の如く裏をかいてくるのがあのジジイじゃ
アイゼン:どう検討しても勝ち目は薄いな
エレノア:アイゼンまで……
アイゼン:冷静な分析は悪いものじゃない
アイゼン:その冷静さこそ、逆境を覆すための大きな武器になるはずだ
アイゼン:なにより、マギルゥ。相手の手の内を知っているのは、お前もだろう?
エレノア:そうか。そうですよね
マギルゥ:まあの。じゃが、あやつに弱点なぞ……
アイゼン:冷静に見直してみろ。勝機は、案外、目の前に転がっているものだ
マギルゥ:転がっておる……か。では、せいぜい下を見て歩いてみるかのう
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:キララウス火山も爆発せず、別の異変も起こっていないようです
エレノア:ひとまずは安心ですね
ロクロウ:メルキオルの言葉は、ハッタリだったのか?
マギルゥ:真実を持って迫るのは、あのジジイの誠実なる脅しの手口じゃよ
アイゼン:四聖主の復活によって、この大地は目覚めた
アイゼン:これまで幾万年もの年月をかけて変動していた大地は、これからの数百年で、大きく変わるだろう
エレノア:数百年……
アイゼン:いずれは火山も噴火するだろうが、先の話だ
ライフィセット:人間からしてみれば長い期間だけど、大地の歴史から見たら、あっという間なんだろうね
マギルゥ:じゃが、カノヌシは鎮めの聖主。あやつを殺せば、なにが起きてもおかしくはないぞえ
ベルベット:…………
マギルゥ:ま、どーでもいいがのー
エレノア:よ、よくないですよ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:メルキオル……強かったね
ベルベット:そうね。マギルゥが隙をつくってくれなかったら、勝負を盤ごとひっくり返されていたわ
アイゼン:あの瞬間を逃さなかったお前も大した奴だ
ベルベット:あんた、本当はとどめを刺したかったんじゃ……?
アイゼン:こだわるなら最初から一人で戦う
アイゼン:奴と戦う理由を持つ者が集まり、戦った。好機が転がってきたのが、お前の前だった
アイゼン:それだけのことだ
ベルベット:……わかったわ
アイゼン:メルキオルが個人的な都合でアイフリードを陥れたなら、これでカタはついた
アイゼン:だが奴は、人の意思を踏みつぶしてでも穢れない世界をつくろうという「理」のもとに動いていた
アイゼン:ならば、アイフリードの真の仇は聖寮の掲げる「理」そのものだ
ライフィセット:アイゼンの仇討ちは、まだ終わってないんだね
アイゼン:ああ。アルトリウスの首も、カノヌシの首も、お前たちがボケっとしていれば、俺が狩り獲る
アイゼン:自分でとどめを刺したいなら、俺を出し抜いてでも、首を獲りに行け
ベルベット:ええ、そうさせてもらうわ
ライフィセット:僕は、全力で戦う。それだけだよ
アイゼン:それでいい
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:これは実に純情な邪推なんじゃがのー。腹にため込んでおった魂を出してスッキリしたかえ?
ベルベット:その聞き方がムカつくんだけど
エレノア:ベルベットの言いたいこと、わかります。お通じのことを聞かれているようで不愉快ですよね
ベルベット:……その詳細説明要らないから
エレノア:あ……ごめんなさい
マギルゥ:まったく、なにをカリカリしておるんじゃ?儂はただ、腹は減らぬか、と聞いておるだけじゃて
ベルベット:だったら最初からそう聞きなさいよ
ライフィセット:どうなの?おなか、減ってる?
ベルベット:……そうね、言われてみれば空腹を感じないけど、魂を撃ち出したこととは関係ない気がするわ
ロクロウ:じゃあ、なんなんだ?
ベルベット:カノヌシの鎮めの力が弱まったことで、食欲も活性化してるんじゃないの?
ロクロウ:応、確かに俺も急に腹が減って来た
ライフィセット:僕も……おなかが鳴りそう
エレノア:実は……私も先ほどから、美味しいモノばかり思い出してしまって……
アイゼン:そもそも、マギルゥがこんな話を始めたのは自分の腹が減っているからじゃないのか?
マギルゥ:いやいや、儂はちっともそんなことないぞ
アイゼン:そうか、なら、船に戻ったらマギルゥに見張りを任せて、みんなでメシにしよう
ベルベット:なら、キッシュとプディングをつくるわ
エレノア:私はペンギョントマトシチューをつくります
ビエンフー:うわあ、エレノア様の手料理、楽しみでフー!
ライフィセット:早く船に戻ろう!
マギルゥ:まったく、メシごときで盛り上がりおって、儂など──
マギルゥ:儂は、スイートボルシチ・カレギア風が食べたいんじゃ〜〜
ベルベット:……なら、あとで桃を調達してきて
マギルゥ:モモ?
ベルベット:カレギア風ボルシチには、デザートのピーチパイは欠かせないでしょ?
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:カノヌシの鎮めの力が小康状態になったことで、人々の心も少しは解放されたのでしょうか
マギルゥ:海賊団の連中も粗っぽさがもどって来ておるし、個人差はあれど、変化は起きておるじゃろーの
エレノア:少し、各地を見に行ってみませんか?どんな影響が起きているのか気になります
ライフィセット:四聖主にも、会えるなら会ってみたいよね
アイゼン:それはやめておいた方がいい
アイゼン:四聖主はそれぞれ、どこかの地脈点にいるはずだが、それがどこかはわからん。遥か彼方の可能性もある
ロクロウ:会えたところで、俺たちの味方とは限らないしな
マギルゥ:じゃの。神は神の都合で存在しておるのであって、カノヌシを倒したいというのは儂らの都合じゃ
ライフィセット:そうだよね……
ベルベット:でも、戦いの足場を見ておくのは悪くないわ
ベルベット:アルトリウスたちの動向を探りつつ、世界をまわってみるのもありね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:鎮静化の影響は弱まったが、その分、街はザワついてる感じがするな
アイゼン:聖隷の対魔士が激減し、業魔への対処が追い付かなくなっているのかもしれん
エレノア:…………
ベルベット:泣いてるの?
エレノア:現実をかみしめているだけです
エレノア:借り物の「理」ではない、自分の「情」で動くことの怖さ、辛さ、そして責任を
エレノア:今が、私の本当の新しい出発点なんです。この過酷な現実をかみしめて、前に進まないと
ベルベット:面倒な奴ね……けど、嫌いじゃないわ
エレノア:はい……泣き虫じゃありませんから
ベルベット:そのようね
ロクロウ:だが、なんでも背負い込むなよ
エレノア:わかっています。私にできることをするだけです
ロクロウ:そんなこといいつつ、限界を超えても頑張っちまうのが、お前だろ
ロクロウ:ギリギリまで頑張って、どうにもならない時は、人を頼ってもいいんだからな
エレノア:ロクロウ……ありがとうございます!
ロクロウ:……ま、俺は人じゃないけどな
エレノア:わかっていますよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:この先に待つのは、聖主カノヌシとアルトリウス様……とても奇妙な感じがします
ロクロウ:世界を敵に回して、カミサマを斬りに行こうなんて、まあ、まともじゃねえよな
エレノア:それもそうなのですが、一番驚いているのは、自分の中に、こんな激情があったということです
ベルベット:そうね。あんたは、この中でも飛びぬけて頑固で、意志が強いと思うわよ
エレノア:褒め言葉として聞いておきます
アイゼン:そうでもなければ、ライフィセットと契約することなどできなかっただろうな
ライフィセット:僕がこうやって、広い世界で旅ができるのは、エレノアのおかげだよ。ありがとう
エレノア:お礼を言いたいのは、私も同じですよ
マギルゥ:まったく、坊は……このひねくれ者どもの中におって、よくぞここまで素直に育ったのー
ライフィセット:僕もそう思う。自分をほめてもいいかな、って
ロクロウ:ははは!言うようになったじゃないか!
ライフィセット:ベルベットが名前をくれてエレノアが器になってくれた
ライフィセット:アイゼンとロクロウが生き方を教えてくれて、マギルゥはいっぱい驚かせて、笑わせてくれた
ライフィセット:だから、僕は今ここにいる。それがうれしいんだ
ビエンフー:ボクは?ボクはなにかないんでフか〜〜!?
ライフィセット:グリモ先生には古代語を教えてもらって、ビエンフーには……
ライフィセット:……特に、ないかな
ビエンフー:びえ〜〜ン!!そーバーッド!!
ライフィセット:ウソだよ。ビエンフーには、めげないことを教えてもらった……と思う
ビエンフー:ライフィセット……そーグーッドでフ〜〜!!
マギルゥ:さてさて、こっちの盛り上がりにあわせて、敵の殺気も、ぐんと高まってきたようじゃぞ
ベルベット:この先は、なにがあるかわからない。気を抜かずに行くわよ
ライフィセット:うん!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:いやあ、それにしても高いなぁ!しかも丸い!
ロクロウ:……俺たちの世界って丸かったんだな
アイゼン:今頃気付くな。海の水平線も、同じように丸かっただろう
ライフィセット:うん。だから水平線の向こうから近づいてくる船は、帆の上の方から見えてくるんだよ
ロクロウ:お前たち……こんな絶景を前にして冷静すぎだろ
アイゼン:……お前は、敵の本拠ではしゃぎすぎだ
マギルゥ:ふぅむ……ここを構成している力は……
マギルゥ:なるほど、やはり思った通りじゃな
ベルベット:なにがよ?
マギルゥ:いや、この聖殿の正体がわかったんじゃよ
マギルゥ:ここは、カノヌシが地脈に循環させておった力を凝縮し、結晶化させたもの──
マギルゥ:わかりやすくいえば、聖主カノヌシの体そのものなんじゃよ
エレノア:つまり……私たちはカノヌシのお腹の中に飛び込んだってことですか!?
ベルベット:わかってたなら、なぜそうと……!
マギルゥ:うかつに飛び込むなと忠告したじゃろー。敵の本拠ではしゃぐでないわい
エレノア:……ですね。冷静に考えればこの状況は地脈と大して変わりません
ベルベット:ええ。どの道、カノヌシを倒すには、ここに入り込むしか方法はなかった
ベルベット:どんなに巨大で強い力をもっていても、「心臓」を潰せば殺せるはずだから
マギルゥ:確かにの。じゃが、心臓とは、これほどの力を操る聖主カノヌシの本体と、導師アルトリウス
マギルゥ:潰されるのはこっちやもしれんぞ?
エレノア:今更ですね、マギルゥ
ベルベット:敵の本拠でびびるんじゃないわよ
※枠外タッチで閉じます。
???:トータス、トータス
ベルベット:……カメの業魔?
???:いいえ、業魔じゃないっすよ
ホワイトかめにん:おいらは「ホワイトかめにん」っす。驚かせてしまって恐縮っす
ロクロウ:業魔じゃないなら聖隷か?
ホワイトかめにん:いえ、かめにんはかめにんっす
ホワイトかめにん:諸々のご不審はごもっともっすが、これ以上の追及は、どうかご勘弁いただきたいっす
ロクロウ:お、応……これはご丁寧に
ホワイトかめにん:恐縮っす
アイゼン:かめにん一族は、やり手の旅商人。俺たちのような裏稼業には、なにかと重宝する存在だ
ベルベット:行商人か。役に立ちそうね
ホワイトかめにん:はいっす!「お客様の笑顔が第一」それがホワイトかめにんのモットーっす!
ホワイトかめにん:ただ……場所が場所だけに、お値段は少々お高めになってしまうっすが──
ベルベット:嫌よ。まけて
ホワイトかめにん:……まことに申し訳ないっすが、辺境の商売は、なにかと手間賃がかかりまして……
ベルベット:それはそっちの都合でしょ?
ホワイトかめにん:う……たしかにそうっすが……
ベルベット:素直に認めたわね。じゃあ、通常価格で手を打ってあげるわ
ロクロウ:感謝のしるしに「お客様の笑顔」ってやつをやっとくか
ロクロウ:にっ♪
ホワイトかめにん:きょ、恐縮っす……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ははは!すごい値切り方だったな、ベルベット
ベルベット:当たり前の交渉よ。喰い殺して品を奪うよりましでしょ?
ロクロウ:……お前、死神より怖ろしいな
ライフィセット:かめにん……
ロクロウ:あんな変な奴がいるなんて世界は広いよなぁ、少年
ライフィセット:……うん
アイゼン:ふっ……あっちも俺たちを見て同じことを思ってるだろうさ
ロクロウ:ふむ、業魔と聖隷と死神のご一行……か
ベルベット:でしょうね
※枠外タッチで閉じます。
ホワイトかめにん:はわ!?あなた方は……!
マギルゥ:おお、かめにんが店を出しておる
ベルベット:いいところで会ったわ。補給をお願い
ホワイトかめにん:いいっすけど、ダメっす!今回は割り増し料金でお願いするっす!
ベルベット:……割り増し……
マギルゥ:これ、かめ屋。知っておるか?
マギルゥ:このあたりには旅商人を襲って喰らう恐ろし〜い化け物がおるそうじゃぞ
ホワイトかめにん:旅商人を喰らう……!?
マギルゥ:そやつは黒髪の女子に化け、あこぎな旅商人を見つけると、頭からムシャムシャと
マギルゥ:あこぎなかめ商人の場合は甲羅からバリバリと美味しくいただいてしまうとか……
ホワイトかめにん:ひいいっ!?
ホワイトかめにん:オイラ、あこぎじゃないっす!サービス期間だから通常価格でお届けするっすよ!
ベルベット:助かるわ
ベルベット:マギルゥ、お客様の笑顔あげといて
マギルゥ:にんまり〜♪
ホワイトかめにん:きょ、恐縮っす……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:また会ったわね
ホワイトかめにん:あ〜、忙しい!忙しすぎて周りのことが目に入らないっす!
ベルベット:ちょっと、なんでスルーしようとするの?
ホワイトかめにん:……できれば、お会いしたくなかったっす。お客さんに会うと、赤字がふくらむんすよ……
エレノア:ベルベットに無理難題を強いられているのですか?
ホワイトかめにん:おお、対魔士様!あたたかいお気遣い恐縮っす!
ベルベット:別に強いてない。ただ、こいつが割り増し料金をとろうとするから……
エレノア:割り増し料金……?それは二重価格表示ということですか?
エレノア:不当な販売法は、聖寮が厳しく禁じているはずですが
ホワイトかめにん:ぎくっ!
ホワイトかめにん:と、とんでもないっす!ホワイトかめ屋は、二十五時間明朗会計!
ホワイトかめにん:いつでもどこでも通常価格でお買い上げいただけるっすよ〜!
ベルベット:助かるわ
ベルベット:エレノア、お客様の笑顔あげといて
エレノア:行商は大変でしょうが、頑張ってくださいね
ホワイトかめにん:きょ、恐縮っす……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:景気はどう?ホワイトかめにん
ホワイトかめにん:もう最悪っすよ……
ホワイトかめにん:誰かさんのおかげで、オイラの収支決算は狂いまくりっす
ホワイトかめにん:まさに「捕らぬカメの甲羅算用」っすよぉ……
ベルベット:大変そうね、なんか
マギルゥ:儂らには関係ないがのー
ホワイトかめにん:うぬぬ!今日と言う今日は、特別価格っすからね──
ライフィセット:そんな言い方ひどいよ
ライフィセット:ホワイトかめにんのおかげで僕たちはいつも助かってるじゃない
ベルベット:……まあ、そうね
ライフィセット:かめにん、苦しいことがあったら言ってね
ライフィセット:力になれるかどうかわからないけど、話すだけでも、きっと楽になると思うから
ホワイトかめにん:くうう……この局面でなんという優しい言葉を……
ベルベット:で、特別価格がなに?
ホワイトかめにん:決まってるっす!特別に通常価格ってことっすよー!
ベルベット:助かるわ
ベルベット:フィー、お客様の笑顔をあげといて
ライフィセット:かめにん、いつもありがとう
ホワイトかめにん:こちらこそっす〜〜〜〜っ!!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……なんか眠れないわね。ちょっと浜に行ってみようかしら
マギルゥ:じゃよなー。人情的に、そうなるわい
ライフィセット:しゃべるペンギョンを探すんだね
ベルベット:ただの散歩よ、散歩
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:昨日のしゃべるペンギョン……夢じゃないですよね?
ライフィセット:本当にしゃべってたよ、ペンギョン
ライフィセット:……じゃなくて、ジュード
ロクロウ:異世界から来たとか、世の中はまだまだ不思議に満ちているよなぁ
アイゼン:なかなか根性のすわった奴だった。できるなら助けてやりたいが……
マギルゥ:ペンギョンには優しいんじゃなー
アイゼン:話が事実なら、あいつは時空の漂流者だ。漂流者を助けるのは、船乗りの習いだからな
マギルゥ:儂は、精霊の主……ミラとやらが気になるのう
マギルゥ:四聖主──もしくは聖主カノヌシと、なにやら関係があるやもしれん
ベルベット:あるかも……ってレベルだけどね
ベルベット:ジュードペンギョンから聞いた情報は、一応気にとめておくわ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:金色で赤い目で、地水火風を操るペンギョン──それって!
ベルベット:ミラペンギョンか
マギルゥ:世界広しといえど、四属性を使いこなす術者など、そうはおらんぞ
マギルゥ:儂とか以外にはのー
ロクロウ:色々な意味でただ者じゃなさそうだが、対魔士を倒したなら、協力できる相手かもな
マギルゥ:……と、思わせる罠かもしれんが
エレノア:四聖主と関係がある可能性も強まりましたね
ベルベット:……いずれにしろ正体を確かめた方がよさそうね
アイゼン:イズルトのジュードに連絡をつける
ベルベット:ちょっと。状況がややこしくなるでしょ
アイゼン:情報を知ったら教えると約束した。仁義は通す
ベルベット:……いいわ。あたしもアタシのやり方を通すだけよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:行っちまったぞ。いいのか?
ベルベット:……アイゼン、ミラは聖主と関係があると思う?
アイゼン:いや、あいつの術は、俺たちの聖隷術とは根本から原理が違うように感じた
マギルゥ:じゃの。むしろ「他の世界から来た」というのに納得じゃ
ベルベット:そう。なら放置でいいわ
ベルベット:対魔士を倒している以上、聖寮に手を貸す心配もなさそうだし
ライフィセット:でも、味方になってくれるかもしれないよ?
ベルベット:……どうかしら?味方にするには、あの精霊の主様は相当手強そうよ
ライフィセット:ちょっとベルベットと似てる気もするけど……
ロクロウ:ふむ。それにジュードペンギョンをエレノアが食べようとするかもしれないしな
エレノア:食べませんよ!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:しゃべっていたの……キンギョンでしたよね!?
マギルゥ:「この世の終わりに物言うペンギョンが現れ、罪びとに裁きの言葉を告げる」
マギルゥ:「キンギョンは世界に終末を告げるといわれる不吉な生き物」
ロクロウ:言ってたなぁ、そういえば!
エレノア:終末の使者が……キンギョンだったなんて
アイゼン:危ないところだったな
アイゼン:ベルベットが、いつも通りに喰らってたら世界が終わっていた
ベルベット:人を死神みたいに言わないで
ライフィセット:ジュードとミラ、帰れてよかったね
エレノア:そうですね。でも──
エレノア:もうペンギョンのお肉は食べられないかも……
マギルゥ:うむ、終末の使者かもしれんからのう……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ふん、王都の近くでも業魔が暴れてるなんて聖寮の管理とやらも大したことないわね
ロクロウ:アイゼン、「甲種警戒業魔」ってなんだ?
アイゼン:聖寮が特別手配した業魔だ。最新の情報では、各地に十数体確認されている
ロクロウ:ほう、手強そうだな
アイゼン:ハンパなくな。うかつに手を出せばただではすまんぞ
ロクロウ:そうこなくちゃな……
ベルベット:行くわよ。ぐずぐずしてると聖寮の警備が強まるわ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:おっ!なんかウホウホ言ってる強そうなのがいるぞ
ロクロウ:ひょっとして、あれが「甲種警戒業魔」か?
ベルベット:だとしても、あたしは関わらないわよ。力を無駄に使う気はないわ
ロクロウ:無駄というのはどうかな
ロクロウ:聖寮には、そういう手強い業魔を倒せる対魔士がそろってる。だろ、ライフィセット?
ライフィセット:うん……テレサ様たち一等対魔士の上位と、その上の特等対魔士なら
ロクロウ:お前の敵だろう
ベルベット:…………
アイゼン:一理ある。対魔士個人もだが、組織としての聖寮の力は巨大だ
ベルベット:……こっちも強い業魔と戦って、力を高める必要があるっていいたいのね
アイゼン:俺なら、そうする。お前がどうするかは自由だ
ベルベット:……わかった。一理あるのは認めるわ
アイゼン:ただし、敵の力量はしっかり見極めろ。暴飲暴食は身を滅ぼすぞ
ベルベット:言われるまでもないわ。無駄死になんて、死んでもしない
ロクロウ:ははは、そう気を張るな。戦うなら、お前は俺が守るから安心しろ
ベルベット:そんなこと頼んでない
ロクロウ:応、俺が勝手にやるだけだ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ふむ、まあまあの手応えだったな
ベルベット:やっぱり自分が修行したかっただけなのね
ロクロウ:俺のためじゃないぞ。俺が強くなれば、お前の戦力が大きくなる
ロクロウ:これも立派な恩返しだ
ベルベット:自分のためっていうのは否定しないのね
ロクロウ:当然だろ。修行して高みを目指すのは、剣士の性だ
アイゼン:……今更だが、なぜロクロウは恩返しをすることになったんだ?
ロクロウ:ベルベットは、俺の命の太刀の在処を教えてくれたんだ
ロクロウ:あと、懲役五百年をくらった牢獄から解放してもらった
アイゼン:感謝の順番は、それでいいのか?
ベルベット:だから信用できないのよ
ロクロウ:心外だな。ランゲツ家の男は義理堅いので有名なんだぞ
ライフィセット:それにしても……ランゲツって変わった名前だよね
アイゼン:独自の剣技と太刀を操る一族と聞いていたが
ロクロウ:うむ。なんでもご先祖は遠い異国の剣士でな。大昔に、この大陸に渡ってきたらしい
ベルベット:異国の剣士……どうりで変わった剣と技を使うわけね
ロクロウ:ご先祖は、慣れない土地で、ずいぶん苦労したらしいが、とある貴族に拾われた
ロクロウ:以来、ランゲツ一族は、その貴族を主君とし、恩を返すために仕えてきたんだ
ベルベット:用心棒として?
ロクロウ:用心棒兼、暗殺者兼、隠密兼、影武者兼……
アイゼン:命じられれば、なんでも……か
ロクロウ:「借りたものは必ず返す。命を使ってでも」ご先祖様が残した家訓なんだ
ロクロウ:実際、五人いた俺の兄貴も四人死んでる
ロクロウ:な、義理堅いだろ
ライフィセット:う、うん……
ベルベット:……わかったわ。要するに一族そろってまともじゃないのね
アイゼン:だな。味方のうちは頼りになるとも言えるがな
ロクロウ:む……なんでそうなる?
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ふぅ、なんとか倒せたね……
ロクロウ:……未熟だな
エレノア:え?この業魔は、なかなか手強かったでしょう
ロクロウ:俺の腕がだ。こいつ程度、シグレなら一刀で両断していた
エレノア:でも、シグレ様は大太刀で、あなたは小太刀ですから──
ロクロウ:いや。あいつは小太刀で大太刀と同じことができた
エレノア:まさか!?
ベルベット:いえ、シグレならできるでしょうね
ロクロウ:ああ。実際にやられた
アイゼン:聞いてもいいか?
ロクロウ:かまわん。俺の家のことは教えたよな?
ライフィセット:うん……
ロクロウ:長男のシグレは、先代の跡を継ぎ、ランゲツ家の当主として、一族を仕切っていたんだ
ロクロウ:だが三年前、シグレが謀反を企んでいるとうわさが立った。主君は、すぐさま上意討ちの命を出した
マギルゥ:上意討ち……主君による処刑命令じゃの
ロクロウ:疎まれてたんだ。強さにしか興味がないあいつは、ずっと主君をないしがしろにしていたからな
エレノア:その討手は、まさか……
ロクロウ:そう、俺だ。ランゲツ流に勝てるのはランゲツ流、そういうことだ
ロクロウ:実際に俺は、あいつの技もクセをも全部知っていた。そのうえで、時と場所を選び抜いて仕掛けたんだ
ロクロウ:なのに……
マギルゥ:負けたんじゃな
ロクロウ:そうだ。シグレは、大太刀で斬りかかった俺を小太刀で翻弄しやがった
ロクロウ:あの時……俺が鍛えた業は、あいつにまったく及んでいなかったんだ
ベルベット:素直に認めるのね
ロクロウ:認めるしかなかった。あいつは俺の太刀を弾き飛ばして、笑って言ったんだ
ロクロウ:「もっと精進しやがれ」──と
ロクロウ:……悔しかったさ。己の弱さが。未熟さが
ロクロウ:自分を斬り殺したいほどに……業魔になるほどにな
ライフィセット:ロクロウ……
ロクロウ:結局、シグレは逃げ、俺は主命を果たせなかった罪で捕らえられ、監獄島に送られた
マギルゥ:そこで儂らと出会ったんじゃなー
ベルベット:自分の兄を殺せなかったことが悔しい……か
ロクロウ:いかれているのはわかってる。だが、それが俺なんだ
ベルベット:……責める気なんてない。あたしは、あんたを利用するだけよ
ベルベット:敵を斬ってくれれば、それでいいわ
ロクロウ:やるさ。俺はそういう業魔だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:すまん。共闘の交渉は、できなかったな
ライフィセット:ううん。一緒に戦える人じゃなかったと思う
アイゼン:というか、ロクロウ。お前、最初から斬る気だっただろう?
ロクロウ:そんなことはないぞ。ちょっとしか
ライフィセット:ちょっとはあったんだ……
マギルゥ:まったく怖ろしい奴じゃ。恩を重んじるとか、よく言うわい
ロクロウ:別におかしくはないだろう。伯爵に恩を受けたのは人間の俺だ
ロクロウ:業魔の俺には関係ない
ベルベット:そういう問題?
ロクロウ:応。お前のは業魔になってからの恩だから、ちゃんと返すぞ、うん
ベルベット:……真面目に聞かないでおくわ
エレノア:ロクロウは……伯爵がシグレ様を斬ると言ったのが許せなかったのですか?
ロクロウ:さぁてな……
ロクロウ:ただ「ランゲツの剣」を舐めた奴は斬る。それだけだ
ロクロウ:伯爵と同じ業魔のたわごとだ。わかってくれとは言わない
エレノア:もちろんわかりませんよ。わからないけど……
エレノア:戯言だなんて思いません。あなたの譲れないものを
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:テオドラさんって、あの白角の……だよね
ベルベット:でなきゃ、ザビーダが命をかけてまであのドラゴンを守る理由がわからない
マギルゥ:心に傷を負った人間のお子たちと暮らせば、それだけ穢れに触れる機会も増えるでのー
エレノア:それでも子どもたちに救いの手を差し伸べたテオドラさんだから、ザビーダは救いたいのですね
ロクロウ:だが、元に戻す方法なんてないんだろ
アイゼン:ない
エレノア:だから、あのドラゴンを殺そうというのですね。それには、私も反対しません
アイゼン:……?
エレノア:ですが、あなたのやり方は間違っています
アイゼン:なにがだ
エレノア:たとえ元に戻せないとしても、恋人だった存在が目の前で殺されるのをよしとする人などいません
エレノア:ザビーダの気持ちを汲んだうえで、きちんと話をすればあなたたちはぶつかり合わずに済むじゃないですか
アイゼン:理屈で割り切れても心で割り切れないものがある
アイゼン:口先だけで納得するくらいなら、あいつはとっくに白角を殺している
エレノア:……ですが……
アイゼン:悪いが議論するつもりはない。行くぞ
エレノア:…………
ライフィセット:(僕が、あの炎の力を操れたら……)
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:古文書を読むなら、グリモ先生の力を借りないと
マギルゥ:こんなこともあろうかと、グリモ姐さんなら儂が連れて来ておる
グリモワール:はぁ……ちゃっちゃとやるわよ、坊や
ライフィセット:はい、グリモ先生
ライフィセット:……ここは「スニラ」と読むと「やるべき」で、「スニク」と読むと「やらずに」って意味になる……
グリモワール:そこにかかる単語の読み方は「クル」よ。坊やの感覚で気持ちいい方はどっち?
ライフィセット:……クル、、スニラ……クル、スニク……クルスニク、の方が気持ちいいかな
グリモワール:なら、クルスニクを訳すと……
ライフィセット:……潰さずに取り出す……「くり抜く」だね。でも、そうすると、これって……
グリモワール:ええ、とんでもない古文書ね、これ
ロクロウ:おいおい、古文書師弟のお二人さん、俺たちにもわかるように説明してくれよ
グリモワール:この古文書は「聖隷とドラゴン」に関する研究書よ……大昔、ドラゴンを聖隷に戻そうと研究した学者のね
エレノア:ドラゴンを元に戻す……?その方法が、そこに記されているのですか?
グリモワール:書かれているのは……失敗の記録と不可能という結論。ただその片隅に気になる箇所があるのよね……
ライフィセット:「白く大角いただくドラゴンの心くり抜き血とともに喰らわば消えん 聖隷の加護」
アイゼン:…………
ベルベット:白角のドラゴンの心臓を喰らえば、加護が消える。それって、死神の呪いも消せるってこと?
グリモワール:……書かれてることが、本当ならね……
マギルゥ:聖隷が聖隷の心臓を喰らうとな?退き笑いが止まらんのー
エレノア:古代アヴァロスト時代には、そんなことが行われていたのですか?
ライフィセット:研究の過程で、加護が消えた聖隷もいた、って書いてあるだけだから、本当かどうかはわからないよ
マギルゥ:真偽を知りたければ、試すしかないのー
ザビーダ:あんたは試すのかい?
ライフィセット:ザビーダ!どうしてここに?
ザビーダ:親切なばあさんが、青空市場の話を教えてくれたのさ
ベルベット:あんたも血翅蝶とつながってるのね
ザビーダ:俺みたいないい男、女が放っとくはずねえだろ?お嬢ちゃんたちも、俺に惚れるんじゃねーぜ
ベルベット:チッ
エレノア:ないです
ザビーダ:ふん、冗談の通じねえやつらだ……まあ、冗談じゃすませられねえことがあるがな
ザビーダ:──てめぇは、殺るのか
アイゼン:だとしたら、お前はどうする
ザビーダ:やらせねえよ
アイゼン:俺を殺すことになってもか
ザビーダ:なんでそんなに殺しにこだわる?
ザビーダ:あんたは、自分が死神であることを受け入れたんじゃねぇのか?
アイゼン:質問に質問で返すんじゃねえ
ザビーダ:先に質問したのは俺だぜ
アイゼン:殺すことが、救いになるヤツもいる
ザビーダ:…………
アイゼン:俺は、白角のドラゴンを……殺る
ライフィセット:!!
ザビーダ:……ドラゴンって言うんじゃねえよ
アイゼン:…………
ザビーダ:あいつは、テオドラだ。ドラゴンじゃねえ
アイゼン:話は終わりだ
ザビーダ:次は警告なしだ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ドラゴンの心臓を喰らうことが、「死神」の呪いを解く方法とはな……
マギルゥ:「呪い」を解いておめでとう。キミも今日から「本物の死神」の仲間入り〜♪
マギルゥ:解けば解くほど絡みつく、いやらしい呪いじゃ
エレノア:アイゼンは、そうするつもりなのでしょうか……
ベルベット:あたしに訊かないでよ
エレノア:マギルゥやロクロウはデリカシーというものに欠けていますから……あなたしかこのような話は……
ベルベット:はぁ……
ライフィセット:アイゼン……
アイゼン:……なんだ
ライフィセット:……呪いを解くために、白角のドラゴンを、殺すの?
アイゼン:ああ
ライフィセット:ザビーダの大切な人だとしても……?
アイゼン:だからだ
ライフィセット:だからって……どういうこと?
アイゼン:俺の答えだ。お前の答えは、自分で考えろ
ライフィセット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:あのドラゴンの噂が広まってるなら、ザビーダも現れるかもしれないな
エレノア:アイゼンとザビーダ……鉢合わせでもしようものなら、今度こそ戦いは避けられないような気がします
ライフィセット:(アイゼンは、あのドラゴンがザビーダの大切な人「だから」殺すって言った……)
ライフィセット:(それに、殺すことが救いになるとも言ってた。どういう意味なんだろう……)
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:どうして、こうなってしまうのですか!?
エレノア:流儀が大切なのはわかります。でも、だからこそ、お互いの流儀を理解し合う努力をすべきでしょう?
エレノア:なのに、ろくに話し合いもせずにいきなり殴り合いになってしまうなんて……
ライフィセット:うん、僕もあの二人には戦ってほしくない。でも、よくわからないことがあるんだ……
エレノア:アイゼンが、あれほどまでにドラゴンを殺すことにこだわっている理由ですか?
ライフィセット:それもあるけど……「殺すことが救いになる」って、どういうことなのかな
ライフィセット:呪われてるのはアイゼンじゃないって言ってたし
エレノア:ドラゴンのままで生き続けなくてはならないテオドラさんへの同情……でしょうか
ライフィセット:「生きる」って、どういうことなのかな……
エレノア:……なんだか、話が難しくなってきましたね
ライフィセット:うん……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:そ〜ゆ〜わけで!我らマギルゥ奇術団の公演を開くぞよ
マギルゥ:演目は漫才じゃ!
エレノア:ちょ、話が見えないんですけど!?
マギルゥ:さっきマジルゥと勝負するといったじゃろ?
マギルゥ:じゃのに、おぬしらときたら曲芸のひとつもできんし
ライフィセット:ご、ごめん……
エレノア:仕方ないでしょう。素人なんですから
マギルゥ:かー!少しは申訳なさそうに言えぃ!
マギルゥ:本来なら火の輪くぐりでも強制したいところじゃが、穏当に漫才でなんとかしてやろうというのじゃ
マギルゥ:漫才なら、わしが場を回して面白くできる!せいぜい美味しく弄ってやるから感謝せい
エレノア:でもでも、マジルゥちゃんと同じ舞台に立つなんて恐れ多い……
マギルゥ:お、さらりとやる気出したのー
ベルベット:あたしは嫌よ。なんでそんな無駄なことを
マギルゥ:無駄じゃないわい。公演が成功すれば、大金が手に入るぞよ
マギルゥ:しかも今はチャンスじゃ!マジルゥ一座と間違えて見に来る奴が多いはず
ロクロウ:あっちの名声を利用する気満々だな
マギルゥ:そうじゃ!そういうリアクションを儂が転がせば、どっかんどっかんウケまくりじゃよ〜♪
ロクロウ:よくわからんが、そうか!
ベルベット:どっかんどっかん自爆の間違いでしょ
マギルゥ:おお、ベルベット……お主はツッコミでもいけそうじゃな!
ベルベット:は!?変な感心しないで!
アイゼン:バカらしいが、金はあって困ることはないな
ベルベット:アイゼンまで……
マギルゥ:決まりじゃな!あちこちの街におる興行師に話しかければ、儂のコネで講演を開けるはずじゃ
マギルゥ:とりあえず全員とコンビを組んで、おぬしらのお笑いポテンシャルを見極めてやるぞよ
ライフィセット:全員!?
アイゼン:俺もやるのか……?
マギルゥ:無論じゃ!儂ら全員でマギルゥ奇術団なんじゃから
ライフィセット:ど、どうなっちゃうんだろう……?
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はいどーも!漫才コンビ「マギィ・ベル」じゃよー!
マギルゥ:マギンプイ!
マギルゥ:新人じゃけど頑張っていくんで、今日は、顔と名前だけでも憶えていっておくれ
マギルゥ:この愛くるしいのがマギィで、こっちの単に苦し気なのが──
ベルベット:…………
マギルゥ:……これこれ!どうしたんじゃ、ベル?
マギルゥ:元気出さんといかんぞよー。お主なんて元気だけが取り柄なんじゃから
ベルベット:……そ、そんなこと言われても……
マギルゥ:ちょ〜っと中になんか詰まってるみたいじゃな〜?
マギルゥ:そうじゃ、一回深呼吸しよ!
ベルベット:…………はぁ…………
マギルゥ:……ちょっとスミマセン
マギルゥ:どういうつもりじゃ、ベルベット!客、ドンビキじゃぞ!
ベルベット:……し、仕方ないでしょ!こんな大勢の前でしゃべったことないんだから
マギルゥ:お主……ひょっとして緊張しとるのか!?
ベルベット:…………わ、悪い?
マギルゥ:柄にもないことを!対魔士を喰らう勢いでハキハキ喋らんか!
ベルベット:無茶言わないでよ……恥ずかしい
マギルゥ:乙女か!
ベルベット:乙女よ!
マギルゥ:それ!そういうのを声張って言うんじゃ!
ベルベット:無理だし、嫌よ!
マギルゥ:貴様、それでも芸人か!?芸の道を歩き出した時の情熱はどうしたんじゃー!
ベルベット:違うし、そんなもんないわよ!
マギルゥ:いや、儂にはわかる!お主の中には燃えさかる芸人魂が……
ベルベット:もういいわ!あんたとはやってられない!
マギルゥ:……どーも失礼しました……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はい、どーも!ラブリーコンビ「ウィッチ&ボーイ」じゃよー♪
マギルゥ:マギンプイ!
ライフィセット:新人だけど頑張っていくから、今日は、顔と名前だけでも覚えていってください
ライフィセット:僕が、カワイイ担当のフィーで、こっちのおジャマな魔女が──
マギルゥ:マギルゥじゃよー!
マギルゥ:……って、誰がジャマな魔女じゃい!
ライフィセット:「ニア〜!」
ライフィセット:……あ、思わずモノマネをしてしまった
マギルゥ:モノマネ?今のはただのネコの鳴き声じゃろ?
ライフィセット:ううん。今のは「近くにいるネコのマネ」
ライフィセット:ニア〜〜〜♪
マギルゥ:(いかんすべった!じゃが、今こそお愛想じゃ)
マギルゥ:(坊よ!コビコビの照れ笑いで、ピンチをチャンスに変えるんじゃ!)
ライフィセット:……ええと、今のは「ニャー」っていうネコの鳴き声と近くの「ニアー」をかけたシャレです
ライフィセット:本当に近くにいるネコが、そんな風に鳴くわけじゃなくて──
マギルゥ:(か、解説を始めおったぁ!?)
マギルゥ:血迷うな、ライフィセット!ダジャレを説明してどうする!?
ライフィセット:でも、アドリブでお客さんの心をつかめって言ったでしょ?
ライフィセット:丁寧に説明したら、わかってくれる人もいると思って
マギルゥ:やめておくれ……今更わかられても、この場が余計悲しくなるだけじゃて……
ライフィセット:……それでもいいよ。スべるのなんて怖くない
ライフィセット:それより僕は、お客さんとの絆を大事にしたいんだ!
マギルゥ:くうぅ!芸人としても人としても正しいことを……!
ライフィセット:あ、念のために言っておくと、この台本を考えたのはマギルゥで、僕は言わされてるだけだから
マギルゥ:がーん!お客との絆との引き換えに、コンビの絆が引きつぎられた〜!
マギルゥ:も〜お主とはやっとれんわっ!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はいどーも!危険なコンビ「マギロー&ロクロー」じゃよー♪
マギルゥ:マギンプイ!
マギルゥ:いや〜、イズルトは潮風が気持ちいい所じゃの。潮風と言えば──
ロクロウ:潮風は刀によくないぞ!こまめに手入れしないと錆びるから、気を付けろ
マギルゥ:……まぁ、そういうマニアックな注意もあるんじゃが、潮風を嗅ぐと、海の幸を食べたくなるんじゃよなー
マギルゥ:刺身に浜焼き、海鮮丼!見た目も美味しいのが海の幸で──
ロクロウ:海の幸と言えば、魚の「三枚下ろし」!ここだけの話、三枚おろしは刃物使いの極意だ
ロクロウ:魚に限らず生き物の体には、斬るべき筋があってだな……
マギルゥ:……というような物騒な話はおいといて、美味しい海の幸には、奇妙な姿をしたヤツが多いよなー
マギルゥ:タコとか太刀魚とか──
ロクロウ:太刀魚か!剣士として一度立ち会ってみたい相手だな!
マギルゥ:……急にシュールボケかまされても対応できんのじゃがー?
ロクロウ:いやいや、今のは剣士の俺が太刀魚をライバル視するという直球のギャグで──
マギルゥ:ちょっと黙っておれぃ……
ロクロウ:……お、おう
マギルゥ:タコとか太刀魚とかチョウチンアンコウとか妙な姿のやつほど美味しいという話もあるが
マギルゥ:確かに儂が大好きなフグも、真ん丸な妙な形で──
ロクロウ:まん丸と言えば、アルマ次郎という妙〜に丸い奴に会ったことがあってな!
ロクロウ:いやぁ、あれほど丸い奴は後にも先にも初めて見たなぁ!
マギルゥ:じゃかしい!お主とは、もうやっとれんわー!!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はいどーも!毎度お馴染み「ビエンフーの主ーズ」じゃよー♪
マギルゥ:マギンプイ!
エレノア:いやいや、お馴染みですか?
エレノア:お客さんたち、まず「ビエンフー」ってなんだって顔してますけど?
エレノア:あと「マギンプイ」て?なんの呪いですか?
マギルゥ:いやあ、それにしても近頃冷え込みが厳しいのー
エレノア:スルーですか?無視ですか?
マギルゥ:なんじゃのー?文句があるということは、お主は寒うないのか?常夏気分か?
エレノア:そんなわけないでしょう。確かに最近冷えてますけども
マギルゥ:じゃろ?儂なんてあんまり寒いもんじゃから服に火をつけてしまったわい
エレノア:そんな無茶な!
マギルゥ:それでもまだ寒くてのー。家にも火をつけたんじゃよー
エレノア:家に!?なんてことを!
マギルゥ:でも平気じゃよ〜
マギルゥ:じゃって、火をつけたのは、お主の家じゃからー♪
エレノア:…………
エレノア:それは犯罪ですよ
マギルゥ:これ、どうした?段取りと違う──
エレノア:放火は犯罪です!
マギルゥ:え、あ……はい
エレノア:台本では、今のくだりは「焼けた服を買い直して懐が寒くなったがのー」でオトすはずでしたよね?
マギルゥ:そ、そうじゃけど、ノリでアドリブを重ねてみたんじゃよ……
エレノア:道徳的に問題です。訂正しましょう
マギルゥ:なんじゃの、もー!ただのネタに熱くなりおって!
エレノア:ネタで許されるなら聖寮はいりません!
エレノア:いえ、私は対魔士である前に、一人の人間として反社会的な行為を助長する言動を見過ごせないのです!
マギルゥ:お、お主の怒りで、こっちまで熱くなったわ!もういいわ!
エレノア:よくありません!
マギルゥ:もういいんじゃってば〜〜〜!
エレノア:よくありません!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:はいどーも!ゆかいなコンビ「特攻!死神野郎」じゃよー♪
アイゼン:マギンプイ
マギルゥ:(ぬわ!?儂の決めゼリフが奪われた!)
アイゼン:えー、本日は、わざわざのお運び、ありがとうございます
アイゼン:落語の登場人物と申しますと、八っつぁん、熊さん、大家さん
アイゼン:それから横町のご隠居に、バカの与太郎なんてことを申しまして──
マギルゥ:ちょいちょい!なにを語りだしておる!?
アイゼン:どうもこうもない。マクラで客の感触を探るのは、基本中の基本だろう?
マギルゥ:いやいや、現代の笑いはスピードが命じゃ!ツカミはほどほどに、しゃべくりで一気に回すんじゃよ
アイゼン:意義ありだ。古典を忘れた笑いには未来もない
マギルゥ:そういうカタイのが古いんじゃよなー。笑いは、もっと進化せねばいかんのじゃ
アイゼン:ちっ、ニューウェーブ気取りか……
マギルゥ:おいこら、今、舌打ちしたの!?
アイゼン:いいや……
アイゼン:……ちっ
マギルゥ:完全にしたじゃろ!
マギルゥ:コンビのリーダーは儂じゃぞ!笑いの法則以前に、序列を守れぃ!
アイゼン:……すんませんでした
マギルゥ:わかればいいわい。で、今日はなにをするんじゃ?
アイゼン:……時計のモノマネをやる
アイゼン:ちっ!ちっ!ちっ!ちっ!
マギルゥ:完全に舌打ち〜〜!?
マギルゥ:もー、お主とはやっとれんわい!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:結果発表〜……
マギルゥ:全員とコンビを組んでみた結果、おぬしらがま〜〜〜〜ったく使えんことがわかった
ライフィセット:ごめん……
ベルベット:別に悔しくないけど、そう言われると腹が立つわね
マギルゥ:じゃので、儂とビエンフーとのコンビでマジルゥに挑むことにする!
ビエンフー:はいでフー!準備はできてるでフよー!
ビエンフー:勝負ネタは「十八番のネコエンペラー」でフかー?それとも鉄板ネタの「機械人の逆襲」?
マギルゥ:いや、ここは破壊力重視じゃ。「イズチのカミナリ様」でいく
ビエンフー:といフことは、山場のカミナリを連続で落とすくだりは……
マギルゥ:うむ、客の反応にあわせて、アドリブで重ねられるだけ重ねる!ぬかるなよ!
ビエンフー:了解でフー!ツカミのトーク用に、ご当地ネタも調べておきまフー♪
マギルゥ:頼むぞよ
ロクロウ:阿吽の呼吸だな
ベルベット:最初からビエンフーでよかったんじゃない
アイゼン:つまりこれが、マギルゥが用意していたオチということか
ベルベット:はぁ……
エレノア:とにかく、マジルゥちゃんに会いにローグレスに行きましょう
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:マギルゥ、ありがとうございます
マギルゥ:は?なんのことじゃ?
エレノア:柄にもなくマジルゥちゃんを導いてくれて
マギルゥ:さてはて、導いたかどうか……?
ベルベット:ええ。あの師弟がこの先どうなるかなんて、誰にもわからないものね
マギルゥ:まったくの
マギルゥ:師の期待に潰されるか、己が限界に絶望するか。師が弟子を、弟子が師を見限ることだってありうる
マギルゥ:よしんば、マジルゥが師の理想を叶えたとしても、それが本当に幸せかどうか……
エレノア:マギルゥ、それはあなたの……
マギルゥ:ただのぅ……
マギルゥ:自分を必要としてくれる者がいるなら、そやつと一緒にいたいと願ってしまうのが人情じゃろうて
ベルベット:弱いわね……人間って
エレノア:けど、それが人間ですよ
ベルベット:……そうね
マギルゥ:おっと、柄にもなくオチのない話をしてしもうたわ
ベルベット:熱でもあるんじゃない?
エレノア:たまにはいいでしょう
マギルゥ:うむ、たま〜〜〜にはの
ビエンフー:あの〜姐さん。ボクが特訓したネタはどうなるんでフか……?
マギルゥ:もちろん、用なしじゃ♪
ビエンフー:ビエ〜〜〜ン!!
ベルベット:結局オチがついたわね
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:オメガエリクシール──すべての病を治すといわれる古代の秘薬ですね
エレノア:でも、暗黒時代に実物も製法も失われたと聞いていますが
マギルゥ:メリオダス文字は、暗黒時代以前に使われていたもの。ツジツマは合うの
ベルベット:子どもの解読よ。あてにならないわ
アイゼン:いや、あの本の書き込みは大人顔負けだ。まったくのでたらめとは思えん
ロクロウ:子どもの集中力と学習能力は侮れないぞ。好きなことなら、なおさらな
ライフィセット:僕も、リーブは本物の研究者だと思う
ベルベット:あの子も夢中になって本を読んでたっけ……
エレノア:オメガエリクシールは、あなたにとっても役立つものなのでは?
ベルベット:……ライフィセット、あんたは素材を探してみたいのね?
ライフィセット:うん
ベルベット:あたしは興味ない
ベルベット:けど、あんたが勝手に探すならとめないわ
ライフィセット:うん!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:「ロンダウの虚塵」!リーブが教えてくれたオメガエリクシールの素材だ!
ベルベット:本当に見つかるなんて……
ライフィセット:リーブに教えてあげなきゃ!
ライフィセット:残りの素材も、解読できたかもしれないし
ベルベット:……そうね
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:リーブ、体が弱いのかな……?
マギルゥ:そうらしいの。儂と同じで、か弱そうな子じゃし
ベルベット:……多分生まれた時からね
ベルベット:だから、あの子の両親は「リーブ」──「生きる」って名をつけたんだと思う
ライフィセット:そうなんだ
ベルベット:「ライフィセット」も同じ
ベルベット:生きる者って意味なのよ
ライフィセット:「生きる者」……
エレノア:冒険者になる夢があるのに、かわいそうですね
ライフィセット:けど、オメガエリクシールを飲めば、きっと元気になるよ
ライフィセット:アイゼン、いつかリーブが旅をするとき、バンエルティア号に乗せてくれる?
アイゼン:お前の友達だ。格安で運んでやろう
ライフィセット:お金取るの!?
アイゼン:俺は海賊だぞ。それでも大サービスだ
ライフィセット:あ。そうだったね
ロクロウ:生きる者……か
ロクロウ:ライフィセットって名前には、そんな意味があったんだな
ベルベット:ううん、意味なんてなかった。一生懸命願いを込めたのに、あの子は死んだ
ベルベット:希望なんて……もつだけ無駄だったのよ
ロクロウ:……本当に無駄だったと思うか?
ベルベット:思うしかないでしょ。現実を見れば
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:これ、オメガエリクシールの素材だ!
ベルベット:「ユニコーンの角」か……
マギルゥ:お〜っと、扱いには注意じゃぞ
マギルゥ:ユニコーンの角は、清らかな乙女以外がもつとその不思議な力を失うというからのー
ベルベット:清らかな乙女……ね
ロクロウ:そりゃあまずいな。もてるやつがいない
エレノア:は!?失礼なことをいわないでください
ロクロウ:けど、清らかな乙女ってのは、箸より重いものをもったことがないお姫様とかだぞ?
エレノア:……あなたの女性観、かなり歪んでますよ
ロクロウ:そうか?
マギルゥ:儂は、むしろ三周廻って清らかカンストレベルの乙女じゃが……ベルベット、お主はどうかの?
ベルベット:…………
ベルベット:フィー、あんたがもちなさい
ライフィセット:いいのかな、僕がもっても?
ベルベット:さあね。でも、オメガエリクシールをつくりたいって言い出したのはあんたよ
ベルベット:あんたが自分で集められないなら、それまでのことよ
ライフィセット:……そうだね。わかった
アイゼン:心配はいらん。マギルゥが話したのは、ただの俗説
アイゼン:ユニコーンの角の正体は、イッカクというクジラの牙だ
エレノア:先に言ってください!
マギルゥ:なんじゃの、アイゼンー!残念なタネ明かししおって
ロクロウ:ははは、少なくともマギルゥはユニコーンの角はもてないな
ライフィセット:とにかく、リーブに報告に行こう
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
エレノア:ライフィセット……元気をだしてくださいね
ライフィセット:ありがとう、エレノア。でも、僕は本当にリーブの気持ちを考えてなかったよ
エレノア:そんなこと……
ライフィセット:けど、勝手なお節介でも、僕はオメガエリクシールをつくりたい
ライフィセット:助けたいんだ。苦しんでる友達を
エレノア:……はい。そのお節介、私もつきあいます
マギルゥ:とはいうものの、記録にある限り十二歳病の致死率は100%のはずじゃぞ
ロクロウ:どういう病気なんだ?
アイゼン:子どもだけがかかる、ごく稀な病だ。原因は不明。生まれつきのものといわれるが……
マギルゥ:病ではなく呪いという説もあるほどの奇病じゃよ
ベルベット:十二日ごとの高熱……ラフィと同じ……あの子も十二歳病だったの?
ベルベット:アルトリウスは、それを知っていたからあの子を生贄にした?
ベルベット:あの子は、どの道助からなかったっていうこと?十二歳で死ぬ運命だったって……
ベルベット:そんなの……あんまりよ……
ロクロウ:…………
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:「雲羊のタマゴ」!オメガエリクシールの素材です
ライフィセット:やった!リーブのところに急ごう!
ロクロウ:ライフィセットのやつ、いつにもまして一生懸命だな
ベルベット:失ったことがないから、希望を信じられるのよ
ロクロウ:嫌な言い方するなよ
ベルベット:事実でしょ。現実に叩きのめされれば、あの子だって変わるわ
ロクロウ:そうかな?
ベルベット:そうよ。誰だって
ロクロウ:……なら、なぜお前は変わらない?
ロクロウ:失って、叩きのめされて、希望なんて信じられないはずなのに
ロクロウ:なぜ命がけで復讐に突き進むんだ?
ベルベット:わかってるわよ、自分の矛盾は!
ベルベット:復讐の先に希望があるなんて……なにか取り戻せるなんて思ってない……
ベルベット:だけど、そうせずにはいられないのよ
ロクロウ:ライフィセットも同じなんだろ、きっと
ベルベット:あたしが憎しみを消せないように、あの子も希望を捨てられない……
ベルベット:友達のために
ロクロウ:理屈じゃないのさ
ロクロウ:なにも考えてない業魔の眼には、ちょっと眩しいよ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
エレノア:ライフィセット……元気をだしてくださいね
ライフィセット:ありがとう、エレノア。でも、僕は本当にリーブの気持ちを考えてなかったよ
エレノア:そんなこと……
ライフィセット:けど、勝手なお節介でも、僕はオメガエリクシールをつくりたい
ライフィセット:助けたいんだ。苦しんでる友達を
エレノア:……はい。そのお節介、私もつきあいます
マギルゥ:とはいうものの、記録にある限り十二歳病の致死率は100%のはずじゃぞ
ロクロウ:十二歳病──たしか大地の記憶で……
ベルベット:……ええ、あたしの弟も患ってた
ベルベット:あの子は、そうとわかったからアルトリウスに……
ロクロウ:どうしようもなかったんじゃないか。少なくとも病気は
ベルベット:ええ……多分そうなのよね
ベルベット:けど、それでも後悔は消えない……ううん、消したくないの
ベルベット:あたしが忘れちゃったらあの子が可哀想すぎるもの……
ロクロウ:……強いな、お前は
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:「雲羊のタマゴ」!オメガエリクシールの素材です
ライフィセット:やった!リーブのところに急ごう!
ロクロウ:ライフィセットのやつ、いつにもまして一生懸命だな
ベルベット:あきらめないのよ、あの子は
ベルベット:なんであんな風に生きられるのか、あたしには、わからないけど……
ロクロウ:そうか?お前とライフィセットは似てると思うがな
ベルベット:……バカ言わないで
ロクロウ:冗談じゃないさ
ロクロウ:なにも考えてない業魔の目には、ちょっと眩しいよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:どうする、ライフィセット。素材を探してみるか?
マギルゥ:じゃが、もう時間がなさそうじゃし、そもそも最後の素材がわからん以上、無意味な努力じゃぞ
ライフィセット:…………
ベルベット:可哀想だけど、仕方ないわね。リーブは、こうなる運命だったのよ
ライフィセット:仕方ない……?
ベルベット:あんたが責任を感じる必要はないわ
ベルベット:結構親身になった方よ。元々オメガエリクシール自体が眉唾なんだし
ライフィセット:そんなこと……
マギルゥ:こりゃ、ベルベット。もう少し言い方というものがあるじゃろうが
ベルベット:取り繕ってどうしようっていうの?これが現実よ
ベルベット:まあ、今は辛いだろうけど、しばらくすればただの思い出に変わるわよ
ベルベット:ううん。悲しみにひたれるとっておきの思い出に、ね
ライフィセット:そんな言い方ないよっ!リーブはまだ生きてる!
ライフィセット:それにリーブの研究は!オメガエリクシールはきっと本物だよ!
ライフィセット:僕は……まだあきらめたくないっ!!
ベルベット:だったら探せばいい。迷う必要なんかないわ
ライフィセット:ベルベット……!?
ベルベット:失ってからでは遅いのよ。どんなに謝っても。どんなに後悔しても
ベルベット:後悔は思い出になんかならない。終わらない悪夢に変わるだけよ
ベルベット:けど、あんたはまだ失ってない。友達も希望も
ライフィセット:うん……
ベルベット:なら、全力でつかまえて握りしめなさい
ライフィセット:うん!四つめの素材を探す!
ライフィセット:ヒントはリーブのメモに書いてあるよ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:最後の素材がわかった。あと一歩だな!
ライフィセット:あの人……リーブのお父さんかもしれない
ロクロウ:そういえば父親が対魔士だと言っていたな
アイゼン:研究書を持ち出したのが父親なら、ここにいた理由も納得だ
マギルゥ:しかし、じゃとすると、あやつは息子を見捨てたことになるぞ
マギルゥ:自分の子より理が大事とは……ひどい奴じゃの
エレノア:それは……理性的な判断ですよ
エレノア:最後の素材を手に入れられないことがわかっているわけですから……
マギルゥ:大人の「理」ではそうじゃろうがな。子どもからしたらショックじゃぞー?
ライフィセット:リーブも悲しむよね……
エレノア:でも、きっとあの人は苦労して古文書を解読したはずです
エレノア:ここまで来るのだって、相当な危険を冒して……
ベルベット:対魔士だって全部を救えるわけじゃない。奴らも葛藤しながら生きてるってことよ
ベルベット:みんながみんな、あたしみたいに勝手に生きたら世界はすぐ滅びちゃうわよ
エレノア:ベルベット……
ロクロウ:正論だが……自覚あったんだな
マギルゥ:お主が対魔士をかばうとはのう
ベルベット:事実を言っただけよ。それに、もし戦ってたら殺し合いになってた
アイゼン:だな。それよりは、ずいぶんマシな結果だ
ベルベット:フィー。なにが正解か、あたしにはわからない
ベルベット:でも、もしリーブが死んでしまったら悲しむことすらできないのは確かよ
ライフィセット:うん。それに、きっと悲しみの中からだって希望は生まれると思う
ライフィセット:生きていれば
エレノア:素材はそろったはずです。リーブの家に行ってオメガエリクシールをつくりましょう
ロクロウ:しかし、最後の素材「聖隷の祈り」って祈るだけでいいのか?
マギルゥ:よくわからんが、ライフィセットもアイゼンもビエンフーもおる
マギルゥ:全員で土下座でもすれば、なんとかなるじゃろー
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:一件落着だな
アイゼン:しかもオメガエリクシールが手に入った。思わぬ収穫だ
マギルゥ:しかし、すわ修羅場かとワクワクしたのに、リーブという小僧、なかなかの器じゃわ
エレノア:素直によかったと言えないんですか?
マギルゥ:ま、そこそこよかったの〜、坊♪
ライフィセット:うん。ベルベットが励ましてくれたおかげだよ
ベルベット:あたしは煽っただけ。励ましてなんかないわよ
エレノア:こっちも素直じゃない……
ベルベット:……けど、よくやったわね。あんたは最後まで希望を手放さなかった
ライフィセット:うん。あきらめたくなかったから
ライフィセット:でも、褒められることじゃないよ
ライフィセット:僕はベルベットみたいに失ってないから何も悩まずできたんだと思う
ベルベット:そうかもしれない
ベルベット:けど、あんたなら大丈夫よ。なにかを失っても、きっと
ライフィセット:え?
ベルベット:ただの感想よ。エレノアがうるさいから、ちょっと素直に言ってみただけ
エレノア:私のせいにしなくてもいいでしょう!?
※枠外タッチで閉じます。
モアナ:エレノアー!メディサがお風呂からでたらしっかり髪をかわかしなさいってウルサイんだよ
エレノア:え?そんなことでもめてたんですか!?
メディサ:そんなことじゃないわ。喰魔だからって風邪をひかないとは限らないでしょう
モアナ:カゼなんてひかないよー!
モアナ:モアナ、にが〜〜い「お母さんのクスリ」のむの、いやだもん!
メディサ:わがままを言うと無理矢理ゴシゴシしますよ!
エレノア:そ、そんなにムキにならなくても……もうモアナの髪も渇いてるみたいですし
モアナ:そう!もうかわいちゃったー♪
エレノア:……甘やかしてしまいました……ね?
メディサ:まったくね。もし喰魔が風邪をひいたらどうなるか……治す手段があるのか、わからないのよ?
エレノア:はい……
メディサ:……もっとも、あなたが負い目を感じるのもわかるけど
エレノア:モアナのお母さんの話を……?
メディサ:ええ。ライフィセットから聞いたわ
マギルゥ:案外おしゃべりじゃのー
ライフィセット:ごめん……でも、メディサには言っておかなきゃって思ったんだ
エレノア:いいえ、私から伝えておくべきでした
メディサおかげでなにがあったか、よくわかったわ。……残酷すぎる事実よね
エレノア:はい……とても小さな子供に耐えられる話じゃありません
エレノア:モアナには本当のことは言わないつもりです
メディサ:そうするしかないでしょうけど……
メディサ:あなた、嘘をつきとおせるの?
エレノア:……やらなきゃいけないんです。モアナのために
ロクロウ:モアナのために、か
メディサ:わかった。この件には協力するわ
ベルベット:わがままな子供のために、物好きね
メディサ:子供は、わがままなものよ
メディサ:本当なら家族が──母親がつきあってあげるはずのわがまま……
メディサ:あなたには、覚えがない?
ベルベット:……あいにく、あたしは物好きじゃないのよ
マギルゥ:いやはや、どっちもそっちも問題山積みじゃな〜♪
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……なにかモアナたちを救う方法があるはず……
ベルベット:……わからないわ、あたしには……
エレノア:………私がなんとかしなきゃ。モアナのために……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:……ライフィセット:、どうかしたのか?
ライフィセット:う、うん……よくわからないけど今、嫌な感じがしたんだ
ライフィセット:なにか黒い物が胸に入って来たというか……
ライフィセット:ね、ロクロウ。エレノア:は、いつもと変わってないよね?
ロクロウ:ああ。いつも通り前向きだ
ロクロウ:……言っていることは、な
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:…………
ライフィセット:エレノア、顔が真っ青だよ。なにかあった?
エレノア:い、いえ。なんでもありません
ライフィセット:……そう
ロクロウ:エレノア。パートナーならライフィセットが本気で心配してるってわかるだろう?
ロクロウ:俺たちには内緒でもかまわんが、こいつには正直に話してやれよ
エレノア:ロクロウの言う通りですね。ごめんなさい、ライフィセット
ライフィセット:ううん。僕こそ力になれるかわからないけど
エレノア:聞いてくれるだけで十分です
エレノア:さっきの話に出た業魔は、私の村を襲ったやつかもしれないんです
ライフィセット:それって……エレノアの胸の傷をつけた?
エレノア:はい。村を襲ったのは大型のトロルの群れでした
エレノア:そして、やつらの目的は、村の聖堂に祀られた宝玉──「エレノア」だった
ロクロウ:お前と同じ名前だな
エレノア:「エレノア」は光という意味なんです
エレノア:暗闇でも輝きを放つエレノアは、村に加護をもたらす宝として、代々大切にされていました
エレノア:村が業魔に襲われた時、母と私は宝玉を守って逃げた。けど、おいつかれて私は傷を負い、母は……
エレノア:母は……私を助けるために宝玉を使って囮になって……
エレノア:死んだんです
ロクロウ:なるほど。噂の業魔がもっているのが「エレノア」なら村を襲った犯人
ライフィセット:そして、エレノアのお母さんの仇……
エレノア:そうなります……
ロクロウ:かたき討ちなら付き合うぞ。手強い相手らしいしな
ロクロウ:っと、勝手に決めるとベルベットに怒られるが──
ベルベット:付き合ってもいいわよ。復讐したい気持ちはよくわかるし
エレノア:私は……そんなことのために対魔士になったんじゃありません
ベルベット:そんなこと……?
ベルベット:家族の復讐がそんなことだって言うの?
エレノア:私の母はっ!
エレノア:……母は、最期に「強く生きて」と言い残しました。私は、その言葉通り強くありたい
エレノア:今はモアナの薬を探すのが先決。それだけです
ベルベット:……別に無理強いはしないわ
ベルベット:その代わり、仇をあたしが喰らっても文句言わないでよ
エレノア:強くなきゃいけないんです。モアナや……お母さんのために……
ライフィセット:う……!
ロクロウ:また、嫌な感じがしたのか?
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:フィー、穢れの影響は大丈夫?
ライフィセット:うん、僕は。けど、エレノアは……
ベルベット:あいつは、なんとかするわよ。自分の力でね
ロクロウ:真面目に生きて、真面目に穢れて真面目に乗り越える
ロクロウ:エレノアはそういう奴さ
ライフィセット:うん、そうだよね
※枠外タッチで閉じます。
ダイル:おおい!大変だ!
マギルゥ:なんじゃ?金色のシッポでも生えてきたかえ?
ダイル:冗談言ってる場合じゃねえ!
ダイル:熱に浮かされたモアナが喰魔になって暴れ出したんだよ!
エレノア:メディサは?
ダイル:俺たちを巻き込まないよう、自分を囮にしてモアナを外に連れ出した
ダイル:キララウス火山の方に向かったが、あのままじゃ、メディサもやばいぜ
エレノア:追いかけましょう!
ベルベット:任せていいのね?
エレノア:……はい!
※枠外タッチで閉じます。
メディサ:モアナの熱、下がったわ。今は、気持ちよさそうに眠ってる
ベルベット:何とか一件落着ね
メディサ:エレノア、あなたのおかげよ。ありがとう
エレノア:私は、メディサのマネをしただけです
メディサ:……モアナのこと、受け止める覚悟ができたのね
エレノア:はい。どんな結果になるかわからないけど、そうしたいって思うから
エレノア:弱い人間でも、自分をごまかさずに一生懸命生きれば、母も許してくれるんじゃないかなって
ベルベット:ほんと強いやつね、あんたは
エレノア:はあ?どこがですか?
ベルベット:自覚がないところが最強
エレノア:意味がわかりません!
メディサ:ふふふ……どんな子でもお母さんは責めたりしないわ
メディサ:ただ元気に生きてほしい……母親の願いは、それだけだもの
エレノア:どんな子も……
ベルベット:生きていてほしい……
メディサ:あなたたちも母親になればわかるわよ
エレノア:今のところ、そういう予定はないんですが……
ライフィセット:エレノア……
ライフィセット:どうしたの!?顔、すっごく赤いよ!
エレノア:え!?これはその……
ベルベット:今、女同士の話をしてるんだけど、あんたも混ざる?
ライフィセット:ええ!?し、失礼しました……
ベルベット:ふふ、ちょっと意地悪だったかな
エレノア:母親じゃなくても、感じます。ライフィセットやモアナ……
エレノア:強い子も、弱い子も、間違ってしまった子も、どんな子もみんな──
エレノア:この世界で生きていて欲しいって
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:「ニャスタオル」……なんなんだろうな、これは?
ライフィセット:一見、普通の布だね
ライフィセット:でも、ねこにんがくれたんだから、不思議なものかもしれないよ
ロクロウ:う〜む……なんだか無性に、すべてを捨て去って、コレだけを身に着けたくなってきた……
ライフィセット:ちょ……おちついてよ、ロクロウ!?
ロクロウ:お、おう……さすがに業魔でも越えちゃいけない一線だよな
ライフィセット:うん……だと思う
ベルベット:バカなこと言ってないで、キララウス火山に向かうわよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:ここは……地脈?
アイゼン:……この先から妙な気配を感じる
ライフィセット:うん。なんか感じたことのない変な感じだ
アイゼン:用心して進むぞ。ただの地脈とは思えん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:それにしても、天界だと数万年だのとんでもないスケールの話が出てきたな
ライフィセット:アイゼンは天界のこと、なにか知らないの?
アイゼン:天界の門は数万年開いていないと言っていた。さすがに、そこまで古いことはわからん
アイゼン:俺は、千年ほどしか生きていないからな
ベルベット:アイゼン……あんた千歳だったの!?
エレノア:年上だとは思っていましたが、そこまでとは……今まで失礼しました
ロクロウ:肩と腰、揉んでやろうか?
アイゼン:……ふざけるな。聖隷としては、俺はまだ若い方だ
マギルゥ:じゃよなー。グリモ姐さんなぞは、なんと五千と十七歳じゃし
ライフィセット:グリモ先生、すごい……!
ロクロウ:そういえばマギルゥ、お前っていくつなんだ?
マギルゥ:年齢なぞ数えてないわい。そんなものは俗物が決めたつまらん尺度
マギルゥ:大事なのは中身じゃよ、ナ・カ・ミ!
ロクロウ:ははは、三十路が近くなるとそういうこと言い出す奴いるよな
マギルゥ:ギクッ!
エレノア:……今まで失礼しました
マギルゥ:なにを謝っておる!?儂のココロは、いつだって十四歳くらいじゃのにー!
ベルベット:話のスケールが一気にダウンしたわね……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:せっかくいい湯だったのに。もっとゆっくり入りたかったなあ
エレノア:却下です。それから、みんなさっきの記憶は消してくださいね
アイゼン:……どういう指図だ?
ロクロウ:無茶言うなよ
エレノア:消してください!!
ロクロウ:お、応……わかった
アイゼン:努力する
マギルゥ:やれやれ……絆を深めるどころか、溝が深まったの
ベルベット:聞いたわよ。あんた、ずっと目隠ししてたんだって?
ライフィセット:う、うん……
ベルベット:まったく、あんたは……
ライフィセット:いいでしょ!僕がそうしたかったんだから!
ベルベット:はいはい、いいわよ
ベルベット:あたしは、目隠しなんてしなかったけどね
ライフィセット:あ……
ライフィセット:もお〜〜〜!なんでそういうこというの、ベルベットはー!?
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……確かに地脈の入り口みたいね
ライフィセット:カノヌシの気配は感じないけど……
アイゼン:油断はできんぞ。奴は地脈から追い出したが、逆に四聖を起こした影響が出ているはずだ
ベルベット:情報を得るためには、ここに入るしかない。危険は承知の上よ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……そうか。シアリーズの誓約は、神依のための……
ライフィセット:命を代償にするなんて……
エレノア:しかも、奥さんが転生した聖隷と知っているのに……
エレノア:いえ……以前の私なら、これも「理」として受け入れていたでしょうね
ロクロウ:ともかく、これで繋がったな
ロクロウ:シアリーズの件も、アイフリードとジークフリートの件も
ロクロウ:全部カノヌシを操る神依を完成させるためだったわけだ
マギルゥ:その力を、ベルベットが喰らい、対魔士の天敵となった……皮肉じゃな
ベルベット:皮肉じゃないわ。シアリーズは全部わかって、あたしに……
アイゼン:だが、聖寮はジークフリートの術式を入手した。カノヌシの神依を完成させている可能性は高い
ライフィセット:……進もう、ベルベット
ベルベット:ええ、今更ひるまないわ。どんな事実が待っていようと
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベルベットのお姉さんとアルトリウス……
ベルベット:ああいう人だったわ、セリカ姉さんは
ベルベット:……あの人も
ライフィセット:うん
エレノア:(アルトリウス様……)
ベルベット:エレノア。対魔士たちが心から世界と人を救おうとしていることはわかってる
エレノア:……はい。それでもあなたは戦うんですよね?
ベルベット:そうよ
マギルゥ:やれやれじゃ。なにも知らねば、楽だったじゃろうにのー
エレノア:ベルベットは選びませんよ。楽な道なんて
ライフィセット:…………
マギルゥ:どうした、坊?
ライフィセット:……うん、大地の記憶って地上の出来事が記憶されてるんだよね
ライフィセット:すごくいっぱいあるはずなのに、なんでベルベットに関係することばかり再生されるのかな?
エレノア:それは……ベルベットに反応したから?
エレノア:いや、地脈を器にしていたカノヌシの力が影響しているとも考えられますね
マギルゥ:カノヌシの力だとすれば、奴の一部である坊も、大地の記憶を操れるのではないかえ?
マギルゥ:いわば無限の歴史図書館じゃ!わくわくするじゃろう?
ライフィセット:うん……でも怖いことでもあるよ。知ることは、楽しいだけじゃないんだから
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:おお、こんなところに出た!?監獄島の牢獄じゃわ!
アイゼン:地脈のワープか。バンエルティア号を呼び出さんとならんな
ライフィセット:僕、シアリーズに会ってたんだ……なのに、なにも覚えてなかった……
ベルベット:…………
ロクロウ:しかし、なんでここに繋がったんだろうな?
マギルゥ:そりゃあ、地脈点だからじゃろ
ベルベット:シアリーズの意思のせいかもね
ライフィセット:シアリーズの意思?
エレノア:きっとそうですよ。あの大地の記憶は、シアリーズが伝えたかったことだと思います
エレノア:ベルベットとライフィセットに
ライフィセット:……そうだよね。僕もそう思う
ロクロウ:えらく飛ばされちまったが、得たものはあったってことだな
ライフィセット:うん!
ベルベット:十分ね
アイゼン:よし。港にあがるぞ
ライフィセット:僕……意思が目覚めちゃったけど、辛いことばかりじゃないよ
ライフィセット:この世界で生きてるって感じられるから
ライフィセット:だから安心してね……お母さん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:よし、腹ごしらえはできたな!
ベルベット:…………
ロクロウ:ひとつ訊いていいか?
ベルベット:好きにしなさい。嫌なことは答えないけど
ロクロウ:さっきの話だがな
ロクロウ:もしかして、お前、味を感じないのか?
ベルベット:……ちゃんとわかるわよ
ベルベット:血の味だけはね
ロクロウ:それ以外は?
ベルベット:なにも。満腹感も感じないみたい
ロクロウ:みたいって、初めて食ったように
ベルベット:初めてよ。業魔になってから普通の食べ物を食べたのなんて
ロクロウ:じゃあ、今までなにを喰ってたんだ?
ベルベット:わかるでしょ。あの監獄にいたなら
ロクロウ:……すまん
ベルベット:気にしなくていいわ。あたしがそういう業魔だってだけだから
ベルベット:レシピがあれば、料理自体はつくれるし、味なんかどうでもかまわないし
ロクロウ:そうか
ベルベット:……戦う力は維持できる。それで十分よ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:なんやかんやで、味見なしの料理にも慣れてきたわね……
ライフィセット:前から思ってたけど、ベルベットって、すごく料理の手際がいいよね
ベルベット:レシピ通りにつくるのは難しいことじゃないわ。姉さんが亡くなってから、ずっと食事をつくってたし
ベルベット:本当に大事なのは、微妙な塩加減と最後の味の整え
ベルベット:それと「美味しくなあれ」って願いながらつくること
ライフィセット:願いながら……?
ベルベット:そう。そうすれば、どんな料理もごちそうになる。セリカ姉さんは、そう教えてくれた
ライフィセット:ベルベットのお姉さんは料理の名人だったんだね
ベルベット:それはもう。けど……今のあたしは姉さんのようにはつくれない
ベルベット:味もだけど、なにより「美味しい」って気持ちを忘れちゃったから……
ベルベット:だから、あたしがつくるのは料理じゃなくて「エサ」ってところね
ライフィセット:……そんなことないと思う
ライフィセット:(モグモグ……ゴクン)
ライフィセット:ちゃんとおいしいよ。ベルベットの料理は
ベルベット:……姉さんは言ってた
ベルベット:「美味しくなあれ」ってねぐのは、料理を食べたあたしたちの笑顔が見たいからだって……
ライフィセット:え?
ベルベット:ふふ、あんたは意外に食いしん坊ねって言ったの
ライフィセット:そ、そんなことないよ……
ベルベット:あってもいいわよ。たくさん食べて大きくなりなさい
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:よし……見た目や食感は、完璧に再現できるようになったわね
ライフィセット:ベルベット、キッシュをつくったの?
ベルベット:丁度よかった。ちょっと味見をしてくれない?
ライフィセット:いいよ
ライフィセット:(モグモグ……ゴクン)
ライフィセット:うん!サクサクのフワフワで、すごくおいしいよ
ベルベット:よかった。姉さんのと同じ味かわからないけど、ちゃんと仕上がってるみたいね
ベルベット:……犬たちのところにいかなきゃ
ライフィセット:オルとトロスのところに?
ベルベット:そうよ。やっておきたいことがあるの
ライフィセット:やっておきたいこと……?
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:カースランドにドラゴンが……?
ロクロウ:カリスに捕まってたやつが逃げ出したのか?
アイゼン:いや、対魔士の口ぶりからすると、俺たちと戦ったドラゴンのようだ
ライフィセット:シルバ……!
マギルゥ:坊よ、妙な気をおこすでないぞ。あのドラゴンの手強さは、知っておるじゃろ?
マギルゥ:あんなのに関わったら命が百個あっても足らん。ここは放置が一番じゃ
ライフィセット:…………
ベルベット:……助ける義理があるの?あの子を
ライフィセット:ううん……一緒にいた時は話したこともなかった。お互いに、意思も感情もなかったから……
ライフィセット:同じだったんだ。僕も、シルバも
ライフィセット:ベルベットがあの子を連れて逃げてたら、きっと僕がドラゴンになってた
ライフィセット:今更どうすることもできないけど、せめて……
ライフィセット:せめて決着をつけてあげたい
ベルベット:……好きにしなさい。骨は拾ってあげるわ
アイゼン:……俺も一緒に行く
エレノア:私もです
ロクロウ:何事も決着はつけなきゃな!
マギルゥ:まったくお気楽者どもが……負けたら骨まで食べられるというに……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:「第四種管理地区」って言ってたけど、どういう場所なのかな?
エレノア:聖寮が決めた対業魔戦略上の区分で、どの程度業魔を制圧できたかの目安なんです
エレノア:第一種から第三種までは、対魔士が適宜配備あれ、安全が保証されている地区です
ライフィセット:つまり……第四種は、安全の保障ができてない?
エレノア:本来なら王国全土の安全を保証すべきですが、手が回らないのが実情です
辺境や離島などは、対魔士を配備せず、立ち入り制限を行うことで被害を防いでいるんです
ロクロウ:船の連中は島の近くまで行けたと言っていたが、立ち入り制限ってどうなってるんだ?
マギルゥ:危ないから行くなとお触れを出しておしまいじゃよ。離れ小島を囲えるわけでもないしのー
マギルゥ:禁じた場所へ行くのは勝手じゃが、助けには行かん。泣くのが嫌なら近寄るな、というわけじゃ
アイゼン:そもそも、業魔を制圧できていれば、渡航を禁止する必要なんてない
アイゼン:本音では、聖寮も近づきたくないんだろう
ベルベット:聖寮もお手上げの危険地帯ってことか
マギルゥ:放置しておきながら管理とは、これいかに
ライフィセット:第四種管理地区って、たくさんあるの?
エレノア:私が聖寮査察官として聞いたことがあるのは全部で十か所です
エレノア:その十か所の正確な位置も現在の様子もわかりませんが……
アイゼン:聖寮が撤退したんだ。おそらく、よりやばい場所になっているだろうな
ライフィセット:そこへ行くなら、しっかり準備しないとだね……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:闘技用の舞台……?業魔の姿は見当たらないわね
ライフィセット:闘技場の真ん中、なにか湧き出てるよ
アイゼン:あの中からいくつもの殺気を感じる
マギルゥ:ここで敗れて死んだ連中の怨念が、バケモノどもを呼び寄せとるんじゃ
マギルゥ:うらめしや〜〜との
エレノア:そういわれると、急に不気味な場所に思えてきますね……
ロクロウ:怨念の仲間入りしないように、気合い入れていこうぜ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:怨念の仲間入りはせずに済んだわね
アイゼン:やはり、噂通りの危険区域だな
マギルゥ:いやはや、聖寮が放置したい理由もわかるわい
ロクロウ:油断は禁物だが、業魔との戦い方や技を磨くには絶好の狩場だな
エレノア:同じような種類の敵が集まっているようでしたし、戦術的な面の訓練もできますね
ライフィセット:うん。またここみたいな島に行く時は、敵の種類を考えて準備した方がよさそうだね
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:これで、第四種管理地区はひと通り回ったわね
ビエンフー:バケモノは倒しても倒してもどんどん湧いていて、キリがないでフね……
アイゼン:第四種管理地区には、長年にわたって土地に沁みついた根深い穢れがある
アイゼン:何度狩っても、すぐに集まってくるだろうな
ロクロウ:ま、腕を磨く相手としちゃあ、悪くない
ライフィセット:エレノア、なんだかうれしそうだね
エレノア:はい。聖寮が手に負えなかった危険地区で戦って、人々の安全に貢献できたと思うと、うれしくて
マギルゥ:命がけで聖寮のお手伝いをしたようなものじゃ。アホらしくてやっとれんわい
ベルベット:……そうでもないわよ。こっちも「それなりに」力を得たわ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:よくもあんな嘘を……
ロクロウ:そういえば、花には花言葉ってのがあるんだよな。こいつのはなんていうんだろうな?
ベルベット:……「裏切り」よ
ロクロウ:ほう……?
※枠外タッチで閉じます。
アルトリウス:……よし、今日の修行はここまでにしよう
ベルベット:ありがとうございました!
ベルベット:それにしても、義兄さんの技って、すごく品があるよね
アルトリウス:これは俺の師匠──クローディン先生がつくった剣技だよ
ベルベット:ふうん。あたしも、あんなキレイな技を使ってみたいなぁアルトリウス:……同じ型を教えたんだがな。なぜかお前は、理と違う蹴りや技がデル
ベルベット:う……体が勝手に動いちゃって……
アルトリウス:まったくお前は……
アルトリウス:だが、ベルベットは、ちょっと先生に似ているよ。先生も、なかなか変わった人だった
アルトリウス:いつも風変りなマントを着ていてな
ベルベット:風変りなマント……?
アルトリウス:でも、火のように強く、水のように周囲を潤し。地のように揺るがず、風邪のように自由で……
アルトリウス:今でも憧れの人だ
ベルベット:あたしも会ってみたいなぁ
アルトリウス:それは、もう無理だ
ベルベット:……亡くなったの?
アルトリウス:ああ
アルトリウス:先生は俺を守って……だから俺は……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……いや、本に書かれているのは三百年も昔の事。同じ人物のはずない……
ライフィセット:ベルベット、どうかした?
ベルベット:ううん、なんでもないわ
ロクロウ:クローディンって王様は、ずいぶん強い奴だったんだな
ライフィセット:それだけじゃないよ。歴史上で一番民を信じ、民から愛された王様……って書いてある
アイゼン:ミッドガンド王国は、そのクローディン王の一族、アスガード王家の末裔を名乗っている
アイゼン:アルトリウスに「導師」などという大仰な称号を与えたのは
アイゼン:暗黒時代を終わらせた英雄王の栄光を再現しようという意図の表れかもしれんな
ベルベット:子ども騙しね。称号なんかで世界を変えられるならクロウしないわ
アイゼン:そうともいいきれん
アイゼン:重要なのは、民衆が「導師」という称号に希望を見出し、支持している事実だ
アイゼン:それは導師の名のもとに、世界の意志を操作できるということだからな
ロクロウ:ふうむ……全部招致で称号を受けたなら、アルトリウスの覚悟も半端じゃないな
ベルベット:……あいつの覚悟なんてとっくにわかってる
ベルベット:あれだけのことを……したんだから……!
※枠外タッチで閉じます。
シアリーズ:アルトリウス様。先代が残された文献をすべて解読しましたが
シアリーズ:現在の状況で、四柱すべてと契約を結ぶのは不可能という結論に達しました
アルトリウス:……だろうな。先生すら二柱との契約が限界だった
アルトリウス:やはり「五柱目」の力を使うしか方法はない
シアリーズ:よろしいですか?それには……
アルトリウス:「なさねばならないこと」だ
アルトリウス:……俺は、先生を裏切ってしまった。命をかけてすべてを託してくれた先生の信頼を……
アルトリウス:一時は、その罪を抱えたまま生きようと思った。セリカと一緒に……
アルトリウス:……だが、セリカはもういない
シアリーズ:はい
アルトリウス:「理を乱すのも人なら、超えるのも人。理を声て願い想う理想こそ人の力」
アルトリウス:俺は、理想をなしとげねばならないのだ
アルトリウス:大切な人たちを救えなかった俺の手で、この世界を……!
ベルベット:……アーサー義兄さん?
アルトリウス:どうした、ベルベット
ベルベット:今、誰かと話してなかった?
アルトリウス:いいや
ベルベット:そ、そう……
ベルベット:夕飯の準備できたよ。今晩は「ウリボアの肉たっぷり、でもさっぱりシチュー」!
アルトリウス:はは、それは楽しみだ。急いで家に戻るとしよう!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:…………
ライフィセット:意味、全部わからないけど、なんかいい言葉だね
ベルベット:え、ええ……
ベルベット:ううん、あたしにはよくわからないわ。難しくて
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:クローディン王が、先代の筆頭対魔士……アルトリウスの先生と同一人物だったなんて
マギルゥ:メルキオルと同じ誓約じゃ。今更驚くこともあるまい
マギルゥ:というか、お師さんの方が、クローディンに付き合うためにマネしたらしいがの
エレノア:あなた……先代を知ってるのですか?
マギルゥ:いーや、直接会ったことはない
マギルゥ:じゃが、あのお師さんがあきれるほど妙な男だったらしいぞ
マギルゥ:王位を退いた後も、人知れず対魔士として世界を守ろうと願ったとか
マギルゥ:仕事人間にもほどがあるわい
ベルベット:アルトリウスは、そんな男の跡を継いだ……
エレノア:ロウライネに行ってみましょう
エレノア:ベルベット:。少なくともあなたは、事情を知るべきだと思います
ベルベット:……ええ、そうよね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:己が無力さに絶望した若き筆頭対魔士は、すべてをあきらめて東へ向かった……か
ベルベット:東……アバルね
ライフィセット:ベルベット、アバルへ行ってみようよ。なんか、呼ばれてるような気がするんだ
ベルベット:……そうね、私もよ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:…………
ライフィセット:あの人の過去……わかったね
ベルベット:……ええ。導師でも、英雄王でも、現実はままならないってこともね
ロクロウ:まったくだな。こんな辺境まで、花を献げに来るなんて「理」でもなんでもない
アイゼン:大切な者を守るどころか、自分の心すら自由にはできない……か
エレノア:……はい。でも、きっとそれが人間なのだと思います
マギルゥ:じゃがそれは、あやつが無類に手強いということでもあるぞ
マギルゥ:師匠と嫁……二度の挫折を乗り越えて「導師」として立っておるということじゃからな
ベルベット:承知の上よ。それでもあたしは……
ベルベット:アルトリウスと決着をつける
ライフィセット:うん……!
エレノア:最後まあで、お付き合いします
マギルゥ:異存はないが、姉の墓の前で言うかえ?
ベルベット:……この場所だから言うのよ
※枠外タッチで閉じます。
ホワイトかめにん:トータス、トータス、常連さんが通ったっスー。ちょうど良かったっす。アイゼンさんんいお手紙っす
アイゼン:手紙……?
ライフィセット:もしかして、この前の手紙の返事?なんて書いてあるの?
アイゼン:……「天知る人知る我が知る!貴様の鬼畜な所業を悔い改めよ!!」……
ロクロウ:お前、なにやったんだ?
アイゼン:知らん。差出人も書いてない
ライフィセット:誰がこんな手紙……
アイゼン:恨まれるのを気にしてたら海賊なんてやってられん
ロクロウ:そうだよな
アイゼン:それより、例のブツはどうなった?
ホワイトかめにん:パルミエのほうは発送済みっすけど、「ノル様人形」は難航してるっす……すみませんっす
ベルベット:……「ノル様人形」って?
ホワイトかめにん:大昔に、四聖主の聖殿で祀られてた人形で、四つ全部集めると幸せになれると言われたそうっす
ホワイトかめにん:現存するのは赤青緑黒の四個だけらしいっす。情報もほとんどないし、大変なんすよ
エレノア:聖主の人形ということは……イズルトで売られていたアメノチ人形のようなものなのでしょうか?
ホワイトかめにん:似てるらしいっすが、あんんあアンニュイじゃなくて、げんなり?うんざり?なんかそんなのっす
マギルゥ:はんなり、じゃろ?
ホワイトかめにん:そうそれっす、はんなりっす!
エレノア:はんなり……ですか
マギルゥ:海賊が神頼みの人形集めとはのー。そんなものが死神の呪いにきくのかえ?
アイゼン:……別に本気で信じているわけじゃないが、万が一にも本当なら、あいつは安心して暮らせる
ライフィセット:(あいつ……?)
ライフィセット:ねえ、アイゼンが手紙を送ったあいつって、女のひとなんだよね……
ロクロウ:なんだ、お前、そういうことにも興味が出てきたのか
ライフィセット:ち、違うよ。恋人とかそういうことじゃなくて、すごく大人に見えたっていうか!
アイゼン:勘ぐるな、妹だ
ライフィセット:アイゼンには妹がいたんだ
アイゼン:たった一人の家族だ。訳あって離れて暮らしている
マギルゥ:そりゃあ、兄貴が死神ではのう〜
エレノア:マギルゥ!
アイゼン:…………
ライフィセット:(そうか、それでアイゼンは……)
ライフィセット:アイゼン、ノル様人形を探すの、手伝うよ
アイゼン:いいのか?
ライフィセット:うん
アイゼン:……よろしく頼む
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ノル様人形……グリモワールやビエンフーに似ていますが、なにかが違いますね……
ロクロウ:ああ……ビエンフーたちは若干ダークな雰囲気だが、ノル様は落ち着いた華やかさがあるよな
マギルゥ:それを、はんなり、というんじゃよ
ライフィセット:それが、はんなり……
ビエンフー:はんなりというは、まったりというか、ぼんやりした、何考えてるかわからない顔でフよ〜
ビエンフー:ボクの方が千倍かわいいでフよね?
ベルベット:どこが?顔隠してるあんたは怪しいだけでしょ
ビエンフー:ビエ〜〜ン!
エレノア:それにしても、微妙な人形ですね
エレノア:愛嬌はあるのに、私の心の声が心を許してはいけないと警告しています……
ライフィセット:そうかな……なんか、赤ちゃんみたいで素直にかわいいと僕は思うけど
エレノア:これが……赤ちゃん……?
アイゼン:妹も、この人形と同じくらい、小さかった
アイゼン:おもちゃみたいに小さな手で、一生懸命、あいつは俺の小指を握っていた
エレノア:えっ……
アイゼン:握られたままの小指をそっと動かして頬をつついてやったら、笑ったんだ
アイゼン:その笑顔を……なにがあっても守ろうと誓った
アイゼン:だが、あいつうが俺に飯を作ってくれるほど成長した頃、妙なことばかり起こるようになった……
アイゼン:業魔に襲われたり、ドラゴンに捕らわれそうになったり、妹ばかり危ない目に遭った
アイゼン:そして、初めて俺は気づいたんだ
アイゼン:妹を傷つけた原因が俺の加護……「死神の力」だということに
エレノア:それで、あなたは妹を置いて旅に出たのですね。呪いを解く方法を見つけるために
アイゼン:ああ……そしてアイフリードと出会った
アイゼン:ノル様人形の噂も、アイフリードから聞いた。「そんなものに意味はない」とヤツは笑っていたがな
ライフィセット:……集めてみなきゃ、わからないよ
アイゼン:……ん?
ライフィセット:僕は、きっといいことがあると思う
アイゼン:なぜ?
ライフィセット:アイゼンが自分のこと話してくれてうれしかった。それは、この人形のおかげだから
ライフィセット:だから、残り三つも絶対に見つけようよ
アイゼン:ふっ……そうだな
※枠外タッチで閉じます。
ホワイトかめにん:トータス、トータス、朝食はコーストでトーストに限るっスー。アイゼンさんにお手紙っす
アイゼン:……うむ
ライフィセット:妹からの返事かな……
アイゼン:読むか?
ライフィセット:えっあ……
ロクロウ:よし、俺が読もう!どれどれ
ロクロウ:「貴様の冷酷さが可憐な乙女の心に今日も涙雨を降らせている」
ロクロウ:「悔い改めよ!さもなくば我にも考えがある!これが最後の警告なり!」……以上!
エレノア:……かなりキレてますね
マギルゥ:どんな悪さをして女子を泣かせたんじゃ?
アイゼン:お前で試してやろうか?
マギルゥ:くわばらくわばら、ケーキは別腹じゃ〜〜
ライフィセット:可憐な乙女の涙雨って……妹のことじゃないの?
アイゼン:妹?
ロクロウ:おお、それはありうるぜ。兄貴と離れ離れじゃ、妹も寂しいよな
ベルベット:兄貴のことが好きならね
アイゼン:…………
エレノア:この手紙をアイゼンの妹が書いたというのですが?ずいぶん個性的な感じもしますが
アイゼン:……俺の妹はこんな手紙は書かん
マギルゥ:なら、妹の傍らにおる何者か……というか男が、妹の涙を受けてこの手紙を書いたことになるの〜〜
アイゼン:てめぇマギルゥ!妹に男が付きまとっているだと!誰だ!今すぐここに連れて来い!
エレノア:付きまとってるなんて言ってませんから!落ち着いてください、アイゼン!
ライフィセット:そんなに心配なら、身に行けばいいのに
アイゼン:…………
ライフィセット:会いに行ったことはないの?
アイゼン:じぶん前に一度だけ、戻ったことがある
アイゼン:だが、俺が帰ってすぐ、付近に人間たちが集まり始め、たちどころに穢れが溢れ、業魔どもが妹を襲った
ライフィセット:それって、アイゼンのせいなの?
アイゼン:穢れの少ない、安全な場所を選んで移り住んだ、人間が簡単には近寄れない、険しい山奥だぞ?
ライフィセット:偶然で済まされる状況じゃないよね
アイゼン:……それ以来、一度も妹には会っていない
エレノア:あの……私は、ノル様人形を微妙だと言いましたが、意外とその微妙さがイイような気がしてきました
アイゼン:?
エレノア:それに、もし微妙だとしても、気持ちのこもった贈り物なら、どんなものでも女子はうれしいです
アイゼン:お前にはやらんぞ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ノル様人形もこれで三つめ。あとひとつですね
アイゼン:ああ
マギルゥ:いつもなら、かめにんが来る頃じゃが……トータス、ゴーダツ、ミトータツかのー
ベルベット:ひょっとして、かめにんが強盗に遭って荷物を盗られてここに未だ到達できてないって言いたいの?
マギルゥ:さすがは我が弟子、ベルベットぽっぽ〜〜
ロクロウ:もう少し、かめにんを待ってみるか?妹からの返事も、そろそろ届く頃だろう?
アイゼン:いや、返事を期待して手紙を出しているわけじゃない。妹のもとへ帰らないことへの言い訳みたいなものだ
ライフィセット:帰れないのは死神の呪いのせいでしょ?どうして手紙や贈り物が言い訳なの?
アイゼン:妹のそばを離れてからすぐの頃は、妹の手紙には「危険でも構わない、一緒にいたい」と書いてあった
アイゼン:以前の俺なら、呪いを解く方法がないと判った時点で妹を守る覚悟を消えて、戻ったかもしれない
アイゼン:だが、俺は変わった。アイフリードたちと出会って
エレノア:あの船に、居場所を見つけてしまったのですね。だから、呪いが解けてもあなたは帰らない……
ライフィセット:妹はそのことを知っているの?
アイゼン:はっきり伝えたことはないが、気づいているはずだ。賢くて、思いやりがあるやつだからな
アイゼン:だから、あいつは俺に手紙の返事をよこさない
ライフィセット:アイゼンの生き方を尊重してるから?
アイゼン:頭では……な。だが、理解できたからといって寂しい想いが消えるわけじゃない
アイゼン:返事をよこさないのは、抗議の意思表示なんだろう
ロクロウ:それでも手紙を書き続けるのは、兄としての贖罪の意思表示ってわけか
アイゼン:そんな立派なものじゃないがな
エレノア:返事が来ないとわかっていて手紙を送り続ける兄。帰って来ないとわかっていて待ち続ける妹……
ベルベット:……面倒くさい兄妹ね。はっきり自分の気持ちを伝えて、謝ればいいのに
アイゼン:…………
ベルベット:……でも、大切に思う相手が生きてる。ちょっと羨ましいわ
ライフィセット:ベルベット……
アイゼン:…………
ベルベット:用が済んだら戻るわよ
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:おお、ノル様人形コンプリート〜〜!!おめっとさーん!!
ホワイトかめにん:トータス、トータス!ついに極みにトータツっすね!いやあ、皆さんの探索能力にはコーフクっす!
ベルベット:あんたが探せないっていうから、手間暇かかったのよ。その分、次の取引でサービスしてもらうから
ホワイトかめにん:ひどい……ひどすぎるっす〜〜
ライフィセット:そんなことより、なにか届けに来たんじゃないの?
ホワイトかめにん:そんなこと、じゃないっすけど、アイゼンさんに手紙っす〜〜
アイゼン:また例の手紙か……
アイゼン:「一筆啓上。我の堪忍袋の緒は切れた。怒りの鉄槌を今くださん!監獄島に来るがよい」
アイゼン:「逃げても責めはせぬ。うぬが白状勝つ臆病な愚兄と判断するのみ」
ロクロウ:おいおい、こいつは果たし状じゃないか!面白そうだなぁ。行こうぜ!
ベルベット:単なるいやがらせでしょ?放っておけば
エレノア:私たちが知るだけでも三度目ですよ。ここらできちんと処理しておくべきではありませんか
ライフィセット:僕も気になる。これを放っておいたら、アイゼンの妹にまでなにかするかもしれないし
アイゼン:それだけは絶対にさせん。タイタニアへ行かせてもらうぞ
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:対魔士の姿は見当たらないわね
マギルゥ:ここは用済みとて、完全撤退したようじゃな
エレノア:それを知ったうえで、ここを利用したとするなら、果たし状の差出人は、侮れませんね
ロクロウ:油断せずに行こう
※枠外タッチで閉じます。
ホワイトかめにん:どもっす!アイゼンさんに、手紙届いてるっすよ
アイゼン:…………
アイゼン:うっ……
ロクロウ:おい、どうした?なにが書いてあったんだ?
アイゼン:俺には読めん……代わりに読んでくれ
ライフィセット:う、うん……
ライフィセット:「前略、お兄ちゃん。手紙、届きました。なぜかボロボロだったけど」
ライフィセット:「お兄ちゃんの本当の気持ちが伝わってきました。今さら感は否めなかったけど」
ライフィセット:「護身用に教えてくれた聖隷術、説明がわかりやすくてすぐに覚えられました。いくつか誤字があったけど」
ライフィセット:「海賊に言うのもどうかと思うけど、お仕事頑張って。あとワタシは、秘密は守る方です」
ライフィセット:「だから、なんでも手紙に書いてください。特に待ってないけど、読むのはキライじゃないです」
ライフィセット:「山からは見えないけど、海を思ってお兄ちゃんの無事を祈ってます。ワタシは元気です」
アイゼン:ぐっ……
マギルゥ:あーあー。まったく兄妹そろってひねくれ者じゃな。遠回しな愛情表現にもほどがあるわ……
ライフィセット:まだ続きがあるよ
ライフィセット:「追伸、ノル様人形ありがとう。。別にかわいくないけど、少し気に入りました」
ライフィセット:「ただ、夜になると、どこからか手紙を書くがよい、兄の弱音を聞いてやるがよいと聞こえてきます」
ライフィセット:「結構イラつくけど、お兄ちゃんのくれたものだから、特別に許してあげます」
ライフィセット:……これで全部だよ
エレノア:なかなかしっかりした子ですね
ベルベット:そういえば、名前はなんていうの?
アイゼン:エドナだ
ベルベット:なかなか、いい名前ね
アイゼン:当然だ。俺がつけたんだからな
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:……噴っ!破っ!勢っ!
ベルベット:……ん?
ロクロウ:勢っ!!呀っ!!
ロクロウ:斬ッッ!!!
ロクロウ:……よし。今のは、なかなかいい太刀筋だった
ロクロウ:明日はもっと速くだな
ベルベット:いい加減な業魔かと思ったけど……
ベルベット:案外そうでもないのね
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:勢っ!!勢っ!!勢っ!!
ロクロウ:はぁぁぁぁぁ……
ロクロウ:凄ッッ!!!
ベルベット:…………
ロクロウ:なにか用か?
ベルベット:別に……
ロクロウ:そうか
ベルベット:なんで二刀じゃないの?特訓?
ロクロウ:いいや、普通の修行さ。素振り一万回ってのが、ガキの頃からの日課なんだ
ロクロウ:シグレに一本でも撃ち込みたくて、素振りしまくっているうちに一万回振るようになっていた
ベルベット:すごいわね
ロクロウ:すごくはない。シグレと斬り合えばあのザマだ
ロクロウ:だから、素振りを十万回に増やそうと思ってな
ベルベット:十万回って……何時間かかると思ってるわけ?
ロクロウ:知らん
ベルベット:無理よ。多分一秒に一回振っても、一日じゃ終わらないわよ
ロクロウ:そうか。なら、一秒に十回振ればイケるな!
ベルベット:あんたねぇ……
ロクロウ:まあ十万回振ろうが、それだけじゃシグレに及ばないってわかってるんだがな
ロクロウ:太刀でも、二刀小太刀でも……
ベルベット:……意味がないとわかってて、やるっていうの?業魔にしたって矛盾しすぎでしょ
ロクロウ:勝てない相手に勝とうっていうんだ。元から矛盾してるのさ
ロクロウ:だから、矛盾を承知で矛盾を超えてみせるしかない
ベルベット:矛盾を超える……
ロクロウ:……とはいえ、夜更かししつつ眠気をなくす矛盾は、なかなか越えられんがなぁ……
ベルベット:ならとっとと寝なさい。寝不足でしくじっても、助けないわよ
ロクロウ:応、そうしよう
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:勢っ!!鋭っ!!破っ!!
ロクロウ:……斬……
ベルベット:いつも通りね、あんたは
ロクロウ:ん?そうか?
ベルベット:自覚のない自然体──無の境地って言うんじゃない?そういうの
ロクロウ:ははは……そんなふうに見えるか?
ロクロウ:だが、残念ながら真逆だ
ロクロウ:憎悪も、迷いも、自信も、いらだちも……次から次へ湧いてきやがる
ロクロウ:そういう「業」を斬り捨てるために剣を振る。前は俺も、そう思ってた
ロクロウ:……だが、そんなの無理だろ?
ロクロウ:いや、例えできたとしても、今の俺は自分の「業」を捨てたくないんだ
ベルベット:……シグレを斬りたいって想いを捨てたら、なんのために生きてるのかわからなくなるから……?
ロクロウ:応さ!邪念も意地も、業も矛盾も全部ひっくるめて「俺」なんだ
ロクロウ:だから俺は、俺という業と業を研ぎ上げて、「自分だけの剣」を掴む!
ロクロウ:きっとそれだけが、矛盾を超える──シグレに勝つ方法なんだ
ベルベット:自分だけの剣……シグレは、それを掴んでいるのね
ロクロウ:ああ。あいつだけじゃなく、お前もな
ベルベット:……あたしが……自分の剣を掴んでる?
ロクロウ:そうさ。だから、俺も負けん!
ロクロウ:お前から受けた恩を返すためにもな
ベルベット:あんたの剣、あたしも見させてもらうわ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:あきれた連中だろう?
ベルベット:……バンエルティア号の事故は、やっぱりあんたの力?
アイゼン:そうだ。俺は、死神の呪いを解く方法を探して長い旅を続けていた
アイゼン:だが、この大陸では手がかりすら見つからず、異大陸に渡ろうと考えた
ベルベット:それで新型の船に乗ったのね
アイゼン:バンエルティア号は、樹齢千年をこえるウキウ樹でつくられていてな。器にできたんだ
アイゼン:結局、大事故を起こしちまったがな
ベルベット:……で、アイフリードが船を奪った。あんたがいるのを承知で?
アイゼン:ああ。あいつは、そこそこの霊応力をもっていたからな
アイゼン:もっとも、最初は俺を、単に影が薄くて目つきの悪い新入りだと思っていたらしいが
ベルベット:死神もかたなしね
アイゼン:まったく同意だが……
アイゼン:実際、見えていようが、いまいが、やつらは、なにも変わらなかった
アイゼン:俺は、俺が呼び寄せる不幸と全力で戦った。アイフリードたちと力を合わせて……
アイゼン:そして、とうとう異大陸までの航海を果たすことができたんだ
ベルベット:異大陸でも見つからなかったの?呪いを解く方法
アイゼン:わからん。探さなかったからな
ベルベット:そのために行ったのに?
アイゼン:俺は、死神のまま生きると決めたんだ
アイゼン:あきれた海賊たちが、俺に生きている実感を──仲間と夢を追う喜びを教えてくれたからな
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:はは、ずいぶん明るい追悼式だな
マギルゥ:死は誰にでも等しく訪れる。特別な事ではないわい
アイゼン:ああ、まして俺たちは海賊だ。死は、船底の下にいつでも転がっている
ライフィセット:みんな、覚悟してるんだね
アイゼン:……ああ。覚悟はしていた
エレノア:アイゼン、アイフリードのために祈ってもいいでしょうか?
アイゼン:いいのか?あいつは世紀の大悪党だぞ
エレノア:そ、それはそうですが……
ベルベット:アイゼンの友達のため……それなら問題ないでしょ
エレノア:はい!あなたの親友のために祈りたいんです
アイゼン:……好きにしろ
アイゼン:お前との航海は、呪いを解こうと彷徨った数百年を超える充実した日々だった
アイゼン:……楽しかったぜ、アイフリード
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:共食いして狂暴になるって……蠱毒かな?
アイゼン:仲間を呼び寄せて喰らう、か。その業魔は、本能的に蠱毒を行っている可能性が高いな
マギルゥ:仲間を喰らってでも強く生きようとは、一周半回って、すがすがしい業魔じゃの〜〜
ベルベット:……一周半の「半」ってなによ?
マギルゥ:関わりあいたくはないが、関わってしまうやもしれぬ……そういう悩ましさの表現じゃよ♪
ロクロウ:ふうむ……蠱毒を重ねているなら、かなりの強敵だろうな
アイゼン:そいつをベルベットが喰らえば、強い力を得ることができるかもしれん
ライフィセット:けど、危険だよ……
ベルベット:…………
マギルゥ:戦うべきか、戦わざるべきか……ああ〜何周回っても悩ましいのう〜
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ふう……奇妙な業魔でしたが、なんとか倒せましたね
ベルベット:本能にしたがって共食いする業魔……
ベルベット:あたしとは似た者同士ね
ライフィセット:…………
マギルゥ:腹が減ったら飯を食う。生きるとは、他者を喰らうこと
マギルゥ:そこに善悪をもちこむのは、人間くらいのものじゃ。じゃから気にするでないぞ、ベルベット♪
エレノア:何を言いたいんですか!
ベルベット:……あたしは悪でもかまわないわ
ライフィセット:僕、うまく言えないけど……さっきの業魔からは、生きようとする周年みたいな力を感じた気がする
ライフィセット:強くて怖いけど……嫌な感じじゃなかったよ
ベルベット:……そう
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:よし、だいぶ馴染んできた
ライフィセット:なにが?
エレノア:あなたの力がです。いい感じに制御できるようになってきました
ライフィセット:よかった。もう倒れたりしないね
エレノア:ええ。ますます精進しますからよろしくお願いしますね!
ライフィセット:うん。こちらこそ
ベルベット:…………
ライフィセット:どうかした?
ベルベット:……別に
マギルゥ:ああいえばそういえば!坊は、エレノアと契約した時「真名」をつけてもらったんじゃろ?
マギルゥ:いい名前だったかえ?
ライフィセット:そ、それは……!
ベルベット:真名?
マギルゥ:聖隷がもっておる「古代語の名」じゃよ。人間と契約を交わす時に必要な特別な名前なんじゃ
マギルゥ:儂もビエンフーに「フューシィ=カス」とつけてやった
マギルゥ:ブタザルという意味じゃ♪
ベルベット:ひどいわね……
マギルゥ:これも一種の愛情表現なんじゃよ〜♪
ベルベット:ライフィセット、あんたはどんな真名をもらったの?
ライフィセット:そ、それは……!
ベルベット:もしかして、マギルゥみたいに変な名前をつけられたんじゃないでしょうね?
ベルベット:不満があるなら、エレノアに言ってあげるから、正直に答えなさい──
ライフィセット:違うし、ベルベットには言えないよっ!
ベルベット:そんなに嫌がらなくても……
アイゼン:真名は、気安く他人に明かすものじゃない。聖隷にとって特別な意味をもっているんだ
アイゼン:契約者以外に自分の名を告げることは、同性になら命がけの信頼の証。異性に対しては──
マギルゥ:愛の告白に近いんじゃよなー♥
ベルベット:そ……それを早く言いなさいよ……
アイゼン:ライフィセットも難しい年頃だ。以後は気を付けろ
マギルゥ:ま〜、あれも一種の愛情表現じゃがな〜♪
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:アイゼン、さっきのって……
ベルベット:なにか知ってるのね
アイゼン:おそらく異大陸から流れてきた宝箱だろう
ライフィセット:異大陸の宝箱!
エレノア:なぜそうだと?
アイゼン:以前、異大陸で同じ物を見た
マギルゥ:ほっほ〜、そいつは面白そうじゃのう
ロクロウ:行ってみようぜ。どうしても開かないなら、俺が斬ってやる
アイゼン:必要ない。開ける方法は知っている
アイゼン:正確には、アイフリードが見つけた
ライフィセット:あっ!その宝箱に入ってたのが──
アイゼン:そう、ジークフリートだ
ベルベット:……アイゼンの言う通りなら、聖寮や血翅蝶に渡すには惜しいわね
ベルベット:マーナン海礁に行ってみましょう
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:なんじゃ、つまらん。あっさりと開きおってからに……
エレノア:バンエルティア……異大陸の言葉だったんですね
アイゼン:ああ。バンエルティア号の設計には異大陸の技術をもった技師がかかわっていたからな
アイゼン:そういう偶然──縁が、アイフリードにジークフリートをもたらしたんだ
ロクロウ:肝心の中身は、なんなんだ?
ライフィセット:本だ
マギルゥ:むは〜……せつないほどつまらんの〜
ライフィセット:かなり古いけど……読める言葉で書いてある
ライフィセット:「特殊能力付加装置ジークフリートに関する研究」
エレノア:ジークフリートの解説書ってことですか!?
ライフィセット:うん……あちこち欠けてるけど、そうみたい
マギルゥ:こりゃまた、えらい偶然じゃの〜
ベルベット:フィー、続きをお願い
ライフィセット:「アヴァロスト時代の遺物と思われるジークフリートは内蔵された術式によって霊力の操作を可能とする」
ライフィセット:「一般的には、撃ち抜いた対象の霊力を操作し、増幅する装置として認知されているが」
ライフィセット:「これは正規の機能を起動・制御するための基本能力にすぎない」
ロクロウ:正規の機能?つまり別の力があるってことか?
ライフィセット:そうみたい……「そもそもジークフリートの正体は、対ドラゴン戦用の特殊兵器と推測される」
アイゼン:!!
マギルゥ:ほほう、ちょっと面白くなってきたのう
ライフィセット:「その本来の機能は意志の弾丸を撃ち込み、特殊な効果を発揮することである」
ライフィセット:「霊体結晶の弾丸は、込められた意志の種類によって複数の異なる効果を発揮する」
ライフィセット:「力の結びつきを断つ弾丸や、一時的に穢れの影響を遮断する弾丸などが確認されている」
アイゼン:穢れの影響を遮断する弾丸……
エレノア:弾丸の在処は?
ライフィセット:「ええっと……ごめん、これ以上はボロボロで読めない」
アイゼン:そうか……
マギルゥ:ふうむ……真偽は不明じゃあ、それなりに納得できる説じゃな
ライフィセット:アイゼン、弾丸を捜してみようよ
アイゼン:……いや、俺には必要ない
エレノア:でも、その弾丸があれば、あなたは──
アイゼン:俺には、先にやることがある。なにより、もうジークフリートはザビーダのものだ
ライフィセット:ライフィセット、今度ザビーダに会ったら、このことを教えてやれ
ライフィセット:……いいの?
アイゼン:頼む
アイゼン:あいつなら、きっと弾丸を探し出すだろう。世界中を駆け回ってでもな
ライフィセット:……うん、必ず伝えるよ
マギルゥ:やれやれ、これも縁なのかもじゃが……どーなっても知らんんぞえ〜
エレノア:もう、茶化さないでください!
ロクロウ:アイゼンがこれでいいって言ってるんだ。これでいいんだろ
ロクロウ:どの道、未来がどうなるかなんてわからんしな
ベルベット:そうね。それでいいのよ
マギルゥ:いいのかえ?
ベルベット:ええ。先がわかったら、つまらないでしょ?
マギルゥ:……それもそうじゃの♪
※枠外タッチで閉じます。
モアナ:やった!あいた!
ライフィセット:よかったね、モアナ
ベルベット:……で、結局中身はなんなの?
エレノア:だから秘密なんですよ
モアナ:これは、お母さんのおリョウリのレシピだよ
モアナ:いつかモアナがひとりでつくれるようにって、かいてくれたの
エレノア:そんな大事なものを……教えてくれるのですか?
モアナ:うん。ほんとうはモアナとお母さんだけのヒミツなんだけど
モアナエレノアたちはモアナをたすけてくれたから、お礼しなきゃって……だから、いいの
モアナ:みんな、どうもありがとう!
エレノア:どういたしまして
モアナ:お母さんが、モアナ用に発明したトクベツなリョウリだからねー!
モアナ:世界でいちばんおいしいよ!
ライフィセット:すごく美味しそう!
モアナ:ベルベットも、これをたべてがんばってね
モアナ:モアナもメディサも、じつはオーエンしてるから
ベルベット:……ええ、負けないわ、あたしは
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:グリモ先生、カノヌシの覚醒について、古文書を解読できたんだよね?
グリモワール:ええ、タイタニアを脱出した直後にね……お役に立てなくて悪かったわね
マギルゥ:なあに、結果オーライじゃよ〜♪
ベルベット:あんたが言うな
マギルゥ:なんじゃ、グリモ姐さんを責める気なのかえ?
ベルベット:別に責めないわよ。ただ、カノヌシの性質は知っておきたい
ライフィセット:解読できたことを教えてください
グリモワール:いいわ。カノヌシの完全覚醒に必要なのは、穢れの量ではなく、八つの「質」だったのよ
グリモワール:曰く──絶望、憎悪、貪婪(どんらん)、傲慢、愛欲、執着、逃避、利己
マギルゥ:それぞれを各喰魔が担当しておったなら、ベルベットは憎悪、モアナは貪婪じゃな
ベルベット:傲慢はメディサ……テレサが愛欲、オルトロスは……執着か
ライフィセット:あとは……グリフォンが逃避で、残るクワブトが利己……かな?
ベルベット:アルトリウスたちは「絶望」も、あたしから奪おうとしてたけど?
グリモワール:そもそも、七体の喰魔で八つの穢れ……という点に矛盾があるのよ
グリモワール:おそらく八つ目の穢れを入手することが、カノヌシ覚醒における最後の難関なのでしょうね……
マギルゥ:なるほど。であればアルトリウスの行動にも得心がいくわい
マギルゥ:すべては、ベルベットの憎悪を育て、絶望に落とすための策だったんじゃな
ライフィセット:ベルベットの弟を利用して……
ベルベット:……けど、だとしたら喰魔集めは無駄じゃなかった。今、やつらは絶望の穢れを入手することはできない
マギルゥ:テレサの代わりに生まれた喰魔が一体おるはずじゃぞ
ベルベット:ええ。けど、テレサを倒した跡、聖寮はあたしの確保にあれだけの戦力を投じた
ベルベット:おそらく新たな喰魔を確保できていないせいよ。いたとしても、そいつは絶望をもっていない
マギルゥ:ふうむ……アルトリウスは、お主の絶望を生むために三年の歳月をかけた
マギルゥ:それがカノヌシの求める質だとすれば、確かに一朝一夕に手に入るものではないの
ベルベット:でしょ。つまり、攻めるなら今ってことよ
グリモワール:そうよね。でも……
ライフィセット:なにかひっかかるの?
グリモワール:ええ……穢れの質という矛盾がね
グリモワール:質を問うということは、それが純粋であるということ
グリモワール:喰魔は純粋な穢れを選び取って喰らうわけよね……?
ライフィセット:……うん
グリモワール:本来不純である穢れに純粋に反応することが喰魔に必要な条件だとすれば
グリモワール:そんな矛盾した資質をもった人間は、そりゃあ、めったにいないわ
ライフィセット:なら、安心なんじゃ……?
グリモワール:でも、似た資質をもった者をあたしは知ってるのよ……
グリモワール:世に溢れる穢れを、純粋に鎮めようとした歴代の筆頭対魔士たちを……
ライフィセット:それってどういう……!?
グリモワール:ただの懸念よ。今は……ね
※枠外タッチで閉じます。
ダイル:おい、ロクロウ。兄貴との勝負は、どうだったんだ?
ロクロウ:シグレは斬った
ロクロウ:だが、號嵐を叩き斬ることはできなかった
ダイル:……號嵐が、クロガネのよりすごい刀だったからか?
ロクロウ:いや、クロガネの太刀はシグレが全力で撃ち込んだ號嵐を受けて、刃こぼれひとつしなかった
ロクロウ:こいつがなかったら、俺は斬られていただろう
ロクロウ:號嵐を斬れなかったのは、俺が未熟なせいかもしれん
ダイル:けど、お前が勝ったんだろ?
ロクロウ:ああ。二刀の業と、クロガネの力を合わせてな
ダイル:なら、お前がもってる限り、その太刀は「征嵐」だ
ダイル:神剣──號ぶ嵐を征する「クロガネ征嵐」だぜ!
ロクロウ:……クロガネは納得すると思うか?
ダイル:バーカ!あの頑固ジジイが納得なんかするかよ!
ダイル:「次は、もっとすげえ刀を打つ!」そう言うに決まってる
ダイル:だからロクロウ、お前もこの程度で満足してんじゃねぇぞ!
ロクロウ:……ああ。俺も、もっと強い奴をぶった斬る
ロクロウ:號嵐を超えるクロガネ征嵐の伝説を、俺がつくりあげてやる
ダイル:おうよ!それが業魔者の心意気ってもんだ!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:なあ、ベルベット。お前が殺すと業魔は人間に戻るのか?
ベルベット:……は?どういうこと?
ロクロウ:海岸で襲ってきた業魔のことだよ。死んだら人間に戻っただろ
ロクロウ:今まで俺が斬った業魔は、死んでも業魔のままだったから、ちょっと気になってな
ベルベット:(業魔は死んでも業魔のまま……?)
ベルベット:(けど、あたしが殺したニコや村の人たちは──)
ロクロウ:業魔の方にアタリハズレがあるのかな?
ベルベット:くだらない。死体がどうなろうが意味なんてないでしょう
ロクロウ:……だな。死んだ後にアタリがでても仕方ない
ベルベット:そう。重要なのは、喰らった業魔があたしの力になること……それだけよ
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:聞いてもいいですか、ライフィセット。ベルベットって、どういう業魔なのですか?
ライフィセット:それは……
エレノア:あ……弱点を探ろうとかじゃなくて、純粋な興味の質問ですよ?
ライフィセット:エレノアを疑ってるんじゃなくて僕もベルベットのこと知らないんだ
マギルゥ:戦ってわかったじゃろう?あやつは、左手で喰らった敵の力を自分の力に変える奇妙無双な業魔じゃよ
マギルゥ:なんでも丸ごと喰らいつくす大食いクイーンじゃ
ロクロウ:まあ、大体あってるな。時々食い残した業魔が人間に戻ったりするが──
エレノア:え!?業魔が人間に戻る?
ロクロウ:そんなに驚くことか?
エレノア:当然です!業魔病になった者は、二度と人間の姿には戻れない。これは常識ですよ
エレノア:……でも、ギデオン司祭の例もある。あの件となにか関係が……
ロクロウ:戻るっていっても死体なんだが……常識だったのか?
アイゼン:……海賊には関係のないことだ
マギルゥ:この非常識なメンツに常識を語るとは、非常識な対魔士じゃの〜
エレノア:……そのようですね
ライフィセット:エレノア、なんかごめん……
エレノア:いえ、ライフィセットのせいじゃないですよ
エレノア:(けど、ベルベットの正体は探る必要がありますね)
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:「穢れ」を喰らう「喰魔」……それがベルベットの正体か
アイゼン:溢れた穢れが、人を業魔に変える
アイゼン:強い穢れは、発した人間が死んだ後も残り、死体や魂を業魔化して暴れ続ける
アイゼン:それが、アンデッド系やファントム系の業魔だ
ロクロウ:穢れを喰らったから、あいつが殺した業魔は人間の姿に戻ったんだな
ライフィセット:おかげでアンデッドとかにならずにすんだってことだよね
マギルゥ:とはいえ、死体として救われてもの〜
ライフィセット:……穢れだけを喰らって、業魔を人間に戻せないのかな?
アイゼン:無理だな。穢れには、相乗効果で強まる性質がある。喰魔が地脈点を通してカノヌシと繋がれば
アイゼン:周辺地域の小さな穢れを吸い込んで、業魔の発生を抑えることができるようだ
アイゼン:だが、一度業魔化するほど膨れ上がった穢れは、人間の心のままに際限なくあふれ出す
ベルベット:そう。発生源を断たなきゃ、喰いはがせない
ベルベット:それがわたしの力よ
ライフィセット:……ごめん
ベルベット:別にいいわ。あたしにとっても、この方が都合がいい
ベルベット:アルトリウスへの憎しみを忘れずにいられるから
マギルゥ:地脈点から離れた以上、喰らった穢れもお主の力になるんじゃろうしなー
ベルベット:ええ、憎しみって名の力にね
ライフィセット:…………
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:どこまでも聖隷を利用する気か……
ベルベット:アイゼン、余計なこと考えてないでしょうね
アイゼン:何が余計だ?
ベルベット:壊れた聖隷に引導を渡してやろうって考えが、よ
アイゼン:……余計かどうか、やるかどうかは自分で決める
ベルベット:アイゼン!
ライフィセット:対魔士たちは、その聖隷を使って新しい聖隷術のデータをとるって言ってたよ
ライフィセット:術が完成したら、きっと僕たちの不利になる
ライフィセット:それを阻止するのは、余計なことじゃないよね?
ベルベット:……あんた、あたしの扱いが上手くなったわね
ライフィセット:事実を言っただけだよ
ベルベット:助けにいくわけじゃないわよ
アイゼン:……ああ、元よりそのつもりだ
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:やれやれ、巨大牛でもつくる気じゃったのかの?聖寮も大概じゃわー
アイゼン:……どうやら外見まで改造されていたようだな
エレノア:すみません……なんてひどいことを……
アイゼン:非情な実験が許せんわけじゃない。自ら望んだなら、それもひとつの選択だ
アイゼン:だが、こいつは自分の意思を封じられ、物として使い捨てられた
アイゼン:俺は、それが許せない。そして、聖寮は無数の聖隷に同じことをしていやがる
ベルベット:火が入ったようね。来た甲斐があったわ
アイゼン:火なら、ずっと燃えているさ
アイゼン:自分の流儀を貫くと決めた時からな
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:柄にもなく他人の昔話をしちゃったわ。悪かったわね、マギルゥ……
マギルゥ:マギラニカの話じゃよ。どーでもいいわい
グリモワール:……この機会に、ひとつ訊いてもいいかしら?
グリモワール:あなたの心が壊れたのは、メルキオルの術に屈した時じゃなくて
グリモワール:メルキオルに捨てられたと気づいた時なんじゃないの……?
マギルゥ:……どーじゃったかのう……
マギルゥ:もう忘れたわい、マギラニカの想いは
マギルゥ:今の儂は、災禍の顕主に与する悪の大魔法使いマギルゥじゃからのー!
ビエンフー:うう、姐さん!ボクも一生ついていくでフよー!
マギルゥ:お〜っと、ビエンフー。お主、よくも儂の過去をペラペラしゃべってくれたのう
ビエンフー:ビエッ!?なぜボクだけ……?
マギルゥ:問答無用じゃー♥
ビエンフー:ビエーン!やっぱりマギルゥ姐さんはこーゆー人なんでフね〜!
グリモワール:ふふ……あんたは見つけたのね。あんたの心の居場所を……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:なに……あれ?
シアリーズ:あれは特殊な霊力の塊──ある聖隷一族の「タマシイ」のようなものです
シアリーズ:三年前の「降臨の日」以来、世界中に出現しました
ベルベット:降臨の日……これも、あの夜の余波なのか……?
シアリーズ:集めておけば、その聖隷一族の協力を得られるかもしれません
ベルベット:信じろって?
シアリーズ:強制するつもりはありません。どうするかはあなたが決めてください
ベルベット:……とりあえず拾っておくわ。使えるものは、なんでも利用する
シアリーズ:はい。そうでなければ、あの方は殺せないでしょう
ベルベット:…………
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ここがねこにんの里!
アイゼン:こんな場所にあったとは……新発見だ
ベルベット:…………っ
マギルゥ:なんともまったりした里じゃのー。やる気というものが飛び去りそうじゃわ
エレノア:ねこにんもたくさんいますね
ベルベット:……くしゅっ
ロクロウ:長閑だなぁ。なんだか宴会でもしたい気分だ
アイゼン:む……向こうに見えるのは、噂のニャバクラか?
ベルベット:くしゅんっ!
ベルベット:はくしゅっ!
ライフィセット:ベルベット、もしかして……
エレノア:ネコアレルギーだったんですか?
ベルベット:だから来たくなかったのよ……
ライフィセット:大丈夫、ベルベット?
ベルベット:大丈夫じゃ……
ベルベット:なくしゅ!!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:アイゼンに頼まれたんだけど、探索船ってなんなの?
ベンウィック:異海を探索する船のことさ
ベンウィック俺たちが住むミッドガンド王国の外には「異海」って呼ばれる広大な外洋が広がっているんだよ
ベルベット:そこを探ろうってわけ?なんのために?
ベンウィック:もちろん、世界地図をつくるためさ!
ライフィセット:世界地図!
アイゼン:そうだ。全世界を網羅した地図の完成は、俺たちアイフリード海賊団の野望のひとつ
アイゼン:そのために、バンエルティア号も一度、異大陸まで航海をした
ライフィセット:異大陸まで……
ロクロウ:ほほう、夢のある話だなぁ
ベルベット:さっぱりわかんない
マギルゥ:略して「さぱらん」じゃな。知らん場所の地図なんかあっても、しょーがないわい
ベンウィック:けど、広大な異海の探索には強い運が必要でね。あんたたちの運を利用させてもらいたいんだ
ベルベット:運を利用って……どうやって?
アイゼン:お前の直感で探索船に指示をだしてくれ
アイゼン:見返りに、バンエルティア号は足として協力する。探索で得た物資も、お前の自由にしていい
アイゼン:指示は「シルフモドキ」という伝書鳥を使って、どこからでも出せる
ベンウィック:すごい財宝が見つかるかもしれないぜ!
ベンウィック:それに珍しい食材や、未知のレシピとか!
ベルベット:財宝に食材にレシピか……
ロクロウ:悪い話じゃないな。対して手間もかからんし、なにより面白そうだ
ベルベット:そうね。運の責任をとらなくていいなら、手を貸してもいい
ベンウィック:じゃあ、説明するからやってみてくれ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:地図、ちょっと埋まってきた
アイゼン:まだまだだ。世界は広いぞ
ライフィセット:うん、まだまだだね
ロクロウ:それにしても、海にも色々あるんだな。異海とはよく言ったもんだ
ベルベット:本当……季節や風や場所によって海は全然違うのね……
アイゼン:その通り。お前も海に興味が出てきたようだな
ロクロウ:さぱらんは取り消しか?
ベルベット:そんなんじゃない
ベルベット:昔聞いた話を思い出しただけよ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:異海探索、順調だね
アイゼン:ああ。お前たちの協力のおかげだ
ライフィセット:そんなことないよ
マギルゥ:いやいや、油断は禁物じゃ。海は、神秘理不尽奇奇怪怪
マギルゥ:探索船とて、いつどうなるかわからんぞ
アイゼン:危険は覚悟の上だ。それでも神秘に挑むのがアイフリード海賊団だ
ライフィセット:神秘……この先にどんなものが見つかるかな……
アイゼン:目的のひとつは「恐怖の島」の発見だ
アイゼン:古い伝説に登場する謎の島でな。船のように異海を移動するといわれている
ライフィセット:そんな島があるんだ
アイゼン:本当にあるかどうかはわからん。だから探すんだ
ライフィセット:うん、頑張って探そう!
マギルゥ:……落ち着け、坊よ
マギルゥ:言い方は格好いいが、ほぼほぼ火傷覚悟の博打ということじゃぞ?
ライフィセット:いいんだよ。それでも神秘に挑むのがアイフリード海賊団なんだ
マギルゥ:むむ……坊もだいぶ毒されてきたのう……
アイゼン:ふっ、そのようだ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ふふ、地図、いっぱいになってきた
エレノア:嬉しそうですね、ライフィセット
ベルベット:今、すごくニヤニヤしてたわよ
ライフィセット:し、仕方ないよ
ライフィセット:ベルベットだって、つい笑っちゃう時あるでしょ!?
ベルベット:あたし……?
ベルベット:……そうね。台所を食器までカンペキにピカピカにした時とか?
エレノア:わかります!!お風呂を隅々まできれいにできた時もですよね
ベルベット:そうそう。あと、すごくいい天気の日に、大量の洗濯物を干し終わった時も──
ライフィセット:掃除や洗濯と一緒にしないでほしい……
アイゼン:探索船から連絡が入った。「恐怖の島」が見つかったらしい
エレノア:恐怖の……?なんなんですか、それは?
ライフィセット:前にアイゼンが言ってた動く島だね
アイゼン:そう、太古から異海を彷徨い続けていると伝わる奇島中の奇島だ
アイゼン:森羅万象、あらゆる力を吸い取る場所ともいわれている
ベルベット:その力……カノヌシとなにか関係が!?
アイゼン:これ以上は行ってみなければわからん
アイゼン:まずは、イズルトの船着き場いにる仲間と合流するぞ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:やった!世界地図、完成した!
ベルベット:なかなか苦労したわね
アイゼン:よし、とりあえずの目標は達成したな
ベルベット:は!?とりあえず……ってなに?
アイゼン:確かに俺たちは、ミッドガンド王国の周囲の異海を調べ上げた
アイゼン:だが、異大陸を超えた先には、別の海が広がっているかもしれん
アイゼン:いや、調べた異海の底にも、まだまだ知らないものが眠っている可能性がある
ライフィセット:……そうか。探索に終わりはないんだね
ロクロウ:ははは、聖隷のクセに貪欲だなあ
ベルベット:やっぱり、さっぱりわからないわ
エレノア:聖隷は、数千年の寿命をもっている。いつかきっと、完璧な世界地図がつくれますよ
マギルゥ:ドラゴンにならなければのー
アイゼン:……なってもいいのさ
アイゼン:夢を叶えることが目的じゃない。本当に大切なのは──
ライフィセット:仲間と夢を追うこと、だよね
マギルゥ:こらこら!今のはアイゼンの決めゼリフじゃろうにー
ライフィセット:ぁ……ごめん……
アイゼン:ライフィセット。お前たちとこの地図をつくれて、楽しかったぜ
ライフィセット:うん。僕も!
アイゼン:……どこまで行けるかは、わからん
アイゼン:だが、わからないからこそ行くんだ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:そういや、さっきの武器屋のオヤジが心水もわけてくれたんだった
ベルベット:これから業魔と戦うのに、呑んで平気なの?
ロクロウ:一杯ひっかけりゃ、身体が温まるぜ
ベルベット:寒さも感じないのに?
ロクロウ:そうだったな
ロクロウ:ま、俺も今は呑まん。使うだけだ
ベルベット:お清めでもするつもり?
ロクロウ:そういう使い方もあるが、もっと実用的な話でな
ロクロウ:刀身と柄をとめてる目釘が緩まないように、戦いの前には湿らせてやるんだ
ベルベット:斬ることしか考えてないのね
ロクロウ:そういう業魔なのさ
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ビエンフー、ちょっと相談があるんだけど、いいかな?
ビエンフー:そろそろそんなこと言ってくる頃だと思ったでフよ
ビエンフー:ボクは、醜いもつらいも苦いもしょっぱいも味わった聖隷の先輩でフ!なんでも聞くでフよ!
ライフィセット:ありがとう……この前、ビエンフーが読んでた本、よかったら貸してもらえないかな
ビエンフー:「好みの人間女子を口説いて器にする方法」と「かわいこちゃんと好き好きスキンシップ」でフか?
ライフィセット:ちょっと、声が大きいよ……
ビエンフー:キミはエレノア様と器の契約を結んだんでフから、そんな本、必要ないでフよ?
ライフィセット:だけど、二人でいると会話が弾まないっていうか質問と答えがかみ合わないっていうか……
ビエンフー:はーはーはー……契約したての聖隷と器にはよくあるトラブルでフね。ボクも経験あるでフ
ビエンフー:そういうことなら、もっといい本があるでフよ
ライフィセット:わぁ、たくさん読んでるんだね
ビエンフー:ボクは勉強家でフからね。たとえば……これはどうでフ?
ビエンフー:「露天風呂トーク術〜身も心もマッパッパ!〜」腹を割って話すのが一番でフ〜〜!
ライフィセット:い、一緒にお風呂なんて入れないよ。もっと、違うのはないの?
ビエンフー:……じゃあ、これ、「風呂上り野球拳〜タオルも心の壁もホームラン〜」
ライフィセット:どうして、すぐに脱がそうとするの!よけいに話しにくくなっちゃうじゃないか
ビエンフー:わがままなライフィセットでフね……じゃあ、ボクの蔵書から好きなのを選ぶでフよ
ライフィセット:「ココロハッキング」「おしえてポックリさん」「日記盗み読み日記」……「拳で語れ!」……
ビエンフー:どれも名著でフねぇ……マギルゥ姐さんとの関係に苦しんだあの日々……涙がこぼれるでフ……
ライフィセット:この本のせいで苦しんだんじゃないのかな……
ビエンフー:「エアリーディング〜空気を読む会話術〜」!これがいいでフよ。必読でフ!!
エレノア:二人で読書ですか?
ビエンフー:そうなんでフよ〜〜
ビエンフー:ライフィセットがエレノア様との距離感がつかめず悩んでいると相談されたんでフよ〜〜
ビエンフー:話は聞いておいたでフから、あっちでお茶でもしながら二人で対応策を相談するでフよ〜〜さあさあ!
エレノア:あ、はい……
ライフィセット:「空気を読む会話術」……この本も、ダメっぽいな……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:むぅぅ……ライフィセット、おでんをつくったんだが、ちょっと味見をしてくれないか
ライフィセット:いいよ、おいしそう。いただきます
ライフィセット:……うぅん……
ロクロウ:どうだ?
ライフィセット:モチ巾着……すごく硬いね
ロクロウ:ああ、硬いだろ?
ライフィセット:というか……大根も、ちくわぶも、牛すじも、タコも全部硬かったけど……ロクロウの好みなの?
ロクロウ:まさか……おでんなんて、ホロホロでなんぼだろ?失敗したんだよ、失敗……!
ロクロウ:おでんなんて、だし汁に具を入れて煮込めば誰だって作れるものだろう?
ロクロウ:かなり煮込んだのに、みんな硬い!モチなんて、柔らかくなるそぶりもない
ライフィセット:なにがいけなかったんだろう……?
ベルベット:こんにゃくの成分は、お肉や大根を硬くしたり、モチを溶けにくくしたりするのよ
ベルベット:こんにゃくは別に軽く湯通ししておいて、最後に、おでん鍋に入れて煮込むものよ
ロクロウ:ほう、そんな組み合わせの妙があったんだな。じゃあ、このゴボウが緑色に変色したのもか?
ベルベット:ええ、同じ成分の仕業よ。インゲン豆と煮ると、茹で汁が赤くなることもあるわ
ロクロウ:へえ……山盛りのおでんの具を見てると嬉しくなって、つい、一緒に入れたくなっちまうんだよなぁ
ライフィセット:……気持ちはわかるよ
ライフィセット:僕もこの前、バッタとカマキリを捕まえて、うれしくなって一緒にカバンにいれちゃったんだ
ベルベット:……バッタ、いなくなってたでしょ?
ライフィセット:……うん
ロクロウ:覚えておけ、ライフィセット。そういう過ちを繰り返して、大人になっていくんだ
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ううむ……
ロクロウ:ん?アイゼンが料理が苦手だっていう印象はなかったんだがな。なにがあった?
アイゼン:…………
マギルゥ:死神の呪いじゃよ
ロクロウ:死神……?まさか料理にも呪いは有効なのか?
アイゼン:ああ……フライパンを振ってひっくり返したはずの肉が空中でもとに戻って、焼けた面で着地しやがる……
ロクロウ:てことは、他の料理もひっくり返すのはダメなのか?パンケーキは?
アイゼン:こげ茶と黄色が裏と表で、美しいコントラストを描く
ロクロウ:オムレツもダメか?
アイゼン:カニ玉もな
ロクロウ:目玉焼きの両面焼きも……ダメだよな
アイゼン:……ピザパンもだ
ロクロウ:えっ、あれはひっくり返さないだろ?
アイゼン:うっかり手を滑らせると、必ずケチャップの面が床に落ちる
ロクロウ:なんか……すまんかった
マギルゥ:なんとも義理堅い呪いじゃのー
ベルベット:フライ返しを使いなさいよ
アイゼン:それだけは断る
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:……うむ。裏表均等に程よい焼き目もついた。ジューシーで香ばしい……これぞ、ハンバーグだ
アイゼン:……長い戦いだった
ロクロウ:だからベルベットが言ってただろ、フライ返しを使えって
アイゼン:戦う前から白旗を上げるようなことはしない。それに、俺は道具に頼らず、この手で道を拓いてきた
ロクロウ:とかいって、クロガネに特注したんだってな。フライ返しを
アイゼン:やるからには、とことんこだわりぬく。それが俺の流儀だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:エレノア、具合でも悪いのか?
エレノア:えっ……突然、なにを……?
ロクロウ:いつも、メシを美味そうに食ってるのに、さっきはなんだか辛そうな感じだったからな
エレノア:そうですか?いつもと変わりありませんよ。むしろ、元気があり余ってるくらいです!
ロクロウ:そうか……だとすると、キッシュが嫌いなのか?
エレノア:いえ、好きですよ。ベルベットは上手に作りますよね。味がわからないというのに、大したものです
ロクロウ:じゃあ、アレか、ホウレン草が嫌いなのか!
エレノア:……苦手です
マギルゥ:聖寮の対魔士ともあろうものが、好き嫌いとは感心せんの〜〜
ロクロウ:ニンジン嫌いとか、ピーマン嫌いってのはよく聞くが、ホウレン草ってのは珍しくないか?
エレノア:そうですか?けっこう苦みがありますし、青臭いというか、薬っぽいというか……
ロクロウ:そっち系か。サレトーマの時も、そんなこと言ってたよな
エレノア:むしろ、サレトーマがいけないのです!!
エレノア:昔は、ホウレン草も大好きだったのに、あれがトラウマになってしまって……
マギルゥ:儂もサレトーマを味わったが、むしろあれのおかげでホウレン草に甘味すら感じるぞよ?
アイゼン:ほう……大人の女かと思っていtが、まだまだ子どもだな、エレノアも
アイゼン:だが気にすることはない。好き嫌いも流儀のうちだ。お前の箸は、お前が取れ
エレノア:アイゼンまで……ホウレン草が苦手だというだけで、そこまで言いますか!
エレノア:ホウレンソウが苦手なのは、あなたたちも同じでしょう!!
エレノア:報告、連絡、相談!
エレノア:集団行動の基本かつ、最も大切なホウレンソウがぜんぜんできてないのが、あなたたちでしょう
マギルゥ:ホウレン草嫌いなお子ちゃまではあるまいし、いちいち言わんでも、迷子にはなりゃせんよ
マギルゥ:いや、たとえ迷子になったとしても、それは自由の証。そう、儂はいつだってフリーダムでありたいのじゃ
ロクロウ:そういうのは向き不向きがあるだろ?お前に任せるから、俺を仕切って動かしてくれよ
ロクロウ:それでいいよな、アイゼン
アイゼン:馬鹿を言うな!アイフリード海賊団に入って最初に叩き込まれるのが、報・連・相だ
アイゼン:それでも、若い連中はうっかり忘れやがるから、昨日の晩、説教したばかりだぞ
アイゼン:これに関しては、エレノアが正しい
エレノア:先日お願いした調査の件はどうなっていますか?久しくなんの連絡も報告も相談もありませんけど
アイゼン:あ、それは、後で伝えようと思っていた
エレノア:笑止千万!!
エレノア:三人とも、そこに正座してください……
エレノア:聞こえませんでしたか?全・員・正・座!!
エレノア:なにがフリーダムですか!なにが不向きですか!後で伝えようと思っていた、なんて子どもですか!
エレノア:私たちは、聖寮という巨大な組織を相手に回して、かなり無茶な戦いを挑んでいるんですよ
エレノア:そういう小さな油断が、大きな災いとなることを知らないあなたたちではありませんよね?
マギルゥ:トホホ……ホウレン草ひとつで、正座とは……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:なるほど、これは便利ね
ライフィセット:うん!すごいし、楽しい!
エレノア:ちょっとクセになっちゃいますね
ビエンフー:うう……なんか同じ距離を全力疾走したくらいグッタリするでフ……
ロクロウ:ううむ、どうやら俺たちが楽する分、ビエンフーが力を吸い取られるみたいだな
アイゼン:だとしても、このボードは戦略的に使える。多少の疲労は覚悟してもらうぞ、ブレイブ
ベルベット:そうね。気合い入れなさい。ブレイブ
マギルゥ:お主ならできるぞよ、ブレイブ〜♪
ビエンフー:もおお〜!ブレイブっていうな〜〜!!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:地相樹、結構見つけたよね
ビエンフー:おかげでボクの疲労はピークでフよ……
ライフィセット:ごめんね、ビエンフー
ビエンフー:けど、疲労と回復を繰り返したおかげで、やけに筋肉がついてきたでフ!
ライフィセット:うわっ!ぱっと見わからないけど、触るとすっごいムキムキ!
ビエンフー:フフフ……今のボクならアイゼンやロクロウ程度なら一撃で沈められる気がするでフよ……
ライフィセット:す、すごいね……
エレノア:ビエンフー、レアボードの件ではあなたに負担をかけてしまって、すみません
エレノア:けど、おかげでみんな助かっていますよ
ビエンフー:おお、エレノア様!もったいないお言葉でフ〜!
ビエンフー:やっぱりマギルゥ姐さんとは大違いでフね〜♥
エレノア:疲労は大丈夫ですか?
ビエンフー:それが……うう……ほぼほぼ限界なんでフ……
ビエンフー:この疲れは、エレノア様にマッサージされない限り回復しそうもないでフ……
エレノア:マッサージですね。お安い御用です!
ビエンフー:(まさかこんなラッキーが訪れるとはー!!レアボードに大感謝でフ〜♥)
エレノア:ツボを押すのは得意なんです♪槍の石突きでゴリゴリーっとすれば、疲労なんて一発でとれますよ
エレノア:……ですから、少々痛いのは我慢してくださいね
ビエンフー:ビエ!?やっぱり結構でフ〜!
ビエンフー:ビエ〜〜ン!ほんとにゴリゴリでフ〜!
ビエンフー:楽になるけど、痛あああ〜〜〜!!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:よし。これで全部の地相樹を見つけたようね
ビエンフー:はいはい、つまりレアボードでどこでも駆け巡れるわけでフねー
ビエンフー:ボクも、もはや疲労が何周かして元のプニプニの体に戻ってしまったフしー
ベルベット:世話をかけるわね。あんたのおかげで助かってるわ、ビエンフー
ビエンフー:ビエ!?
ビエンフー:……どうやら疲労がピークを越えたようでフ。ベルベットにお礼を言われた幻聴が聞こえるなんて……
ライフィセット:幻聴じゃないよ、ビエンフー
エレノア:みんな、あなたに感謝していますよ。ありがとう、ビエンフー
アイゼン:お前の根性は、なかなかのものだ
ロクロウ:応!いつもありがとな、ビエンフー!
ビエンフー:……ボクは……セコイ臆病ノルミンで……
ビエンフー:ずっとブレイブって名前が大嫌いだったんでフ……
ビエンフー:そんなボクが、こんな恐ろしい人たちに認められる日がくるなんて……
マギルゥ:胸を張れい、ビエンフー!災禍の顕主と旅をできるノルミンが他におるか!
ビエンフー:いないでフ!そんな勇気をもったノルミン族は!
ビエンフー:ノルミン・ブレイブ──ボクだけでフ!!
マギルゥ:うむ!それでこそ我が相棒じゃ!
マギルゥ:……もっとも、すでにお主は災禍の顕主一味として全世界に特級指名手配されとる
マギルゥ:覚悟を決めるしかないんじゃがの〜♪
ベルベット:それは謝らないから
ビエンフー:ビエ〜〜〜ン!やっぱりソーバッドでフ〜〜!
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:血翅蝶……さすがにしたたかね
アイゼン:業魔を巡る思惑は、一筋縄ではいかんということだ
ロクロウ:けど、これで甲種を狩ってもただ働きにならないで済むぞ
ロクロウ:強い敵を斬って金までもらえるなんて、最高だな!
ベルベット:甲種警戒業魔は、聖寮が戦いを避けるほどの相手。舐めてかかると殺されるのはこっちよ
アイゼン:本気で奴らを狩るなら、各地の血翅蝶から情報を得て、準備を整えてかかるべきだ
ロクロウ:応!装備の強化も忘れずに、だな
ベルベット:そういうことね
※枠外タッチで閉じます。
クロガネ:はあ……これじゃあ仕事にならん
ライフィセット:クロガネ、どうかしたの?
クロガネ:うむ、それがな……
ダイル:お〜い、モアナ見なかったか?
ライフィセット:モアナ?見てないけど……
クロガネ:……俺も、見てはいない
ダイル:くそう、かくれんぼのオニをやらされてるんだが、モアナのやつ、意外に手強いぜ
ダイル:一体どこに隠れやがったんだ、モアナ〜!
モアナ:あははは!うまくいったー!
ライフィセット:うわっ!クロガネの中からモアナが!?
ライフィセット:そんなとこにいたの?
モアナうん。ちゃんとクロガネに、中にかくれてもいいってきいたよ
クロガネ:断ったら泣くと脅されたからな……
ライフィセット:でも「見てない」ってかばってあげたんだね
モアナ:ありがとう!クロガネって、やさしいね
クロガネ:……見てないのは事実だ。顔がないからな
ライフィセット:あはは!たしかに嘘じゃないね
モアナ:ライフィセット、クロガネの中っていがいに広くておちつくんだよ
モアナ:モアナのヒミツ基地にしようと思うんだー!
ライフィセット:ええっと、それはさすがに……
クロガネ:……勘弁してくれ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:おお!「岩転がって、足場固まる」だな
ベルベット:なに?その変なコトワザ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:今のは……?
アイゼン:聖隷術を使った仕掛けのようだ。おそらく、ここの警備に関わるものだろう
ベルベット:……そう考えるのが自然ね
アイゼン:他にも仕掛けがないか、辺りを探してみよう
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:どう、アイゼン?
アイゼン:……うむ。今ので「なにか」が変化したようだ
マギルゥ:取り返しがつかんものでないといいがのー。せいぜい幸運を祈るんじゃな
ベルベット:祈らないわよ。あたしは神の神殿を荒らしにきてるんだから
マギルゥ:ほほう……感心感心
マギルゥ:自分がなにをしているか、ちゃんとわかっておるようじゃな♪
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:燭台?なんでこんなところに……
ライフィセット:……もしかすると、昔、王様のお墓とかで使われた「盗掘避け」かもしれない
ライフィセット:本で読んだんだ。たしか、熱に反応する鉱石を利用した仕掛けだったよ
ベルベット:熱に反応するのね。つまり……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:これは……聖寮が新しく開発した「二重結界」です
ベルベット:なるほど。連動する二つの結界か
ロクロウ:一般人の立ち入りを禁止するあめにしては、ずいぶん念入りだな
エレノア:……確かに……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:……開かない。仕掛け扉か
マギルゥ:イラついて壊すでないぞ。どんな罠が作動するかわからんからの
ベルベット:わかってるわよ
ベルベット:……この扉の「ひし形の石」前にもどこかで見たような……?
ロクロウ:それと同じ石なら、杯の台座についてたぞ
マギルゥ:あのでっかい杯のかえ?さすがめざといのー
ロクロウ:興味があるのは、杯の中身の方だがな
ベルベット:あの杯が鍵ってことか……?
アイゼン:そう単純でもなさそうだがな
アイゼン:色がついている石と、そうでないのがある。なにか意味がありそうだ
ベルベット:……そのようね
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:どう?美味しいかな?
アイゼン:……安定したいい味だ。上達したな、ライフィセット
ライフィセット:よかった。ありがとう
ベルベット:下ごしらえも分量も、きっちりレシピ通り。あんたらしい料理ね
ベルベット:多分、お菓子づくりとか向いてるわよ
ライフィセット:お菓子もつくってみたいな
ベルベット:簡単なのでよければ、今度教えてあげるわ
ライフィセット:うん!
ライフィセット:それから、料理の素材も自分でつくってみたい
ベルベット:素材は買ってくればいいでしょ。お店で売ってるんだし
ライフィセット:そうだけど、でも……
アイゼン:わkる……わかるぞライフィセット!オリジナルのカレー粉調合から始まり
アイゼン:手打ちソバ、天然酵母のパン、自家製バターときて、自家製味噌や地心水をつきつめた結果
アイゼン:米や大豆の栽培、家畜の飼育を始めることになる。かつて俺も通った道だ
ライフィセット:アイゼンも!?
アイゼン:今は、とある島に秘密の塩田を開拓し、こだわりの天然塩をつくるに至っている
ライフィセット:さすが!
ベルベット:どこまでやる気なのよ……
アイゼン:どこまでも、だ
アイゼン:ライフィセット。厳しい道だが、本気なら素材の作り方を伝授してやろう
ライフィセット:うん!お願いします!
ベルベット:……ま、そうしたいなら好きなだけこだわればいいわ
ベルベット:食べることは、生きることなんだから
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ランゲツ流の包丁技も、かなり極めたな。どうだ、俺の料理のキレ味は?
エレノア:お味は、すっきりして美味しいですけど……
エレノア:どの料理も具材が超みじん切りで、食感が同じですね
ロクロウ:そんなことはない。野菜炒めは「超みじん切り」、野菜ジュースは「超〜〜みじん切り」と使いわけてるぞ
エレノア:切り刻んでジュースにしてたんですか!?
ライフィセット:お刺身も、ほぼ透明なくらい薄造りでおハシでつまもうとすると破れちゃうよ
ロクロウ:驚くのは早い。刺身にした魚はまだ斬られたことに気付かず、骨だけで泳いでるぞ
ライフィセット:息づきりすぎるよ!?
マギルゥ:パスタも、カミの毛よりこまい超細麺でアルデンテにする余地がない……
マギルゥ:というか、ソバ切りの要領でパスタをつくるでないわ!
ロクロウ:それはできん。カドがピンと立たなければランゲツ流のパスタじゃない
マギルゥ:こやつとわかりあおうとした儂がバカじゃったか……
ライフィセット:けど、タコ焼きを輪切りにするのはやりすぎだと思うけど……
ロクロウ:それは……
ロクロウ:すまん。勢いで斬っただけだ。タコ焼きは、丸くなくちゃ旨くないよな!
ライフィセット:だよね!
エレノア:ふふ、わかりあえるところもありますよ
マギルゥ:それも良し悪しじゃがのー
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:マギルゥ料理ができたぞよ。惜しみなくお食べ
ライフィセット:マギルゥの料理って、すごく丁寧な感じがする
エレノア:ええ、繊細で上品なお味ですよね
ベルベット:意外よね。毒々しい毒しかつくりそうにないのに
マギルゥ「一芸に秀でる者は多芸に通ず」と言うじゃろ。儂ぐらいの魔女になれば、料理なぞお手のものじゃ
ライフィセット:魔女の仕事と料理に、同じとこがあるの?
マギルゥ:大ありじゃよ〜
マギルゥ:例えば、一番だしの取り方は、魔女の秘薬「ノロイカケール」の下ごしらえと同じじゃし
ライフィセット:へえ!
ベルベット:ノロイカケール……
マギルゥ:夢のホレ薬「ラブリ〜ン」の下ごしらえは、大抵の煮物のコツに通じておる
ライフィセット:そうなんだ
エレノア:ホレ薬……
マギルゥ:坊よ、覚えておけ
マギルゥ:食す人を想ってつくる──魔女の仕事も料理も、大切なことは同じなんじゃよ
ライフィセット:……気持ちが大事なんだね。わかる気がするよ
エレノア:わかっちゃダメです!
ベルベット:フィー。マギルゥの料理は、毒味をしてからじゃなきゃ食べちゃダメよ
ライフィセット:え、なんで!?毒味って言われても、どうすれば……?
ベルベット:とりあえず……ビエンフーに食べさせなさい
エレノア:それが得策ですね
ライフィセット:え、ええ〜〜〜??
マギルゥ:くくく……坊も、シャレの通じん小姑が多くて大変じゃの〜
マギルゥ:美味しい料理のコツは、ちょっとして「遊び心」じゃというに♪
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:お味は、どうでしょう?
ロクロウ:応、旨いぞ!
ベルベット:……あんた、なに食べても旨いって言ってない?
ロクロウ:そんなことはない。ちゃんと味わってるぞ
ロクロウ:エレノアの料理は、アレだ。前より余裕のある味わいになったな
ベルベット:は?味の余裕ってなによ
ロクロウ:懐が深いという感じだな。それでいてブレてないエレノアの味だ
ベルベット:わかるような、わからないような……
エレノア:以前の私は、レシピの手順を正確になぞることを目的にしているところがありました
エレノア:けど今は、なるべく感覚でつくるようにしてるんです。調味料も自分量で、味見で調えて
エレノア:時々失敗することもあるけど、その方が面白くて
ベルベット:へぇ……見直したわ
ロクロウ:それが余裕ってやつだ。な、俺の言った通りだろ!
エレノア:ロクロウ、食べながら話さないでください。ボロボロこぼれましたよ
ロクロウ:ははは、すまん。つい、な
エレノア:あ〜もう!口の周りもべたべただし。大人なんですから、しっかりしてください
ロクロウ:か、重ね重ね、すまん……
エレノア:それと前から言おうと思ってたのですが、あなたのお箸の持ち方、変ですよね?
ロクロウ:気付いたか!ガキの頃にシグレに対抗して編み出したオリジナルなんだ
ロクロウ:いいだろう♪
エレノア:全然よくありません!
エレノア:食事マナーの乱れは心の乱れ。正しくもってください
ロクロウ:業魔に心の乱れとか言われてもだなあ
エレノア:正しくもってください!
ロクロウ:お、応……承知した
ロクロウ:ある意味ランゲツ流の型稽古より厳しいな……
ベルベット:ふふ……エレノアの基本はブレてないわね
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:料理できたぞ。食え
ロクロウ:アイゼン、お前の料理ってなんか味が深いよな
マギルゥ:じゃなー。なんともいえんコクがある。それでいてしつこくない
ロクロウ:そうそう。クセになる大人の味だ
アイゼン:ふっ当然だ。俺のこだわりのアレやコレが入っているからな
ロクロウ:アレやコレや……?
マギルゥ:その言い方、気になりすぎるんじゃが……
アイゼン:本来は門外不出の秘伝だが、特別に教えてやろう
アイゼン:隠し味のひとつは「海賊キノコ」だ
アイゼン:通好みのコク深いマッタリした風味──「コッタリ」した出汁がとれる
ロクロウ:一口でポックリ逝くほどの毒をもった「山賊キノコ」ってあったよな……
マギルゥ:たしか海賊キノコは、そやつとほぼ見分けがつかん珍食材じゃ
アイゼン:そして、ふたつめは「死神フグ」だ
マギルゥ:それも一匹で象十頭を殺せる危険度MAXのフグじゃろ!?
ロクロウ:食べられるようにおろせる料理人は世界に五人もいないときいたぞ
アイゼン:だが、旨味は至高。天にも昇るシビれる味わいだ
ロクロウ:それ、別の意味でだろう?
マギルゥ:まさか、お主がさばいてるんじゃ……?
アイゼン:もちろん俺だ。自分の包丁は自分でとる
アイゼン:素材の入手から仕上げまで責任をもつのが、俺の流儀だ
ロクロウ:なんか目眩がしてきた……
マギルゥ:わ、儂もじゃ……恐るべし死神料理──味以上に闇が深いわ……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:さて、刃をもうひと研ぎして、仕上げておくか
ベルベット:…………
ロクロウ:ブレードの手入れはしてるのか?なんなら一緒に研いでやるぞ?
ベルベット:いい……
ベルベット:命綱を気安く他人に預けるなと教わったから
ロクロウ:応、なかなかいい師匠に巡り会ったんだな
ベルベット:…………
ロクロウ:俺が研ぐ必要はないが、手入れはこまめにしておけよ
ロクロウ:教えるまでもないだろうが、研いだ後はクローブ油を塗って、羊毛で拭くようにな
ベルベット:……それも、教わったわ
ベルベット:(弟を殺した、あの男に……)
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……ふぅ……
アイゼン:どこか具合でも悪いのか?
ライフィセット:羅針盤が落ちてきて、タンコブができた……
ロクロウ:どれどれ……おお、けっこう腫れてるな。こいつは痛いだろう
ライフィセット:うん……でも、僕は生きてる……
アイゼン:痛みも生きている証だと言いたいのか?
ライフィセット:ベルベットが、教えてくれた……
ベルベット:…………
ロクロウ:よし、じゃあ俺がそのタンコブを押してやる
ライフィセット:えっ……えっ……
ロクロウ:ははは、冗談だって
ベルベット:馬鹿やってないで、急ぐわよ
ベルベット:ここを陥落して、船に戻ったら、砂糖をもらってコブに塗りなさい。腫れがひくわ
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:アイゼン、なかなかいいケンカっぷりだな
アイゼン:お前のキレっぷりほどじゃない
ロクロウ:お仲間には剣で使う奴も多そうだったが、あんたは剣は使わないのか?
アイゼン:あいにくだがな、死神の呪いってやつは、俺に関わるものならなんでもちょっかいを出しやがる
アイゼン:鞘から抜いただけで折れたり、敵に止めを刺そうとした瞬間に刀身が抜けて飛んで行ったりもした
アイゼン:命を賭けて戦うときには、あまりにも信用ならん。身体ひとつで戦うのが、一番ましだ
ロクロウ:あんたほど肝の据わった奴となら、面白い勝負ができたのにな。剣士じゃなくて残念だぜ
アイゼン:剣抜きでも面白い勝負はできるぞ。お前の剣と俺の呪い……試してみるか?
ロクロウ:その時が来たらな。斬られても恨みっこなしだぜ
アイゼン:……それは俺の台詞だ
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:あの式典、導師のお披露目の場だけあって、対魔士軍団勢ぞろいだったな
アイゼン:お前の追ってる奴はいたのか?
ロクロウ:いや……ああいう場に、すまし顔で並ぶ奴じゃない
アイゼン:聖寮の上位対魔士なんだろう?
ロクロウ:あいつには関係ない
アイゼン:そうか
ロクロウ:ところで、ベルベット、あの導師様は右手をケガでもしてるのか?
ベルベット:あいつは昔、大ケガを負って……利き腕は使えない
ロクロウ:やっぱりな
ベルベット:でも、左腕だけでも超一流よ
ロクロウ:動きを見ればわかる
ロクロウ:体に無駄な力みがなく、ぶれもないし、意識も丹田に置かれていたからな
ライフィセット:タンデンってなに?
アイゼン:腹の底……臍下から指二本ぶんくらいのあたり、全身の気が集まる場所だと聞いたことがある
ロクロウ:なにより、殺気を微塵も感じさせないくせに、どこにも隙がない……あの導師様は、強い
ベルベット:…………
ロクロウ:「あいつ」がアルトリウスのそばにいる理由は、おそらく……
ロクロウ:俺もあいつを斬りたくなってきたぜ
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:それにしても、シルフモドキは便利な鳥じゃのー
ロクロウ:どこにいても届くし、いざとなれば非常食にもなるしな
ロクロウ:シルフモドキのヤキトリは、心水のつまみに合う珍味だって聞いたことがある
アイゼン:あの鳥たちが使いとして飛んでくれるおかげで、俺たちは聖寮を出し抜くことができているんだ
アイゼン:あいつらは、俺たち海賊団には欠かせない、大切な乗組員だ。冗談でも食うなよ
ロクロウ:はっはっは。だが、どういう仕組みなんだ?
ロクロウ:伝書鳩は、帰巣本能を利用して飛ばすもんだが、シルフモドキは旅先の相手にちゃんと届くだろう?
ライフィセット:シルフモドキはとても賢い鳥で、場所じゃなくて人の出す波長をいくつも覚えられるんだよ
ライフィセット:飛ばす人が飛ばす時に念じた波長の違いを感じて、相手を捜して飛んでいくって、本に書いてあった
ベルベット:あまり見かけない鳥よね。聖隷の一種だったりするわけ?
アイゼン:いや、聖隷ではない。とある北方の島にだけ生息する珍しい鳥なんだ
アイゼン:嵐に遭って、その島に寄港した時に、母鳥と卵が巣ごと俺たちの船に飛ばされてきた
アイゼン:だが、母鳥は間もなく死んでしまってな……ベンウィックが母鳥の代わりに卵を孵したんだ
ライフィセット:だから、あんなに懐いてるんだね。伝書鳥として躾けるのは難しいのに
アイゼン:そういうことをサラリとやるのが、ベンウィックってやつなのさ
マギルゥ:ベンウィックのクセ毛を見たひな鳥たちが親と勘違いしたんじゃないのかえ?
アイゼン:あいつの頭を巣にするほどの結びつきだ。あるいはそうかもしれん
アイゼン:そういえば、ついこの前、シルフモドキが卵を産んだから、頭を叩くなと言ってたな
ロクロウ:増えるなら、試しにひとつ食ってみないか?
ライフィセット:ダメだよ、ロクロウ!!
ロクロウ:やっぱりだめか、ははは
ライフィセット:はあ……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:しかし、地上で煌鋼を見つけるなんて珍しいよな。鉱物の産地とはいえ、採掘は大変だって聞いたぜ
アイゼン:鉱物の採掘は、山師と呼ばれる職人たちの技術や経験がものを言う
アイゼン:同じ鉱物が発見された土地の水質や植物などを調べ、似た環境にある土地へ行って、鉱脈を探るのが常だ
ロクロウ:それでも見つからないこともあるんだから、大ばくちだよな。もっと簡単な方法はないのか?
ライフィセット:……ペンデュラムを使って、地下水や金属のありかを探る方法もあるって、本で読んだことがある
マギルゥ:ダウジングじゃな
ライフィセット:ダウジング?
マギルゥ:ペンデュラムを地面に向けてぶら下げて、マギンプイ♪まじないを唱えるとあら不思議!
マギルゥ:先っぽについておる鉱物が、金銀財宝やら地底湖やらをクンクン・ワン!と嗅ぎあててくれるのじゃ
ベルベット:眉唾ね
マギルゥ:占いと同じで、当たるも八卦、当たらぬも八卦。山師の名には、ばくち打ちの意味も含まれておる
ロクロウ:なんで、そんな占い道具みたいなものをザビーダのやつは武器に使ってるんだ?
アイゼン:ヤツは戦闘中、風で振り子の軌道を制御していた。鞭や縄よりペンデュラムの方が風で操り易いんだろう
ロクロウ:なるほどなぁ。面白い技を考えたもんだ
アイゼン:そして、もう一つは自身の力の強化だ
アイゼン:聖隷には大きく分けて地水火風、四つの属性があり、それぞれの属性は相克関係にある
アイゼン:風は地を克する。風の精霊であるザビーダが地属性の鉱物を手にすることで、力を強化できるんだ。
エレノア:(聖隷がそのようなことまで計算を……)
ライフィセット:ペンデュラムが聖隷の力に反応するなら、ダウジングで鉱脈を見つけることもできそうだね
アイゼン:ああ、あながち馬鹿にしたものじゃない
アイゼン:そして、ザビーダの野郎もふざけた口を叩いているが、戦いに関しては、緻密で計算高い
マギルゥ:小難しいことを考えて武器を使っておるんじゃのー
アイゼン:お前は考えてないのか?
マギルゥ:考えておるわい、愛しきヒトのことを〜〜
ベルベット:あんたは、なにも考えず、ただふざけてるだけみたいね
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:ロクロウめ。エレノア以外は働けなどと言いおって、儂もか弱き人間の乙女じゃというに……
マギルゥ:これは明らかな職業差別じゃよ。魔女裁判を起こして徹底的に戦ってやる!
ベルベット:火あぶりにされるのは、あんただけどね
ライフィセット:あはは
ライフィセット:あれ?エレノア、どうかしたの?
エレノア:……どういうつもりなんでしょうか?
エレノア:シグレ様に私が刃を向けたとき、ロクロウが投げた短剣は、間違いなく私の頭を狙っていました
エレノア:あの時は、本気で死を覚悟しましたし……あの人の恐ろしい本性を見た気がしたんです
エレノア:なのに、シグレ様もロクロウも普段はあんなで……私にはさっぱり理解できません
アイゼン「武士道」というものかもしれんな
エレノア:武士道……剣士の心得のようなものですか?
アイゼン:「主君に忠誠を誓い、親を敬い大切にし、弱者を助け、名誉を重んじて生きる」という思想だ
エレノア:つまり、ロクロウは武士道の教えにそって、弱者である私を助けたと……?
アイゼン:業魔になったとはいえ、記憶も人格も残っているんだ。武士道精神も消えてないと思うがな
マギルゥ:武士道など、あやつにあるのかのー?
マギルゥ:仇なす敵は、ズバグシャビュビュビューン!冷酷無比の必殺剣……それがランゲツの素顔じゃぞ
マギルゥ:ベルベットが初めてあやつに会った時も、いきなり斬りかかってきたと聞いたぞ?
マギルゥ:それに先のクロガネとの一件でも、坊に刃を向けたばかりじゃ
ベルベット:さっきの言葉に深い意味なんてないでしょ。あいつはただ斬るという業の塊……夜叉なんだから
エレノア:そこまで悪い人じゃないと思いますけど?
ベルベット:恐がってたのはあんたでしょ?
エレノア:本性の怖さは感じましたけど、でも、斬るだけでもないといいますか……その……
エレノア:案外、人の気持ちには敏感なんじゃないのかな……と。ほら、剣士は相手の気配を察するじゃないですか
ベルベット:じゃあ、ロクロウは意外と優しいってことで
エレノア:あ、でも……優しいかどうかは微妙というか、私があれこれ言えるほど深く知っているわけでは……
ベルベット:もう、どっちでもいいわよ
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:ライフィセット、クワブトのお世話はちゃんとしてまフか〜〜?
ライフィセット、:うん、クワブトは夜行性だから、毎日寝る前にエサをあげてるよ
ビエンフー:それで、いつまでクワブトのままにしておくんでフか?
ライフィセット:ううーん……新種の虫だから、カブトかクワガタか断定するのは難しいところなんだよね
ライフィセット:というか、ビエンフーも虫が好きなの?
ビエンフー:もちろん、カブトもクワガタも好きでフよ〜〜!!男のロマンじゃないでフか
ライフィセット:そうなんだ!で、どっちだと思う?カブトムシ派?クワガタ派?
ビエンフー:難儀な問題でフよね〜〜
ビエンフー:でも、さっきマギルゥ姐さんが判別方法を教えてくれたでフよ
ライフィセット:そんな方法があるの?
ビエンフー:ボクが判別したら、クワブトの名前に、ボクの名前も入れてくれまフか?
ライフィセット:えっ……
ビエンフー:カッコイイ虫に自分の名前が付くなんて男のドリームじゃないでフか
ビエンフー:それに、この判別を行う者には、名前を入れてもらう価値があると、姐さんが言ってたでフ
ビエンフー:お願いでフ、ボクもキミと同じ夢を見させて欲しいでフ〜〜!!
ライフィセット:そこまで言うなら……うん、いいよ。この虫は、みんなで倒して捕まえたんだし
ビエンフー:ありがとでフー!!!じゃあ、教えるでフよ。虫を出してくださいでフ
ビエンフー:マギルゥ:姐さんが言うには、虫の背中の羽を開いて、内側の羽の匂いを嗅ぐんでフ
ロクロウ:カブトムシやクワガタの薄い羽ってかなり臭かった記憶があるんだけどなぁ
エレノア:そんなに臭いんですか?
ロクロウ:試してみるか?
エレノア:いえ、遠慮しておきます……
ライフィセット:ビエンフー、やめたほうがいいよ
ビエンフー:あ、やっぱり虫の名前を独り占めしたくなったでフか?dめお、男に二言はないでフよ!!
ビエンフー::ストロングブレイクな刺激ならカブト、デンジャラススパイシーならクワガタでフ!
ライフィセット:でも……
ロクロウ:やらせてやれよ、自己責任だ
ビエンフー:ボクが判別するでフ!!!ンフ〜〜〜〜!!!
ビエンフー:ブフォッ!!!ゲホッゲホッゲホ……
ビエンフー:ビエエエエエエエエエエエエン!!!!ソーバーッド、スメェェェェルゥゥゥ……
ライフィセット:ああっ、ビエンフーが目を開けたまま気絶してる!しっかりして、ビエンフー!
ビエンフー:……姐さん、羽の匂いをかいだら、鼻が……爆発したでフ……
ライフィセット:なんか悪夢を見てるみたいだね……
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ベルベットの業魔手……あの謎だらけの武器は、いずれは聖寮に仇をなすものとなるはず
エレノア:ここは冷静に分析しておく必要がありますね
エレノア:突然変形して、なんでも喰らうあの破壊力。手で喰らうという感覚はどのようなものなのか
エレノア:あの業魔手は包帯を喰らわないのか……あるいは訪台に特殊な術がかけられているのか
エレノア:同様に、あの服装にも注目せねばなりません
エレノア:あれほどにボロボロな服を着ているということには抵抗があるはずなのに、買い替えるそぶりもない
エレノア:裏を返せば、あの服に思い入れがあるという証。上着もよく見ると大きすぎて……まるで男物!
エレノア:もしかすると、あれはベルベットにとって大切な人との思い出の……なら、服装に触れるのは無神経ですね
エレノア:こう見えても私は裁縫は得意……!ここは買い替えよりも、修繕を勧めるべきかも
エレノア:見たところ、針の通りにくそうな素材でしたから、かなり骨の折れる作業になりそうですが……
エレノア:敵が強いほど、私は燃えるタイプ!
エレノア:などと言うと、アルトリウス様には叱られてしまうでしょうが……
ベルベット:誰に叱られるって?
エレノア:あ、は、はい!!その……お裁縫を!
エレノア:えっと……あなたのその服が破れているので、縫いましょうなんて言ったら叱られ……ますよね
ベルベット:えっ、あたしの服……?あんた、そんなこと気にしてたの?
エレノア:あ、いえ……いつも気にしてるわけではありませんが、時々、気になるというか……
ベルベット:裁縫得意なの?
エレノア:ええ……性格は不器用だと言われますが、手先は器用なんです
ベルベット:そうなんだ。なら、必要なときにはあんたにお願いするわ
エレノア:ま、任せてください
ベルベット:……あんた、どうしたの?凄い汗ね
ベルベット:あたしは寒いのも熱いのも平気だけど、あんたは人間なんだから、自分で調整しなさいよ
ベルベット:あと、汗かきっぱなしだと風邪ひくし、気持ち悪いだろうから、そういう時は言いなさい
ベルベット:水浴びなり、お風呂なり、遠慮しないで、今まで通りやったほうがいいわよ
ベルベット:男連中は、そういうのに気づかないから
エレノア:あ……はい
エレノア:案外、普通なのですね……
エレノア:服装のことは、触れずにおくのがよさそうですん。同じ女子同士……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:坊に愛称をつけてやったか……主はなんだかんだで情に厚い女じゃのー
ベルベット:どうせ、フィーなんて安直だとか言うんでしょ
マギルゥ:安直ではあるが、ここまで安直じゃと逆に誰も使わぬ。ゆえに個性的と褒めたつもりなんじゃがのー
マギルゥ:名前というものは、己が何者かを考えるときに、必要なものなんじゃ
マギルゥ:名を与えられ、自分が他の誰でもない自分だと気づき、この身体の中にある形のない心が動き出すのじゃ
マギルゥ:坊の心を最初に転がしたのはおぬしじゃ。偶然とはいえ、坊を人形から生き物にしたんじゃよ
ベルベット:……で、何が言いたいの?
マギルゥ:旅の初めから寝食を共にしてきた仲ではないか。愛称をつけてくれても罰は当たらんじゃろー?
ベルベット:そんな深い仲だと思ったことはないし、あんたは好き勝手に出入りしてたでしょ
マギルゥ:おぬしは、そんな矮小な心の持ち主じゃなかろー。心の友に愛称をつけるぐらいの甲斐性はあろう?
ベルベット:心の友じゃないし、愛称をつけるのが得意なわけでもないから
マギルゥ:頼む……一生のお願いじゃ
ベルベット:……じゃあ、マギ
マギルゥ:マギはまんますぎるじゃろ。愛情をもって改称してくれんかのー
ベルベット:なら、ルゥ
マギルゥ:ベジタブルやミートがトゥギャザーしてカレーになってしまうじゃろーに
ベルベット:じゃあ、カキクゥ
マギルゥ:お……まあまあ、アリかナシで言えば、千の候補のうち、千十一番くらいにはアリじゃが……
マギルゥ:愛称なんじゃから、もっと愛嬌があって印象に残るものがいいのー
ベルベット:……じゃあ、ボーシ
マギルゥ:見た目まんまかい
ベルベット:……本スカート
マギルゥ:見た目から一歩進めんかい
ベルベット:実は目つき悪い
マギルゥ:それは誹謗中傷じゃろー!見た目アンド悪口禁止じゃ!
ベルベット:笑いながら人の痛いところを突く魔女
マギルゥ:それはナイショの内情じゃろーに!!
ベルベット:だから、最初に言ったでしょ。得意じゃないって
マギルゥ:もういい、おぬしとはアイショウが合わぬわ!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:聖隷にも家族の繋がりがあると言っていましたが、血縁関係なしでどうやって妹だとわかったんですか?
アイゼン:もうずいぶん前のことになるが、俺はとある霊山の地脈点に生まれた
アイゼン:そこで長い間過ごしていたある日、同じ地脈点からあいつが生まれてきたんだ
アイゼン:気づくと、俺たちは同じ屋根の下で暮らすようになっていた
ロクロウ:同じ地脈点から生まれた聖隷が、兄妹ってことなのか?
アイゼン:いや、他にもそこで生まれた聖隷はいたが、そいつらを家族だと感じたことはなかった
アイゼン:だが妹はなにかが違った
アイゼン:あいつが哀しいと、俺も哀しかった。俺が嬉しいと、あいつも嬉しかった
アイゼン:愛想のないやつだが、その分笑顔の破壊力は凄くてな。なにがあっても、あいつを守ってやろうと俺は誓った
アイゼン:俺は、霊山で採れた石を使ってペンダントをつくり、お守りとしてあいつに持たせた
アイゼン:あいつは、首飾りにして使っていたがな
ライフィセット:そのペンダントは……?
アイゼン:あいつも同じことを考えてたんだ。自分でつくったお守りだと、これを俺にくれた
アイゼン:お互い黙っていたのに、俺たちは同じ日に、同じ形のお守りを贈り合った
アイゼン:俺たちの間には、確かに兄妹の繋がりがあると、その時、確信したんだ
ライフィセット:そこに描かれている女の子が、妹さんなんだね?
アイゼン:ああ……俺が家を出る日、あいつが描いてくれた自画像だ
ベルベット:あんたも、妹に絵を描いてあげたの?
アイゼン:いや、……俺に絵心はない
エレノア:きっと、妹さんは自分のペンダントに、一番大切な人の顔を描いていますよ
アイゼン:だといいがな……
マギルゥ:一番大切な人が、お主じゃといいがのー
アイゼン:!!!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:アイゼンのつくるパルミエは、売り物レベルの味と美味しい仕上がりですよね
マギルゥ:かなりやり込まねば、これはつくれぬぞ。プリン三年パルミエ八年と言われておるでのー
ロクロウ:焼き菓子をつくるのに、アイゼンはそこまでしないだろ?
アイゼン:海賊の菓子づくりが、そんなに意外か?
エレノア:いえ、偏見があるわけではないのです。あまりにも美味しいので、こだわりがあるのかと
アイゼン:パルミエは妹の好物なんだ
エレノア:妹さんの……
ロクロウ:ほう、いきさつを聞かせてくれよ
アイゼン:俺がまだ妹と暮らしていたころの話だ。二人で人間の街に出かけた時、パルミエを見つけた
アイゼン:人間がつくったお菓子を初めて食べたのもあって、妹はえらくパルミエを気に入ってな
アイゼン:それ以来、人間の街に出かけるたびに手に入れて、土産に持ち帰った
ベルベット:お土産?
ライフィセット:一緒に買いに行かなかったの?
アイゼン:人間の世界へ行けば、嫌でも穢れに近づく。ケガや病気がちだった妹を、そうは連れ歩けん
アイゼン:パルミエを買ってくるから大人しく寝ていろと、駄々をこねるあいつを散々なだめた
ベルベット:……あたしも、弟とよくそんなやりとりしたわ
アイゼン:そのうち、あいつがそんなに好きだというなら、つくってやろうと思うようになった
マギルゥ:穢れにやられるのは、お主も同じじゃしの
アイゼン:何度かつくるうちにコツもつかめて、なかなか美味いパルミエが焼けるようになった
アイゼン:そんなある日、パルミエを焼いていた窯が突然火を吹いて、妹が大やけどを負った……
アイゼン:すべては、無知で無自覚だった兄貴のせいだ
アイゼン:だというのに……手当をして、寝かせようとしたら、あいつは、さっきのパルミエを食べたいと言い出した
アイゼン:焦げてパリパリになったパルミエを……あいつは平然と食って、また焼いてくれと笑いやがった
ベルベット:下の子ってのは、どこも同じね
アイゼン:…………
ベルベット:妹のためにしたことで、自分の呪いの恐ろしさに気付いたのね……
ライフィセット:……辛いね
エレノア:妹さんは、気づいてますよね……?
マギルゥ:気づかぬふりをせねば、兄とは暮らせぬからのー
ロクロウ:だからこそ、あいつは家を飛び出したのさ……きっと
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:……ううむ
ライフィセット:……アイゼン、手紙をもらうって、どんな感じ?
アイゼン:なんとも思わん。むしろ要らんな。こんなのもらっても嬉しくもなんともない
ライフィセット:えっ!?
アイゼン:ふっ……これは、かめにんからの請求書だ。どうした、お前も手紙が欲しいのか?
ライフィセット:……うん。僕には、手紙を送ってくれる人も、手紙を送る相手もいないからね
エレノア:ライフィセット、あなたにお手紙ですよ
ライフィセット:えっ、本当に?誰からだろう
ライフィセット:差出人は……ビエンフー?
ビエンフー:イエース!!ボクからでフよ〜〜♪
ビエンフー:そろそろ手紙が欲しくなる頃だと思って、したためておいたでフよ。嬉しいでフか〜〜?
ライフィセット:あ、うん……ありがとう
ビエンフー:では、ボクが読んであげるでフ〜〜
ビエンフー:拝啓、聖隷ライフィセット様。貴殿、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます
ビエンフー:小生も、お蔭さまで、変わらぬ日々を過ごしております
ライフィセット:(ビエンフーって、普段はあんなだけど、本当はしっかりしてるんだな……)
ビエンフー:マギルゥ姐さんの衣裳のアイロンかけ、ボタン直し、お帽子と長靴下の手洗いが日課なのはご存知の通り
ビエンフー:先日など、マギルゥ姐さんに最近お腹のお肉がいささかふくよかではないかと注目申し上げましたらば
ビエンフー:寒中、軒下に逆さづりにされ、危うく干しノルミンになるところでございました
ビエンフー:あまりの辛さに、焼成、頬を伝う涙を止めることができませんでした……ビエ〜〜ン!!
ライフィセット:……やっぱりビエンフーはビエンフーなんだね
エレノア:というか、自分のことしか書いてない上に自分で手紙を読んでますし……
ライフィセット:でも、ありがとうビエンフー!!手紙っていいものだね
ビエンフー:貴殿の優しさに、また泣けてきたでフよ……ビエ〜〜ン!!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:ベルベット、いいかげん部屋に入れてください
ベルベット:ダメ、入ったら喰らうわよ
エレノア:あなただけの部屋ではないのですよ
ベルベット:負けた場合、相手に従うって誓約かけたんでしょ。もう少し、待ってなさい
エレノア:もぉ……
ライフィセット:廊下でなにしてるの
エレノア:ちょっと用事で外に行って戻ってきたら、部屋から閉め出されてしまって……
エレノア:もうかれこれ三十分以上待っているのですが、一向に入れてくれる様子がなくて困ってるんです
アイゼン:あいつは部屋の中でなにをしているんだ?
エレノア:わかりません……時折「はぁはぁ」という息遣いや、ため息にも似た小さな声が聞こえるのですが……
アイゼン:女同士の相部屋で、お前に見られたくないなにかをベルベットはしているということだな……
ロクロウ:見られたくないことねぇ。体重でも量ってるんじゃないのか?
エレノア:服を脱いで、再び着る時間を入れたとしても、体重を量るのに三十分もかかりませんよ
アイゼン:化粧をしている可能性はないか?ベルベットではないが、以前、叱られたことがある
エレノア:それは、あなたが男性だからであって、同性の私であれば問題はないと思いますけど……
マギルゥ:のんきなコトを言ってる場合ではないぞ、坊!ベルベットは今、絶体絶命の大ピンチに陥っておる!
ビエンフー:人に弱みを見せないベルベットでフよ
ビエンフー:身体がソーバッドで苦しんでる姿を見られたくなくて、エレノア様を締め出したでフよ〜〜!!
マギルゥ:「はぁはぁ」「ふぅふぅ」言っておるのも、それで説明がつくぞよ
エレノア:言われてみれば……部屋を出る前のベルベットは、表情も硬くて、具合が悪そうでした……でも
マギルゥ:放っておくのか、坊よ!!今こそお主の覚悟が試される時じゃ!!
ライフィセット:覚悟……
マギルゥ:さあ、ゆくのか、ゆかぬのか!!決断の時じゃ〜〜!!
ライフィセット:ベルベット!!
ベルベット:……どうしたの、フィー?
ライフィセット:えっ……どうしたのって、ベルベットが死んじゃうかもしれないって……だから僕!
ベルベット:なんで、掃除したくらいで死ななきゃならないのよ
エレノア:だって、顔色も良くなかったですし、漏れ聞こえる息も変でしたし……
ベルベット:変な息なんてしてないけど?
ライフィセット:「はぁはぁ」……は?
ベルベット:ガラス磨くときに「はぁはぁ」するでしょ?
ロクロウ:ため息のような声は?
ベルベット:この部屋、普通には掃除してあるんだけど、細かいところが行き届いてなくて
ベルベット:まさかと思って備え付けのコップを見たら、茶シブが洗い切れてなかったのよ。ため息も出るでしょ
エレノア:そう……だったんですか……部屋掃除なら言ってくれればお手伝いしたのに
ベルベット:家事は女の数だけやり方があるから、一人でやる方がかえって早いの
ベルベット:姉さんもそうだったし、あんたにも、自分のやり方があるでしょ?
エレノア:それはまあ、そうですけど……
ベルベット:もう終わったから、部屋使っていいわよ。あぁ、すっきりした!
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:むむ……儂の魅惑の腰つきに、坊の視線を感じるわ
ライフィセット:ごめんなさい、つい気になって……
ライフィセット:その腰に付いてるのはなんの本なの?
マギルゥ:よう訊いた。マギルゥ叢書全5巻のひみつ、坊だけに教えてやろう
マギルゥ:右の尻側から、家計簿と魔法大全集じゃ。魔法大全集は、主にあぶらとりがみとして使っておる
ライフィセット:あぶらとりがみ?
マギルゥ:乙女のたしなみじゃよ
マギルゥ:左側の二冊は、押し花用の「重い本」と飛び出し過ぎる絵本じゃ
ライフィセット:飛び出し過ぎる絵本!?
マギルゥ:ひと開きで川に橋がかかるほどの飛び出しじゃ
マギルゥ:敵に追い込まれたときに、壁に向かって使えば瞬時に脱出できるすぐれものじゃよ
マギルゥ:使った後で元に戻すのが大変すぎるのが玉にきずでな。ここ何年かは開いておらんがな
ライフィセット:正面の本は……?
マギルゥ:バウムクーヘンじゃよ
ライフィセット:へぇ……
マギルゥ:重ねた生地には、生き延びるための知恵が、焼印で記されておる。食べてためになる魅惑のグルメ本じゃ
ライフィセット:食べてためになる……
マギルゥ:マジメにリアクションされると、罪の意識がわくのぉ……
ライフィセット:どれも、すごくおもしろそうだね。いいなぁ
マギルゥ:坊の好奇心は底知れぬのー
マギルゥ:どうじゃ、見たいか?
ライフィセット:すごく見たい……
マギルゥ:ならば、「マギルゥのことを知りたい」とお言い
ライフィセット:マギルゥのことを知りたい
マギルゥうむ。その願い、しかと受け止めた。御開帳じゃ!!
ライフィセット:そんな風になってたんだ……本の裏側って
エレノア:ちょっと、ライフィセットになんてことを!
マギルゥ:見たいというから、見せてやろうとしただけじゃて。坊の想いをお主が止める権利などないぞ
エレノア:私はこの子を護るための器です。よこしまな大人から守る義務があるんです!
エレノア:それに、あなたの行為は、公序良俗に反するおそれがありますよ
マギルゥ:魔女に公序良俗を求められてものー
ライフィセット:そのカギつきの本の装丁は……確か、メリオダス王朝で流行した形……
エレノア:……あたなが教育に良くないことはわかりました。今後は、あなたの行動を監視させていただきます
マギルゥ:あんまり口うるさいと、嫁の貰い手がなくなるぞ
エレノア:そのまま、あなたにお返ししますけど?
ライフィセット:……マギルゥ:、もう一回めくって
ライフィセット:本とベルトのつなげ方をよく見たいから
マギルゥ:は、はい……
エレノア:はぁ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ねえマギルゥ。腰の本なんだけど、押し花に使う「重い本」ってなんの本なの?
マギルゥ:坊の好奇心は、ムクムクじゃのー。「重い本」に引っかかった坊だけに教えてやろう
マギルゥ:押し花用に使っておる「重い本」は、ビエンフー作の「ポエム集」なのじゃ
ライフィセット:ビエンフーって、ポエムを書くシュミがあったの?
マギルゥ:……あやつは、凡隷界随一のポエミスト。「ノルミン・ポエム」と揶揄する者もおるほどじゃぞ
マギルゥ:儂のお気に入りを朗読してやろう……
マギルゥ:「東にどーでもいいことあれば、行って来いと言われ」
マギルゥ:「西にどーでもいいことあれば、行って来いと言われ」
マギルゥ:「働けど働けど楽にならないでフ……まさに、この世は毎日生き地獄」
ライフィセット:……重いね
マギルゥ:押し花にはぴったりの重さじゃろー?心に沁みるのー
ライフィセット:マギルゥ、悪い顔になってる!
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:なぁビエンフー、マギルゥって自分のことを、魔女とか魔法使いとか言ってるが、本当はなにものなんだ?
エレノア:常識的に考えれば対魔士ですけど、マギルゥという名前は、対魔士名簿にはなかった気がします
ビエンフー:載ってるはずないでフよ……姐さんは、正真正銘、暗黒世界の魔女なんでフから
ビエンフー:寝た子も二度寝する恐怖の魔女の本性を……ボクはあの夜、見たんでフ……
ビエンフー:あれは、とある火山の火口近く。ぐつぐつと煮えたぎるマグマの上には巨大な大釜……
ビエンフー:地獄の業火にかけた大釜には、血の色と同じ物体が、ドロドログツグツ煮えたぎってたでフ……
ビエンフー:頬に散った真っ赤なしぶきを、姐さんは笑顔でペロリ。そのまま三日三晩煮込んで……
ライフィセット:煮込んで……?
ビエンフー:イチゴジャムをつくるんでフ……
ロクロウ:普通だろ!どこが恐怖なんだよ
ビエンフー:今日はここからでフ……姐さんは、砂糖の代わりにショウ油と心水とみりんで程よく味付けするんでフよ
ライフィセット:いちごを、ショウ油で味付けするの?
ビエンフー:いちごのイメージとのギャップはありまフけど、酸味のきいた甘辛な感じは、なかなか美味でフよ
ビエンフー:もっとも、ボクくらいの料理通にならないと、あの複雑な味は理解できないかもでフけどね〜〜
エレノア:それって、もしかして……佃煮?「いちご煮」というものですか?
ビエンフー:そうともいいまフ
ベルベット:言わないでしょ。いちご煮って、ウニとアワビの御吸い物よ。佃煮ですらないし
ビエンフー:びえっ!?そうなんでフか?
ビエンフー:けっこう好きだったのに、一度しか作ってくれなかったのは、間違いに気づいたからでフかね
ビエンフー:そういえば、ボクが好きって言った「ドリアングミ」や「アユの砂糖焼き」も、一度だけだったでフね……
エレノア:……そういう、ことでしたか
アイゼン:何度かつくってくれた料理の味は?
ビエンフー:フツーだったでフね〜〜みなさんが食べてる姐さんの料理の味でフよ
ビエンフー:才能を隠してフツーを装ってる姐さんの潜在能力は、まさに恐怖の魔女と呼んで、間違いないでフよ〜〜
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:グリモワールって、一見、やる気がないようだが、文句言いながらも仕事は早くて確実だし
ロクロウ:本音を言いつつ人を傷つけない気配りもできて、大人の女性としての魅力があるよな
ベルベット:悪かったわね。気配りができない魅力のない女で
ロクロウ:いやいや、お前たちはまだ若いんだし、人生経験の違いがあるのは当然だろう?
マギルゥ:とはいえ、儂らに大人の色気が足りんというのは認めなくもなくなくないのー
エレノア:確かに……
エレノア:(以前、アルトリウス様に落ち着きがないと注意されたこともあったし……)
ロクロウ:もっとも、グリモワールは若い頃から、あんな感じで、しっかりしてたんじゃないかって気がするけどな
マギルゥ:いい読みじゃ。グリモ姐さんは生まれながらにしてグリモ姐さんじゃった……
マギルゥ:辛辣じゃが真実をとらえた姐さんの言葉と虚ろなまなざしに、多くの聖隷たちが心を奪われ
マギルゥ:最盛期には、ファンクラブの会員数は8848名を数え、ディナーショーのチケットは即日完売
マギルゥ:古文書朗読ライブでは居眠り聖隷が続出したのじゃ
ライフィセット:凄い……!
マギルゥ:「びっくりノルミン新記録」公式本には、グリモ姐さんのびっくり記録が満載じゃぞ
エレノア:(そう言われると、あの気怠い感じは落ち着きに、微妙なまったり感は大人の余裕に思えてくる……)
エレノア:(それにくらべて私ときたら……<
エレノア:ふぅ……
ライフィセット:えっ、もしかしてそれ、グリモ先生のマネ?
エレノア:はぁ……全然、そんなつもりなかったですけど
マギルゥ:なかなか感じが出ているではないか。おぬしの中に眠る、大人の魅力を感じるぞ!
エレノア:そんな、私に大人の魅力だなんて……
マギルゥ:最後のしめもやってみrのじゃ。今が、大人の女になれるかどうかの瀬戸際じゃぞ
エレノア:は、はい……しめというのは、あれですよね。やってみます
エレノア:……あっそ
エレノア:どう……ライフィセット……感じ出てるかしら?
ライフィセット:間違っちゃった感じが、よく出てる……ね
エレノア:!!!
ビエンフー:エレノア様のそういうところ、少女っぽくてかわいいでフね〜〜♪
エレノア:もぉ……ビエンフーのばか!
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……あら、この香りは
ライフィセット:パーシバル王子の香木だよ
ライフィセット:香木は初めてだって言ったら、王子が袖のところに香りを少し付けてくれたんだ
エレノア:王家の香木の香り、私はとても好きです。鼻がスッとして、でもツンとしない感じで
エレノア:雪国に生息するファンダリアという針葉樹からつくるんですよ
ライフィセット:エレノアもベルベットも、マギルゥもいい匂いするけど、香木を使ってるの?
エレノア:いい匂い?私たちは香木は使ってませんから、石けんの香りがするのかもしれませんね
ライフィセット:香木は、王族しかつかっちゃいけないの?
エレノア:いえ、ファンダリアや一部の香木は王族のみですが、他の香木には特に決まりはないはずですよ
ライフィセット:香木は、人間にとっていい香りなんだよね。どうしてみんな使わないのかな?
エレノア:それは考えたことなかったですね。アイゼンはなにか知ってますか?
アイゼン:そのことを語るには、まず風呂について説明せねばなるまい……
アイゼン:数百年前、風呂に入ると死ぬといわれた時代があった。人々は風呂を恐れ、近寄ることさえしなかった
エレノア:お風呂に入らないなんて信じられません……どうして、そんなことになるんですか?
アイゼン:その頃、死に至る疫病が流行したんだが、風呂で伝染すると考えられていたんだ
アイゼン:水道や水の浄化技術がまだ確立されておらず、上下水道は限られた場所にしかないものだった
アイゼン:俺たちがローグレスで潜り込んだような地下道が整備されたのは、百年前くらいの話でしかない
ロクロウ:風呂が不衛生だと考えるやつがいたんだな
アイゼン:風呂が廃れていく一方で、王族たちの間に香木が広まり始めた
ライフィセット:臭いを匂いで消そうとしたんだね
マギルゥ:ゆえに、昔の香木は香りが強いものが多いんじゃよ。クサイのか、いい匂いなのか分からぬほどにの
エレノア:でも、今はお風呂で病気になるなんてことはありませんよね?
アイゼン:文明が発達し、水道が普及したことで、風呂は昔よりずっと清潔になったからな
エレノア:それで、香水の必要がなくなって、廃れたと?
アイゼン:逆だ。庶民が豊かになったことで、香木は国中に広まり、富の象徴として生活を彩るようになったんだ
アイゼン:だが、それも長くは続かなかった。風呂ではうつることのない、病の流行によって……
エレノア:業魔病ですね……
アイゼン:人間は業魔に追い詰められ、城壁の外で暮らすことが難しくなった……
アイゼン:入手が難しくなった香木は、再び王族のものとなった
エレノア:流行り病と香木には、奇妙な因縁があるんですね
マギルゥ:穢れをごまかすために業魔病の噂を振りまく……ニオイをニオイで消すのは、今も昔も変わらんの
ライフィセット:……くんくん
ベルベット:あんた、香木の香りが気に入ったの?
ライフィセット:いい匂いだと思うけど、僕は、石けんの香りのほうが好きだな
ベルベット:……?
※枠外タッチで閉じます。
グリモワール:ちょっと聞いてもいい……?
アイゼン:……なんだ
グリモワール:あんたって、地の聖隷でしょ?地の聖隷って水には沈むのに、なんで海……?
アイゼン:むしろ、地の聖隷だからこその、海だ
グリモワール:そうくる?続きが気になるわね……
アイゼン:アイフリードは、生まれもった性質を受け入れろと言いながら、泳げない海賊かよ、と大笑いしやがった
アイゼン:その場でブチのめしてやろうと思ったが、そんなことをしても泳げない事実は変わらん
アイゼン:俺は水に……属性という宿命などに負けたくなかった。だから、水を克服するために特訓したんだ
グリモワール:あんた、いい具合に壊れてるわね……でも、特訓なんかで属性って越えられるわけ?
アイゼン:川で練習を始めたとたん、大洪水が発生し、山から流れてきた土砂に飲み込まれた
アイゼン:湖に潜れば、藻草が突然増殖して全身に絡まり、おぼれそうになった
アイゼン:そして、最後に飛び込んだ海では──俺を中心にして、大渦巻が発生しやがった……
グリモワール:ふぅ……それって、死神の呪いでしょ……
アイゼン:生まれながらに俺を縛る鎖という意味では、地の属性も、死神の呪いも大した違いはない
アイゼン:これは、俺の限界への挑戦なんだ
グリモワール:はぁ……で、あんたは泳げるようになったの?
アイゼン:泳ぐことはできるようになった。携帯用の浮き輪は手放せんがな
グリモワール:あっそ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……世界最古の地図をつくったのは……わぁ……何十年もかかってるんだ……
ロクロウ:お前は本を読んでるときが一番幸せそうな顔してるな。なにがそんなに面白いんだ?
ライフィセット:測量の本を読んでたんだけど、世界を周って地図を描くのを想像してたら楽しくなってきちゃって……
アイゼン:その気持ちは、俺にもよくわかる
アイゼン:マギルゥたちは「さぱらん」などと言っていたが、全世界を描いた地図の完成を想像すると血が騒ぐ
ビエンフー:ボクは金銀財宝の方が燃えまフけどね
アイゼン:もちろん、未開の地には宝も眠っているだろうが、それはオマケのようなものだ
アイゼン:渡れない海を渡り、誰も行ったことのない世界へ行く。死と隣り合わせの航海そのものに、宝以上の価値がある
ビエンフー:まさにアバンチュール、冒険ロマンでフね〜〜
ロクロウ:ライフィセットも地図を持ってたよな。初めて会ったときに落としてったやつ
ライフィセット:聖寮でもらった世界の地図だけど、僕が自分で確かめに行けたのは近場ばかりだから、冒険なんて言えないよ
アイゼン:遠い国や嵐の海へ行くことだけが冒険じゃない
アイゼン:自分の想いを遂げるためなら、危険が待っていようとも自分を守ってくれる壁の外へ飛び出すこと
アイゼン:それが冒険なんだ。そこには大きいも小さいもない
ライフィセット:ヘラヴィーサやフィガル雪原しか行ってなくても?
アイゼン:対魔士の目を盗んで街を抜け出し、業魔がうろつく土地を歩いて地図と見比べたとき、なにを感じた?
ライフィセット:怖くて……でも楽しくて……胸が熱くなった
アイゼン:それが冒険だ。そうやって自分の中にできあがった地図は、お前だけの宝なんだ
ライフィセット:僕だけの宝もの!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベンウィックたちが、イヌ派かネコ派かで大ゲンカしてたんだけど、そこまでの問題かな?
マギルゥ:ニャンとのんきなことを言うておる!この世界に、それ以上に危険な対立はないワン!
マギルゥ:戦争の影に、イヌ派とネコ派の争いあり、じゃよ。両者の間には浅いが埋まらぬ溝があるのじゃ
マギルゥ:むしろ、ケンカで済んでラッキーじゃぞ
ライフィセット:そうなんだ……みんなはどっち派なの?
マギルゥ:儂は迷うことなくネコ派じゃぞ。魔女の使い魔はネコと昔から決まっておるでの
エレノア:私は、人間と共に規律ある生活ができる犬の方が好きですけど、ネコもかわいいし好きですよ
ライフィセット:ロクロウは?
ロクロウ:シグレが好きだったから、ネコは好かん。だが、主君に尻尾を振るイヌはもっと好かん
アイゼン:同意だな。エサと引き換えに芸を覚え、尾を振り、すり寄り、やがては遠吠えさえ忘れていくのがイヌだ
エレノア:そんな言い方ないですよ。人間と一緒に暮らすために犬は歩み寄ってくれているんです。やさしさですよ
ライフィセット:だからアイゼンは、ネコ派ってこと?
アイゼン:リス派だ。妹と暮らしていた頃、近所の森にモフモフしたリスがたくさんいた……
エレノア:イヌ派かネコ派かの話ですよ。どちらかで話をしてくださいよ
アイゼン:強いて言うなら……ネコだな
アイゼン:気まぐれでいて、甘えるときの愛らしさは、妹を思い出させる
ライフィセット:ベルベットは?
ベルベット:犬よ。裏切らないし
マギルゥ:お主が言うと、シャレにならんのー
ライフィセット:ベルベットとエレノアがイヌ派……マギルゥとアイゼンがネコ派……
マギルゥ:ロクロウはどっちでもない派じゃから、坊の一票がこの派閥闘争の雌雄を決するのー
ライフィセット:ええっ……
マギルゥ:聖寮のイヌを卒業した坊は、今度はベルベットのイヌになるつもりかえ?
ベルベット:そういうことじゃないでしょ?好きな動物がどっちかってだけの話なんだから
マギルゥ:そんなに本気で怒っては、坊はもはやイヌと答えるしかないではないか〜〜
ベルベット:だから──
ビエンフー:ケンカはやめるでフよ〜〜!!
ビエンフー:面倒でフから、ここは間を取って、みんな仲良くビエンフー派ということで手を打ちませんでフか?
ベルベット:ビエンフー派?
ビエンフー:時にイヌのように誠実で、時にネコのように気まぐれなボクなら、どちらの派閥も大満足でフよ〜〜
ライフィセット:それだけはないよ……
※枠外タッチで閉じます。
マギルゥ:どーでもいい話じゃがのー、喰魔探しの時のおぬしらの釣り勝負、どっちが勝ったんじゃ?
ロクロウ:ずいぶん前のことを聞くなあ。あれは、俺の負けだ。0匹(ボウズ)だったからな
アイゼン:いや、引き分けだ
アイゼン:俺もボウズだ
ロクロウ:いいや、この負けは譲れん
アイゼン:その負けをくれてやるわけにはいかん
アイゼン:ボウズに加えて業魔という危機を釣り上げた俺は減点されてしかるべき。俺の、負けだ
ベルベット:遊びなんだから、どっちでもいいでしょ?
アイゼン:よくない。どんな勝負であれ、白黒はっきりさせる。それが俺の流儀だ
ロクロウ:俺もアイゼンに同感だな。勝負の決着をあいまいにすることはできん
ベルベット:面倒ね……
ベルベット:アイゼンは死神の呪いのせいで、ろくなものが釣れないんでしょ?勝負が成立してないじゃない
ロクロウ:応。言われてみればそうだな。ここは他の勝負で決着をつけようぜ
ライフィセット:他の勝負……トランプとか、チェスとか?
アイゼン:トランプはやらん。必ずジョーカーが来るからな
ロクロウ:将棋はできるがチェスはわからん
エレノア:腕相撲はどうですか?
マギルゥ:これこれ、業魔と聖隷が手をつないだら穢れで大変なことになるじゃろーて
ベルベット:大人同士なんだから、心水でも呑んでまったりしなさいよ
ロクロウ:それだ!心水の呑み比べなら、喰魔も聖隷もなく、対等に戦えるよな
アイゼン:ああ、俺も異存はない。ベンウィックたちに心水を用意させよう
エレノア:一応、大人の解決……ということでしょうか
ベルベット:なんでもいいわよ、片が付くなら
ビエンフー:呑み比べとなれば、やっぱり心水に合う美味い肴が必要でフね〜〜
ロクロウ:確かに!よし、つまみを釣りに行こうぜ!
アイゼン:小船を出そう。釣り勝負の続きだ!
ライフィセット:魚は釣れないんじゃ……
エレノア:というか、せっかくまとまりかけたのに、どうして混ぜ返すんですか、ビエンフー
ビエンフー:ええっ、どうしてボクが叱られることに?ビエ〜〜ん……!!
※枠外タッチで閉じます。
アイゼン:ううむ……
ライフィセット:やっぱり裏側しか出ないのは哀しいの?
アイゼン:いや、いまさらそんなことは気にならん
ロクロウ:そうは言っても、一度くらいは表を出したいだろう?俺は見てみたいし、ライフィセットも見たいよな?
ライフィセット:うん。見てみたい
ロクロウ:そこでだ……ジャーン!
エレノア:このコイン、いつものアイゼンのコインと同じように見えますけど?
ロクロウ:表はな。だが──
ロクロウ:このコインは、両面が「表」なんだ。クロガネに頼んでつくってもらった特注品さ
ロクロウ:両表のコインなら、いくら死神の呪いが凄くても、さすがに「表」しか出ないだろ?
エレノア:そんなインチキで表が出たところで、意味ないじゃないですか
アイゼン:インチキじゃない。これは、努力だ
エレノア:はい?
アイゼン:どんな形であれ、諦めずに挑み続けることで道は拓けるものだ。面白い。表を出してやる
アイゼン:…………
アイゼン:なにっ!?
ライフィセット:カラスが、コインをくわえて行っちゃったよ!!
アイゼン:カラスは光るものを集める習性があるんだ……くそっ、カラスに敗れるとは……
ロクロウ:こんなこともあろうかと、予備も用意してあるぜ!さあ、今度こそ、死神の呪いに打ち勝つんだ!
アイゼン:よし……行くぞ
エレノア:ああっ……今度は、パーシバル王子のグリフォンが、両表のコインを食べてしまいました……!!
アイゼン:おのれ……
ロクロウ:大丈夫だ。もう一枚、予備がある。これで死神の呪いに引導を渡してやれ
アイゼン:おう……行くぞ
(爆発音、コインが粉々になる)
ロクロウ:嘘だろ……いくら死神の呪いでも、ここまでやらなくてもいいだろうに……
アイゼン:気にするな……こうなる予感はあった
エレノア:絶対、なかったですよね……
ライフィセット:う、うん……
※枠外タッチで閉じます。
ロクロウ:ううむ……オルとトロスにあそこまで技を仕込むとは、大したもんだぜ、モアナ。あっぱれだ
モアナ:そんなふうにいわれると、苦労がむくれるよ
ロクロウ:報われるだぞ
モアナ:そうだった!あははははは!
ライフィセット:どんな技を教えたの?普通はお手とかお座りとか投げた骨をキャッチするとかだよね?
ロクロウ:「お手」の合図で、オルとトロスがハイタッチをする
ロクロウ:「お座り」の合図なら、オルがイスになってトロスがオルの背中に腰かける
ライフィセット:モアナはミッドガンドで一番の動物トレーナーになれるね
マギルゥ:それは聞き捨てならんのー
マギルゥ:儂もビエンフーを仕込んで、あそこまで育てたんじゃ。新米トレーナーのモアナには負けぬぞ
モアナ:はははっ、モアナもまけぬぞ!!
ビエンフー:だったら、勝負するでフよ!オルとトロスは、他になにができるんでフか?
モアナ:ホネをなげると、二匹でパクンって食べちゃうよ!
マギルゥ:ビエンフーは、骨をゴミ箱へ捨てられるぞ
ビエンフー:姐さんが食べた骨付き肉の後片付けでフ……
モアナ:「反省!」って言うと、オルがモアナのひざに片手をつけてしょぼんとして、トロスがオルをなぐさめるよ
マギルゥ:ビエンフーは、どれだけ叱っても一切反省せぬ強靭な心をもっておるぞ!
ビエンフー:ビエーン……
モアナ:モアナの歌にあわせて、鳴いてくれるよ
マギルゥ:儂のおしおきに、いつも泣いておるぞ
ビエンフー:ビエ〜〜ン!!
モアナ:ワンワンだけじゃなくて、あいさつできるんだよ。オファヨォーっって!!
マギルゥ:ビエンフー、早口言葉!
ビエンフー:となりのきゃくはよくまぎるぅきゃくだまじゅつししゅじゅつちゅー
ビエンフー:あかまぎがみあおまぎがみきまきまぎあわせてまぎまぎみまぎまぎ
マギルゥ:もっと
ビエンフー:なままぎなまるぅのるるんビィィッッ!
ビエンフー:イタタタ……舌噛んだでフ……
マギルゥ:なぜ、そこまで言えて、最後で噛む!?一番言いやすいところじゃろうに
ビエンフー:ごめんなさいでフ、姐さん……最後、油断したでフ。でも、ボクを見捨てないでほしいでフ……イタタ……
マギルゥ:それは後で考えるとして、どうじゃモアナ、これぞ一流の仕込みじゃろう?
モアナ:マギルゥ……大事なのは、アイジョーとシンライカンケーだよ
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:グリモ姐さん、お話があるでフ
グリモワールなに、この決戦前夜的空気……
ビエンフー:だって今、そういうときじゃないでフか。もっと状況に酔ってくださいでフ……
グリモワール:そういうのは、恋愛ボケした痛いカップルにやらせておけばいいのよ……で、なに?
ビエンフー:いよいよカノヌシとの戦いでフ。ひとことごあいさつをと思ったんでフよ
グリモワール:今生のお別れ、しちゃうんだ……もう
ビエンフー:相手が相手でフからね……
ビエンフー:さすがのマギルゥ姐さんも、今度ばかりはなにがあるかわからないと思ってるみたいでフ
グリモワール:器がどう考えようと、最後まで一緒に戦うのがあたしたち、凡隷の生き方でしょ……
ビエンフー:そう思って、これまでもずっとマギルゥ姐さんのむちゃぶりに耐えてきたでフよ……でフけど
ビエンフー:「よく頑張ったの〜」とか「器になれてよかった」とか「勝利したら、この身の女子を紹介するぞ」とか──
ビエンフー:ひとことぐらい姐さんから、ねぎらいの言葉があったっていいじゃないでフか……
グリモワール:そんなの言う子じゃないって、知ってるのに?
ビエンフー:だからこその……マギルゥ姐さんのポロリが聞きたいんじゃないでフか……チラリズム的な
グリモワール:嫌なら、また聖寮に情報流して寝返っちゃえば……?
ビエンフー:そんな……今さら情報なんて求められてないでフし、ボクの能力なんて、向こうには全く必要ないでフよ
グリモワール:自分の力に、自信がないんだ……
ビエンフー:……今まではマギルゥ姐さんの才能もあって、ボクはここまで連れて来てもらってでフけど
ビエンフー:カノヌシ相手に、ボクが姐さんのお役に立てるのか、姐さんを守ることができるのか……不安なんでフよ
グリモワール:でも……行くんでしょ?
ビエンフー:はいでフ!!ノルミン・ブレイブなんて名前をもった因果ってやつでフねー
グリモワール:……できてるじゃない
グリモワール:あんたは、ずっとマギルゥを守ってきたでしょ
グリモワール:あの子の壊れた心には、あんたの無神経さとめげなさが必要だったのよ……
グリモワール:でなきゃ、どーでもいいとか言いながら、逃げたあんたを捜して、再契約なんてしないわよ
ビエンフー:ああ、グリモ姐さんにそんなこと言われると、ビエ〜〜ン……ボク、信じちゃいまフよ……
グリモワール:信じなさい。ノルミン・ハッピーアドヴァイスのあたしが言うんだから、間違いないわよ……
ビエンフー:……まったく、そんな冗談言うなんて、グリモ姐さんらしくないでフね
グリモワール:あんたの望み通り、酔ってあげたのよ……状況にね。ふぅ……
※枠外タッチで閉じます。
ベルベット:マギルゥ、そういえばまだ、あんたから100ガルドもらってなかったわね
マギルゥ:はて、なんの100ガルドじゃったかの?
ベルベット:とぼけなくていいから、あの100ガルド、払ってよね
マギルゥ:冷めた……冷めたわー。100年のコーヒーも冷めるわー
マギルゥ:命を賭けて、お主の「復讐」に付き合おうという儂に、この期に及んで、100ガルドとな?
マギルゥ:もーいー帰らせてもらうー
ベルベット:そう。じゃあ、ここでお別れね
マギルゥ:引き止めんか、そこは!カノヌシ打倒には儂のトラブルメーカーぶりは不可欠じゃろうに
マギルゥ:儂もオニではないんじゃ。条件次第ではこの気持ちを覆すのもやぶさかではないぞ?
ベルベット:……丸のみされる方に100ガルド
マギルゥ:は?
ベルベット:あんたがカノヌシに丸のみされる方に100ガルド賭けたのよ
ベルベット:あんたが勝ったらあたしへの借金はチャラ。文句ないでしょ
マギルゥ:大ありじゃよ
マギルゥ:元より祓う必要もないはした金をちらつかせ、一見冷たい言葉からの優しさ──からの!
マギルゥ:情に厚い魔女を酷使して、カノヌシどもを倒そうというお主の腹づもりに、気づかぬ儂じゃと思うたか?
ベルベット:マギルゥ、あんた……
マギルゥ:100億万ガルドじゃ!お主が生きて帰る方に、100億万ガルド!!
マギルゥ:締め切りまであと3……2……1……
ベルベット:…………
マギルゥ:ゼロ〜!賭け成立じゃの!!というわけで、帰るのはヤメじゃ!!
マギルゥ:むりくりにでも、カノヌシとアルトリウスを倒し、お主を生還させねばらならんでのー
ベルベット:相変わらず勝手な奴ね
マギルゥ:いやいやいや、そこは……「ありがとう・心の友・マギルゥ♪」じゃろうに!
ベルベット:はいはい……ありがとう、心の友・マギルゥ
ベルベット:でも、あたしは自分の信じる通りに生きる
マギルゥ:まったく、お主の方がよっぽど勝手じゃわ
マギルゥ「損者三友因果応報」の大魔法使いマギルゥ姐さんに恥をかかせおってからに〜〜!
マギルゥ:ま、どーでもいいがの♪
※枠外タッチで閉じます。
エレノア:……私たちは、勝てるでしょうか
ロクロウ肩の力を抜けよ……なんて言っても無駄だよな。でも、そんなガチガチじゃ、勝てる戦いにも勝てんぞ
エレノア:どうしたら、あなたのようになれますか?あ、業魔になる以外で
ロクロウ:そこは冷静じゃないか
ロクロウ:そういう時は、戦いの後のことを考えるのさ。晩飯のおかずとか、次に読む本とか、なんだっていい
エレノア:……なら、聞かせてください。ロクロウは、この戦いが終わったら、どうするつもりですか
ロクロウ:?
エレノア:シグレ様を倒した今、アルトリウス様とカノヌシを倒せば、あなた以上の剣士などどこにもいません
エレノア:なにを目標に生きてゆくのですか?
ロクロウ:まずは、シグレを追い越さねえとな
エレノア:えッ……勝ったじゃないですか
ロクロウ:刀三本使ってな。だが、大太刀一本の勝負じゃあ、まだまだあいつの高みには届いちゃいない
ロクロウ:それに、世界は広いんだ。バケモノみたいに強い奴がどっかにいるかもしれないだろ?
エレノア:……どこまでも、ぶれない人ですね
ロクロウ:業魔だからな。で、お前はどうするんだ?
エレノア:対魔士として……いえ、一人の人間として、人々のために私ができることを続けていくと思います
エレノア:ですから、もしああたが他の業魔のように人間を襲うようなことがあれば、私は迷わずあなたと戦います
ロクロウ:そうか。だが、俺は強いぜ?
エレノア:心配無用です。この戦いで私も自信をつけて、もっと強くなりますから
ロクロウ:なら、さっきの質問は答えるまでもないな
エレノア:ええ、行きましょう、勝ちに
ロクロウ:応!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:カノヌシを倒した後も、アイゼンには僕が見えるんだよね
アイゼン:ああ。霊的な存在である聖隷や業魔は、これまで通り互いを認識できる
アイゼン:だが、人間からはほとんど見えなくなるだろうな。マギルゥが言っていたように
アイゼン:寂しいのか
ライフィセット:アイゼンは寂しくないの?ベンウィックや海賊団の人たちからも見えなくなっちゃうのに
アイゼン:見えていようが見えていまいが、あいつらはもう、俺が共にいることを知っている
アイゼン:幽霊に戻って、連中の冒険をせいぜいスリリングにしてやるさ
ライフィセット:見えなかったときは、海賊のみんなはアイゼンのことを船に取りついた幽霊だと思ってたんだよね
アイゼン:ああ。あの頃に戻ったと思えばいい
ライフィセット:……見えなくなっても、あの船と海賊団と一緒に、アイゼンは生きていくんだね
アイゼン:それでも、必ず別れは訪れる
アイゼン:人間よりもずっと長く生きる俺たちには、それは避けられないことだ
アイゼン:誰だって別れはつらい。そのつらさを味わいたくなければ、人間と関わらなければいいだけのことだ
アイゼン:聖隷の世界でだけ生きている連中もいる。愚かな人の世の争いを、遠鳴りのように感じながらな
アイゼン:だが、俺には、限られた時間を必死で生きようとする人間たちの姿が輝いて見える
ライフィセット:うん……
アイゼン:もちろん、聖隷にも終わりはある。俺にもな
アイゼン:それがあと五百年なのか、千年なのか、それとも明日がその日なのかはわからん
アイゼン:だからこそ、目の前の一瞬一瞬を全力で、あいつらとともに生きたい
ライフィセット:その気持ちが、ベンウィックたちにも伝わってるから、見えてても、見えなくても寂しくないんだね
アイゼン:そうだと、俺は信じている
ライフィセット:僕は……
アイゼン:迷いがあるなら、とことん迷えばいい。だが、最後は自分で決めろ
アイゼン:誰かのためじゃなく、自分のために
ライフィセット:……うん
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:ベンウィックが言ってたけど、お米のとぎ汁で木の床を磨くとピカピカになるって本当?
ベルベット:そうよ。汚れが落ちる上に、米ぬかの油でツヤ出しもできるから、一石二鳥なの
ライフィセット:へぇ、そうなんだ
ベルベット:お米のとぎ汁は色々使い道があるの
ベルベット:土鍋を初めて使うときにはとぎ汁を煮沸させると長持ちするようになるし
ベルベット:魚の干物を戻すときにとぎ汁を使えば、臭味もとれるし、身も柔らかくなるのよ
ベルベット:それに、畑や鉢植えの水やりに使えば肥料にもなるんだから
ロクロウ:ほう、ベルベットは案外、いい嫁さんになれそうだな
ベルベット:案外で悪かったわね
ライフィセット:そういうことって、本には載ってなかったけど、どうやって知ったの?
ベルベット:セリカ姉さんが、母さんから教わったことを、あたしにも教えてくれたの
ライフィセット:他にはどんなことを教わったの?
ベルベット:料理のいろはもコツも、母さんの技はぜんぶセリカ姉さんから教えてもらった
ベルベット:それこそ、お米のとぎ汁は料理でも大活躍でね。大根を煮る時にツ空けば、苦みがとれるし
ベルベット:とぎ汁でたけのこやゴボウを煮ると、柔らかくて白くきれいに仕上がるの
ベルベット:「とぎ汁を捨てる人に家事上手はいない」って、母さんが姉さんに、姉さんがあたしに教えてくれた
ビエンフー:細やかさが光まフね〜〜
ベルベット:弟……子供に野菜を食べさせたいときは、苦みがなくて、柔らかいほうがいいのよね
ライフィセット:ベルベットは、いいお母さんになれそうだね
ベルベット:お母さんか……
ベルベット:ところで、ビエンフー、あんたが床に置いたザルに入っているのは、野菜くずのようだけど?
ビエンフー:料理で出た生ごみを捨てに行くところでフ〜
ベルベット:はぁ?なに言ってるの、あんたは!?まだまだ役立つものばっかりじゃないの
ベルベット:大根の葉っぱは小口切りにして油で炒めて、醤油、みりん、鰹節、ごまで味付けしたら、ふりかけでしょ
ベルベット:ジャガイモの皮の内側で鏡を磨けば曇り止めになるし、レモンの切れ端に粗塩で洗面台はピカピカに磨けるわ
ライフィセット:すごいよ、知恵の宝庫だね
ベルベット:前から思ってたんだけど、海賊団の食材の使い方は雑すぎるのよ。ゴミが出過ぎだわ
ビエンフー:こ、細かすぎるでフ……
アイゼン:面倒な小姑にもなれそうだな
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:フェニックス兄さん、やっと行ってくれたでフね。グリモ姐さん、もう出てきても大丈夫でフよ〜〜
グリモワール:ふぅ……隠れてても汗が出るほど、暑苦しかったわね……相も変わらず……
ロクロウ:そういやあ、二人ともフェニックスがいる時にはまったく表に出てきてなかったよなぁ
エレノア:同じ種族なのに、会いたくない理由でもあるんですか?
グリモワール:はぁ……気になるわよねぇ……いいわ、もう大丈夫っぽいから、話してあげる……
グリモワール:ノルミン族はね、大きく分けて二つの種族があるの。「イヌ系ノルミン」と「ネコ系ノルミン」の二つ……
ビエンフー:フェニックスみたいにヒトにつくのが「イヌ系」で、モノや場所につくのが「ネコ系」でフよ
ライフィセット:「イヌは人間について、ネコは家につく」って言うよね
ロクロウ:ずっとマギルゥに使われてたお前は、イヌ系ってことか?
ビエンフー:それが、違うんでフ。本来のボクの力は、マギルゥ姐さんの使う式神に作用してるんでフよ
ビエンフー:でフから、ボクはネコ系なんでフ。魔女に使われている意味でも、ネコでフけどね
ビエンフー:話を戻しまフが、イヌ系の子の多くは人里に紛れ込んで人とほちゃほちゃしながら、はんなり生きてるんでフ
ビエンフー:ネコ系の僕たちは、森とか遺跡とかでモノ相手にけだる〜〜く、げんなり生きてるんでフよ
グリモワール:その中でも、あたしたちは異端だから、こんな風に人の世の中で好きにやらせてもらってるけどね……
ベルベット:で、会いたくない理由ってなんなの?
グリモワール:「空の青」と「海の青」が違うように……「ざるそば」と「もりそば」が違うように……
グリモワール:あたしたちの間には、埋められない溝があるのよ……
ロクロウ:「ざるそば」と「もりそば」は、ほぼほぼ同じだろ?
アイゼン:いや、きざみノリは、そばに大きな違いをもたらすぞ。きざみノリの幅もミリ単位でこだわる奴もいる
アイゼン:何があったかはしらんが、溝は埋まらん
ロクロウ:いや、そんなに違うか……?
アイゼン:「寒天」と「ゼリー」は同じか?
エレノア:それは違いますね。同じにしてもらっては困ります
ロクロウ:それも、ほぼほぼ同じでいいだろ
ライフィセット:じゃあ……「おしるこ」と「ぜんざい」みたいな感じかな
ロクロウ:おお、それはなんか微妙に違いにこだわりたいな
マギルゥ:つまり、「おはぎ」と「ぼたもち」の違いじゃよ
ベルベット:それは同じだから
グリモワール:……まあ、そんな感じで、長年、砂糖水で砂糖水で塩水を洗うような抗争を続けてるのよ……
ライフィセット:ただの水掛け論だね……
エレノア:……そんなことで、アイゼンの妹さんは大丈夫なんでしょうか……?
グリモワール:心配はいらないわよ……
グリモワール:暑苦しいし、時々わけがわからないこと言うけど、責任感だけは強い子だもの、フェニックスは……
グリモワール:安心して任せておけばいいわ
グリモワール:まあ、あんまりこき使うと反乱とか独立闘争とか言い出すけどねぇ〜〜……
※枠外タッチで閉じます。
モアナ:ねぇねぇ、ダイルってダッピするのかなぁ?
ライフィセット:う〜ん……見た目はユミルオオトカゲに似てるけど、元は人間だし、業魔だから……しないんじゃないかな
ダイル:ヘックション!!なんだ、俺の噂したか?
モアナ:したよ!ねぇ、ダイルはダッピするの?そのへんのじじょー、モアナ、しりたいんだけど
ダイル:なんだよ、失礼な疑問だな
モアナ:だって、するでしょー?トカゲなんだから
ダイル:しねーよ
モアナ:ダッピしないダイルなんて、みりょくハンゲンだよ……
ライフィセット:でも、尻尾は再生してたよね
モアナ:そーだよ!!シッポがはえるのはトカゲだよ!ホントはダッピするんでしょ?
ダイル:シッポは生えても、脱皮はしねーんだよ
ダイル:でも、昨日は日に焼けすぎちまったから、腕の皮がちょっと剥けてるけどな……ハッハッハッ!
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……?
ダイル:……モアナ、来てないよな
ライフィセット:いないけど、モアナを捜してるの?
ダイル:いや、その逆で、あいつから逃げてるんだよ
ダイル:俺のしっぽが切れるのを見て、モアナがすっかりハマッちまってよ
ダイル:油断してると、すぐにビックリさせられて、せっかく生えてきたしっぽが切れちまうんだ
ライフィセット:しっぽが切れると、なにか困るの?
ダイル:いざってときに、しっぽを切って逃げられないだろ?
ライフィセット:ああ……
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:……うわぁ……ふふっ……
ベルベット:あの子、暇さえあれば本を読んでるわね
アイゼン:知識は世界を広げてくれる
アイゼン:テレサに支配されていた頃のあいつにとって、本を読むということは、冒険そのものだったんだろうな
ライフィセット:……ん?どうしたの?
ダイル:ずいぶん難しそうな本を読んでるじゃねえか
ライフィセット:恐竜の本だよ!大昔、人間が生まれる前にこの世界を支配してた、巨大な生物なんだって
ライフィセット:ディランとかトリケプとかブラッキーとか種類がたくさんいて、カッコイイんだよ
ベルベット:……これ、ドラゴンじゃないの?
ライフィセット:似てるけど、ドラゴンみたいに火山の中じゃ生きられないし、寒さにも弱かったみたい
ライフィセット:でも、他の生き物じゃかなわないくらい、大きくて強かったんだって
ロクロウ:修行相手には良さそうだな。特に、このギガスピノってのが気に入ったぜ
エレノア:体の両側から、巨大な刃が飛び出していて、まるでロクロウの二刀流みたいですね
ライフィセット:別名「双剣竜」っていうんだよ
ロクロウ:ほう、まさに俺の相手にふさわしいヤツだな
ベルベット:……で、結局なんなの、恐竜って
エレノア:見た目は、トカゲみたいですよね
ダイル:俺のご先祖さまかな
ロクロウ:お前は人間だったろ
ダイル:おっといけねぇ、すっかりこの身体に馴染んじまった
ライフィセット:恐竜も、しっぽ切れるのかな……
※枠外タッチで閉じます。
ダイル:なあ、クロガネ、聞いてくれよ
クロガネ:またグチか……
ダイル:またって言うなよ
ダイル:俺は、ベルベットや海賊どもに、気づきゃ荷物ハコベだ、あの島行って来いだって、こき使われてるんだぜ
クロガネ:頼られているってことじゃないのか?
ダイル:そうかもしんねえけどよ、連中見てるとよ、あんたのことは顔色窺って、遠慮してるみたいだけど
クロガネ:……顔はないがな
ダイル:ああ、そいつは失敬
クロガネ:こう見えても、お前が知らないだけで、案外、鉄がらみの道具を創ったり、修理したりしている
クロガネ:居候を決めこむほど、両の皮は厚くない。顔はないがな
ダイル:ははは、おもしろい爺さんだな。若いのに使われても、腹が立ったりしないのか
クロガネ:俺は、刀のことだけを考えて生きてきた。連中のようなガキと話したのは何百年ぶりかだ
クロガネ:ジジイの俺にとっては、新鮮な迷惑さだ
ダイル:俺も最初はそう思って、言うことを聞いてやってたんだけどよ
ダイル:い顔してたら山ほど仕事を押し付けられちまって、あんたみたいに強面にしときゃよかったんだよ
クロガネ:顔はないがな
ダイル:だから……!そこは真面目に聞いてくれよ
クロガネ:覚悟を決めろ
クロガネ:命を賭けて、自分たちの道を進む連中と同じ船に乗ったんだろう、俺もお前も
クロガネ:嫌ならさっさとしっぽを巻いて船を降りろ
ダイル:しっぽはないがな
※枠外タッチで閉じます。
ライフィセット:…………
ベルベット:その虫、カブトムシかクワガタかわかったの?
ライフィセット:……実は、まだ調べてないんだ
ベルベット:どうして?ロクロウもアイゼンも知りたがってるんじゃないの?
ライフィセット:だからだよ。二人とも思い入れが強いし、どっちの説も説得力があったし
ライフィセット:それに、もし本当に新種だとしたら、僕の判別で、二人の運命が変わっちゃうんだよ
ベルベット:運命だなんて大げさな……
ロクロウ:どうしたんだ?
マギルゥ:クワブト問題の続きじゃよ。主らを気遣って、坊は結論を出せずにおるのじゃ
エレノア:あなたたちは大人なんですから、どちらか折れていただけませんか?
アイゼン:カブトムシ、ここだけは譲れん
ロクロウ:クワガタだ
マギルゥ:いっそのこと、角を全部取ってしまえ。そうすればモメずに済むじゃろ
ベルベット:それでいいんじゃないの
ロクロウ:馬鹿言うな。俺から剣を取ったら、なにが残る?クワガタのハサミってのは、そういうものだぞ
アイゼン:カブトムシの角を奪うというのは、流儀を捻じ曲げるクソ野郎の発想と同じだ
アイゼン:たとえ俺たちが対立しようとも、この件はとことん議論を尽くすべきだ
ビエンフー:エレノア様〜〜!頼まれてた「ミッドガンド希少昆虫図鑑」でフ〜〜
エレノア:ありがとう。この図かんなら、あの虫のこともきっと……
エレノア:ありました!この虫の正式名称は……
エレノア:「グロッサアギト」です
ロクロウ:ってことはやっぱりこいつはクワ──
エレノア:カナブンです
エレノア:割と珍しいカナブンだそうです。これでスッキリしましたね
ライフィセット:……ち、違うよ
ライフィセット:この虫は、新種だよ……!だからライフィセットクワブトだよ!
ライフィセット:決定だよ!これだけは譲れないからね
※枠外タッチで閉じます。
ベンウィック:副長、あの王子の鷹……ていうかグリフォン、なんとかならないっすか?
ベンウィック:狩りとか言って、日に日にとんでもないものを捕まえて来て、デッキが大変なことになってるんすよ
アイゼン:鷹が狩るものなど、たかが知れてるだろう?
ベンウィック:最初は、海草や魚とかだったから食材になってたけど、喜んでたら、どんどんエスカレートしてきて……
ベンウィック:150キロ級のシーラカンブリとか、350キロ級のトドメカジキとか捕まえるようになって!
エレノア:助かるじゃないですか
ベンウィック:あの鷹、獲物を空から甲板に向かって落とすんだぞ!
ベンウィック:トドメカジキを、刀みてえな鼻から落としやがって。刺さったらそれこそトドメだろ!助からねえだろ!
ロクロウ:注意すればいいだろう?
ベンウィック:そうなんだけどさ。鷹見てる王子の幸せそうな顔と、注意されたときの哀しい顔を見ちまうと、なぁ……
ライフィセット:グリフォンを飛ばしている時の王子は、楽しそうだったよ
ライフィセット:時々笑いながら「ホグホグ、もっと飛びたいかい」ってグリフォンに優しく話しかけてた
ベルベット:ホグホグ……?
ライフィセット:ホークとグリフォンの頭文字を合わせてホグホグだって、モアナが言ってたよ
ベルベット:…………
アイゼン:王子は初めて自由を感じているんだろう
アイゼン:今までは「やるべき」でやってきた王子が、自分の意志で、鷹を救うために飛び出したんだ
アイゼン:ホグホグは、もう一人の自分なんだ。王子にとってはな
ベンウィック:で、どうするんすか?
アイゼン:大した被害が出てるわけじゃない
ベンウィック:甲板に大穴あいたんすよ!!
アイゼン:王子だって限度はわきまえているはずだ。ささやかな楽しみを奪う必要はない
マギルゥ:いやぁ、どうかのー、王子の自由は暴走しとるぞ
マギルゥ:今、甲板で見てきたんじゃが、あのグリフォン、今度はエレファントマグロを捕まえたようじゃぞ
ライフィセット:エレファントマグロって、シャチも丸呑みするほど巨大なマグロだよね
ロクロウ:そいつはもう、ほぼほぼ業魔だろ?
マギルゥ:うむ、ゾウの耳のようなエラが特徴の巨大魚じゃし、業魔の可能性もなくはないのー
マギルゥ:ご祝儀相場なら2000万ガルドは下らぬ大物が、バンエルディアの空で、妖しく光っておったぞ〜〜
ベンウィック:2000万ガルド!?なんだよ、あの王子とグリフォンも役に立つじゃないか
エレノア:バンエルティアの空……?
アイゼン:いかん!!ベンウィック、王子を止めろ!
ベンウィック:アイアイサー!!落とすな、落とすなよ〜〜!!
(衝撃音)
※枠外タッチで閉じます。
ビエンフー:……人を寄せ付けない絶海の孤島!島の地中に隠された巨大施設!!
ビエンフー:まさに秘密基地……燃えるでフ〜〜
ライフィセット:……そうだね
ビエンフー:さっきは秘密基地みたいって、喜んでたのにどうしたでフ?ノリが悪いでフよ
ライフィセット:でも、ここは監獄だし、無理矢理捕まえられた人はつらかっただろうし……
ベルベット:あたしのことなら気にしなくていいわよ。ここが嫌なら拠点なんかにしないから
ロクロウ:俺だって捕まっていたが、この島には秘密基地のロマンを感じるぜ!
マギルゥ:儂は、差し入れのマロングラッセを、看守に食べられてしまった恨みがこみ上げるがの
ロクロウ:だから気にせず、秘密基地に熱くなればいいさ
ライフィセット:うん
アイゼン:だが、喜んでいるだけではだめだ
アイゼン:今後の策戦行動をより円滑に進めるためにも、秘密基地を整備、改良しておく必要がある
エレノア:建物は頑丈ですし、このままで十分なのでは?
アイゼン:馬鹿も休み休み言え。監禁に特化した牢獄のままではいいはずがないだろう
マギルゥ:どうしたいというのじゃ?
ロクロウ:まずは、煙幕発生装置だな
ロクロウ:不慣れな場所でのめくらましは効くぜ。あとで建物中のススをふき取る必要はあるけどな
ベルベット:却下
ライフィセット:僕は、消火装置が必要だと思う。ヘラヴィーサを見て、火事は怖いと思ったから
ベルベット:水の聖隷術を使えるあんたたちが消化すればそんな装置いらないでしょ
ライフィセット:……あ、うん……
アイゼン:最も優先すべきは地下道だ
アイゼン:いざという時のために、地下からの脱出路が必要だ。通路への隠し扉も、敵を欺くダミー扉もいるぞ。
ベルベット:二つも港があるんだから、それで十分でしょ
アイゼン:せめてくる奴が港を見過ごすはずがないだろう。地下道だけでは、最初に作るべきだ
ベルベット:周りは海なのよ?その地下道はどこに抜けるの?
アイゼン:近くの無人島まで、海底にトンネルを掘るに決まってるだろう
マギルゥ:近くに島などないぞ
アイゼン:地下道のためなら、俺が島を作る
ベルベット:実現性がなさすぎる……
エレノア:夢を熱く語っているだけみたいですね
アイゼン:夢を語ってなにが悪い。これはロマンの話だろう?なぜわからんのだ……
ロクロウ:大丈夫だ、お前の気持ちはよくわかる
ロクロウ:だが、あいつらに理解してもらうのは無理だ
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ダイル:……だから!!お前はなにもわかってねえな!!
ベンウィック:わかってねえのは、そっちだろ!!これだからおっさんは困るんだよな、おっさんは
ダイル:若造が、なま言いやがって
ベルベット:やかましいわね!静かにしないなら、その頭ごと喰らって黙らせてもいいけど?
エレノア:敵である聖寮の難破船には手を差し伸べるのに、味方同士はケンカだなんて、理解に苦しみます
ベンウィック:なにが理解できないんだよ
エレノア:敵味方の態度や振る舞いの落差です
ベンウィック:なんだ、そんなこともわかんねえのかよ
ダイル:聖寮の偉いヤツは、対魔士になにを教えてるんだ?船乗りの基本も知らずに人助けとか言ってんのかよ
エレノア:敵を助けるのが、船乗りの基本だというのですか?
ダイル:ああ、話になんねえ!ベンウィック、対魔士のお嬢さんに教えてやんな
ベンウィック:あのな、難破したり遭難したりしてる人のことを、海では「敵」とか「味方」とか言わねえの
ベンウィック:当たり前のように船に乗ってるけどさ、一度、海がどれだけ広くて深いかよく見てみなよ
ベンウィック:船がなくて、一人だと思ったらゾッとするぜ?
エレノア:それは……そうかもしれませんけど……
ベンウィック:板切れ一枚がどれだけ心強い助け舟になるかをみんな知ってるんだ
ベンウィック:だから、俺たちは人の船を襲って鎮めたとしても、海に逃げた連中はみんな引き揚げてやるんだ
ダイル:襲っておいて助けるなんざ、矛盾してるように思えるかもしれねえが、それが船乗りなのさ
エレノア:あなたたちって……
ベンウィック:それに、助けてやった連中がまた船を出してくれれば、もう一回、襲ってお宝を巻き上げられるからな
ダイル:そうそう、育てて狩り獲るってのは、世の中の基本だよな
エレノア:やっぱり悪党なんですね……
ベルベット:で、なんでケンカしてたわけ?
ダイル:ああ、そうだった。思い出した!
ダイル:ベンウィックの野郎が、俺が作ったカラアゲにいきなりレモンをかけやがったんだよ!
ベンウィック:かけるのが普通だろ!!
ダイル:あんなにかけちまったら、下味とか隠し味が台無しになっちまうだろうか!!
ベンウィック:あれくらいかけないとダメなんだよ
ベルベット:……こいつらに水かけたくない?
エレノア:氷水を思いっきり
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モアナ:ダイル。メディサが晩ごはんのおかずにするから、タコ業魔をとってきてって。一緒にいこうよ
ダイル:おう。準備したらすぐ行く
モアナ:はやくしてね!!
エレノア:すっかりモアナと仲良しですね
ダイル:なんだか、懐かれちまってるな
ライフィセット:タイタニアが襲撃されたとき、ダイルがモアナたちを守ってくれたのがうれしかったみたいだよ
ライフィセット:トカゲは触るとひんやりしてるけど、ダイルの心はあったかいって言ってた
ダイル:そんなんじゃねーよ
ダイル:シッポがありゃあ逃げたんだがな、生えたそばからおどかされて切れちまうんだから、戦うしかねえだろ?
ライフィセット:あの時も切れてたんだ……
エレノア:その後、モアナはあなたを驚かせるのをやめたんですか?
ダイル:みたいだな。おかげでシッポが伸びてきたぜ
ライフィセット:あっほんとだ……
モアナ:ワッ!!!
ダイル:うわあああああっ!!!!
ライフィセット:あっ、シッポが……!!
エレノア:モアナ、あんまりダイルを驚かせたらダメでしょ?
モアナ:だって……おそいんだもん。モアナ、まちくたびれちゃったよ
モアナ:でも、ごめんなさい……
ダイル:また生えるし、タコ業魔を釣るなら俺のシッポがいちばんいいエサになるから、まあいいさ
ダイル:待たせて悪かったな。さあ、晩飯釣りに行くか、モアナ
モアナ:うん!いくか、ダイル!
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