刀剣乱舞無双攻略>絆レベルと絆会話
「絆レベル」とはキャラクター同士の絆の強さを表すもの。初期状態ではLv.1だが、最大でLv.5にまで上昇する
以下の条件を満たした場合に経験値が入り、一定以上に達すると絆レベルが上昇する。
各絆レベルでは以下のような特徴、特典がある。
Lv. | 特典 | 次のレベルまで |
1 | - | 1500 |
---|---|---|
2 | 1つ目の絆会話(下記)が発生する | 1000 |
3 | バディ追撃(強攻撃時にバディが稀に追撃する)を習得する | 1200 |
4 | バディ反撃(被ダメージ時にバディが稀に反撃する)を習得する、絆会話が3つある相手の場合は2つ目が発生 | 1300 |
5 | 2つ目(3つ目)の絆会話が発生する | - |
絆レベルを上げるにはレベルを上げたいキャラ同士を本丸でペアにし、戦場をプレイして経験値を獲得していくしかないが、獲得できる経験値は敵が強いほど多くなる。つまり序盤より終盤の方が上げやすい。全てのキャラ同士の絆レベルを最大にしたい場合は、シナリオを最後まで進めてから集中的に上げるようにした方が効率は良い。
「絆会話」は各キャラ同士の交流を描く会話。
条件を満たしたものは本丸メニューの「回想」→「映像記録鑑賞」から見ることができる。
基本的には特定の組み合わせで2つずつ絆会話があるが、同じ部隊のキャラが相手だと3つ存在する。
1つ目は絆レベル2で発生する。会話が3つまである場合の2つ目は絆レベル4で発生する。2つしかない場合の2つ目、あるいは3つまである場合の3つ目は絆レベル5で発生する。
会話は「絆レベル」が上昇した時に解放されるが、同じ部隊にいる特に関係が深いキャラ同士だと特定の戦場での出来事が話題になることなどがあり、この場合はその戦場をクリアするのも条件になっている。
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相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | - | 千子村正 | 流す達人/親睦の提案/騒がしいくらいで |
蜻蛉切 | 気遣いせずには/憧れを見つめる/理想と現実 | 歌仙兼定 | 花を纏う/盛りだくさん |
一期一振 | のどけき光/本日も好天なり | 鯰尾藤四郎 | 意外な共通点/仲良きことは |
日向正宗 | 本丸事情/修繕 | へし切長谷部 | 手入れされた本丸/忠義の示し方 |
薬研藤四郎 | お前はまるで…/温かな喝 | 巴形薙刀 | 猫に好かれるには/好かれた原因 |
面影 | 任務とは違う仕事/気負いを捨てて | 鶴丸国永 | 世代の差/爺の役目 |
燭台切光忠 | 挑戦状/真心こめて | 大倶利伽羅 | 刀身の意匠/秘めたる誇り |
山姥切国広 | 猫と布/親切な者 | 山姥切長義 | 泰然自若/観念する |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 流す達人/親睦の提案/騒がしいくらいで | 千子村正 | - |
蜻蛉切 | いつもの説教/本気の心配/理解者 | 歌仙兼定 | 無意識の鍛練/不審者騒動 |
一期一振 | 健康法/新たな日課 | 鯰尾藤四郎 | 過去と未来/過去と思い出 |
日向正宗 | 過去の主と刀/物事のとらえ方 | へし切長谷部 | 茶道の手ほどき/茶会のあと |
薬研藤四郎 | 三寒四温/温度調整 | 巴形薙刀 | 実戦的読書/おすすめの書 |
面影 | 脱ぎやすそうな服/脱ぎ方百番勝負 | 鶴丸国永 | 点検に向けて/あわや大事件 |
燭台切光忠 | 食事当番/調理のいろは | 大倶利伽羅 | おせっかい/深まる仲? |
山姥切国広 | 布の汚れ/新しい布 | 山姥切長義 | 特訓への興味/お気に入りの場所 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 気遣いせずには/憧れを見つめる/理想と現実 | 千子村正 | いつもの説教/本気の心配/理解者 |
蜻蛉切 | - | 歌仙兼定 | 花を食す/四季を愛でる気持ち |
一期一振 | 似た者同士/気苦労絶えず | 鯰尾藤四郎 | 身の丈ゆえに/創意工夫 |
日向正宗 | しその相談/しその様子 | へし切長谷部 | たまには一息/最高の休息を |
薬研藤四郎 | できること、できないこと/できないこと、できること | 巴形薙刀 | 履物/新たな発見 |
面影 | 狭い廊下/順応 | 鶴丸国永 | 因子の謎/春に似合いの… |
燭台切光忠 | 「斬った」逸話/思わぬ効果 | 大倶利伽羅 | 縮まらない距離/縮まった距離 |
山姥切国広 | 夜更かしは大敵/夜更かしの理由 | 山姥切長義 | 天下三名槍/はたから見れば |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 花を纏う/盛りだくさん | 千子村正 | 無意識の鍛練/不審者騒動 |
蜻蛉切 | 花を食す/四季を愛でる気持ち | 歌仙兼定 | - |
一期一振 | 兄の気苦労/荷を分かち合う/家族のように | 鯰尾藤四郎 | 雅の指南/必要なのは…/感性 |
日向正宗 | 石田三成と細川忠興/変わらぬ関係性/きみの強さ | へし切長谷部 | 熱い勧誘/早起きは三文の得 |
薬研藤四郎 | 目利き/掘り出し物 | 巴形薙刀 | 報告書と日記帳/日記とは |
面影 | 趣味を探す/ここで一句 | 鶴丸国永 | 探し物/忘れられた仕掛け |
燭台切光忠 | 春疾風/それぞれの「雅」 | 大倶利伽羅 | 犬猿の仲/雪解け…? |
山姥切国広 | きみの花は/こぶし、開いて | 山姥切長義 | 服の悩み/雨の日の愉しみ |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | のどけき光/本日も好天なり | 千子村正 | 健康法/新たな日課 |
蜻蛉切 | 似た者同士/気苦労絶えず | 歌仙兼定 | 兄の気苦労/荷を分かち合う/家族のように |
一期一振 | - | 鯰尾藤四郎 | 変えるべきは未来/成長のわけ/歩み続ける |
日向正宗 | 息抜き/返礼品/謝罪 | へし切長谷部 | 名と誉れ/一番の誉れは |
薬研藤四郎 | 弟の思い/兄の信念 | 巴形薙刀 | 趣味とは/好むもの |
面影 | 好き嫌い/好みの料理 | 鶴丸国永 | 癒しの間/畳は逃げない |
燭台切光忠 | 香りの魔力/調合の妙 | 大倶利伽羅 | 手合わせ求む/たまの慣れ合いも… |
山姥切国広 | 布越しの視界/学べるものは | 山姥切長義 | 兄弟とは違う/関わって気づくもの |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 意外な共通点/仲良きことは | 千子村正 | 過去と未来/過去と思い出 |
蜻蛉切 | 身の丈ゆえに/創意工夫 | 歌仙兼定 | 雅の指南/必要なのは…/感性 |
一期一振 | 変えるべきは未来/成長のわけ/歩み続ける | 鯰尾藤四郎 | - |
日向正宗 | 励ましの変顔/相談してね/お返しの変顔 | へし切長谷部 | 辟易/急変 |
薬研藤四郎 | 弟勝負!/兄の性分 | 巴形薙刀 | 大切なもの/見えたもの |
面影 | 揺れる髪/鯰の尾の如く | 鶴丸国永 | 子犬の行方/生き切る |
燭台切光忠 | 有機栽培について/野菜と薬草 | 大倶利伽羅 | 難攻不落/急転直下 |
山姥切国広 | 鯰と鯰尾/鯰の尾 | 山姥切長義 | 以前の印象/ちゃっかりもの |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 本丸事情/修繕 | 千子村正 | 過去の主と刀/物事のとらえ方 |
蜻蛉切 | しその相談/しその様子 | 歌仙兼定 | 石田三成と細川忠興/変わらぬ関係性/きみの強さ |
一期一振 | 息抜き/返礼品/謝罪 | 鯰尾藤四郎 | 励ましの変顔/相談してね/お返しの変顔 |
日向正宗 | - | へし切長谷部 | 主の不在を守るもの/献策の報酬は… |
薬研藤四郎 | 狙う場所/ふたりでちょうど | 巴形薙刀 | 手ぬぐいの場所/意識の変化 |
面影 | 刀種の違い/いい相性 | 鶴丸国永 | 人の手を渡り歩く/新しい解釈 |
燭台切光忠 | 手袋の種類/おしゃれ談義 | 大倶利伽羅 | 手伝いたい/これからも |
山姥切国広 | こま回し/回し方の研究 | 山姥切長義 | 梅干しへの興味/梅干し作り |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 手入れされた本丸/忠義の示し方 | 千子村正 | 茶道の手ほどき/茶会のあと |
蜻蛉切 | たまには一息/最高の休息を | 歌仙兼定 | 熱い勧誘/早起きは三文の得 |
一期一振 | 名と誉れ/一番の誉れは | 鯰尾藤四郎 | 辟易/急変 |
日向正宗 | 主の不在を守るもの/献策の報酬は… | へし切長谷部 | - |
薬研藤四郎 | 物の言い方/鉄は熱いうちに打て/艱難汝を玉にす | 巴形薙刀 | 忠言/支え合い/側仕えへの推薦 |
面影 | すれ違い/茶の誘い/名前を呼ばれて | 鶴丸国永 | 花冷え/気まぐれな太陽 |
燭台切光忠 | 主への思い/頼ることの重要性 | 大倶利伽羅 | 密かな悦び/幸運を招く竜 |
山姥切国広 | 幽霊、闇夜に現る/幽霊、大いに嘆く | 山姥切長義 | 協調を望む/団らんへの参加 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | お前はまるで…/温かな喝 | 千子村正 | 三寒四温/温度調整 |
蜻蛉切 | できること、できないこと/できないこと、できること | 歌仙兼定 | 目利き/掘り出し物 |
一期一振 | 弟の思い/兄の信念 | 鯰尾藤四郎 | 弟勝負!/兄の性分 |
日向正宗 | 狙う場所/ふたりでちょうど | へし切長谷部 | 物の言い方/鉄は熱いうちに打て/艱難汝を玉にす |
薬研藤四郎 | - | 巴形薙刀 | 戦場の感想/主の感想/主を思えばこそ |
面影 | ひとりを気遣う/笑顔を褒める/仲間の良さ | 鶴丸国永 | 洗濯の達人…?/純白の真実 |
燭台切光忠 | 朝の体操/よく動きよく食べよ | 大倶利伽羅 | 謎の握り飯/握り飯の真実 |
山姥切国広 | 無意識に…/無意識に…? | 山姥切長義 | いざ勝負/負けず嫌い |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 猫に好かれるには/好かれた原因 | 千子村正 | 実戦的読書/おすすめの書 |
蜻蛉切 | 履物/新たな発見 | 歌仙兼定 | 報告書と日記帳/日記とは |
一期一振 | 趣味とは/好むもの | 鯰尾藤四郎 | 大切なもの/見えたもの |
日向正宗 | 手ぬぐいの場所/意識の変化 | へし切長谷部 | 忠言/支え合い/側仕えへの推薦 |
薬研藤四郎 | 戦場の感想/主の感想/主を思えばこそ | 巴形薙刀 | - |
面影 | 複数ある逸話/物語を求める/主を思い浮かべる | 鶴丸国永 | 桜で思いつくのは/話の難しさ |
燭台切光忠 | 主のために/才能開化 | 大倶利伽羅 | 世話を焼きたい/無理難題 |
山姥切国広 | 胸を張れ/誉める効果 | 山姥切長義 | 観察の趣味/観察の理由 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 任務とは違う仕事/気負いを捨てて | 千子村正 | 脱ぎやすそうな服/脱ぎ方百番勝負 |
蜻蛉切 | 狭い廊下/順応 | 歌仙兼定 | 趣味を探す/ここで一句 |
一期一振 | 好き嫌い/好みの料理 | 鯰尾藤四郎 | 揺れる髪/鯰の尾の如く |
日向正宗 | 刀種の違い/いい相性 | へし切長谷部 | すれ違い/茶の誘い/名前を呼ばれて |
薬研藤四郎 | ひとりを気遣う/笑顔を褒める/仲間の良さ | 巴形薙刀 | 複数ある逸話/物語を求める/主を思い浮かべる |
面影 | - | 鶴丸国永 | 驚きと擬態/擬態の擬態 |
燭台切光忠 | 朝の仕事/猫の手 | 大倶利伽羅 | 寡黙な者同士/居心地がいい |
山姥切国広 | あとをつける/擬態するなら | 山姥切長義 | 悪癖/態度に憧れる |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 世代の差/爺の役目 | 千子村正 | 点検に向けて/あわや大事件 |
蜻蛉切 | 因子の謎/春に似合いの… | 歌仙兼定 | 探し物/忘れられた仕掛け |
一期一振 | 癒しの間/畳は逃げない | 鯰尾藤四郎 | 子犬の行方/生き切る |
日向正宗 | 人の手を渡り歩く/新しい解釈 | へし切長谷部 | 花冷え/気まぐれな太陽 |
薬研藤四郎 | 洗濯の達人…?/純白の真実 | 巴形薙刀 | 桜で思いつくのは/話の難しさ |
面影 | 驚きと擬態/擬態の擬態 | 鶴丸国永 | - |
燭台切光忠 | ずんだ餅/一緒に作ろう/詫びならば… | 大倶利伽羅 | 作戦失敗/目の玉/耳に雷鳴 |
山姥切国広 | 宴のお誘い/宴の感想 | 山姥切長義 | 実用的な驚き/不意打ちの訓練 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 挑戦状/真心こめて | 千子村正 | 食事当番/調理のいろは |
蜻蛉切 | 「斬った」逸話/思わぬ効果 | 歌仙兼定 | 春疾風/それぞれの「雅」 |
一期一振 | 香りの魔力/調合の妙 | 鯰尾藤四郎 | 有機栽培について/野菜と薬草 |
日向正宗 | 手袋の種類/おしゃれ談義 | へし切長谷部 | 主への思い/頼ることの重要性 |
薬研藤四郎 | 朝の体操/よく動きよく食べよ | 巴形薙刀 | 主のために/才能開化 |
面影 | 朝の仕事/猫の手 | 鶴丸国永 | ずんだ餅/一緒に作ろう/詫びならば… |
燭台切光忠 | - | 大倶利伽羅 | まさかのもしも/水玉/海の向こうで |
山姥切国広 | 画餅に帰す/率直な意見 | 山姥切長義 | 密約/疲労回復 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 刀身の意匠/秘めたる誇り | 千子村正 | おせっかい/深まる仲? |
蜻蛉切 | 縮まらない距離/縮まった距離 | 歌仙兼定 | 犬猿の仲/雪解け…? |
一期一振 | 手合わせ求む/たまの慣れ合いも… | 鯰尾藤四郎 | 難攻不落/急転直下 |
日向正宗 | 手伝いたい/これからも | へし切長谷部 | 密かな悦び/幸運を招く竜 |
薬研藤四郎 | 謎の握り飯/握り飯の真実 | 巴形薙刀 | 世話を焼きたい/無理難題 |
面影 | 寡黙な者同士/居心地がいい | 鶴丸国永 | 作戦失敗/目の玉/耳に雷鳴 |
燭台切光忠 | まさかのもしも/水玉/海の向こうで | 大倶利伽羅 | - |
山姥切国広 | 視線は語る/視線の意味は… | 山姥切長義 | 熱心/面白い手合わせ相手 |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 猫と布/親切な者 | 千子村正 | 布の汚れ/新しい布 |
蜻蛉切 | 夜更かしは大敵/夜更かしの理由 | 歌仙兼定 | きみの花は/こぶし、開いて |
一期一振 | 布越しの視界/学べるものは | 鯰尾藤四郎 | 鯰と鯰尾/鯰の尾 |
日向正宗 | こま回し/回し方の研究 | へし切長谷部 | 幽霊、闇夜に現る/幽霊、大いに嘆く |
薬研藤四郎 | 無意識に…/無意識に…? | 巴形薙刀 | 胸を張れ/誉める効果 |
面影 | あとをつける/擬態するなら | 鶴丸国永 | 宴のお誘い/宴の感想 |
燭台切光忠 | 画餅に帰す/率直な意見 | 大倶利伽羅 | 視線は語る/視線の意味は… |
山姥切国広 | - | 山姥切長義 | 陰気な彼/やりづらい/話をしてみたら |
相手 | 絆会話名 | 相手 | 絆会話名 |
三日月宗近 | 泰然自若/観念する | 千子村正 | 特訓への興味/お気に入りの場所 |
蜻蛉切 | 天下三名槍/はたから見れば | 歌仙兼定 | 服の悩み/雨の日の愉しみ |
一期一振 | 兄弟とは違う/関わって気づくもの | 鯰尾藤四郎 | 以前の印象/ちゃっかりもの |
日向正宗 | 梅干しへの興味/梅干し作り | へし切長谷部 | 協調を望む/団らんへの参加 |
薬研藤四郎 | いざ勝負/負けず嫌い | 巴形薙刀 | 観察の趣味/観察の理由 |
面影 | 悪癖/態度に憧れる | 鶴丸国永 | 実用的な驚き/不意打ちの訓練 |
燭台切光忠 | 密約/疲労回復 | 大倶利伽羅 | 熱心/面白い手合わせ相手 |
山姥切国広 | 陰気な彼/やりづらい/話をしてみたら | 山姥切長義 | - |
〇千子村正
春の陽気は気持ちがいいデスね
脱ぐのにはもってこいの季節デス
〇三日月宗近
脱ぐのはかまわんが、さすがにまだ肌寒くはないか?
〇千子村正
いいえ、肌寒いくらいがちょうどいいでショウ
さあ、三日月さんも一緒にどうデスか?
〇三日月宗近
誘いは嬉しいが、じじいにはちょっと堪えそうだ。
今回は遠慮させてもらおう
〇千子村正
む、またデスか?
主がいた頃から数えて、もう三十回は同じ断り文句を聞きました
〇三日月宗近
ふむ、そうだったか?
どうも忘れっぽくていかんな、ははは
〇千子村正
さては、はなから脱ぐ気などないのではありませんか?
〇三日月宗近
いやいや、そんなことはないぞ。
気分が乗れば脱がんこともない
〇千子村正
本当デスか!?
いったいどうすれば気分が乗るのデス?
〇三日月宗近
さてなあ。俺にもわからん。ははは
〇千子村正
いくら誘っても、三日月さんは脱いでくれませんね。
残念デス
〇三日月宗近
ははは、なんだ。冗談じゃなかったのか?
〇千子村正
同じ部隊として親睦を深めるために、ワタシの日課にお付き合いいただこうかと思ったのデス
〇三日月宗近
なるほど。では、俺の日課につきあうほうが話は早い気がするな
〇千子村正
三日月さんの日課というと…
〇三日月宗近
茶だ。桜の下でゆっくりと語らおうではないか。
親睦にはうってつけだろう
〇三日月宗近
実は、先の出陣で思うところがあってな。
徳川についてお前と語り合いたいと思うのだが
〇千子村正
徳川について…それは心惹かれマスね。
ぜひ三日月さんの思いを聞いてみたいものデス
〇千子村正
…わかりました。
今回は三日月さんの提案に乗りまショウ
〇三日月
おお、そうか。
ならば、よきかな、よきかな
〇三日月宗近
桜を見ながらの茶は実にうまかったな。
まさか皆が乱入してくるとは思わなかったが
〇千子村正
huhuhuhu…
ええ、気付けばちょっとした集いになっていましたね
〇千子村正
今思えば、燭台切さんが気を利かせて持ってきてくれた新作の菓子…あれが原因でした
〇三日月宗近
ははは、皆、つられてやってきたというやつか。
結局ふたりで語らうどころではなくなってしまったな
〇千子村正
ええ、真面目に徳川の顛末や妖刀について話していたはずが、いつの間にか大騒ぎに
〇三日月宗近
ああ…だが、少し騒がしいくらいがちょうどいい。
主も、活気に満ちた本丸が好きだったな
〇千子村正
ええ、それに三日月さんも楽しそうでした。
考えごとばかりの中、いい息抜きになったのでは?
〇三日月宗近
ふむ。これは気を遣わせたようだ
〇千子村正
いえ、単なる感想デス。
もちろん気晴らしが必要な時はいつでもつきあいマスよ
〇三日月宗近
ははは、それはありがたい。
また折を見て楽しむとするか
〇三日月宗近
近頃のお前はよく俺の世話を焼いてくれるが、何かじじいにねだりたいものでもあるのか?
〇蜻蛉切
いえ。ただ、三日月殿がお疲れではないかと気になり、微力ながら力になれたらと…
〇三日月宗近
なるほど、そういうことだったか。
なに、気にするな。俺は別に疲れてなどおらんよ
〇蜻蛉切
ですが…三日月殿は第一部隊を率い、さらには本丸の皆も取りまとめておられる
〇蜻蛉切
おそらく日頃の心労は並々ならぬものでしょう。
ならば、せめて本丸ではくつろいでいただかねばと
〇三日月宗近
ふむ…気持ちはありがたいが、それではお前のほうが疲れてしまわんか?
〇蜻蛉切
自分はあれこれと動いているほうが性に合うので、問題ありません
〇三日月宗近
そうか…だが無理はしてくれるなよ?
お前も大切な本丸の一員なのだからな
〇蜻蛉切
…もしや三日月殿を労わるつもりがかえって気を遣わせてしまったか?
〇三日月宗近
ははは、気のせいだ。
さて、今日も互いに仕事をするか
〇三日月宗近
近頃、以前にも増して鍛錬に励んでいると聞いたが、何か思うところでもあるのか?
〇蜻蛉切
かつての主を見たことで、自分もさらに腕を磨かねばと思いまして
〇三日月宗近
かつての主というと、本多忠勝か
〇蜻蛉切
はい。天下無双の槍使いとして名高い御仁です。
戦場でのあの勇姿を思い出すと、じっとしておられず…
〇三日月宗近
確かに伊賀越えの際の働きは、目を見張るものがあったな
〇蜻蛉切
忠義にも厚いあの方を見て、自分もあのように本丸の皆を支えたいと思いました
〇三日月宗近
皆を支えたい…か。
てっきりお前自身が本多忠勝のような天下無双の武を手に入れたいのかと思ったぞ
〇蜻蛉切
いえ、自分はあくまで皆を支え、勝利へ導くほうが性に合っていますので
〇三日月宗近
それが本心ならばいいが…まあ結論を急ぐこともない。
自分が何に憧れているのか、考えてみるといいぞ
〇蜻蛉切
自分が憧れているのは…ふむ、少し考えてみます
〇蜻蛉切
三日月殿、先日の助言、感謝いたします。
自分の理想と現実を見つめ直すことができました
〇三日月宗近
そうか、それは何よりだ。
どんな結論に至ったか聞いてもいいか?
〇蜻蛉切
もちろんです。
そのために声をかけたのですから
〇蜻蛉切
まずは自分自身が強くなることを目指そうと思います。
そうすれば皆を支えることもたやすくなるはずですから
〇三日月宗近
強さへの憧れを認め、さらに皆も支える道を選んだか。
時には欲張ることも大切だな。よきかなよきかな
〇蜻蛉切
三日月殿のおかげで、自分の胸の奥でくすぶっていた願いに気づくことができました。感謝いたします
〇三日月宗近
俺は何もしていないぞ。
しかし、蜻蛉切の背中を押せたのであれば何よりだ
〇蜻蛉切
これからは一個の武人としてさらに精進し、皆に頼られる存在を目指す所存です
〇蜻蛉切
いずれは、三日月殿にも頼っていただけるように
〇三日月宗近
ははは、すでに頼りにしているぞ。
これからもよろしく頼む
〇三日月宗近
…やはり、いいものだな
〇歌仙兼定
ん?何がだい、三日月
〇三日月宗近
その胸に咲き誇る花だ。
こうしてながめていると、胸が躍るように感じてな
〇歌仙兼定
ふむ…そうかそうか。
どうやら貴殿にもわかるようだね、この牡丹の魅力が
〇歌仙兼定
幾重に重なった淡く繊細な花弁が儚げに揺れる一方、
その大輪は他の花々を圧倒する高貴な存在感を放つ…
〇歌仙兼定
奥ゆかしさと気高さを兼ね備えた花、それが牡丹だ。
雅を愛する僕には、似合いの花だろう?
〇三日月宗近
ふむ…胸の牡丹はさしずめ信ずる美学の象徴、といったところか?
〇三日月宗近
ならば、武者の兜と相通ずるものがあるかもしれんな。
前立ての字も、己が信ずるものを象っていることが多い
〇歌仙兼定
なるほど…興味深い解釈だ。
兜との相似は、考慮したことがなかったな…
〇歌仙兼定
貴殿は面白いな、三日月。
またこうして、装い談義に花を咲かせたいものだ
〇三日月宗近
ああ。その胸の大輪に負けじと、咲かせるとしよう
〇歌仙兼定
三日月、貴殿も胸に花を挿したらどうだい。
先日、胸の牡丹を誉めてくれただろう?
〇歌仙兼定
取り急ぎ、候補を考えてきたんだ。
気に入ったなら、ぜひ装いに取り入れてくれ
〇三日月宗近
ふむ…ひとまず聞こうか
〇歌仙兼定
ああ、では…まずは桜だ。
天下五剣が持つ華やかな美しさには、もっともふさわしいだろう
〇歌仙兼定
続いては、蓮だ。あの静謐な佇まいは、貴殿の内に潜む闘志を、よく表していると思うが…
〇三日月宗近
ははは、まあ待て歌仙兼定。俺は花器ではないぞ。
すべて纏ったらとても戦えそうにない
〇歌仙兼定
おや…すまない、戦を考慮するのを忘れていたよ。
雅を解する貴殿ならば、とつい白熱してしまった
〇三日月宗近
ははは、お誉めに預かり光栄だな。
…ひとまずは、検討事項とさせてくれ
〇歌仙兼定
ああ。その気になるのを心待ちにしているよ
〇一期一振
三日月さん、今よろしいですか?
ご報告したいことが…
〇三日月宗近
……すう…
〇一期一振
三日月さん…?
〇三日月宗近
…おっと。ははは、これはすまん…
穏やかな日の光にあてられ、微睡んでしまったようだな
〇一期一振
確かに…本日は誠に好天ゆえ、眠気を誘われるのも無理はないかと
〇三日月宗近
うむ。さすがは一期、話が分かる…というわけで、
報告ならば夕刻以降に頼む。俺は居室でひと眠りして…
〇一期一振
ですが、それはこれ、これはこれ。
真面目な話は先に済ませてしまいませんか?
〇三日月宗近
ふむ…致し方ない、聞くとしよう
〇一期一振
ありがとうございます。
午睡は、どうかこの後にお願い申し上げる
〇三日月宗近
…やれやれ。
外柔内剛とは、一期にこそ相応しい言だな
〇三日月宗近
それで、歌仙兼と大倶利伽羅が戦果を争い我先に…
おや。おい一期、聞いているか?
〇一期一振
…………
〇三日月宗近
…ほう?これはこれは…
どれ、ならば…
〇三日月宗近
おお、危ないな。
鯰尾が派手に転んだぞ!
〇一期一振
なっ……大丈夫か、鯰尾!今すぐ手入れを…
…はて?鯰尾は…
〇三日月宗近
ははは、してやられたな一期よ
〇一期一振
三日月さん…なるほど、そういうことですか。
申し訳ない、つい気が緩んでしまい…
〇三日月宗近
よいよい、気にするな。
「本日はまこと好天ゆえ」…だろう?
〇一期一振
っ! それは…
〇三日月宗近
…少しは己が身を労われよ、一期一振。
陽光の下、ゆるりと過ごすのも気持ちいいものだぞ?
〇一期一振
まったく、貴方には敵いませんな。
では、お言葉に甘えて。あと少し、この平穏を共に…
〇鯰尾藤四郎
三日月さんって骨喰と元の主が同じでしたよね。
どんな人だったんですか?
〇三日月宗近
ふむ、急だな。兄弟の過去が気になるか?
元の主は特段変わった人でもなかったが…
〇鯰尾藤四郎
ええと、兄弟や元の主のこともですけど、今をともに過ごす三日月さんのことをもっと知りたくて
〇三日月宗近
なるほど、そういうことか。
嬉しいことを言ってくれる
〇三日月宗近
しかしそれならば、今の俺について語るほうがよいか?
もちろん足利の頃の話でもかまわんが
〇鯰尾藤四郎
いいんですか?
それなら、お言葉に甘えて両方聞いちゃおうかな
〇三日月宗近
あいわかった。これは長話になりそうだ。
場所を移し、本腰を入れなければな
〇三日月宗近
となると茶菓子もいるな。燭台切が何やらこしらえてたようだが…
〇鯰尾藤四郎
それなら燭台切さんにお願いして、少し分けてもらってきますね!
〇三日月宗近
それはいい。
もうしばらく語り合おうではないか
〇三日月宗近
鯰尾…いいところで会った。この間、話しそびれたが、骨喰いとのことで一つ思い出した出来事があってな
〇鯰尾藤四郎
え、本当ですか?
どんな話か、またぜひ聞かせてほしいです!
〇三日月宗近
もちろんかまわんぞ。
ただし、此度も長い話になるだろうから…
〇鯰尾藤四郎
お茶と茶菓子ですね。
さっそく、おいしそうなものを物色して…
〇鯰尾藤四郎
…………
〇三日月宗近
…鯰尾、どうかしたか?
〇鯰尾藤四郎
こうやって、三日月さんに話を聞くのって、もう五回目くらいですよね
〇鯰尾藤四郎
話を小出しにするのって、もしかして本当の目当ては…
〇三日月宗近
いやいや、歳を取ると忘れっぽくていかん。
ははは…
〇鯰尾藤四郎
三日月さん!
〇日向正宗
もうずいぶんと人の体にも慣れたよね。
刀の頃との違いにも馴染んで、楽しいものだよ
〇三日月宗近
うん、日々充実しているな。
特に水に触れる喜びなど、かつては知る由もなかった
〇日向正宗
確かに。刀だった頃は、雨に打たれることも、めったになかったもんね
〇日向正宗
戦場で濡れた時には、丁寧に水分を拭き取られて手入れされていたし
〇三日月宗近
ああ、あの気持ち良さを味わってしまうと、もう風呂を知らなかった頃には戻れんな
〇三日月宗近
それに雨の日には、晴れの日とは違った生き物を見られて楽しみが多い
〇三日月宗近
しかし、問題は廊下の雨漏りだな。
近頃手入れ部屋全体が駄目になったらしい
〇日向正宗
人手が少なくなって、なかなか修繕に手が回っていないからね。今度みんなを集めて、修繕しよう
〇三日月宗近
日向よ、この間の雨漏りの件は助かったぞ。
ついでに鍛錬所も修繕したそうだな?
〇日向正宗
うん、巴形さんと歌仙さんが手伝ってくれたよ。
手合わせの最中に雨が降って、ひどい目にあったって
〇三日月宗近
そういえば先日、歌仙が服が汚れたと文句を言っていたな
〇三日月宗近
原因は雨漏りだったか…
〇日向正宗
手合わせ中も雅に過ごすべきだって、しっかりと補強までしてくれたよ
〇三日月宗近
それは何よりだ。
雨の日も良いが、濡れて冷えては元も子もないからな
〇三日月宗近
仲間のために尽くしてくれたこと、礼を言っておくぞ
〇日向正宗
うん、巴形さんと歌仙さんに伝えておくよ。
しっかりと修繕計画も立てておかないとね
〇三日月宗近
へし切長谷部よ、俺はお前に礼が言いたい
〇へし切長谷部
なんだ、藪から棒に。
俺はお前に礼を言われる覚えなどないが
〇三日月宗近
近頃、本丸で塵や埃を見かけんと思ってな。
その上、床や柱は常に水拭きされて輝いている
〇三日月宗近
聞いたところ、オマエが余暇を清掃に充て清潔を保ってくれているそうだな
〇三日月宗近
並ならぬ尽力、皆を代表して心より感謝するぞ
〇へし切長谷部
なんだ、そんなことか。
俺は当然の行いをしているにすぎない、礼は不要だ
〇へし切長谷部
それに…お前たちのための清掃ではないからな
〇三日月宗近
…主、か
〇へし切長谷部
無論だ!
日々手入れをせねば、すぐ傷んでしまうからな
〇へし切長谷部
主がお戻りになる場所を万全の状態に保ち続ける…
それこそが今の俺の使命であると、心得ている
〇三日月宗近
ははは、つくづく見上げた忠義心だ。
…主もさぞ喜ぶだろうな
〇へし切長谷部
…は?お前、今なんといった?
〇三日月宗近
おや、聞こえなかったか?
箒の置き場所をたずねたのだが…
〇へし切長谷部
…信じられん。まさかあの三日月が、自ら掃除を行おうとするとは
〇へし切長谷部
しかしすまない、これは俺が己に課した使命だ。
お前の手を借りるつもりはない
〇三日月宗近
ほう?さては、主の賞賛を一身に受けようと清掃の任を独占する腹積もりなのではないか?
〇へし切長谷部
馬鹿を言え!そのような下心、あるはずなど…
…ともかく、変な勘繰りはやめろ
〇へし切長谷部
俺の行いは、ひとえに主の最善を考えてのものだ。
お前も、俺の真似でなく自分なりに最善を尽くすといい
〇三日月宗近
なるほど…ならば掃除は、これからもお前に任せよう。
俺はひと眠り…ではなく、鋭気を養うことに注力するか
〇へし切長谷部
…物は言いようとは、まさにこのことだな
〇薬研藤四郎
なあ、三日月…
ちょっと顔色が悪くないか?
〇三日月宗近
おや、そうか?
〇薬研藤四郎
ああ…あんたのことだから大丈夫だろうがあんまり無理しすぎないでくれよ
〇薬研藤四郎
よく働いたら、その分よく休んでくれ。
みんなあんとぉ頼りにしてるんだから、頼むぜ
〇三日月宗近
ああ、そうだな…
〇薬研藤四郎
ん?なんだ、何か言いたげじゃないか
〇三日月宗近
いやなに…
薬研は世話好きな母御のようだ、と思ってな
〇薬研藤四郎
な…おいおい、そりゃないぜ。
言うに事欠いて母御とは…
〇三日月宗近
ははは、すまんな。
じじいの世話役と言うほうが近かったか?
〇薬研藤四郎
ああ、そうかもな。
俺は、あんたの母御になるのは御免だぞ
〇薬研藤四郎
ま、冗談を飛ばす余裕があるようで何よりだ。
無理せず、しっかり休んでくれよな
〇三日月宗近
あいわかった。
心配り、感謝する
〇薬研藤四郎
…うん、今日はだいぶ顔色がいいな。
しっかり休んでいるようで何よりだ
〇三日月宗近
ああ、お陰様でな…
〇薬研藤四郎
だが、回復したからって無理は禁物だ。
あんたならわかるだろう?
〇薬研藤四郎
戦場じゃ、ちょっとの隙が命取りだ。
隙を作らないためにも、常に万全の状態を保って──
〇薬研藤四郎
っと、悪い。
また口うるさく言っちまったな
〇三日月宗近
よいよい、気にするな。
お前の五月雨がごとき進言も、慣れると存外心地いいぞ
〇三日月宗近
引き続き、力強い喝を頼む。
よいな、薬研…いや、じじいの世話役だったかな?
〇薬研藤四郎
はは…ならせいぜい、しっかり世話されてくれよ?
〇巴形薙刀
三日月、お前は小猫に好かれているようだな
〇三日月宗近
ああ、本丸の近くに住み着いているあの子猫だな。
どうした、うらやましいのか?
〇巴形薙刀
…どうだろう、わからない
〇三日月宗近
小猫と仲良くなる秘訣が知りたいなら伝授するぞ?
〇巴形薙刀
猫と仲良く…か。
だが、俺とは仲良くしてくれぬだろう
〇三日月宗近
まぁそう言うな
〇三日月宗近
以前、小猫を撫でようとして脱兎のごとく逃げられていたな。それを気にしているのか?
〇巴形薙刀
…俺が大きいからだろう。動物が自分より大きいものを恐れて逃げるのは仕方がない
〇三日月宗近
ふむ。それだけで諦めてしまうのはもったいないと思うがな
〇三日月宗近
それに、学べることは学んでおいて損はないぞ。
主のためにもな
〇巴形薙刀
小猫と仲良くなる秘訣を学ぶことが主のためになるかは謎だが…わかった、頼もう
〇巴形薙刀
まさか、魚一匹であんな風に小猫が寄ってくるとは。
さすがは三日月だ。いろんなことをよく知っている
〇三日月宗近
好きなものを差し入れられて嫌なやつなどいない、ということだ
〇巴形薙刀
そうだな。主が戻ってきたら主の好きなものを差し入れてみようと思う
〇三日月宗近
ああ、それがいい
〇巴形薙刀
ところで三日月
〇三日月宗近
ん?
〇巴形薙刀
晩飯用の魚が足りないと、厨に立つ者が時折嘆いていることがあったが、まさか…
〇三日月宗近
ははは
〇巴形薙刀
確か、今日も長谷部が魚の数が合わぬと言っていたような…
〇三日月宗近
ははははは。なに、今夜の食卓がほんの少しばかり淋しくなるだけだ
〇巴形薙刀
三日月…
〇三日月宗近
面影、今、手すきか?
すまんが、畑仕事を手伝ってくれないか?
〇面影
畑仕事か…
〇三日月宗近
気乗りせんか?気持ちはわからなくないが、働かざる者食うべからず、だぞ
〇面影
いや…まあ、そうか。
…それで、いったい何をすれば?
〇三日月宗近
まずは肥料を畑まで運んでくれ。
それから水やりに草むしり…まあ、いろいろだ
〇面影
やってみよう。
うまくできるかはわからないが…
〇三日月宗近
なに、難しいことは何もない。
わからないことがあれば、遠慮なく聞いてくれ
〇三日月宗近
早く仕事を覚えてくれれば、こちらも楽ができるからな、ははは
〇面影
では、一つ質問したい。
…その「肥料」というのはなんだ?
〇三日月宗近
…なんと、そこからか
〇面影
畑の手伝いはもういいのか?
〇三日月宗近
今のところは必要ないぞ。
どうやら、畑仕事が思いのほか気に入ったようだな
〇面影
いや、そうではないが…
以前は敵を斬ることが日常だった
〇面影
だから今、敵のいない本丸にいると妙に落ち着かない。
好きに過ごせと言われても、どう過ごしていいか…
〇三日月宗近
なるほど、そう感じるのも無理はないか。
そんなお前にいい仕事がある
〇面影
それは…?
〇三日月宗近
雑念を廃し、気負いを捨て、悠久の時に身を任せねば成せない、大事な仕事だぞ
〇面影
…やってみよう
〇三日月宗近
では、今日は遠慮なくじじいの茶飲み話につきあってもらうぞ。ははは
〇鶴丸国永
なあ三日月…
俺は、やはり爺さんなのか…?
〇三日月宗近
ほう?じじいはこの本丸に俺ばかりと思っていたが…
何ゆえそう感じた?
〇鶴丸国永
いやな、どうにも暇を持て余してたんで居合わせた村正と遊ぶか、となったんだが…
〇鶴丸国永
あいつ、俺の馴染みの遊戯をてんで知らないんだ。
打毬や貝合わせが、まったく通じないとは驚いたぜ
〇鶴丸国永
挙句の果てに「鶴丸さんが提案する遊戯は古いデス」と言われてさ。世代の差ってものを痛感したなあ
〇三日月宗近
あやつらは室町以降の刀だ。
平安の世に流行した遊戯を知らぬのは無理もないだろう
〇鶴丸国永
だよな。まあ、わかっちゃいたが…
はあ、平安の古き良き遊戯が恋しいぜ
〇三日月宗近
…なあ、鶴丸よ。平安の遊戯に造詣が深い者ならばここにも一振りいると思わないか?
〇鶴丸国永
ははっ…こりゃ驚いた。確かに、俺と同じく平安に打たれたお前なら、当時の遊戯に詳しくて当然か
〇鶴丸国永
いいねえ!その誘い、乗った!
たっぷり楽しもうぜ、三日月!
〇鶴丸国永
ふふ、ふふ〜ん♪
〇三日月宗近
どうした、えらく上機嫌ではないか?
先日村正らにそっけなくされて落胆していたやつとは思えんな
〇鶴丸国永
おっ、わかるか?
いやあ、実はあれから色々あってな
〇鶴丸国永
平安の遊戯を「古い」と一蹴した村正に、改めて、遊び方を覚えさせたんだよ
〇鶴丸国永
あいつらも、初めは見様見真似だったが遊び方を覚えてからは十分に楽しめたようだぜ?
〇三日月宗近
ははは、なんとも強引だな。
いや、それも鶴丸らしさか
〇鶴丸国永
そう言うなって。
…俺はこの前三日月と遊んで気づいたのさ
〇鶴丸国永
こんな楽しい遊戯を、「古い」「知らない」で廃れさせちゃもったいないってな
〇三日月宗近
うむ。古き良き文化を後世に伝えるのも、きっと俺たちの役目なのだろうよ
〇鶴丸国永
それそれ!さすがいいこと言うじゃねえか、三日月。
よし。それじゃあ、俺たちも…
〇三日月宗近
ああ、今ひとたび遊戯に興じるとしようか
〇三日月宗近
燭台切よ、近頃、調理法の研究にいっそう余念がないそうだな
〇燭台切光忠
さすがは三日月さん、耳が早い。
みんな期待してくれるからね、つい張り切ってしまって
〇燭台切光忠
そうだ、三日月さんの注文も聞くよ。
何か食べたいものや、お好みの調理法はあるかい?
〇三日月宗近
そうだな…。
では「心が華やぐ」料理を所望しよう
〇燭台切光忠
おっと、そういう注文の仕方できたか…
〇三日月宗近
ああ。食べる者の胸を躍らせる、とっておきを頼む。
…さすがの燭台切も、こればかりは厳しいか?
〇燭台切光忠
…いいや。その挑戦状、確かに受け取った!
〇燭台切光忠
三日月さん。
あなたの心に、必ず満開の花を咲かせてみせるよ
〇三日月宗近
うむ、期待して腹を空かせておこう
〇三日月宗近
先日は馳走になったな、燭台切よ
〇燭台切光忠
こちらこそおそまつさまでした…。
三日月さんが「特製・光忠御膳」を気に入ってくれて嬉しいな
〇三日月宗近
ああ。あの御膳は、いいものだったぞ
〇三日月宗近
滋養が詰まった香の物、うまみ溢れる魚の塩焼きなど閣料理の味わいや栄養価の高さもさることながら…
〇三日月宗近
三日月形に模られた野菜や、細やかな隠し包丁…
随所に、食べる相手への心配りが感じられてな
〇三日月宗近
目でも舌でも、存分に料理を楽しめた。
礼を言うぞ、燭台切
〇三日月宗近
…次は、これ以上のものを期待してもいいだろう?
〇燭台切光忠
はは、また挑戦状か。
三日月さんは、本当に人をやる気にさせるのがうまいね
〇燭台切光忠
OK…その挑戦、受けて立つよ。
「特製・光忠御膳」の進化を、きっちり見届けてね
〇三日月宗近
ああ、これからも期待しているぞ
〇三日月宗近
大倶利伽羅よ。
お前の刀身には、竜が彫られていたな
〇大倶利伽羅
…だったらどうした
〇三日月宗近
いや、意匠の凝らされた刀はいいものだと思ってな。
俺の刀身も、優美な打ち除けを讃えられたものだ
〇大倶利伽羅
知るか
〇三日月宗近
お前の竜は、何ゆえ彫られたんだろうな。
俺と同じく号の由来でもあるのだろう?
〇大倶利伽羅
…あんたに教える義理はない。
俺に構うな
〇三日月宗近
ははは、そうかそうか。
そう言われては、仕方がないな
〇三日月宗近
しかし…大倶利伽羅に話す気がないとなるとどうしたものか…
〇大倶利伽羅
…面倒だな
〇大倶利伽羅
…おい、あんた。
いい加減、俺のことを嗅ぎまわるのはやめろ
〇三日月宗近
ははは、人聞きの悪いことを。俺はただ鶴丸と燭台切にお前の刀身に彫られた竜の由縁をたずねただけだぞ?
〇大倶利伽羅
それをやめろと言っている。
…考えうる中で一番の悪手だ
〇大倶利伽羅
仕方ない…一度だけ話してやる
〇大倶利伽羅
…刀身の意匠は、「倶利伽羅竜」を象ったものだ。
不動明王の加護を願い彫られているらしい
〇三日月宗近
ほう、それが「大倶利伽羅」たる由縁か。
合点がいった、礼を言うぞ
〇三日月宗近
…お前はその意匠を倶利伽羅竜を、誇りに思っているか?
〇大倶利伽羅
…さあな。あんたの好きに解釈すればいい
〇三日月宗近
そうかそうか。
では、好きにさせてもらうとしよう
〇大倶利伽羅
…本当に、面倒な奴だな
〇三日月宗近
すまない、山姥切よ。
その頭の布を俺に貸してはくれないか?
〇山姥切国広
…断る。
…これを使ってどうする気だ
〇三日月宗近
…小猫が、鳴いていてな
〇山姥切国広
小猫…ああ、以前から本丸のまわりをうろついているあいつか
〇三日月宗近
手で救うことも試みたが、如何せん警戒心が強くてな。
したたかに噛みつかれてしまった
〇山姥切国広
…自分より遥かに大きな奴に近寄られたんだ、怯えるのも無理ないだろう
〇三日月宗近
ああ…そこでだ、お前の布で包んでやれば少しは警戒心も和らぐと思ったのだが…
〇山姥切国広
…駄目だ。悪いが、他をあたってくれ
〇三日月宗近
そうか…ならば仕方がない。
しかし、どうしたものか…
〇山姥切国広
…………
〇三日月宗近
朗報だぞ、山姥切。先日話した木の上の猫だが、無事に木から降りられたようだ
〇山姥切国広
…へえ
〇三日月宗近
数日続いていた鳴き声が、ぱたりとやんでな。
見ると、あの小猫が庭を元気に駆け回っていた
〇三日月宗近
おそらく、親切な者が降ろしてやったのだろう。
なあ、山姥切?
〇山姥切国広
さあな…
〇三日月宗近
…うむ?山姥切よ、その頭の布…少しばかり汚れていないか?
〇山姥切国広
本当か?あいつめ、派手に暴れるから…
〇三日月宗近
…ああすまん、どうやら俺の見間違いのようだ。
安心しろ、どこも汚れていないぞ
〇山姥切国広
な…あんた、鎌をかけたのか!
〇三日月宗近
ははは、さてな。
ともあれ…これで一件落着だな
〇山姥切国広
…ふん
〇山姥切長義
三日月、さっき燭台切がせっかく作った茶菓子が足りないと怒っていたよ
〇三日月宗近
あれだけあったのだから、少しくらいいいだろう?
〇山姥切長義
いい加減なことを…。適当なことをしていると後で痛い目を見るのではないかな?
〇三日月宗近
そこまで気にせずとも、物事はたいていうまく回るぞ。
しかし俺を気にかけてくれているとはありがたい話だな
〇山姥切長義
別に貴方を意識しているわけではないよ。
今は面倒ごとを避けたいだけだ
〇三日月宗近
ははは、それでもいいぞ。
じじいに声をかけてくれたことには変わりないだろう
〇三日月宗近
礼の代わりに一服していくといい。
ほら、茶菓子もあるぞ
〇山姥切長義
礼を言われるようなことはしていない。
それにその菓子は燭台切からくすねてきたものだろう
〇山姥切長義
…俺は食べない。
早く謝罪に行ってきたらどうかな?
〇三日月宗近
ははは、共犯にはなってくれぬか
〇三日月宗近
そう気乗りのしない顔をせずともいいだろう。
俺がお前と茶を飲みたかっただけなのだからな
〇三日月宗近
今回はうまい茶菓子と茶葉を歌仙から分けてもらった。一杯どうだ?
〇山姥切長義
俺はやることもあるし付き合っている暇はないんだけど。
…この時間に意味はあるのか?
〇三日月宗近
意味はあるぞ。
以前はくすねた茶菓子だからと断られただろう?
〇三日月宗近
だからな、今回は分けてもらった茶菓子で誘ってみた次第だ
〇山姥切長義
…はあ、貴方もたいがいしつこいね
〇三日月宗近
ははは、そうでもないさ。
で、どうだ、やはり気乗りはせんか?
〇山姥切長義
断ったところで、また別の手で誘うのだろう?
…今回は貴方の誘いに乗ろう
〇三日月宗近
これは嬉しいな。
ではじっくりとじじいの茶飲み話に付き合ってもらうぞ
〇山姥切長義
…これは早まったかな
〇千子村正
その顔は、またお説教デスか?
いい加減聞き飽きました
〇蜻蛉切
それなら、説教の内容も見当がついているのだろう?
〇千子村正
どうせまた「脱ぐな」と言うのでショウ?
ちゃんと脱ぐべき時は見極めているつもりデスが
〇蜻蛉切
日向から聞いたぞ。
先日、畑仕事の最中、急にお前が脱ぎ始めたとな
〇千子村正
それは脱ぎ時だったからデスね。
畑仕事をしていると暑くなりマスから
〇蜻蛉切
暑いからといって急に外で脱ぐんじゃない。
まったく、やはり何もわかっていないではないか…
〇千子村正
ではどうしマスか?また長いお説教デスか?
〇蜻蛉切
いや、言ってもわからぬなら、力で示すしかあるまい。
手合わせで勝ったら脱ぎ癖を直してもらおうぞ
〇千子村正
ではワタシが勝ったら悪戯をさせてもらいマス。
huhuhuhu…刀剣男士に二言はありませんね?
〇千子村正
結局この間の手合わせは引き分けたので、悪戯しそびれてしまいました。残念デス
〇蜻蛉切
…のんきなものだ。
他にもっと気に掛けることがあるだろう
〇千子村正
今ここで脱げないことでショウか?
では、一緒に脱ぎまショウ!
〇蜻蛉切
そうではない、妖刀伝説の事だ。
村正の呪いだなどと、根も葉もないことを…
〇蜻蛉切
今でも思い出すと、我が事のように苛立ちを覚えるぞ
〇千子村正
huhuhuhu、蜻蛉切はいつでも真っ直ぐデスね。
見ていて眩しいくらいデス
〇蜻蛉切
お前という奴はまたそうやって茶化して…。
こちらは本気で心配をしているのだぞ
〇千子村正
わかっていマスよ。
デスが、ワタシは大丈夫デス
〇千子村正
幻想的な伝説が加わって、むしろ箔がついた…くらいにしか思っていませんから
〇蜻蛉切
やれやれ、たいした度量だな。
だが、もし何かあれば、いつでも言うのだぞ
〇千子村正
…ふう
〇蜻蛉切
村正がため息をつくとは珍しいな。
やはり、妖刀騒ぎや出陣の多さで疲れているのか?
〇千子村正
いえ、脱ぎたい衝動を抑えるのが大変で…
蜻蛉切の言いつけを守っているので誉めてください
〇蜻蛉切
お前が、か?
〇千子村正
huhuhuhu、その拍子抜けした顔。
いいデスね。蜻蛉切の気が抜けた証拠デス
〇蜻蛉切
自分ではよくわからんが、お前にそう思ってもらえているのなら、嬉しいものだな
〇千子村正
アナタと稽古をするたびに思いマスが、いつ鍛えているんデスか?
〇千子村正
本丸で球形している時は、たいてい書を読んでいるか、歌を詠んでいるようデスが…
〇歌仙兼定
そういうふうに見えているとは嬉しいな。
実際、僕は特段鍛えているつもりはないしね
〇千子村正
では、なぜあれほど力が強いのでショウ?
秘訣があるならぜひ知りたいデス
〇歌仙兼定
ふむ、そう言われると難しいのだけれど、休憩以外では他のものの手伝いをすることが多いかな
〇歌仙兼定
頻繁に動いているし、重いものを運ぶこともあるから自然と鍛えられているのかもしれない
〇千子村正
なるほど、効率よく鍛えているのデスね。
ワタシも見習ってみマス
〇歌仙兼定
見習うのならば歌の方にしないかい?
雅さに欠ける気がするのだが…
〇千子村正
そんなことはありませんよ、アナタの教えデスから。
huhuhuhu…試してみマス
〇歌仙兼定
畑の肥料や道具がいつの間にか移動するという噂を聞いたことがあるかい?
〇歌仙兼定
しかも、必要な物が必要な場所に現れるらしい
〇千子村正
そんな噂が…
〇歌仙兼定
ついさっきも、長義が肥料を取りに行こうとしたら、後ろに積んであったと驚いていたよ
〇歌仙兼定
事件性はなさそうだけれど、皆気になって落ち着かないようだから、原因を調べているんだ
〇千子村正
噂については初耳デスが、肥料や道具を動かしたのはワタシデスね
〇歌仙兼定
きみが…?
でも、なぜ黙ってこっそり置いたりしたんだい?
〇千子村正
アナタを見習って、手伝いがてら鍛えていたのデス。
ゆっくり運んだのでは鍛錬になりませんから
〇歌仙兼定
なるほど、これで謎が解けたよ。
だが、これからは一声かけてほしいな
〇歌仙兼定
せっかく手伝ったのに、気味悪がられたんじゃ割に合わないだろう?
〇千子村正
huhuhuhu…あやしまれるのには慣れていマス…
デスが、今度からは声をかけて運ぶことにしまショウ
〇一期一振
村正、以前より気になっていましたが、毎朝池の前で服を脱いで、何をしているのです?
〇千子村正
huhuhuhu、気になりマスか?
アナタも脱ぎたいと?
〇一期一振
いえ、そういうわけではありませんが…
〇千子村正
残念デス…。
あれはワタシなりの健康法なのデスが
〇一期一振
健康法?
いったいどのようなものなのですか?
〇千子村正
衣服を脱いで、朝の空気を全身に感じるのデス。
その後で素振りを行うとスッキリしマスよ
〇一期一振
しかし、それでは風邪を引きそうですな。
それよりは、私と手合わせをしませんか?服を着て…ですが
〇千子村正
いいのデスか?
その時間、アナタは花に水をやっていたのでは?
〇一期一振
では、水やりを手伝っていただいた後で、私とお手合わせしていただけませんかな?
〇千子村正
その話、乗りまショウ!
huhuhuhu、これは思わぬ楽しみができました
〇千子村正
最近、体が動かしやすくなった気がしマス。
アナタとの日課のおかげデスね
〇一期一振
いえ、私のほうこそ水やりが楽になりました。
それに村正から学ばせていただくことも多いです
〇一期一振
特に実戦での動きを想定した刀さばきには目を見張るばかりですな
〇千子村正
huhuhuhu、実戦向きの刀デスからね
〇千子村正
とはいえ、ワタシもまだまだ人の身には慣れません。
集団戦闘になると勝手も変わりマスし…
〇一期一振
確かにそうですね…。
今度は弟たちも交えて稽古でもしますか?
〇千子村正
いいデスね!
では、ワタシは蜻蛉切を誘っておきマス
〇一期一振
ははは、大所帯になりそうですな。
これは次のお手合わせ、楽しみにしていますね
〇千子村正
鯰尾くんは徳川にいたこともありましたよね。
徳川に関する逸話を持つワタシをどう思いマスか?
〇鯰尾藤四郎
急な質問ですね。「徳川に仇なす…」ってやつですか?
どうと言われても、特に何も…
〇千子村正
そうデスか。
ふむ…蜻蛉切の話は難しいデスね…
〇鯰尾藤四郎
蜻蛉切さん?話がよく見えないんですけどさっきの質問とどういう関係が?
〇千子村正
実は蜻蛉切に「仲間には過去を気にする刀もいるから、不用意な発言には気を付けろ」と怒られまして
〇千子村正
そこで試しにアナタに感想を聞いてみたのデス。
でも思っていた反応と違いました
〇鯰尾藤四郎
なるほど。それは俺の記憶が一部ない上に、過去なんか振り返らない主義だからだと思いますよ
〇鯰尾藤四郎
昔の記憶に引っ張られる刀剣男士もいるみたいですけど…
〇鯰尾藤四郎
そんな難しい話よりも、未来のことを話しませんか?
もうすぐお花見ですよ!楽しみだなあ
〇千子村正
huhuhuhu、アナタのそういうところ、ワタシは好きデスよ
〇鯰尾藤四郎
いやあ、お花見楽しかったなあ!
歌仙さんと燭台切さんのお弁当も最高でしたよね!
〇千子村正
huhuhuhu、鶴丸さんの漫談も面白かったデス。
ワタシは傘回しを披露する前に止められましたが…
〇鯰尾藤四郎
えっ、村正さん傘回しをしようとしてたんですか?
急に脱ぎ始めたので何事かと
〇千子村正
気合を入れようとしただけデス。
脱いでこそ実力が出せるでショウ?
〇鯰尾藤四郎
なんだ。蜻蛉切さんも大あわてだったからてっきり…
でも、それもまた楽しかったなあ
〇千子村正
蜻蛉切のあれはいつもどおりかと。
にしても、huhuhuhu…
〇千子村正
以前は未来の話をしようと言っていたアナタが思い出話に夢中になるとは面白いデスね
〇鯰尾藤四郎
言われてみれば確かに…。でも、思い出話は、仲間との絆を感じるので悪くないなって思います
〇鯰尾藤四郎
だから過去の記憶の分まで、思い出を作りますよー!
村正さん、お手伝いをお願いできますか?
〇千子村正
huhuhuhu、もちろんデス。
共に楽しい思い出を増やしていきまショウ
〇千子村正
日向くんの元の主は確か、石田三成デスよね?
〇千子村正
アナタはどう思っているのデスか?
〇日向正宗
そうだね、僕があの方を十分に理解できているとは言えないだろうけど…
〇日向正宗
それでも、僕はあの方の…
石田三成様の在り方は好きだよ
〇日向正宗
でも急にどうしたの?
あなたがそんなことを聞くなんて珍しいね
〇千子村正
いえ、少し気になっただけデス。
元の主の悪評に触れた時、どう感じるのかと
〇千子村正
かくいうワタシ自身の逸話も、そんなにいいものではないので、一種の親近感デス
〇日向正宗
そうなんだね。
話を聞いてみてどう思った?
〇千子村正
そうデスね、まだ答えは出ませんが、ワタシ自身について見つめ直してみようかと思いマス
〇千子村正
またお話を聞かせてもらえると嬉しいデス。
それまでに少し考えを整理しておきマス
〇日向正宗
その後はどう?
自分の中で折り合いはついたかな?
〇千子村正
そうデスね、はっきりとした答えは出ませんでした。
デスが、アナタを見ていたら気づくことがありました
〇日向正宗
僕を?僕自身に覚えはないけど、何か変わったことでもしていたかな?
〇千子村正
いいえ、変わったことは特に。
いつもどおりでしたよ
〇日向正宗
じゃあいったい、何に気付いたの?
〇千子村正
アナタの態度デス。いつも周りをよく見て、先回りして手助けしているでショウ?
〇千子村正
ワタシはアナタが常に先のことを見据えているように感じました
〇千子村正
過去や逸話に囚われる刀剣男士は少なくないデスが、アナタは物事のいい面を見ているのかもしれませんね
〇日向正宗
そっか、うん。そう見えているなら嬉しいな。
僕があなたの助けになったなら、なおさらね
〇千子村正
あの、少しよろしいデスか?
お尋ねしたいことがありマス
〇へし切長谷部
どうしたんだ?
〇千子村正
実は歌仙さん主催の茶会に誘われまして、お茶の作法を知りたいのデス
〇千子村正
歌仙さんは雅さを重んじマスから、茶会で粗相をしないように、学んでおこうかと
〇へし切長谷部
なるほど、それで茶坊主の失敗を見ていたであろう俺に聞いておこうと?
〇千子村正
いえいえ、そういう意図はありません。
昔、茶会で歌仙さんに誉められていたでショウ?
〇千子村正
主もそれを見て、誉めていたので、教えてもらえないかと思ったのデス
〇へし切長谷部
主に恥をかかせないように、幅広く知識を得るようにしているからな
〇へし切長谷部
しかし、その俺に教えをこうんだ。指導は厳しいぞ。
わかっているな?
〇千子村正
望むところデス!
よろしくお願いしマス
〇へし切長谷部
そういえば、歌仙の茶会はどうだったんだ。
少し前に開催されたんだろう
〇千子村正
ええ、楽しかったデスよ。
アナタのおかげで歌仙さんにも誉められました
〇へし切長谷部
当然だろう。あそこまで教えこんだんだから、歌仙にダメ出しなどされるはずがない
〇千子村正
huhuhuhu、助かりました。
アナタの教え方はわかりやすかったデス
〇千子村正
昔、主がわからないことはアナタに聞くといいと言っていた意味がわかりました
〇へし切長谷部
なに?主がそんなことを?
そ、そうか。そうだったのか……
〇千子村正
歌仙さんも、アナタに教わったと言ったら納得していましたよ
〇千子村正
と、いうわけで、これからも頼りにしていマス。
またいろいろと教えてください
〇へし切長谷部
ああ、構わない。
大船に乗った気でいてくれ
〇薬研藤四郎
そういや、夕方に池の前で半裸で素振りしているところを見かけたぜ
〇薬研藤四郎
日が落ちる頃には風も出て寒いだろうに、あんたは元気だな
〇千子村正
huhuhuhu、鍛えていマスからね。
まあ、夜になると冷気が肌を刺す感覚はありマスが
〇薬研藤四郎
春とはいえ、朝晩はまだ冷えるからな。
体温調節には気を付けろよ
〇薬研藤四郎
昔、春先に薄着のまま過ごしていた大将が体調を崩したことがあっただろ
〇千子村正
あの時は本丸中大騒ぎでした。
アナタも夜を徹して薬を煎じていましたね
〇薬研藤四郎
もう二度とあんなことはごめんだぜ。
あんたも気をつけてくれよ
〇千子村正
わかりました。
しばらく夕方の素振りは屋内でやることにしマス
〇薬研藤四郎
屋内もいいが、服も着てくれよな
〇千子村正
暑い…非常に暑いデス…。
薬研くん、なんとかしてください
〇薬研藤四郎
暑い?ま、今は寒暖差が激しいからな。
日差しが強いと暑く感じることもあるか
〇千子村正
ええ、特に風のない夜は寝苦しくて汗ばむほどデス
〇薬研藤四郎
そういえば、鯰尾も布団を蹴り飛ばしてたな。
いち兄が何度かけ直しても、すぐに剥いじまうんだ
〇千子村正
huhuhuhu、兄弟そろって同じなのデスね。
薬研くんも午睡の時に布団を蹴っていましたよ
〇薬研藤四郎
俺が?…こりゃ恥ずかしいところを見られたな。
しかし布団を片付けるにはまだ早いしどうしたもんかな
〇千子村正
夏用の布団をもう出してしまいマスか?
生地が薄いので、暑がりな刀が喜びそうデス
〇薬研藤四郎
いい考えだな。よし、早速蔵まで取りに行ってくるぜ。
一緒に行くか?
〇千子村正
huhuhuhu、お供しマス。
運搬はお任せください
〇千子村正
巴形さんは普段から熱心に書を読んでいるようデスが。
面白いのデスか?
〇巴形薙刀
ああ、面白いぞ。
俺は興味深いと思っている
〇巴形薙刀
書で得た知識が戦場で活かされた時は感動したな。
もちろん、鍛錬も欠かさぬようにしているが
〇千子村正
知識もまた武器、ということデスか。
なるほど、気になりマスね
〇千子村正
おすすめの書はありマスか?
すぐに実戦で役立つものだと嬉しいデス
〇巴形薙刀
実戦で…となると、やはり孫氏の兵法だろう。
俺も主にすすめられて読んだものだ
〇巴形薙刀
短い書物だが、戦における重要なことが凝縮されていた
〇千子村正
それは興味深いデス!読んでみたくなりました。
今もその書はアナタが持っているのデスか?
〇巴形薙刀
いや、俺が読んだ後は蜻蛉切が借りていて、確か…
ああ、今は山姥切長義に聞いてみるといい
〇千子村正
それでは、さっそく長義さんに聞きに行ってきマス
〇千子村正
この前教えて下さった、孫氏の兵法を読みました。
本当に短くて驚きましたよ
〇巴形薙刀
そうだろう、俺も初めて読んだ時には、落丁かと思って確認したくらいだ
〇巴形薙刀
それで、どうだった?
お前の感想が知りたい
〇千子村正
行軍の話が興味深かったデス。
我々も偵察などがありマスから
〇千子村正
普段、無意識に行っていることにはっきりと説明がついてはっとしましたね
〇巴形薙刀
そうか、俺だけではなかったのだな。
お前とは感覚が似ているのかもしれん
〇巴形薙刀
次は陣形についての指南書や、用兵術について詳しく説いた書も読むといい
〇巴形薙刀
なぜ出陣時にその陣を選択されていたかが理解できるようになるぞ
〇巴形薙刀
主が戻られた際に役立つことは間違いない。
俺が断言しよう
〇千子村正
huhuhuhu、そこまで言われてしまうと気になりマスね。ぜひおすすめを教えてください
〇千子村正
huhuhuhu…
…その衣服、実にいいデスね
〇面影
な、なんだ、急に…
〇千子村正
背中からも前からも脱ぎやすそうで、実に魅力的デスね!
〇千子村正
やはり刀は脱がなくては力を発揮できません。
ああ、話していたら脱ぎたくなってきました
〇面影
いや、その必要はないと思うが…。
皆、服を着ていても十分に強い
〇千子村正
アナタはわかっていませんね。
皆は脱ぐともっと強くなりマスよ、おそらく
〇面影
おそらくなのか
〇千子村正
自分以外のことははっきりわかりませんから。
そんなことより今はアナタのことデス
〇千子村正
せっかく脱ぎやすい服なのデス、早く脱ぎまショウ。
ほら、今日は脱ぎ日和デスよ?
〇面影
そう言われても困る…。
他の奴を誘ってくれ
〇面影
…村正、最近私を観察しているようだが、なぜだ?
〇千子村正
いいえ、観察などしていません。
考えを練っていたのデス。どうすれば面影さんが脱ぎたくなるか
〇千子村正
そして、先ほどついに完成しました。
魅力的な脱ぎ方百選!
〇面影
いや…ワタシは…
〇千子村正
期待していいのデスよ。
アナタのために選び抜いた脱ぎ方の数々デスから
〇面影
そうではなく…
そもそも脱ぐ意味がよくわからない…
〇千子村正
huhuhuhu、そんなアナタでも楽しく脱げる脱ぎ方を今ここで伝授しマス
〇面影
そういうことでは…
〇千子村正
まずは基本的な脱ぎ方からいきまショウ。
見本を見せマスね
〇面影
もはやいったん脱いだほうがいいのだろうか…
〇鶴丸国永
そういや村正、戦道具の手入れは終わったかい?
長谷部が近々点検するそうだぜ
〇千子村正
点検…デスか?そう言えば、だいぶ前に長谷部さんに言われた気がしマス
〇鶴丸国永
それだそれ。
今回は念入りに確認するそうだ
〇鶴丸国永
ここのところ消耗が激しかったらしくてな。
一度、全員の装備を見るんだと
〇千子村正
それで、あんなに早くから告知をしていたのデスね。
しかし、全員デスか
〇千子村正
点検が大事なのはわかりマスが、長谷部さん、長いのデスよね…
〇鶴丸国永
まあ、そう言うなって。
今回は俺にひとつ策があるんだ
〇千子村正
策デスか?
いったいどんな策なのデスか?
〇鶴丸国永
はは、それは点検の時のお楽しみってやつだ。
期待していてくれよ
〇鶴丸国永
いやあ、やっちまったなあ。
まさかあそこまで長谷部が怒るとはな
〇千子村正
やっちまったではないデス。
おかげで装備点検が地獄絵図になってしまいました
〇鶴丸国永
たかが、ばったでまさかあんな大騒動になるなんてな。
さすがの俺も驚いたぜ
〇千子村正
…どう考えても騒動になりマス
〇千子村正
あんなにたくさんのばった…
捕まえて外へ逃がすだけで数刻かかりました
〇鶴丸国永
大事になりすぎて、さすがに焦ったな。
ちょっとした冗談だったってのに、こってり絞られたぜ
〇千子村正
結局、長引いてしまいましたね。
いつも以上に疲れました
〇鶴丸国永
いい考えだと思ったんだがなあ。
今度は別の手を考えるかな、何がいいと思う?
〇千子村正
真面目に受けたほうが早いと思いマスが…
何かするとしても虫以外でお願いしマス
〇鶴丸国永
ははっ、心得た
〇燭台切光忠
村正くん、この前は仕込みの手伝いをありがとう。
おかげで食事の支度が早く終わったよ
〇千子村正
礼にはおよびません、ちょうど暇を持て余していましたから
〇千子村正
デスが、この数では食事を作るのも大変デスね。
燭台切さん、毎日厨に立っているのではないデスか?
〇燭台切光忠
みんなおにぎりぐらいなら喜んで作ってくれるんだけど手間のかかる料理はやりたがらないんだよね
〇燭台切光忠
結局、僕と歌仙くんが大半の料理を作ることになっちゃって
〇燭台切光忠
だから、たまに仕込みを手伝ってくれるだけでもありがたいよ。
その分、凝った料理に挑戦できるからね
〇千子村正
なるほど…。
しかしワタシも毎日手伝えるわけではないデスからねえ
〇千子村正
huhuhuhu、いいことを思いつきました。
ここはワタシがひと肌脱ぎまショウ!
〇燭台切光忠
村正くん、この前の企画はすごく良かったよ。
まさか僕ら全員で豚汁作りとはね
〇千子村正
huhuhuhu、あれを思いついたのはアナタのおかげデス
〇燭台切光忠
僕の?
特に意見を述べた覚えはないんだけど……
〇千子村正
ワタシが仕込みを手伝った時に、汁物の作り方を教えてくれたでショウ?
〇千子村正
料理に詳しくないワタシでもそれなりに作れたので、教われば他の方でも作れるのではと思ったのデス
〇燭台切光忠
確かに、みんな思ったより手際もよかったし、これなら手伝ってもらえそうだ。ただ…
〇千子村正
とんでもない材料を無断で鍋に投入されるのが心配デスか?
〇燭台切光忠
ああ、あれには参ったよ。
いつの間にか見たことがないきのこや薬草が鍋の中で煮えてるんだからね
〇燭台切光忠
まあ、誰がやったのかは、だいたい察しがつくけどね。
その点、村正くんなら安心して手伝いを任せられるよ
〇千子村正
それは光栄デス。
では、今日の仕込みは任せてもらいまショウ
〇千子村正
おや、ここで何をしているのデス?
〇大倶利伽羅
何もしていない…
〇千子村正
何もしていないのなら、なぜここにいるのデス?
〇大倶利伽羅
…………
〇大倶利伽羅
チッ…光忠に他の連中と話してこいと追い出されたんだ
〇千子村正
huhuhuhu、そうでしたか。
では、燭台切さんの心配を払拭してあげまショウ
〇千子村正
アナタが話さなくても交流を深められるように全員の前で剣舞を披露…なんてどうデス?
〇大倶利伽羅
…断る
〇千子村正
せっかくデスし、全員集めまショウ!
〇大倶利伽羅
話を聞いていたのか…?
…俺に構うな
〇千子村正
今日はどうしてこちらに?
また燭台切さんデスか?
〇大倶利伽羅
…いや、あんたに用があった
〇千子村正
ワタシに、デスか?
珍しいデスね、どうしました
〇大倶利伽羅
…光忠に俺の話をしただろう。
俺と話しただのなんだのと
〇千子村正
そう言えば、この前、料理の仕込みを手伝って時に、アナタの話をしましたね
〇大倶利伽羅
おかげであいつの小言が減った。
…一応礼を言っておく
〇千子村正
それはよかったデス。
ところで、あの時話した剣舞はいつ披露しマスか?
〇千子村正
燭台切さんが大喜びで舞台を整えてくれるそうなので、アナタの余暇が知りたいデス
〇大倶利伽羅
なっ…それであいつの機嫌が良かったのか。
…俺はやらん
〇千子村正
huhuhuhu、開催が待ちどおしいデスね。
張り切って瓦版も作っておきマス
〇千子村正
その布、汚れやすいデスね。
外に出た後は特に汚れが目立つようデス
〇山姥切国広
…外で汚れるのは当然だ。
別に…それでいいと思っている
〇千子村正
そうデスか?歌仙さんは、「見ているだけで洗いたくなる」とぼやいてましたよ
〇山姥切国広
それを聞いては、そのままにしづらいな…
〇千子村正
では、これ以上布が汚れない方法を共に考えまショウ。
ワタシの印象では畑仕事の後が一番汚れているようデス
〇山姥切国広
…土をいじるからだろう。
それに汚れていれば…いや、なんでもない
〇千子村正
…?とりあえず、泥汚れを防ぐ方法を考えまショウか
〇山姥切国広
…おい、話がある。
あんたが畑仕事用に作ったという俺の布のことだ
〇千子村正
はい、なんでショウ?
アナタのために工夫を凝らしてみたのデスが
〇山姥切国広
…汚れきっているほうがお似合いだと、そう言いたいのか?
〇千子村正
違いマス!汚れが目立つのであれば、いっそ黒ければ気にならないと思っただけデス
〇千子村正
歌仙さんに墨汁を分けてもらって染めたのデスよ。
どうデス?深みのあるいい色でショウ?
〇山姥切国広
…そういうことか
〇山姥切国広
…変に勘ぐってすまない
〇山姥切国広
…ただ、俺はあまり目立ちたくないな。
気持ちだけもらっておく
〇千子村正
huhuhuhu、そうデスか、わかりました。
では、別の案をまた考えておきマスね
〇千子村正
長義さん、今までどこに行っていたのデスか?
もしや…秘密の特訓でも?
〇山姥切長義
なんの話かな?
俺はずっと部屋にいたが…
〇千子村正
本当でショウか?蜻蛉切が言っていました。
最近、長義さんが鍛錬に姿を見せないと…
〇千子村正
デスが、アナタの動きを見ると鍛錬を怠っているようには見えません。
むしろ、よく仕上がっていマス
〇千子村正
こう見えて口は堅いのデス。誰にも言わないので教えてくれませんか?
秘密の特訓…してマスね?
〇山姥切長義
君も食い下がるね。残念だけど何も語る気はないよ。
代わりに俺が本丸で気に入っている場所を教えよう
〇山姥切長義
誰も気づいていない、秘密の場所だ。
この情報で代わりにはならないかな?
〇千子村正
huhuhuhu、仕方ありませんね。
では、そちらで手を打ちまショウ
〇山姥切長義
そうしてくれると助かるな。
どうせなら、今から案内しようか?
〇千子村正
ぜひお願いしマス。
出発といきまショウ
〇千子村正
この前はあんな素敵な場所を教えて下さり、感謝しマス
〇山姥切長義
気に入ってくれたようで何よりだよ。
誰にも気づかれていない、穴場、かな。
〇山姥切長義
あそこは他の奴もあまり来ないし、木漏れ日も入る。
桜だって見えるだろう?
〇千子村正
ええ、花びらにまみれることなく桜を愛でられるちょうどいい距離感デス
〇千子村正
そういえば、あの近くに野生の兎が見られる場所を見つけたのデス
〇千子村正
アナタも気に入ると思いマスよ。
ワタシは少し前から瞑想する場所にしていマス
〇山姥切長義
そんな大切な場所を、俺に教えてくれるのか?
これは光栄だな
〇千子村正
ついでに兎の手懐け方も伝授しまショウ。
お礼は特訓の情報で大丈夫デスので
〇山姥切長義
残念ながら、それはできない相談かな
〇千子村正
huhuhuhu…冗談デスよ。
それでは、案内しまショウ
〇蜻蛉切
歌仙。その…非常に申し上げにくいのだが…
先日、生花を食べていなかったか?
〇歌仙兼定
貴殿、いったい何を言って…
〇蜻蛉切
いや、貴殿が何を食していようと文句はないのだが、何故生花を食べるのかと、どうにも気になってな
〇歌仙兼定
ああ…待ってくれ。
どうやら大きな誤解をしているようだ
〇蜻蛉切
誤解…?自分が?
〇歌仙兼定
ああ。僕が食べていたのは生花じゃない…
桜を模した練り切りだ
〇蜻蛉切
では、先日
生花の花弁を食べていたように見えたのは…
〇歌仙兼定
食べる際に切った一欠片だろうね。
あれは燭台切の試作品だよ
〇蜻蛉切
そう…だったのか。すまない、あまりに精巧な練り切りだったからな、つい…
〇蜻蛉切
しかし…すごいものだな。どのような技術があればあれほど精緻に花を再現できるのだろうか…
〇歌仙兼定
そうか。貴殿も花の趣がわかるのかい?
なら今度、僕と共に作ってみようじゃないか
〇歌仙兼定
ちょうど、燭台切に練り切りの作り方を教わろうと思っていたんだ。是非参加するといい
〇蜻蛉切
…良いのか?ではその厚意、ありがたく受け取ろう。
共に見事な花を作り上げようぞ、歌仙
〇歌仙兼定
ふ…ふふ…
〇蜻蛉切
…どうした、歌仙?
自分の顔に何かついているだろうか
〇歌仙兼定
いや…悪いね、先日ともに行った、桜の練り切り作りを思い出してね
〇蜻蛉切
確かにあの時自分は、燭台切殿の手本を再現できず、不格好に仕上げてしまったが…
〇歌仙兼定
別に、貴殿の不器用さを笑ったわけじゃない。
…まあ、確かに器用と言うほどではなかったけれど
〇歌仙兼定
僕が笑ったのはあの、とても雅で楽しいひと時を思い出したからさ
〇歌仙兼定
正直、僕は貴殿が花の雅さに興味を抱くなんて、露ほどにも思っていなかったよ
〇歌仙兼定
だから、菓子作りを通して四季を愛でられたこと、僕は嬉しく思っているんだ
〇蜻蛉切
…そうか。不慣れさにより歌仙を苛立たせていないか不安だったのだが…いささか安堵した
〇蜻蛉切
歌仙、機会があれば、また自分と練り切りを作っていただけないか
〇歌仙兼定
ああ、いいとも!
貴殿と過ごす雅な時ならば大歓迎さ
〇蜻蛉切
一期殿、先ほどは忙しなく動いていたようだが、何かあったのか?何やらお疲れの様子だ
〇一期一振
そちらまで物音が響いていましたか。
いやはやお恥ずかしい…
〇一期一振
実は弟たちがそこかしこに私物を放置していたので、不用品の処分も兼ねて、片付けて回っていたのです
〇蜻蛉切
なるほど。
それで薬研が荷を抱えて急いでいたのか
〇一期一振
はぁ…また薬研に先回りされましたか、何か変なものを隠していないか確かめなければ…
〇蜻蛉切
呼び止めておけばよかったな、申し訳ない。
しかし、こうして疲れ切った一期殿を見ると思い出すな
〇一期一振
蜻蛉切さんと共に行った、本丸内の模様替えですか?
あの頃よりは落ち着いたと思いたいものですが…
〇蜻蛉切
一期殿も気苦労が絶えぬな。
自分が言えた義理ではないかもしれないが
〇一期一振
お互い様ですな。
今度、気苦労を癒す茶会でも開きましょう
〇一期一振
それはさておき、まずは薬研を探さねば。
では、失礼いたします
〇一期一振
そういえば、今朝は騒がしい様子でしたが、何か事件でもあったのですか?
〇蜻蛉切
聞こえていたのか、これは失礼した。
事件というほどではないが、村正が少しな…
〇一期一振
以前私が片付けをしていた際とは、立場が逆になりましたな。
それで、どうされたのです?
〇蜻蛉切
村正の衣服が点々と落ちていたので、もしやと思い、あわてて拾い集めつつ、村正を探していたのだ
〇蜻蛉切
結局、脱ぎ散らかしたわけではなく、洗濯した衣服を落としていただけで安心したのだが
〇一期一振
それはそれは…お疲れ様でした、蜻蛉切さん
〇蜻蛉切
まったくだ。
…ん?何か聞こえるような…
〇一期一振
声からするに…鯰尾と村正でしょうか?
いったい鯰尾は何をしでかしたのでしょう…
〇蜻蛉切
いや、村正の可能性もある。もしやまた…。
互いに気苦労が絶えんな
〇一期一振
ははは…そうですな。
休息はここまでにして、様子を見に行きますか
〇蜻蛉切
ううむ…
〇鯰尾藤四郎
蜻蛉切さん、苦い顔してどうしたんですか?
もしかして、どこか怪我でも…?
〇蜻蛉切
いや、それほど大事ではないが…先日、居室入口の欄間で頭を打ってな。まだ少し痛むのだ
〇鯰尾藤四郎
ええっ、欄間に!?鴨居じゃなくて…?
…でも確かに、蜻蛉切さんならあり得るか
〇鯰尾藤四郎
蜻蛉切さん、この本丸でも随一の身の丈ですもんね。
俺なんて、ぶつかりたくてもぶつかれっこないですよ
〇蜻蛉切
はは、怪我しないに越したことはないだろう。
あの時は考えごとに耽っていてつい…な。汗顔の至りだ
〇蜻蛉切
鯰尾も、自分の失態を教訓としてくれ。
歩く時は気を抜かず、前方から目を逸らさぬように
〇鯰尾藤四郎
はーい、気をつけまーす。
…でも心配だな、蜻蛉切さん
〇鯰尾藤四郎
考えごとに耽っても、欄間で怪我をしないためには…
…そっか、いいこと思いついた!
〇蜻蛉切
鯰尾…?
〇蜻蛉切
鯰尾。自分がなぜ貴殿を呼び出したかわかるな?
〇鯰尾藤四郎
はい!欄間の装飾についてですよね。
どうです、すごいでしょう?
〇蜻蛉切
…やはり、あれは貴殿の手によるものだったか。
まったく、驚かせてくれる
〇鯰尾藤四郎
あれ、すみません。びっくりさせちゃいました?
〇蜻蛉切
所用で居室を離れて、戻ったら欄間が一面座布団で覆われているんだ。驚かぬわけがない
〇蜻蛉切
…とはいえ、心遣い感謝する。先日、自分が欄間に頭を打ったのを受けての行いなのだろう?
〇鯰尾藤四郎
そうです!どうにかして、蜻蛉切さんが頭をぶつけずに済めばいいなと思って…
〇鯰尾藤四郎
そこで、ビビッとひらめいたんですよ。
欄間にぶつかっても痛くないように細工すればいいんだって!
〇蜻蛉切
はは、さすがは鯰尾。
その類稀なる発想力の高さ、自分も見習わねばな
〇鯰尾藤四郎
へへ、喜んでもらえてよかった!よし、それじゃ好評だったことだし、他の部屋の欄間も覆いに…
〇蜻蛉切
待て待て。覆うならば、自分の部屋だけにしておけ。
一期殿や長谷部に叱られても知らんぞ?
〇日向正宗
蜻蛉切さん、相談したいことがあるんだけど、いいかな?
〇蜻蛉切
森を散策中に何か見つけたと言っていたな。
その件か?
〇日向正宗
そうそう。実はね、葉っぱが大きくて、色のいいしそを見つけて、根っこから抜いてきたんだ
〇日向正宗
本丸の近くに植えて育てたいんだけど、場所に悩んでいて…
〇蜻蛉切
そうだな、日当たりのいい縁側付近はどうだ?
あそこならば手入れもしやすいだろう
〇日向正宗
うーん、あまり日が当たりすぎると、しそはうまく育ってくれないんだ
〇蜻蛉切
なんと、それは知らなかった。
草木は日が当たるほど良いのかと
〇日向正宗
勘違いするよね、僕も梅干し作りを始めるまでまったく知らなかったし。
でも、どうしようかな…
〇蜻蛉切
日当たりが、さほど良くない場所といえば…
ひとつ心当たりがある。よければ案内しよう
〇日向正宗
本当?ぜひお願いしたいな!
〇蜻蛉切
日向、その後、しその様子はどうだ?
〇日向正宗
蜻蛉切さんに教えてもらった裏庭の隅ですくすくと成長しているよ
〇日向正宗
あの場所は、朝だけ光が差すみたいで、ちょうどいい具合の日当たりだったみたい
〇蜻蛉切
それは何よりだ。
もう収穫できそうか?
〇日向正宗
梅干しに使える量になるのは、もう少し先になると思うよ
〇日向正宗
でも、僕と蜻蛉切さんの分くらいなら取ってもいいかな。
青じそのほうを天麩羅(てんぷら)にしてみる?
〇蜻蛉切
それはありがたい誘いだ。
ぜひご合伴に預かろう
〇日向正宗
ふふ、よかった。
収穫のついでに、しそのお世話もしておこうかな
〇蜻蛉切
であれば、自分も手伝おう
〇日向正宗
それは助かるよ。
じゃあ、一緒に見に行こう
〇蜻蛉切
長谷部。近頃、また一段と眉間のしわが深まっているのではないか?
〇へし切長谷部
そうか?だとすれば、その原因は風紀を乱す輩にある。
蜻蛉切、お前は気にする必要はない
〇蜻蛉切
そうは言うが…そうやって一日中目を光らせていては、気がすり減るばかりだぞ
〇蜻蛉切
自分は長谷部の気を和らげたい。
勝手は承知の上だが…どうだろう。ここはひとつ、共に茶でも飲まないか?
〇へし切長谷部
茶か。悪くない提案だ。
だが俺はこれより、本丸内の見回りをせねば…
〇蜻蛉切
宇治の一番茶の用意がある…と言ったら?
〇へし切長谷部
な…宇治の一番茶だと?この時季のみ楽しむことを赦されている、かの名品を…お前、それを先に言え!
〇へし切長谷部
…コホン。そういうことならば、仕方がない。
たまには、腰を据えて茶を楽しむとしよう
〇蜻蛉切
快い返事、感謝する。
では行こうか、長谷部
〇へし切長谷部
蜻蛉切、その…以前お前と共に味わった茶についてだが…
〇蜻蛉切
ああ、宇治の一番茶のことか?悪いが、あの後飲み切ってしまってな。茶葉はもう手元には…
〇へし切長谷部
待て、別にねだってなどいない。
…まあ、確かにあの茶は格別な美味さではあったが
〇へし切長谷部
俺が言いたいのは…あの時の俺に、無理にでも休息をとるよう勧めたこと、感謝している…ということだ
〇へし切長谷部
見栄から言い出せなかったが…自身が疲労していることは、十二分に悟っていたんでな
〇蜻蛉切
そうか、ならばよかった。
三日月殿に、長谷部の好みを聞いておいた甲斐があったというものだ
〇へし切長谷部
ん?お前、今何と…?
三日月に俺の好みを聞いた、と聞こえたような…
〇蜻蛉切
確かにそう言ったぞ。勤勉な長谷部を休ませるには、一筋縄ではいかんと思ってな
〇蜻蛉切
下調べおよび物資の用意を入念に行ったのだ。
結果、無事気が和らいだようで何よりだ
〇へし切長谷部
つまり俺は、端から蜻蛉切の掌上で踊らされていたと。
ふ…見かけに似合わず、策士な奴だ
〇へし切長谷部
蜻蛉切、お前の真意はよくわかった。
ならば…俺を休ませるべく、これからも絶品の茶を用意してくれよ
〇蜻蛉切
はは、これはしてやられたな…。
任せてくれ。最高の休息を準備すると誓おう
〇薬研藤四郎
なあ蜻蛉切、あんた、「金打」って知ってるか?
〇蜻蛉切
無論。武士らが契りを交わす際に、刀の鍔を鞘に打ち付け鳴らす行い、だったな
〇薬研藤四郎
ああ、それだそれ。
命を賭けた契りの証になれるなんて、憧れるよな
〇薬研藤四郎
まあ、短刀の俺にお鉢が回ってくることは太刀に比べちゃ、そう多くはないんだがな…
〇蜻蛉切
そう気を落とすな、薬研。
それは槍も同じことだ
〇蜻蛉切
自身の形に応じた役割をまっとうすることが我らに与えられし使命、だろう?
〇薬研藤四郎
…ああ、あんたの言うとおりだ。
できないことを嘆くより、できることを全力で、だな
〇蜻蛉切
ああ、その意気や良し!
〇薬研藤四郎
うーん…
〇蜻蛉切
どうした、薬研。
何か悩み事でも?
〇薬研藤四郎
ああいや、そんな大事じゃないんだが…
この前、いち兄に言われたことが引っかかってな
〇薬研藤四郎
鍛錬してる時だったか、「短刀は小回りがきいていい、主を急な危険から守りやすくてうらやましい」…って
〇薬研藤四郎
太刀であっても、俺らと同じように自分の身のままならなさで悩むことがあるんだな。驚いたよ
〇蜻蛉切
…先日も話したとおり、我ら刀剣には身の形に応じた長短、およびそれに基づいた役割が確かに存在する
〇蜻蛉切
多くの役割をまかなえるほど万能な武器は存在しえない。わかるな、薬研
〇蜻蛉切
なればこそ、己の役割を正しく見定めまっとうすることこそ刀剣として肝要であると…やはり自分は思うのだ
〇薬研藤四郎
ああ。できないことを嘆くより、できることを全力で…
この前のあんたとの話で、胸に刻んだ言葉のとおりだ
〇薬研藤四郎
…ありがとうな、蜻蛉切。
個の前と今回とで、自分がこうして在る意義を、しっかり見つめなおせたよ
〇蜻蛉切
良き対話相手であれたこと、光栄に思う。
またこうして共に語らおう
〇蜻蛉切
巴形の履物は動きにくそうだな。
それほど踵が高くて危なくはないのか?
〇巴形薙刀
ああ、それは考えたことがなかったな。
俺はこの靴に慣れているからか、今まで転倒したこともない
〇巴形薙刀
これを履くと背筋が伸びる感覚があり、気に入っている
〇蜻蛉切
慣れというものか。
だがそれにしても、よく立っていられるな
〇蜻蛉切
そのような靴で動き回れるとは感心だ
〇巴形薙刀
それほど難しいことではない。
誰にでも履きこなせると思うぞ
〇巴形薙刀
蜻蛉切、よければ俺の靴を履いてみるか?
大きさが合うかわからぬが
〇蜻蛉切
話を聞くより、実際に履いてみるが早いか。
いや…だが、やはり自分には…
〇巴形薙刀
何を怖気づいているのだ?
さあ、向こうで履き替えよう
〇蜻蛉切
ううむ、思わぬことになったな…
〇巴形薙刀
俺の靴はそんなに歩きにくかったか…。
履いたそばから転倒していたな
〇蜻蛉切
ああ、あの時は恥ずかしいところを見せてしまった
〇蜻蛉切
巴形の履物を借りたはいいが、歩くどころか、立つのもやっとだったな
〇巴形薙刀
靴の大きさが合わなかったせいもあるだろうが、生まれたての小鹿のように足が震えていたぞ
〇巴形薙刀
だが、履いているうちに背筋も伸びてきていた。
慣れれば槍も振るえるのではないか?
〇蜻蛉切
いや、あの履物で戦うなど自分にはとても…。
何事も鍛錬と言えば、そうなのだろうが
〇巴形薙刀
ふむ、であればこの前貸した俺の靴をやろう
〇巴形薙刀
いずれ履き慣れれば、勇猛な攻めと優雅な佇まいが調和した蜻蛉切が見られそうだな
〇蜻蛉切
そればかりは勘弁してくれ…
〇蜻蛉切
面影殿、そろそろこの本丸にも慣れたか?
〇面影
いや、まだだ…。
昨日も廊下に出ようとして襖に刀を引っかけた
〇蜻蛉切
本丸に来て日も浅いのだ。致し方ないだろう。
かつて自分も何度か鴨居に槍をぶつけたことがある
〇面影
私だけではなかったのか…
〇蜻蛉切
さすがに今は、この体にも本丸にも慣れたがな
〇面影
やはり慣れるまでは部屋に籠もっているべきだろうか。
本丸の調度品を壊しでもしたら事だ
〇蜻蛉切
そこまで気にする必要はないだろう。
よければ、慣れるために自分がやった訓練を教えるが
〇面影
…いいのか?
〇蜻蛉切
もちろんだ。面影殿の役に立つかはわからんが、試してみる価値はあるだろう
〇面影
ありがとう、ぜひ頼む
〇蜻蛉切
近頃は本丸での振る舞いにも慣れてきたようだな。
訓練の成果があったようで何よりだ
〇面影
いや、まだ完璧ではない…。
訓練中、障害物のこけしやだるまに木刀をぶつけてしまう…
〇蜻蛉切
気に病むな。あれはあくまで間合いをとる訓練。
実際の本丸には、あれほど狭い場所はない
〇面影
だが、蜻蛉切は障害物の間を難なくたどっていた。
私と何が違うのか…
〇面影
お前に擬態すればうまくいくだろうか?
それよりはいっそ、小柄な日向や鯰尾に…
〇蜻蛉切
突拍子もないことを言い出すな。
本丸内で擬態などされてはややこしくてかなわん
〇蜻蛉切
むしろ障子に穴を開けられるほうがましだろう
〇面影
そういうものか…。
ならばもう少し訓練に励んでみよう
〇蜻蛉切
それがいい。自分も力になろう
〇鶴丸国永
なあ、蜻蛉切。
三色団子って、この配色じゃなきゃ駄目なのか?
〇蜻蛉切
鶴丸殿は桃、白、緑以外の配色を望むのか?
一説には、春の景色を表しているそうだが…
〇鶴丸国永
一般論や通説ももちろん大事だが俺はあえてそれに異を唱えたい!
〇鶴丸国永
俺はな、常々思い続けてきたんだよ。
…三色団子、白一色でいいんじゃないか?ってな
〇蜻蛉切
もしやそれは、鶴丸殿が全身白いことと関係しているのか?
〇鶴丸国永
そのとおり、俺は白色を気に入っていてな…
見栄えの良さを追求するなら、全部白こそ最適解だろ
〇鶴丸国永
なあ蜻蛉切、お前はどう思う?
三色団子の配色の是非について…お前の考えを聞かせてくれ
〇蜻蛉切
…すまない、少し時をくれ。
しばし団子と向き合い、思索を深めようと思う
〇蜻蛉切
待たせてすまない、鶴丸殿。三色団子の配色の是非…
あれから自分なりに考えてみた
〇鶴丸国永
待ちくたびれたぜ。それだけ真剣に向き合ったんだ、さぞいい考えを導き出せたんだろう?
〇蜻蛉切
自分は…三色団子は、今は現行のままで良い…と思った
〇鶴丸国永
へえ?今は、ときたか。
その心は?
〇蜻蛉切
鶴丸殿の問いを受け、団子と向き合い続ける中…
ふと、眩い日光を受けた桜と芝が目に入ってな
〇蜻蛉切
自分が思っていた以上に、麗らかな春の光景に持っていた三色団子が見事に映えたのだ
〇蜻蛉切
ならば、今…春の光景を目で楽しめるうちはこの配色のままで良い、と思ったのだ
〇蜻蛉切
景色を目で楽しみながら、舌で団子を楽しむ…
これに勝る春の贅沢は、ないのかもしれんぞ?
〇鶴丸国永
なるほど、一理あるかもな。
となると、つまりお前の理屈でいくと、冬の団子は…
〇蜻蛉切
ああ、真っ白な雪景色と共に楽しむならば、白一色の団子こそがふさわしいだろうな
〇鶴丸国永
やっぱりそうか。お前の理屈は最高だ!
こりゃあ冬が楽しみになってきたぜ
〇蜻蛉切
気が早いな、鶴丸殿は。
今は共に、春色の団子を楽しむとしよう
〇蜻蛉切
燭台切殿、貴殿は燭台を斬ってみせたことからその名がついたそうだな
〇燭台切光忠
ああ、読んで字のごとくだね。
そういう蜻蛉切さんの名前の由来も…
〇蜻蛉切
そうだ、穂先に止まった蜻蛉が両断されたことが由来。
…思えば、このような名の刀剣男士が本丸には多いな
〇燭台切光忠
確かに。僕に蜻蛉切さんに、山姥切くんたちに…
ああ、長谷部くんもそうだったかな?
〇燭台切光忠
きっと、何かを斬った逸話は僕たちが思う以上に印象に残りやすいんだろうね
〇蜻蛉切
そうかもしれんな。我々刀剣からしてみれば、何かを斬るなど造作もないことだが…
〇蜻蛉切
いやしかし、青銅の燭台を両断してみせるのは並大抵の刀にはできぬことだろう。
すごいな、貴殿は
〇燭台切光忠
蜻蛉切さんも、蜻蛉が止まっただけで斬れてしまうだなんて、並の切れ味じゃないよね
〇蜻蛉切
互いの刃を誉め合うというのは、むず痒いものだな。
だが、有意義な時間だ
〇燭台切光忠
そうだね。日頃わざわざ誉め合わないからこそ余計に嬉しいよ。
ありがとう、蜻蛉切さん
〇燭台切光忠
ねえ、蜻蛉切さん。
近頃、みんなを熱く誉めてまわっているみたいだね?
〇蜻蛉切
ああ。燭台切殿と話をしてから、本丸にいる皆への尊敬の念を改めて示しておきたい、と感じてな
〇蜻蛉切
誰しも、誉められて悪い気はしないだろう?
それに、自分の誇る部分をより強く認識できるのでな
〇燭台切光忠
ああ、それでみんなを熱烈に…。
蜻蛉切さんらしい、純朴で真っ直ぐな行動だなあ
〇燭台切光忠
でも、蜻蛉切さん…その真っ直ぐさが、少々厄介なことを引き起こしているみたいなんだ
〇蜻蛉切
なんと…!
いったいどうしたというのだ?
〇燭台切光忠
お、落ち着いて…蜻蛉切さんの熱烈な誉め言葉、大体みんな喜んでいたと思うんだけど…
〇燭台切光忠
ちょーっと素直じゃない…伽羅ちゃんや山姥切くんは、すごく面食らってしまったみたいでね
〇燭台切光忠
蜻蛉切さんに熱く誉められて以降ずっと、どこか心在らずなんだよ。
はは、困ったものだよね
〇蜻蛉切
そうか、すまない。
これからは相手に応じ伝え方を考慮せねばな
〇燭台切光忠
いやいや、蜻蛉切さんは悪くないよ。
僕は、別にあなたを諭したかったわけじゃないんだ
〇燭台切光忠
僕が伝えたかったのは、蜻蛉切さんの熱烈さをどんな反応が返ってこようと貫いてほしいってことかな
〇燭台切光忠
それが、蜻蛉切さんの良さだと思うから。
現に僕はすごく嬉しかったし、ね
〇蜻蛉切
…そうか。心遣い、感謝する…まさに今自分も、燭台切殿の言葉に大いに励まされたぞ
〇蜻蛉切
大倶利伽羅、鍛錬の帰りか?
〇大倶利伽羅
…ああ
〇蜻蛉切
ならばちょうどいい。
実は鍛錬の方法について折り入って相談があるのだ
〇大倶利伽羅
…断る。
そういうのは他の連中に頼むんだな
〇蜻蛉切
実戦に役立つ鍛錬法を探しているのだが、ぜひとも大倶利伽羅の意見をもらいたいのだ
〇蜻蛉切
貴殿にとっても興味深い話のはずだ。
まずは黙って聞くだけでもかまわないのだが
〇大倶利伽羅
…聞くだけでいいのか?
〇蜻蛉切
無論
〇大倶利伽羅
…なら、縁の下で寝ている猫にでも聞かせてやるといい
〇蜻蛉切
ううむ…一筋縄ではいかぬものだな
〇大倶利伽羅
…おい、あんたが前に言っていた鍛錬の方法のことだが…
〇蜻蛉切
おお、話を聞く気になったか?
〇大倶利伽羅
…ひとつ気になることがある
〇大倶利伽羅
鴨居に銭が吊るしてあった。
あんたの仕業らしいが、あれは…
〇蜻蛉切
そのとおり、吊るした銭を槍で突くという鍛錬のためのものだ
〇蜻蛉切
銭を突くと揺れて思わぬ動きをする。
そこを狙うのは想像以上に難しいものだ
〇蜻蛉切
だが、鍛錬を続けてから集中力と命中力が上がった。
相手もいらず、雨の日にも行えるという利点もある
〇大倶利伽羅
…………
〇蜻蛉切
さらに、吊るした銭をとある物に替えると、鍛錬としても応用が利くのだが、共にやらぬか?
〇大倶利伽羅
…考えておく…
〇山姥切国広
…………
〇蜻蛉切
山姥切…山姥切!
〇山姥切国広
…ん!…なんだ、蜻蛉切か。
…あまり近くで大声を出すな
〇蜻蛉切
いや、声を特別張った意識はないが…。
…呆けていたな、山姥切
〇蜻蛉切
近頃、夜更けに出歩いている姿を見かけるが…
何故あのような時刻まで散策を?
〇山姥切国広
…あんたには関係ない
〇蜻蛉切
そうは言うが…夜更けまで散策して、寝不足の体で戦場に出てみろ。
たちまちに隙を突かれかねんぞ
〇蜻蛉切
それとも…何か他に、眠れない理由でもあるのか?
自分で良ければ、相談に…
〇山姥切国広
…いいから、俺のことは放っておいてくれ
〇蜻蛉切
…山姥切、いつにも増して頑なな様子だったな。
何やら特別な事情がありそうだ
〇蜻蛉切
見たぞ。山姥切
〇山姥切国広
…何をだ?
〇蜻蛉切
毎晩、菜の花畑へと赴き景色をながめていたのだな
〇山姥切国広
…あんた、俺をつけていたのか
〇蜻蛉切
尾行のような真似をしてすまない。
近頃貴殿が頑なに眠りたがらない理由が気になってな
〇蜻蛉切
濃紺の空の下、黄金色の菜の花が揺れる空間はとても静謐で…穏やかであったな
〇山姥切国広
…そうだ。
夜のあそこは…心地よくひとりになれる場所なんだ
〇山姥切国広
…だから、他の連中には…
〇蜻蛉切
無論。他言無用、承知している…だが、時折自分が訪れることは許してくれないか?
〇山姥切国広
…好きにしろ。
元より、俺が専有できる場所でもないからな
〇蜻蛉切
心遣い、感謝する
…たまの夜更かしも、存外悪いものではないな
〇山姥切長義
蜻蛉切、貴方は確か天下三名槍と呼ばれた槍のひとつだったかな?
〇蜻蛉切
いかにも。
日本号、御手杵と並び称される槍が自分だ
〇山姥切長義
貴方たちは持ち主が同じでもなく、同じ刀派でもない。
お互いをどうとらえているのか気になってね
〇山姥切長義
他の二振りに対抗心はないのか?
三名槍の中でも一番優れているのは自分だ、とかね
〇蜻蛉切
ふむ…、そのように考えたことはないな
〇蜻蛉切
ただ、三名槍の名に恥じぬようあらねばとは思う。
そうでなければ、皆に申し訳が立たないと
〇山姥切長義
そういうものか。だが、他の二振りはどうなのかな?
この状況では聞くこともできないけどね
〇蜻蛉切
いずれ、無事主が戻られた際に、三名槍が一堂に会することがあれば…
〇山姥切長義
その時は、手合わせでもして白黒つけてみるか?
〇蜻蛉切
いや、揃って酒を酌み交わしたいものだ。
存分にな
〇山姥切長義
以前、天下三名槍について貴方の考えを聞いただろう?
あれには驚かされたよ
〇蜻蛉切
自分は何かまずいことでも言っただろうか?
〇山姥切長義
いや、ある意味、貴方らしいとも言えるかな。
並び称されただけで、そこまで親しみを抱けるとはね
〇蜻蛉切
それほど大層なことを言ったつもりはないが。
だが、それを言うなら貴殿も同じだ
〇蜻蛉切
山姥切への接し方も、実に貴殿らしい
〇山姥切長義
…それはどういう意味だ?
〇蜻蛉切
言葉少なな山姥切の糸を察し、的確に回答し、時には指摘もしてみせる。
実に良い関係だ
〇山姥切長義
それは貴方の勝手な思いこみだよ。
俺は任務のために仕方なく行動を共にしているだけだ
〇蜻蛉切
そうか。それは失礼した。
だが、いずれにしろ良い関係だと思う
〇山姥切長義
まったく、その朴訥(ぼくとつ)さはわざとなのか。
話を蒸し返すんじゃなかったよ
〇一期一振
歌仙!その…この間はすみませんでした
〇歌仙兼定
なんのことだい?
貴殿に謝られるようなことをされた覚えはないが…
〇一期一振
ああ…私ではなく、鯰尾のことです。
出陣した際に君の世話になったと聞きまして
〇歌仙兼定
そうだったかな…。僕も覚えていないくらいだ。
貴殿が気にする必要はないよ
〇一期一振
他にも何かと手を焼かせているようで、一度きちんとお礼を言っておかねばと思いまして
〇歌仙兼定
兄というのも大変だな。
いちいち弟の言動に目を配っていては、疲れるだろうに
〇一期一振
…確かに、気苦労がないといえば嘘になります。
ですが、苦痛を感じたことはありません
〇一期一振
兄として、弟の成長を見守れることが私は嬉しいんです
〇歌仙兼定
面倒見の良さは筋金入り、ということか。
つくづく世話好きだな…だが、それも貴殿らしい
〇歌仙兼定
一期…その、すまなかったね
〇一期一振
おや?なんのことでしょう
〇歌仙兼定
先の調査で、面影と僕で立てていた作戦をあらかじめ伝えていなかったことについてだ
〇歌仙兼定
先に伝えていれば、日向の件も含め、もっと未然に防げていたのでは…と、いまさらながら思ってね
〇一期一振
ああ、そのことですか。私はもう気にしていません。
きっと、皆も同じ思いのはずです
〇一期一振
実際、あの場は君たちの機転で事無きを得ました。
感謝していますし、怒る道理はないと思っています
〇歌仙兼定
しかし…
〇一期一振
ですが、だからといって、独断で動いていいわけでは無いですな。
…歌仙もわかっていることでしょうが
〇歌仙兼定
無論。なぜなら僕らは、共に戦う…
〇一期一振
仲間、ですから。これより先、我々に隠し立てはなしでお願いしますな
〇歌仙兼定
…わかった、感謝する。
貴殿のおかげで、少し肩の荷がおりた気がするよ
〇歌仙兼定
日向が、無事に帰ってきてよかった。
一時はどうなる事かと思ったけれど…
〇一期一振
ええ…本当に、よかったです
〇一期一振
…歌仙。
先日、我々は共に戦う仲間であると言いました
〇歌仙兼定
ああ。
もちろん、今もその気持ちに変わりはないさ
〇一期一振
私は…ともに過ごすうちに、皆のことが仲間を超えて家族のように思えてきました
〇歌仙兼定
なるほどね。すると、我らが一家の家長は主ということになるのかな?
〇一期一振
ははは、ですな…。
では、家長がお帰りになるまで一丸となって家を…本丸を、守り抜くとしましょうか
〇歌仙兼定
ああ…守ってみせるさ、必ずね
〇鯰尾藤四郎
あの、歌仙さん!
雅な文章の書き方を、俺に教えてもらえませんか!
〇歌仙兼定
へえ…いったい、どういう風の吹き回しだい?
きみがそのようなことを請うなんて…
〇鯰尾藤四郎
先の調査、筑前で…歌仙さん、細川忠興に救援を請うため、手紙を書いたじゃないですか
〇歌仙兼定
ああ、あの作戦は成功し、無事、心を届けられたね
〇鯰尾藤四郎
あの時、俺、正直うまくいくか不思議だったんですよ。
だって、細川忠興は黒田家を嫌っていましたから…
〇鯰尾藤四郎
でも、歌仙さんの手紙はその困難を乗り越えてみせた。
そのことに俺、すっごく感動したんです!
〇鯰尾藤四郎
もしその成功の秘訣が歌仙さんが重んじる「雅」にあるのなら、俺も勉強してみたいなって思ったんです
〇歌仙兼定
ふむ…その心意気や良し、だ!
万事僕に任せてくれ、鯰尾
〇歌仙兼定
きみも、我が第二部隊の一員だからね。
雅な文章の一つや二つ、さらりと書けてこそだろう
〇歌仙兼定
…ただし。
僕の指導は厳しいよ。覚悟はいいかい?
〇鯰尾藤四郎
はい、歌仙さん…いえ、隊長!
これから、よろしくお願いします!
〇鯰尾藤四郎
はあーあ…
〇歌仙兼定
どうした鯰尾、大きなため息は雅じゃないな
〇鯰尾藤四郎
歌仙さん…
俺、第二部隊失格かもしれません
〇歌仙兼定
ふむ…なぜ、そう思ったんだい?
〇鯰尾藤四郎
先日、雅な文章の書き方を教わった時、歌仙さん、「自然を愛し感性を磨く」のが大事って言いましたよね
〇歌仙兼定
成熟した感性なくして、雅な文章は書けないからね。
だからまずは、周囲の自然を頼り感性を磨くのがいい
〇鯰尾藤四郎
ですよね。だから俺、たくさん実践したんです。
花を愛で、流れる雲を眺め、月の下で瞑想して…でも…
〇歌仙兼定
でも?
〇鯰尾藤四郎
…どうしても、いつも途中で眠気に負けちゃうんです。
静寂に包まれていると、つい…
〇歌仙兼定
…なるほど、鯰尾には、まず感性を磨くための十分な睡眠が必要なようだ
〇鯰尾藤四郎
へへ…すみません。
次は、しっかり寝てから頑張ってみますね
〇鯰尾藤四郎
…歌仙さん。俺…
石田三成の最期が、まだ忘れられないんです
〇歌仙兼定
六条河原で彼が処断された時か。
…いかなる時も、敗者の散り際は侘しいものだね
〇鯰尾藤四郎
はい、でも…俺、あの時見た紅葉がどうしてか綺麗に見えたんですよ
〇歌仙兼定
…………
〇鯰尾藤四郎
不謹慎かもしれませんけど…
〇鯰尾藤四郎
最期の時まで毅然と振る舞う石田三成の姿と呼応するかのように紅葉が舞った時…
〇鯰尾藤四郎
雅な文章のために、ただ自然をながめてた時とは違う…
これが、「感性が磨かれた」ってことなんですかね
〇歌仙兼定
…さてね。そう思うのなら、きみがその時感じたことをそのまま文章に起こしてみるといい
〇歌仙兼定
きみの感性が磨かれたのならば…
きっと、以前より雅を感じる文章になっているはずだ
〇鯰尾藤四郎
…はい。俺も、この気持ちを忘れたくありませんから。
文章、書いてみます…心のままに
〇日向正宗
出陣先での石田三成様の様子は史実とは違った。
…正直、少し驚いたよ
〇歌仙兼定
影響は大きいだろうね。
細川の動きもかなり史実とはかけ離れていた
〇日向正宗
うん。出陣先では、おかしなことばかり起きていて何が何やら
〇日向正宗
それでも元の主の悪い噂だけはしっかり残っている…。
なんとも言えない気持ちになるよね
〇歌仙兼定
良くも悪くも、あの苛烈さこそが彼らしさではるのかもしれないけれど、複雑な思いだ
〇歌仙兼定
お互い話題には事欠かない厄介な主を持ったものだね。
…まったく、雅に行きたいんだけれどねえ
〇日向正宗
ふふ、でもそういう歌仙さんも元の主のことは嫌いじゃないよね?
〇歌仙兼定
それはもちろん。
だからこそ、間違った歴史で歪められた将は皆元に戻ってもらいたいんだ
〇日向正宗
僕も同じ気持ちだよ。
頑張って調査を成功させようね
〇歌仙兼定
…やはり改変された歴史の中でも、元の主同士は仲が悪いらしいな
〇日向正宗
そうみたいだね。
ふたりの関係は正史通りみたいだ
〇歌仙兼定
まったく、雅じゃない。
結局変わらないものも多いようだね
〇日向正宗
大きな歴史の流れが変わってしまても、人と人の関係性は変わらないものかもしれないね
〇日向正宗
石田三成様も細川忠興も、ふたりとも根っこは変わらず、頑固な性格のままみたいだし
〇歌仙兼定
そうやって聞くと、あのふたりが似ている気がするから不思議なものだな。
あれだけ仲が悪いというのに
〇日向正宗
似た者同士だからこそ、理解できるけれど理解したくない…とかかな?
〇歌仙兼定
もしくは互いに譲れない部分が違うか、だろうね。
なんにせよ、僕たちふたりは良い関係で在りたいな
〇日向正宗
そうだね。いがみ合った元の主の分まで、これからも力を合わせていこう
〇日向正宗
歌仙さんはすごいね。
元の主の真実をちゃんと見届けるなんて
〇日向正宗
僕は都合の悪いことから目をそらして、逃げてしまったのに…
〇歌仙兼定
その言い方…まだ時間遡行軍に干渉されたことを気にしているのかい?
〇日向正宗
うん…まあね…。
僕の心が弱かったばかりに迷惑をかけたなって
〇歌仙兼定
それはきみの思いこみだ。
時間遡行軍の罠がそれだけ巧妙だったというだけさ
〇歌仙兼定
そうでなければ、時間遡行軍の干渉から逃れることは、できなかっただろうからね
〇日向正宗
…そう言ってもらえると少し救われる気がするよ。
ありがとう、歌仙さん
〇へし切長谷部
歌仙、突然の誘いとなってしまいすまないが…
明日の早朝より、共に湖で水浴びをしないか
〇へし切長谷部
皆にも声をかけたんだが、軒並み断られてな。
しかし、心身の健康を思えば皆にはどうしてもだな…
〇歌仙兼定
ははは…当然、却下だ
〇へし切長谷部
何?歌仙、お前もか…だがよく聞け、早朝の水浴びには心身共にとてもいい作用が…
〇歌仙兼定
だがも糸瓜もあるものか。そのような奇怪な集まりに、この僕が参加するわけないだろう
〇へし切長谷部
くっ…作用面からの勧誘はならず、か。
ならば…
〇へし切長谷部
歌仙、お前は知らないかもしれないが…
早朝の霞がかった湖の明媚さは、本丸随一だぞ
〇歌仙兼定
…!
〇へし切長谷部
水浴びに参加すれば、その景色も見られるだろうが…
お前は参加しないんだったな。ならば、残念だが…
〇歌仙兼定
…一度だけ。
一度だけなら、参加してやってもいい
〇へし切長谷部
おお、そうか!快い返事、感謝する。
…では明朝、よろしく頼むぞ
〇へし切長谷部
歌仙!お前、先日以来一度も水浴びに参加していないではないか
〇歌仙兼定
当然だ。
僕があの日、自分の軽率さをどれほど悔いたことか…
〇へし切長谷部
む…それほどまでに水浴びが苦痛だったか
〇歌仙兼定
当たり前だ。頭から冷水を被った時には、うっかり彼岸に足を踏み入れたのかと思ったよ…!
〇へし切長谷部
そ、そうか…すまなかった。
しかし、お前がここまで打ちのめされていたとはな…
〇歌仙兼定
僕は貴殿よりずっと繊細なんでね。
今後は僕ではなく他の者を誘ってくれるかい?
〇へし切長谷部
だろう?俺も、あの景色を前にすると明鏡止水の極致に至れる心地が…
〇歌仙兼定
ふむ…だがよく考えると、別に水浴びに参加せずとも僕が早起きさえすれば良かった話じゃないか?
〇へし切長谷部
ははは。そこに気づくとはさすがだな。
つまり、早起きは三文の得、ということだ
〇歌仙兼定
長谷部、貴殿…気づいていて言わなかったね?
まったく、得した三文のうち二文ほど落とした気分だよ
〇薬研藤四郎
歌仙は目利きができるんだったか?
昔、よく主に付き添って万屋に行ってたよな
〇歌仙兼定
ああ、物を見る目には自信があるよ。
それがどうかしたのかい?
〇薬研藤四郎
個の前、蔵を掃除してたら変わった壺が出てきてな
〇薬研藤四郎
薬を保管するのによさそうな大きさだったんだが、高価なものだとさすがにまずいだろう?
〇歌仙兼定
なるほど、それで価値を見定めてほしいというわけか。
ちなみに色や柄は入っていたかい?
〇薬研藤四郎
青とも緑ともつかない、複雑な色だったぜ。
模様までは細かく覚えてねえな
〇歌仙兼定
実物を見ないことにはなんとも言えないが、…特徴から思い当たる焼き物はいくつかある
〇歌仙兼定
贋作の可能性も否めないが、もしかすると…。
ふむ、これは俄然興味が湧いてきたよ
〇歌仙兼定
すぐにでも見てみたい。
その壺があるところへ案内してくれ
〇薬研藤四郎
この間は、わざわざ壺の目利きを頼んだのに高価なものじゃなくて悪かったな
〇薬研藤四郎
俺としては、薬入れに使えるからちょうどよかったんだが
〇歌仙兼定
いや、勝手に期待した僕が悪かったのさ。
名工の作ではないかと、つい想像が膨らんでね
〇歌仙兼定
だが、あれはあれでいい壺だよ。
実用品とはいえ、丁寧に仕上げてあって、緑青流しも美しい
〇薬研藤四郎
緑青流し?なんだそりゃ?
〇歌仙兼定
上野焼の彩色技法のひとつさ。
きみが言うところの「複雑な色」を生み出すんだ
〇歌仙兼定
上野焼はその多彩さが特徴でね。
あれは銅由来の色だけれど、他にも様々な釉薬(ゆうやく)がある
〇薬研藤四郎
ただの壺かと思っていたが、こうして話を聞くと奥が深そうだな
〇歌仙兼定
ああ、焼き物には様々な趣向が凝らされているんだよ。
良ければ僕が一番好きな茶碗を見せてあげよう
〇薬研藤四郎
へえ、それはちょっと気になるな。
ぜひ今度見せてくれ
〇巴形薙刀
歌仙、お前は任務が終わった時や夕げの後にいつも何かをしたためているな。
あれは何だ?
〇歌仙兼定
ああ、日記のことかな。
日々の出来事をしたためているんだ
〇巴形薙刀
日々の出来事…それは報告書とは違うのか?
〇歌仙兼定
似て非なるものだよ。
報告書は任務についての仔細を記したものだろう?
〇歌仙兼定
だが、僕がつけている日記には、日々のささいな出来事を記すんだ
〇歌仙兼定
たとえば小川のせせらぎが心地よかっただとか、路傍の花が芽吹いただとかをね
〇巴形薙刀
日記のなんたるかは理解した。
それの何が楽しいのだ?
〇歌仙兼定
こうして書いておけば、何年経っても書いた日のことを思い出すことができるのさ
〇歌仙兼定
百聞は一見に如かず、だ。
使っていない日記帳をあげるから、一度書いてみてはどうかな
〇巴形薙刀
なるほど、では試してみるとしよう
〇歌仙兼定
このところ、毎晩日記をつけているようだね。
日記をつける楽しみを理解してくれたのかな?
〇巴形薙刀
ああ、日記をつけるようになってから、些細な変化にも気づけるようになった
〇巴形薙刀
それに、お前が言っていたように、数日前の出来事でもすぐに思い返すことができて非常に便利だ
〇巴形薙刀
これで主が戻られた際に、不在だった間のことを事細かに思い出し、伝えることができる
〇歌仙兼定
ふむ…
まさかとは思うが…
〇歌仙兼定
もしかして貴殿は、主に向けた日々の記録を日記につけているのかい?
〇巴形薙刀
そうだ。不在の間の出来事は報告書に記されているが、日常のことまでは書かれていないからな
〇巴形薙刀
すべて記録しておくのは難しい。
どうしたものかと思っていたので、ちょうどよかった
〇歌仙兼定
僕が想定していた日記の使いかたとは違うんだが…
貴殿が満足しているならば、それでもいいかな
〇面影
…………
〇歌仙兼定
どうにも手持ち無沙汰のようだね。
きみ、趣味はないのかい?
〇面影
趣味と言えるほどのものはない…と思う
〇歌仙兼定
やはりか。ならば趣味を探してみるといい。
たとえばそうだな…茶の湯や生け花はどうだい?
〇面影
あいにくどれもよくわからない。
何か抜け落ちてしまっているのだろうか…
〇歌仙兼定
そう悪く考えることはない。
それはつまり、きみの感性が何色にも染まっていないということさ
〇歌仙兼定
それなら、歌はどうだろう?
今までに歌を詠んだことはあるのかい?
〇面影
いや…一度もない…
〇歌仙兼定
だとしたら、手始めに俳句がよさそうだ。
次に会う時までに一句詠んできてくれないか?
〇歌仙兼定
五七五という限られた言葉で自分の世界を表現する。
案外、きみに合っているかもしれないよ
〇面影
…わかった。
私なりに仕上げてみよう
〇面影
歌仙、この前に言われた俳句を詠んできた。
我ながら良い句ができたと思うのだが…
〇歌仙兼定
それは素晴らしいね。ぜひ聞かせてもらおう
〇面影
「微睡むと 朧月夜に 舞う桜」
…どう…だろうか?
〇歌仙兼定
おやおや、その句は季重なりじゃないか。
「朧月夜」も「桜」もどちらも季語だ
〇面影
ああ、季語が二つ入るのは良くないんだったな。
ついうっかりしていた。やはり私には…
〇歌仙兼定
だが、初めてにしては情景が浮かぶ悪くない句だ。
見どころはあると思うよ
〇面影
本当か?それは嬉しい言葉だ。
他に直すべきところがあれば教えてくれないか?
〇面影
本当か?それは嬉しい言葉だ。
他に直すべきところがあれば教えてくれないか?
〇歌仙兼定
おや、聞きたいのかい?
僕の評価は辛口だよ
〇面影
かまわない。
俳句に興味が湧いてきたようだ
〇歌仙兼定
それは何よりだね。
きみが望むなら、厳しく鍛えていくとしようか
〇歌仙兼定
鶴丸、本丸を模様替えした時のことなのだが、僕の荷を蔵まで運んでくれただろう?
〇歌仙兼定
実はあの時運んでもらった荷の中に、うっかりお気に入りの筆を入れてしまったようでね
〇歌仙兼定
荷を運び出そうと蔵の棚を見てみたいんだが、見つからないんだ。
いったいどこに置いたんだい?
〇鶴丸国永
ああ、あの時のでかい風呂敷か。
あれから確か…
〇鶴丸国永
…ん?どこに置いたかな。
記憶が曖昧だ、すまんすまん
〇歌仙兼定
なんだって?割れ物が入っているから右から三番目の棚にと、あれほど念を押しただろう?
〇鶴丸国永
いやあ、お前の荷物を運びこんだ頃には荷運びの作業にすっかり飽きちまっててな…
〇歌仙兼定
…そんな理屈が通用すると思うのかい?
こうなったら、一緒に探してもらうぞ
〇鶴丸国永
ああ、大船に乗ったつもりで任せておけ
〇鶴丸国永
蔵の中を探した甲斐あって、目当ての筆が見つかって良かったな!
これで一件落着だ
〇歌仙兼定
何が「良かったな」だ!
まったく、貴殿のせいで散々な目にあったよ
〇歌仙兼定
見つけた棚には仕掛けがてんこ盛り、解除して手にした風呂敷はまさかの偽物
〇歌仙兼定
片づけに飽きて作り上げる代物ではないだろう?
いったいどれだけ時間をかけたんだい
〇鶴丸国永
さあ、覚えてないな。
なんせ自分の仕掛けにはまるまで忘れていたくらいだ
〇鶴丸国永
おかげで新鮮な驚きを得られたぜ。
お前も驚きの重要さを感じたんじゃないか?
〇歌仙兼定
驚きはしたが、あんなものは不要だよ。
いざ冬支度という時にすぐ取り出せなくて困るだろう
〇鶴丸国永
いやあ、そこまでは考えてなかったな…あっ!
〇歌仙兼定
ものすごく嫌な予感がするが聞こうか。
何を思い出したんだい?
〇鶴丸国永
夏物を片づけた時にも何か仕掛けたような気がしてな。
これで夏にも驚きを味わえるぞ
〇歌仙兼定
貴殿という奴は…
〇燭台切光忠
歌仙くん。最近、よく強風が吹くと思わないかい?
洗濯物があちこちに飛んでいって、もう大変でさ
〇燭台切光忠
いわゆる「春疾風」ってやつなのかな。
もう少し弱く吹いてくれれば、洗濯物も気持ち良く乾くのにね
〇歌仙兼定
…ああ、そうだね
〇燭台切光忠
え、どうしたの歌仙くん?
なんだか露骨に不機嫌そうに見えるけど…
〇歌仙兼定
…僕は貴殿と同じくらい、いやそれ以上に春の疾風を憎んでいる、ということだよ
〇燭台切光忠
へ、へえ…僕はそこまで言ってないけど…
なんでまたそれほどに憎いんだい?
〇歌仙兼定
なんで、って…わかりきったことを聞くね。
…疾風は、咲き誇る花を無粋に散らすだろう?
〇燭台切光忠
確かに。花吹雪は綺麗だけれど、そのぶん、咲ける時が短くなってしまうね…
〇歌仙兼定
花の運命と言えば、それまでだが…これからは貴殿も疾風が吹くたび、花の儚さに思いを馳せるといい
〇燭台切光忠
…うん、そうしてみるよ。
気付かせてくれてありがとう、歌仙くん
〇燭台切光忠
…この間も、春疾風にあおられて桜が千々に舞っていたね
〇歌仙兼定
ああ。桜は特に散りやすいからね。
やむなしだが、無情なことだな
〇燭台切光忠
…あのね。僕、歌仙くんと花が散り話をしから風が吹くたびに、どうにも感傷的になっちゃうんだ
〇燭台切光忠
なんだか、命の終わりを肌で感じているようでさ。
…はは、ごめんね。らしくないや
〇歌仙兼定
いや、僕のほうこそすまない。貴殿にそのような寂莫たる思いを抱かせていたとはね…
〇歌仙兼定
…ならば、ものの味方を変えてみようか。
確かに疾風は、花を無情にも散らしてしまうが…
〇歌仙兼定
同時に、新たな萌芽を予感させるとも考えられないか?
桜も、花が散った後に青い若葉をつけるだろう?
〇燭台切光忠
確かに。ひとつの命の終わりは、新たな命の始まりでもあるんだね
〇歌仙兼定
そういうことだ。
この繰り返しで現世の季節は移ろってゆくのだろうね
〇燭台切光忠
そうだね…ありがとう、歌仙くん。
君のおかげで、強風も前向きに捉えられそうだ
〇歌仙兼定
…今いいかい?本丸内の装飾について意見を聞きたいのだが…
〇大倶利伽羅
…………
〇歌仙兼定
…おい、聞いているのか?
聞こえているなら、返事をしたらどうなんだ
〇大倶利伽羅
…意見なら他の奴に聞け
〇歌仙兼定
ようやく口を開いたと思えば…
ああ、そうさせてもらうよ
〇歌仙兼定
貴殿のような無愛想で風雅を解さぬものにわざわざ尋ねた僕が間違いだったのだろうね
〇大倶利伽羅
…随分と趣のない皮肉だな
〇歌仙兼定
ははは…。東北の田舎刀が何か言っているようだ
〇大倶利伽羅
…………
〇歌仙兼定
…貴殿を案じて話しかけた僕が馬鹿だった。
せいぜい、そうやって一匹狼を気取っているがいい
〇大倶利伽羅
…くだらんな。
あんたこそ、そうやって好きにわめいていろ
〇歌仙兼定
…………
〇大倶利伽羅
…おい
〇歌仙兼定
貴殿か…さては、先日の無礼を詫びにでも来たのかい?
悪いが、今から絆されるほど僕は…
〇大倶利伽羅
…大広間の床の間に、花を生けたのはあんただな
〇歌仙兼定
あ…ああ、そうだが?
それがなんだい?
〇大倶利伽羅
…花が一部萎れていた
〇歌仙兼定
そんなことをわざわざ伝えに…さては、よほど暇なのかい?
まあいい、ならば新しく生けるまで
〇大倶利伽羅
必要ない。
…花なら代えておいた
〇歌仙兼定
なに?貴殿が、花を…ははは!
…この本丸に雪を降らせるつもりかい?
〇大倶利伽羅
…おい、俺は…
〇歌仙兼定
ああ、わかっているさ。
この珍しい行いも、すべては僕への謝意故…だろう?
〇歌仙兼定
…そうだ。今度、花を愛でながら飲まないかい?
無愛想な貴殿との語らいも風流かもしれない
〇大倶利伽羅
ちっ…どの口が言うんだか。
…まあ、今は調子に乗らせておくか
〇歌仙兼定
ふむ…山吹かな?それとも金鳳花?
いやいや、それはさすがに地味すぎるか…
〇山姥切国広
…俺なんかにつきまとって、なんの用だ
〇歌仙兼定
ああ、すまない。本丸に彩りを加えるために近々花でも生けようと思ってね
〇歌仙兼定
どうせなら、本丸にいるみんなを連想させるような草花を使おうと思索していたのさ
〇歌仙兼定
まあ、惜しいのは、使える草花が本丸周辺で摘めるものに限られてしまうことだけれど
〇山姥切国広
…………
〇歌仙兼定
だが、どうにも花の選出に迷ってしまってね。
特に山姥切、貴殿はどうにも掴みづらくて困るよ
〇山姥切国広
…俺の知ったことか。
だとしたら俺を頭数から除けばいいだろう
〇歌仙兼定
そういうわけにはいかないな。
思いつかないからと諦めては、文系の名に傷がつく
〇歌仙兼定
そういうわけで、もうしばらくはこうして貴殿を観察させてもらうよ
〇山姥切国広
…勝手にしてくれ
〇歌仙兼定
朗報だ、山姥切。
ついに貴殿を連想させる花が一つ思いついたぞ
〇山姥切国広
興味がない…といってもどうせあんたは語るんだろうな
〇歌仙兼定
よくわかっているじゃないか。では発表しよう。
僕が思いついた花、それは…コブシだ
〇山姥切国広
…コブ…シ?それは本当に花の名なのか?
〇歌仙兼定
おや、知らないのかい?
早春になると枝いっぱいに咲き誇る白い花のことだよ
〇歌仙兼定
楚々とした見た目ながらも、近づくと高貴に香り立つ…
無愛想ながら、その実誰よりも誇り高い貴殿みたいだと
〇山姥切国広
…まあ、あんたの見立てならいいんじゃないか。
だが、そのコブシとやら…ここでは見たことがないな
〇歌仙兼定
そうなんだ。せっかくひらめいたのに結局、生け花には使えそうもないとはね…
〇歌仙兼定
…というわけだ。より良い案が思いつくまで引き続き、貴殿を観察させてもらう。よろしく頼むよ
〇山姥切国広
…勘弁してくれ
〇歌仙兼定
以前から思っていたが、貴殿の肩掛けの布は美しい色合いだね
〇歌仙兼定
裏地の鮮やかな青が貴殿の髪の色に映えている
〇山姥切長義
雅を重んじる君にそう評されるとは、光栄だね
〇歌仙兼定
当然さ。美しいものは誉め称えるべきだからね
〇歌仙兼定
しかし、それだけ上質そうな布だ。
雨に打たれてでもしたら苦労しそうだね
〇山姥切長義
確かに外が雨だったり、すでに洗濯物が干されていたりすると、乾かす場所がなくてね
〇歌仙兼定
まったくだ。結局自室で干すしかないとなると、日当たりや風通しが悪く乾くのも遅い
〇山姥切長義
皆、同じように不便しているわけか。
だとすれば対策を講じるべきかもしれないね
〇山姥切長義
雨除けのある干場があれば…
今度、いい場所がないか探してみようかな
〇山姥切長義
前に話した雨の日専用の干場のことだけど、あいにく都合のいい場所は見つけられなくてね
〇山姥切長義
その代わり、本丸内の広い空き部屋の使用許可をもらっておいたよ
〇山姥切長義
雨の日に、外套を干す場所に困っていたのは、俺たちだけではなかったようだ
〇歌仙兼定
だが、全員分の外套を室内に干したところで、乾きにくいことに変わりはないんじゃないかい?
〇山姥切長義
そう言うと思ってね。
火鉢を雨の日限定で使用できるように手配した
〇歌仙兼定
なるほど、よく思いついたね。
…これで雨の日でも洗濯ができるというわけか
〇山姥切長義
それでは本末転倒だ。
あそこはあくまで外套優先、雨の日に洗濯物を干されては意味がない
〇歌仙兼定
ははは、わかっているよ。
あとは雨の日に試すとしようか。初めて雨が待ち遠しくなったよ
〇山姥切長義
大げさだな。
…まあ、否定はしないよ
〇鯰尾藤四郎
ねえ、いち兄。
これから言うのはただのぼやきなんだけど
〇鯰尾藤四郎
過去なんか振り返らないって俺は決めてるけど、どうしても昔の本丸のことを思い出す時があってさ
〇一期一振
鯰尾…それはそうだ。わかるよ
〇鯰尾藤四郎
主がいた時のこと、思い出すと胸が苦しくて…
〇鯰尾藤四郎
でも、だからこそ思うんだよね!
過去を見るんじゃなくて、未来を見て頑張らなくちゃ
〇一期一振
…ああ、とても立派な考えだ
〇鯰尾藤四郎
へへ、ありがとう。やっぱり俺はこの姿勢でいく。
過去なんか振り返ってやらないよ
〇鯰尾藤四郎
俺は、この先の未来をよりよくするためにたくさん頑張る!
いち兄もそうだよね?
〇一期一振
もちろんだとも。
同じ第二部隊の一員として、鯰尾に負けないほど邁進してみせるよ
〇鯰尾藤四郎
へへ、俺だって負けないからね!
〇一期一振
最近は一段と腕を上げたね、鯰尾。
飛躍的な成長を感じるよ
〇鯰尾藤四郎
本当!?へへ、いち兄に誉められた!
でも、なんでこんなにぐんと成長できたんだろう…
〇鯰尾藤四郎
あ、もしかしたら、本丸のみんなと鍛錬を積極的にやるようになったのがよかったのかも
〇一期一振
ふむ…確かに、本丸に顕現した当初は、私や薬研とよく鍛錬していたが…
〇鯰尾藤四郎
うん。もちろん、いち兄と薬研との鍛錬も楽しいしためになるんだけど…
〇鯰尾藤四郎
多くの刀と…本丸のみんなとそれぞれ鍛錬したことで、自然と技が磨かれた気がするんだ
〇一期一振
皆、十人十色の戦い方をするからな。
それぞれから得るものも大きかったんだろう
〇鯰尾藤四郎
だね!あー、話してたらなんだか無性に鍛錬したくなってきた!
ねえいち兄、つきあって!
〇一期一振
ああ。共に強くなろう、鯰尾
〇鯰尾藤四郎
…先の第二部隊での調査、無事に終わってよかったよね
〇一期一振
ああ…なんとかね。痛手はあれど、正史の範疇に収められたんだ、及第点といったところか
〇鯰尾藤四郎
でも…まだまだこれから、だよね。
だって、主が帰ってきてないんだから
〇鯰尾藤四郎
主が無事戻ってこられるように、俺たちは歩み続けるしかない。
そうだよね、いち兄
〇一期一振
…もちろん。主が帰還するその時までこの本丸は必ず守り抜かないとね
〇鯰尾藤四郎
うん。それで、主が無事に帰ってきたら…
強くなったところ、たくさん見てもらうんだ!
〇一期一振
その意気だよ、鯰尾。であれば今、この本丸で我々がやるべきことは一つ…
〇鯰尾藤四郎
わかってる。もっと強くなるための鍛練、だよね?
もちろんつきあってくれるよね、いち兄!
〇一期一振
ああ、喜んで!
〇一期一振
おいしい茶菓子を燭台切さんに分けていただきました。
よければ一緒に食べませんか?
〇日向正宗
それは嬉しいお誘いだな。
じゃあ薬研くんや鯰尾さんも誘ってくるよ
〇一期一振
ああ、お待ちを。
実は茶菓子は二つしかないんです
〇日向正宗
えっ、そうなの?
それならぜひあなたの兄弟にあげてよ
〇日向正宗
僕よりもきっとあのふたりのほうが喜んで食べてくれると思うな
〇一期一振
いえ、私は日向と食べたいと思い声をかけたんですよ。
遠慮せず、一緒に食べてくれると嬉しいです
〇一期一振
それに、ここだけの話ですが…
こちらの茶菓子には梅飴が使われているそうなんです
〇日向正宗
それは、ぜひ食べてみたいな。
…気にかけてくれてありがとう、一期さん
〇一期一振
いえ、私が君と食べたかったと言ったでしょう?
…弟たちには内緒にしてください
〇日向正宗
一期さん、今食べたいのは甘いの?酸っぱいの?
ぱっと浮かんだほうはどちらかな?
〇一期一振
おや、突然どうしたんですか?
〇日向正宗
ああ、急に聞かれても答えられないよね。
実は、この前のお菓子のお礼に梅干しをあげたくて
〇一期一振
なるほど、それで好みの味つけを知りたかったと。
かえって気を遣わせてしまったようですね
〇日向正宗
ううん、僕が欲しかったからお返しがしたかったんだ。
だから気にしないで受け取ってほしいな
〇一期一振
そういうことであれば、遠慮するのも野暮ですな。
甘いのと、酸っぱいの、どちらにしましょうか
〇日向正宗
それじゃあ、後で二壺届けに部屋に行くね
〇一期一振
二壺…ですか?
〇日向正宗
うん。蜂蜜漬けと塩漬け、両方を食べ比べたほうがより好みの味がわかるかなと思って
〇一期一振
さすがは日向、気が利きますな。
二壺は多い気もしますが…喜んでいただきます
〇日向正宗
…………
〇一期一振
日向、こんな所で考えこんでどうしました?
〇日向正宗
あっ、一期さん。その…調査での僕の失態をみんなにどうやって謝ったらいいかなって
〇日向正宗
僕がやってしまった事は許されることじゃないのに、みんな、僕の帰還に対して何も怒らないから…
〇一期一振
日向は怒られたのですか?
〇日向正宗
それは…うん、そうなのかもしれない。
みんな、もっと僕を責めていいはずだよ
〇一期一振
皆が日向を責めないのは、日向の帰還を心から喜んでいるから、でしょうな
〇日向正宗
…一期さんって、本当に励ますのがうまいね。
やっぱり、お兄さんだからなのかな?
〇一期一振
どちらかというとかつての主の影響ですかな。
ああ…悩んでいる顔より今のほうがいい、そう思いますよ
〇日向正宗
ふふ、本当に一期さんにはかなわないや
〇へし切長谷部
一期一振、か…
〇一期一振
はい、一期一振は私ですが。
いかがされましたかな?
〇へし切長谷部
いや、お前を呼んだわけではない。
ただ…いい名だと思ってな
〇へし切長谷部
刀工がお前の出来を「一期」に「一振」のみ…
生涯最高の一作であると感じて、名付けたのだろう?
〇へし切長谷部
そのような誉れを賜るなど、刀剣冥利に尽きるな。
もっと誇ってもいいのではないか?
〇一期一振
…もちろん、誇りに思っております。
我が出来も、私を打ち上げた吉光の腕も
〇一期一振
刀の出来に、成果が十分に伴ったその時こそ真に胸を張る資格があると…そう思っているのです
〇へし切長谷部
ああ、もっともだ。
名に恥じぬよう、これからも精進が欠かせんな
〇一期一振
ええ、もちろんそのつもりです
〇一期一振
へし切長谷部、ですか…
〇へし切長谷部
…お前、さては先の俺と同じく名の由来について考えているな?
〇一期一振
ははは、ご名答。
さすがは長谷部、鋭い眼力ですな
〇一期一振
「へし切長谷部」…かつての主が無礼な茶坊主を隠れた棚ごと「圧し切った」ことが名の由来だとか
〇へし切長谷部
ああ。お前に比べたら、誉れの欠片もない…
主の狼藉由来と考えると、むしろ不名誉ともいえる名だ
〇一期一振
名が素晴らしければ、良い刀になれるとは限らない。
もちろん、逆も然りですが
〇へし切長谷部
…ああ。よくわかっている。
それに、いまさらつけられた名を嘆いても、どうにもならないこともな
〇へし切長谷部
今俺が為すべきことは、主がお戻りになる時に備えて全身全霊で戦い抜くこと…それだけだ
〇一期一振
その通りですな。
今はお互いに励みましょう、長谷部
〇一期一振
薬研。近頃、鯰尾と共に鍛錬に勤しんでいるようだね
〇薬研藤四郎
ああ。もっと強くなって、より多くの戦果を挙げるつもりだ
〇一期一振
そうかそうか。
偉いな、薬研は
〇薬研藤四郎
おいおい、俺は幼子か?
そんなふうに誉められると、なんだかむず痒いぜ
〇一期一振
ははは、すまない。兄として、お前たちの奮闘が我がことのように嬉しくてつい、な
〇薬研藤四郎
そうか、そりゃ何よりだ。
…なあ、いち兄。あんまり背負いこみすぎるなよ
〇薬研藤四郎
俺も鯰尾も、こうして日々鍛錬を重ねてる。
戦果を挙げる準備は、いつだって万全なんだ
〇薬研藤四郎
だから、いち兄もいつでも俺たちを頼ってくれ。
可愛い弟としてじゃなく、対等な一振りの刀としてな
〇一期一振
…ああ。心配りありがとう、薬研…ふふ
〇薬研藤四郎
ん、どうした?
〇一期一振
いや…出来た弟を持って、私はつくづく幸せ者だと思ってね。つい、綻んでしまった
〇薬研藤四郎
あのなあ、俺たちのことは弟としてじゃなく…
まあ、今はこれでいいか
〇薬研藤四郎
いち兄!
鍛錬中に怪我したって本当か!?
〇一期一振
ああ、気を抜いて傷を作ってしまってね。
大事には至っていないから、そうあわてなくても大丈夫
〇一期一振
しかし…なんとも情けない話だな。
これでは、兄としてお前たちに示しがつかない…
〇薬研藤四郎
…なあ、いち兄。
前にも言ったよな。「あんまり背負いこむな」って
〇薬研藤四郎
兄だからって、俺たちの手本であろうと無理しなくてもいいんだぜ。
いつでも頼ってくれよ
〇一期一振
ありがとう、薬研。
だが…それでも私は、お前たちの手本でありたい
〇一期一振
日々良くあろうと努められるのは私を慕ってくれる、お前たちの存在あってこそだ
〇薬研藤四郎
いち兄…
〇一期一振
心配かけてすまない。だが…
兄として、少しは格好つけさせてくれないか?
〇薬研藤四郎
…ははっ!分かったよ、俺の負けだ。
そこまで言われちゃ、食い下がれねえな
〇薬研藤四郎
じゃあ、これからもよろしく頼むぜ。
…俺たち粟田口の、偉大なる長兄としてな!
〇一期一振
ああ、任せてくれ
〇一期一振
巴形さん、こちらで何を?
本日は鍛錬されないのですか?
〇巴形薙刀
実は薬研に訓練のし過ぎは疲労するだけで、効率が悪いと言われてな
〇巴形薙刀
安めと言われたものの何をすればいいかわからず、途方に暮れていたのだ
〇一期一振
なるほど。では、ともに娯楽に興じるのはいかがでしょうか。
お付き合いいたします
〇巴形薙刀
…すまない、思いつかぬ。
余暇は主の世話か訓練をしていたものでな
〇巴形薙刀
そのせいか、遊戯どころか好みのものもわからぬ。
休むとは難しいものだな…
〇一期一振
ふむ…、では私の休憩に付き合っていただけますかな?
〇一期一振
そうするうちに、巴形さんの好きなことが、見つかるかもしれません
〇巴形薙刀
そう言ってもらえると助かる。
何か見つかるといいのだが…
〇一期一振
この間は、弟たちがお世話になりました。
将棋の相手をしてくださったとか
〇巴形薙刀
ああ、俺も将棋ついでに話が聞けて勉強になった。
彼らは話し上手だな、つい引き込まれてしまう
〇一期一振
ご迷惑ではないかと心配していましたが、そう言っていただけて良かったです
〇一期一振
弟たちも巴形さんとの会話が楽しかったと、嬉しそうに話しておりました
〇巴形薙刀
逸話について質問攻めにしてしまったかと思ったが、そうか…それはよかった
〇巴形薙刀
…ああ、なるほど。たった今理解した。
きっと俺の「好きなこと」はそれだ
〇巴形薙刀
俺は銘も逸話も持たぬ身だからこそ、彼らの物語に興味を惹かれる
〇巴形薙刀
ゆえに、いろんな刀剣と話すことが好きなのだな。
気づかせてくれて感謝する。礼を言うぞ、一期一振
〇一期一振
いえ、とんでもない。もしご迷惑でなければ、また弟たちの相手をしてやってください
〇巴形薙刀
ふむ…では、今度は俺が薬研たちを誘うか。
お前ももちろん、誘わせてもらうぞ
〇一期一振
食事のたびに思っていたのですが、面影さんは好き嫌いなく、なんでも召し上がるのですな
〇面影
ここで出る料理はどれも凝っていて驚かされる…。
気づければすべて平らげた後だ
〇一期一振
その言葉、弟にも聞かせたいものです…
〇面影
お前の弟というと、鯰尾藤四郎と薬研藤四郎…どちらか、か?
〇一期一振
鯰尾ですな。この間、「毎日好物が食べたい」と燭台切さんを困らせていて、叱ったばかりでした
〇面影
好物、か…それは考えたことがなかったな
〇一期一振
そうなのですか?
てっきりどれも好みの味つけなのかと
〇面影
いや、食感や見栄えの多様さにとらわれて、味にはまったく注意していなかった…
〇一期一振
であれば、今度は味付けにも注目してみてください。
…今の話、燭台切さんには内緒にしたほうがいいですよ
〇面影
そうか…では黙っておこう
〇面影
この間、話した料理のことだが…
〇一期一振
ついに好みの味付けが見つかりましたか?
〇面影
ああ、麹の味噌汁だ。
…それも自分で作ったものが一番の好物だ
〇一期一振
おや、お味噌汁ですか。それは少し意外ですな。
もっと凝った料理を選ぶのかと思っておりましたが
〇面影
…確かにこの本丸に来てから、様々な工夫が凝らされた物を食してきた
〇面影
だが…「自分で作る」という珍しさが印象的で。
苦労した分だけ、ついしみじみと味わいたくなる
〇一期一振
なるほど、そういうものかもしれません。
…話を聞いていたら腹が空いてきました
〇面影
…よければ私が作った味噌汁を飲まないか?
五種類ほど作って、厨に置いてある…
〇一期一振
五種類もですか…!
予想以上の量ですが、ありがたくいただきましょう
〇鶴丸国永
なあ、一期。
最近のお前たちの部屋、やたらいい匂いがしないか?
〇一期一振
気づかれましたか、鶴丸さん。
実は先日、弟たちとともに居室の畳を張り替えたのです
〇鶴丸国永
なるほど。てことは、い草か。
あの匂いに癒されるんだよな、替えたての畳って
〇一期一振
ええ、とても良いものです。
室内にいながら、静かな森林に佇むような心地を覚えますな
〇一期一振
替えたての畳に寝ころび深呼吸をすると、疲れなどどこかへ消えていく気がします
〇鶴丸国永
ああ、わかるぜ。
草原に寝っ転がるかのような独特の気持ち良さがあるよな
〇鶴丸国永
ふあ〜あ…畳のこと話してたら、なんだかひと眠りしたくなってきた。
んじゃ、俺はこれで…
〇一期一振
お待ちください、鶴丸さん。
眠るのは私と一回手合わせをしてからにしてはいかがでしょう?
〇一期一振
疲れきった後に、替えたての畳で横になるのはきっと、何にも代えがたい至福でしょうな
〇鶴丸国永
確かに…それも一理あるな。
それじゃ、疲れるまで打ち合うとするか!
〇鶴丸さん、近頃身のまわりの整理を怠っていませんか?
長谷部が怒っていました
〇鶴丸国永
はは、やっちまった…だがな一期、俺の怠惰は、お前にも問題がないわけじゃないぜ?
〇一期一振
わ、私に…?
〇鶴丸国永
そうだ。
この前、お前たちが張り替えた畳があまりに心地よくてな
〇鶴丸国永
一度横になったが最後、またたく間に時が流れるんだ。
雑事が手につかないのもやむなしとは思わないか?
〇一期一振
…お気持ちはわかります。ですが問題は私や畳ではなく鶴丸さんが自律できていないことではないですかな?
〇鶴丸国永
あー…そうとも言うな
〇一期一振
まったく…まずは務めを果たしていただきたいですな。
畳は逃げませんから、ね?
〇鶴丸国永
ああ、わかったわかった。畳を存分に満喫するために、ちゃんとやることはやるさ
〇一期一振
…本当に、わかっているんだろうか?
〇一期一振
…ん?燭台切さん、何か身に着けていますか?
ほのかにかぐわしい香りがするような…
〇燭台切光忠
あ、気づいたかい?
実は最近、胸元に「香袋」を入れているんだよね
〇燭台切光忠
近頃、どこか疲れが溜まっているような気がして。
この香袋を嗅いで、癒されたいなって思ってね
〇一期一振
なるほど。どうりでどこか安らぐ心地がしたわけですな。
香袋、ですか…
〇一期一振
燭台切さん。その、私も真似してみても良いですか?
香袋を持ち歩くことを…
〇燭台切光忠
もちろん!僕の許可なんていらないよ。
いい香りに包まれるのって、最高に安らぐからね
〇燭台切光忠
そうだ、どうせなら僕特製の配合を教えてあげるよ。
門外不出の「光忠の黄金比」をね!
〇一期一振
ははは、それは興味深い。
ぜひ聞かせてもらえますかな?
〇燭台切光忠
おや、今日も一段といい香りだね、一期さん。
さては僕が調合した香袋を胸元に…って、あれ?
〇燭台切光忠
うーん、この匂い…「光忠の黄金比」じゃないね。
あ!まさか…
〇一期一振
ふふ…そのまさか、です。こたびは燭台切さんの処方から、私なりに少々手を加えてみました
〇燭台切光忠
うん、やっぱりそうだと思った。
はあ…これもすごくいい香りだね
〇一期一振
ありがとうございます。
燭台切光忠さんに教わった方法をもとに、見よう見真似で調合してみました
〇一期一振
甘さの中に、ピリッと辛味が走る燭台切さんの調合もとても「らしさ」を感じる良い香りでしたが…
〇燭台切光忠
わかるよ、この香り…一期さんらしいね。
朝露に濡れた新緑を思わせる、爽やかで落ち着く香りだ
〇一期一振
ああ…やはり、そう感じられますか?
先ほど、鯰尾や薬研にも同様のことを言われました
〇燭台切光忠
ふふ。やっぱり、お香って十人十色で奥深いね。
僕も、もっといろいろな調合を試したくなってきたよ
〇一期一振
私もです。では次は、互いに香袋を作り合ってみるのはどうでしょうか
〇それ、すごく楽しそうだ!
よーし、お互いに頑張ろうね、一期さん!
〇一期一振
大倶利伽羅。これから、私たちとともに手合わせでもいかがですかな?
〇大倶利伽羅
…慣れ合うつもりはない
〇一期一振
それは残念です。鯰尾も薬研も、君との手合わせを心待ちにしていたのですが…
〇大倶利伽羅
…ふん。俺には関係ない
〇一期一振
そう、ですか…ああ、そういえば。
鶴丸さんが君を探していましたな
〇一期一振
なんでも、暇を持て余しているから遊び相手が欲しいとか…
〇大倶利伽羅
…手合わせ、付き合うぞ
〇一期一振
おや、良いのですか?
私たちとは慣れ合わないのでは…
〇大倶利伽羅
…聞くな。あいつが来る前にさっさと行くぞ
〇一期一振
承知いたしました。
では、参りましょうか
〇一期一振
…鶴丸さんには、感謝せねばなりませんな
〇一期一振
大倶利伽羅、近頃はよく鯰尾や薬研との手合わせにつきあってくださっているようですな
〇一期一振
大方、弟たちの我儘によるものでしょうが…
面倒を見ていただき、ありがとうございます
〇大倶利伽羅
…………
〇一期一振
鯰尾も薬研も、もう一振り兄ができたようだと喜んでいました
〇大倶利伽羅
…何が兄だ。刀としてはあいつらのほうが先に打たれているだろう
〇一期一振
ははは、それもそうですな。
まあ、形はどうあれこうして切磋琢磨し合えるのは素晴らしいこと
〇一期一振
これからも、こうしてたまにで良いので私たちと共に手合わせしてもらえると嬉しいです
〇大倶利伽羅
…俺は、これ以上あんたたちとは
〇一期一振
ええ、わかっています。
なので偶然居合わせた際にでも…よろしくお願い申し上げる
〇一期一振
…………
〇山姥切国広
…なんだ、さっきからジロジロと。
何か言いたいことがあるのか
〇一期一振
…あの、ずっと気になっていたのですが…
戦の最中、視界が狭くて苦労しないのですか?
〇山姥切国広
…随分くだらないことが気になるんだな。
…もう慣れている、それだけだ
〇一期一振
ああ…やはり慣れ、ですか
〇山姥切国広
…あんた、なんでそんなことが気になるんだ
〇一期一振
布を纏いながらの戦とはどのようなものなのか、君を見てから常々疑問に思っていまして
〇一期一振
そこで先日、鍛錬の際に試してみたのです。
…結局、まともに刀を振るえず散々な出来でしたが
〇山姥切国広
試したって…頭から布を被ったってことか?
…あんた、何考えてるんだ?
〇一期一振
見よう見真似でなんとか、と思ったのですが…
やはり慣れないことはするものではありませんね
〇山姥切国広
当たり前だ…。
これに懲りたら俺なんかの真似はよせ。いいな?
〇山姥切国広
…おい、俺は見たぞ…。
あんた、また布を被って鍛錬していただろう
〇一期一振
ああ、見られてしまいましたか。
あれから鍛錬を重ねてようやく相手の気配に気づけるように…
〇山姥切国広
あんた、本当に何考えてるんだ?
…もしかして、俺を馬鹿にしているのか?
〇山姥切国広
…あんたみたいな刀が布を纏って戦う必要なんてどこにもないだろう
〇一期一振
それは違います、山姥切、君の戦いぶりを尊敬しているから、こうして見習わせてもらっているのです
〇一期一振
この本丸で、戦果を挙げる使命を負っている以上、学べるものはなんでも学ぶ…そう、決めましたから
〇一期一振
現にこの鍛錬を通して、君に備わる鋭い感覚と集中力が養えたように思えます。
ありがとうございました
〇山姥切国広
…そうか
〇一期一振
ああ、それともうひとつ。
私のことを評価してくださっているようですが…
〇一期一振
私は君を、布で覆い隠すのはもったいないほど、良い刀だと思っていますよ
〇山姥切国広
…ふん
〇山姥切長義
一期一振、貴方は藤四郎の兄弟と同じ刀工の作だね。
兄弟が多いというのはどういう感覚なのかな?
〇一期一振
庇護欲とは少し違いますが、世話を焼いてやろうと思ってしまいがちですな
〇山姥切長義
では、弟たちに不満を抱くことはないのか?
〇一期一振
弟は何をしていても可愛いものですから。
そういう君は…山姥切国広とよく言い争っていますな
〇山姥切長義
俺たちは兄弟ではない
〇一期一振
それにしても、もう少し仲良くしてもよさそうですが。
同じ部隊だと多少なりとも大変なのでは?
〇山姥切長義
任務に支障がない程度にはやってるつもりだよ
〇一期一振
ふむ、しかし仲良くするに越したことはないと思いますな
〇一期一振
たまには他愛ない雑談でもしてみてはいかがでしょう。
意外な共通点が見つかって楽しいかもしれません
〇山姥切長義
楽しいものか。
兄弟でもない偽物くんと、仲良くする理由が見当たらないな
〇一期一振
ははは、長義にも素直な一面があったのですな。
微笑ましかったです
〇山姥切長義
思い出し笑いはやめてくれ。
何も面白いことなどなかっただろうに
〇一期一振
今まで山姥切とは話したくもないという様子だったのに近頃、二人が会話している姿を見かけます
〇一期一振
険悪な空気になることも多いようですが、今までとは確かに違って見えますな
山姥切長義
それは貴方の勝手な思い込みだ。
俺はいつもどおり、何も変わってはいない
〇一期一振
ははは、これ以上聞くのも野暮というものですかな。
そういうことにしておきましょうか
〇山姥切長義
以前から思っていたが、貴方は見た目に反して強かだな
〇一期一振
そうでしょうか?
自分をそんなふうに思ったことは一度もありませんが…
〇山姥切長義
まったく、そういうところだぞ
〇鯰尾藤四郎
…えいっ
〇日向正宗
ふふっ、あはは。
なにかな、その顔…変なの。急にどうしたの?
〇鯰尾藤四郎
いやー、日向くんったら出陣するたびに深刻そうな顔になってるから
〇鯰尾藤四郎
ここで一発笑わせておいたら、ちょっとは気が紛れるかなって思ったんです
〇日向正宗
それで急にあんな変な顔をしたの?
ははっ、もう!何を考えてたかすっかり忘れちゃった
〇鯰尾藤四郎
それくらい明るく笑ってるほうがいいですよ。
今考えたって仕方ないこともありますから
〇鯰尾藤四郎
まずは行ってみて、状況を見て、そこから判断ですよ!
〇日向正宗
…そうだね。出陣前にあれこれ考えても、実際の戦場がどうなっているかわからないし
〇鯰尾藤四郎
でしょう?
だから、不安も全部笑い飛ばしましょう!
〇日向正宗
鯰尾さんらしい、とても素敵な考え方だね。
僕も見習うことにするよ
〇日向正宗
…………
〇鯰尾藤四郎
あれー、また考え事ですか?
難しい顔になってますよー
〇日向正宗
…あっ、鯰尾さん?
〇鯰尾藤四郎
もしかして気づいてなかったんですか?
ちょっと前からいたんですけど…
〇日向正宗
ごめんね。
ちょっと思うことがあって
〇鯰尾藤四郎
前にも言ってた出陣先についての心配、ですか?
日向くんの元の主が気になるとか?
〇日向正宗
…その石田三成様のことでちょっとね。でも大丈夫。
今ちょうど考えがまとまったところだったんだ
〇鯰尾藤四郎
もう、水臭いなあ。同じ部隊の仲間なんだし、いつでも相談してくれていいんですよ?
〇日向正宗
あはは、ありがとう。
それじゃあ、今度からは相談するようにするよ
〇鯰尾藤四郎
約束ですよ?
絶対ですからね!
〇日向正宗
…えいっ
〇鯰尾藤四郎
え?
…日向くん、そんな顔してどうしたんですか?
〇日向正宗
あれ、おかしいな…。
鯰尾さんはこうやって僕を笑わせたのに
〇鯰尾藤四郎
もしかして俺を真似て、変な顔したつもりだった?
〇日向正宗
うん。あなたが深刻そうな顔で思い悩んでいたみたいだから、励まそうかなって
〇日向正宗
いったい何で悩んでいたの?
僕でよければ話を聞くよ?
〇鯰尾藤四郎
信頼する人が自分のために死ぬのはつらいことだなって考えていたんだけど…
〇鯰尾藤四郎
…ふふっ、今になって日向くんの顔が目に浮かんで…
あはははは!はー、なに考えてたんだっけ
〇日向正宗
うーん、笑うまでに時差があるのはいただけないな。
顎の角度が甘かったかなあ…次はうまくやるよ
〇鯰尾藤四郎
あははっ、十分元気が出たよ。
ありがとう、日向くん
〇へし切長谷部
鯰尾!お前、先日も夜更けまで騒いでいたな。
十分な休養をとらねば、鋭気を養えんぞ
〇へし切長谷部
それに、近頃苦手な食材を除けているとも聞いた。
栄養価を考えて作られているのだ、残さず食え
〇鯰尾藤四郎
…はーい
〇へし切長谷部
なんだ、その気の抜けた返事は
〇へし切長谷部
少しは主の刀として、恥じない行動を心がけろ。
日々己を律し、清く正しい生活を送ってだな…
〇鯰尾藤四郎
長谷部さん、毎日同じこと言ってて飽きないのかなあ?
…いち兄だったらもっと優しく諭してくれるのに
〇へし切長谷部
おい、聞いているか鯰尾!まったく…
いいか、健康でいるためには生活を改めないとだな…
〇鯰尾藤四郎
もう、わかってますよ!
長谷部さん、少し落ち着いてください!
〇鯰尾藤四郎
俺や皆にがみがみ言ってるところを主に見られて、嫌われちゃっても知りませんよ
〇へし切長谷部
な…主が、俺を…主に限って、そんな…いやしかし…
…………
〇鯰尾藤四郎
…あ、あれ?俺、もしかして言いすぎた?
まあ、これでお説教が減るならいい…のかな?
〇へし切長谷部
そうだ、鯰尾。
お前、先日も私物を大広間に放置していただろう
〇鯰尾藤四郎
げ…忘れてた。これはまた雷が落ちそうな気配…
ごめんなさい!つい片付けを忘れちゃって…
〇へし切長谷部
…いや、いい。誰しも忘れることはある。
代わりに俺が片付けておいたから、次からは頼むぞ
〇鯰尾藤四郎
あ…はい。ありがとう、ございます…
〇へし切長谷部
おい、気の抜けた返事はやめろと…いや、なんでも。
話を聞いていたならば、それでいい
〇鯰尾藤四郎
…あの、長谷部さん。なにか悪いものでも食べました?
なんだか妙に優しいような…
〇へし切長谷部
…先日、お前が言ったのだろう。
俺が皆に厳しくあたることで、主に失望されかねん…と
〇鯰尾藤四郎
だから、主を気にして物腰を柔らかくしてみた…
ってことですね。…ふ、ふふふっ!
〇鯰尾藤四郎
ごめんなさい長谷部さん、俺が変なことを言ったから…
でも俺、やっぱりいつもの長谷部さんのほうがいいです
〇へし切長谷部
そ、そうか…だが、主は…
〇鯰尾藤四郎
今の長谷部さん、優しすぎて変ですよ。
これじゃ主も変貌っぷりに驚いて泡吹いちゃいますって
〇へし切長谷部
それはいかんな。助言、感謝する…って、違う!
いいか、鯰尾!もう二度と戯言で俺を惑わせるなよ!
〇鯰尾藤四郎
はいはーい。
…うん、やっぱりこっちのほうがしっくりくるね
〇薬研藤四郎
鯰尾。お前、寝巻を廊下に脱ぎ散らかしたな。
私物の管理は徹底したらどうだ
〇鯰尾藤四郎
そうだ!あちゃー、すっかり忘れてた。
ごめんごめん、今すぐ片づけに…
〇薬研藤四郎
ああ、それならもう全部いち兄が片づけたってさ。
ったく、あんまりいち兄に世話焼かせるなよ
〇鯰尾藤四郎
む…そういう薬研だってこの前、目を離したすきに鍋を吹きこぼして、いち兄と片づけたって聞いたけど?
〇薬研藤四郎
あ、あれはたまたまだ!俺は、お前と違って年がら年中兄の手を煩わせてるわけじゃ…
〇鯰尾藤四郎
はい、口答えなし!たまたまでもなんでもいち兄に世話焼かせてるのは、そっちも同じだろ
〇薬研藤四郎
…はあ。俺たち弟あこんなんじゃ、いち兄はいつまでたっても安心できないよな
〇鯰尾藤四郎
うん…俺たち、もっとしっかりするよう頑張らないと。
…よーし、やるぞー!
〇鯰尾藤四郎
薬研、俺と勝負しよう!これから数日、いち兄の世話にならずに過ごしたほうが勝ちだからね!
〇薬研藤四郎
へえ…日々の努力を勝負にするとは考えたな。
こりゃ、何がなんでも負けられねえぜ…
〇薬研藤四郎
いいぜ…その勝負、受けて立つ!
俺のほうが出来る弟だってこと、証明してやるよ!
〇鯰尾藤四郎
へへ、そうこなくっちゃ!
俺だって負けないよ、薬研
〇薬研
…で。あの「出来る兄弟勝負」が始まってから数日経ったわけだが…
〇鯰尾藤四郎
…ねえ、薬研。俺、これでも頑張ったつもりだよ。
整理整頓して、早寝早起きして、鍛錬もきっちりやって
〇鯰尾藤四郎
でも…なんでだろう。いち兄が世話を焼く回数が全然減った気がしないんだよね
〇薬研藤四郎
俺もだ。むしろ、俺たちがまめに過ごすようになってから、より口を出してくるようになった気がする
〇鯰尾藤四郎
だよね!
あーもう、これじゃ全然勝負にならないよー
〇薬研藤四郎
…思うに、いち兄の世話焼きはもはや「性分」なんだろうな
〇鯰尾藤四郎
それって…いち兄は、俺たちがちゃんと働いたら働いたで、気を揉んで手や口を出しちゃうってこと?
〇薬研藤四郎
ああ。こうなると、俺たちがどれだけ頑張ろうがいち兄が世話を焼かなくなるのは無理だろうな
〇鯰尾藤四郎
そっか…はは、なんかすっごくいち兄らしいや。
…この勝負、もういち兄の一人勝ちでいいよな?
〇薬研藤四郎
だな。俺たちはせいぜい弟らしくもうしばらくは世話焼かれてようぜ
〇鯰尾藤四郎
巴形さん、この前、縁側でなにを見てたんですか?
なんだかすごく嬉しそうでしたけど
〇巴形薙刀
文を読み返していた。
…お前に見られていたとはな
〇鯰尾藤四郎
あはは、そんなむっとしないでくださいよ。
幸せそうだったので気になっちゃっただけですから
〇巴形薙刀
あの文は昔、主からいただいたものだ。
擦り切れるほど読み返している
〇鯰尾藤四郎
やっぱり。そうじゃないかなって思ってました。
巴形さんの宝物なんですね?
〇巴形薙刀
ああ、大切な物のひとつだ
〇鯰尾藤四郎
大切な物のひとつ…ってことは、他にもあるんですか?
うわー、気になるなあ
〇鯰尾藤四郎
ねえ巴形さん、今度俺と宝物の見せ合いっこしません?
〇鯰尾藤四郎
俺も、まだ誰にも見せたことがない大事な物を見せてあげますから!
お願いします!
〇巴形薙刀
見せ合うことが有意義につながるか…
考えておく
〇鯰尾藤四郎
ふたりでこっそり見せ合いっこするつもりが、なんだか大事になっちゃいましたね
〇巴形薙刀
ああ、まさか本丸にいる全員を巻きこんでの私物自慢になるとは思わなかった
〇鯰尾藤四郎
でも皆さんの個性が見えてよかったです。
巴形さんが持ってきた便箋も素敵でした
〇鯰尾藤四郎
受け取る相手のことをよく考えているなあって。
あれって主に送るために巴形さんが選んだんですよね?
〇巴形薙刀
気づいてもらえると嬉しいものだな。
鯰尾が持ってきた桜の盆栽も粋なものだった
〇鯰尾藤四郎
ありがとうございます。
でもあれは、みんなに内緒で育ててたんだけどな…
〇鯰尾藤四郎
薬研にも「柄じゃない」ってからかわれるし。
庭の片隅で咲いてたのを移し替えただけなのに
〇巴形薙刀
そうは見えなかった。剪定や土壌にも気を遣って細やかに手入れされているようだった
〇鯰尾藤四郎
も、もうこの話は終わりです!
〇巴形薙刀
そうか…。
ではこの感想は文にしたためるとしよう
〇面影
…………
〇鯰尾藤四郎
あのー、俺の顔に何かついてますか?
〇面影
…ああ、いや別に。
ただ、お前の髪が目にとまって
〇鯰尾藤四郎
俺の髪の毛、ですか?
あ、長いから動くと揺れて気になるんですかね?
〇面影
そうかもしれない…。
見ていると飽きないので、つい目が行ってしまう
〇鯰尾藤四郎
気に入ってもらえたなら嬉しいです。
俺の名前にある鯰の尻尾みたいで、素敵でしょ?
〇面影
鯰の尻尾?
〇鯰尾藤四郎
もしかして鯰、見たことないんですか?
向こうの川にもいるんですよ
〇面影
鯰とは素敵なものなのか…?
言われてみれば実物を見たことはないかもしれない
〇鯰尾藤四郎
じゃあ、今度一緒に見に行きましょうよ!
きっと気に入ると思いますから
〇面影
…………
〇鯰尾藤四郎
もしかして、また俺の髪の毛を見てるんですか?
〇面影
ああ、自由に川を泳ぐ鯰の尾の如く揺れるのだなと観察していた
〇鯰尾藤四郎
そんなに見られると照れるなー。でも、本物の鯰を見に行った時は、もっとまじまじ観察してましたよね
〇面影
鯰の尾も黒く滑らかにきらめいていた。
素敵…というのはわからなかったが、いいものだな
〇鯰尾藤四郎
気に入ってもらえてよかった!
ところで面影さんは鯰の怖い話を知ってますか?
〇面影
鯰の怖い話…?
まさか、毒でもあるのか?
〇鯰尾藤四郎
残念、違いまーす。もっと怖いことなんですよ。
実は…地震を起こしちゃうんです!
〇面影
…そんな力があったのか。あんなに近くで見ていて、怒りを買っていなければいいが…
〇鯰尾藤四郎
あれ、本気にしちゃいました…?
冗談だったのに
〇鯰尾藤四郎
暇ですねー、鶴丸さん。
なにか面白い話、聞かせてくださいよ
〇鶴丸国永
面白い話、ねえ…じゃあ、ここはひとつ俺が作った昔話を聞かせてやろうか
〇鶴丸国永
昔々、あるところに一匹の可愛らしい子犬がいました。
子犬は兄弟犬や主人と共に、楽しく暮らしていました
〇鶴丸国永
そんなある日、主人と犬たちを強大な魔の手が襲います。
そう、飢えた狼の群れです
〇鶴丸国永
狼は、主人を獲物と定めて襲いかかります。
子犬は主人を守るため、兄弟犬と共に必死に戦いました
〇鶴丸国永
しかし…奮戦むなしく、主人は狼に喰い殺され、他の兄弟犬も狼から子犬をかばって死んでしまいました
〇鯰尾藤四郎
ええ、そんなあ…!子犬、かわいそうですね…。
で、ここからいったいどうなるんですか?
〇鶴丸国永
ああ、この続きはまだない
〇鯰尾藤四郎
えっ?続きがないって…?
〇鶴丸国永
宿題だ、鯰尾。次こうして共に過ごす時までに、この話の続きを考えて、俺に聞かせてくれ
〇鶴丸国永
遺された子犬をどう未来へ導くか…
お前の発想を、楽しみにしてるぜ
〇鯰尾藤四郎
俺が…続きを…
…わかりました。頑張って、考えてみます
〇鶴丸国永
さて…俺が出した宿題は覚えているな、鯰尾?
主人や兄弟を喪った子犬の物語…続きを聞かせてくれ
〇鯰尾藤四郎
まかせてください!
えー、ごほん…
〇鯰尾藤四郎
すべて喪った子犬は主人と兄弟犬の墓前で泣きました。
涙がかれるまで、それはもうわんわんと泣き続けました
〇鯰尾藤四郎
そうして泣くだけ泣いた子犬は、墓に背を向け歩き出し…諸国流浪の旅に出ました
〇鯰尾藤四郎
旅に出た子犬は、いろんな土地で多くの出来事を経験します。
出会いや別れ、成功や失敗…他にもいっぱい
〇鯰尾藤四郎
時に疲れて、空のみんなが恋しくなりますが…それでも子犬は、絶対に歩き続けることをやめませんでした
〇鯰尾藤四郎
今日も、子犬は元気に歩きます。
次は、あなたのところにやってくるかもしれません
〇鯰尾藤四郎
…はい、おしまい!
どうでしたか、鶴丸さん
〇鶴丸国永
うん、希望に満ちた良い幕引きだ…だが、疑問も残る。
なぜ子犬は、そうまでして歩き続けたんだ?
〇鯰尾藤四郎
…きっと死んだみんなは、子犬に自分が生きるはずの未来を託したと思うんです
〇鯰尾藤四郎
なら、死んだみんなの分まで現世を生きるのが遺された者の務めってやつだと…俺は思ったんですよ
〇鶴丸国永
…なるほどな。鯰尾らしい、前向きな回答だ。
俺は好きだぜ、そういうの
〇鯰尾藤四郎
燭台切さん、畑について相談してもいいですか?
有機野菜についてなんですけど
〇燭台切光忠
もちろんだよ。どんなことだい?
〇鯰尾藤四郎
実は俺、もっとおいしくて栄養のある野菜を作りたくて実験用の畑を作ってみたんです
〇鯰尾藤四郎
それで、いろんな肥料を試したいんですけど、どういうのがいいのかなと思って
〇燭台切光忠
なるほど、元肥にするか追肥にするかでも変わるけど、葉物なら油科粕、芋類なら草木灰なんかもありだね
〇燭台切光忠
野菜によって、合う合わないが変わってくるから、まずはそれぞれの土壌を作ることが大事なんだ
〇鯰尾藤四郎
さすが、有機野菜に凝ってるだけありますね!
でも、せっかくなら珍しい肥料に挑戦してみたいなあ
〇燭台切光忠
それは面白いね。僕もいろいろ試したいことがあるし、手伝ってもいいかい?
〇鯰尾藤四郎
いいんですか?助かります!
〇鯰尾藤四郎
それじゃあ、畑の場所に案内しますね。
一緒に行きましょう
〇燭台切光忠
鯰尾くん、前に相談した畑の肥料は手配できそうかい?
〇鯰尾藤四郎
へへへ、手配どころか、すでに畑に撒いておきました!
〇鯰尾藤四郎
この前、薬研から助言をもらって、骨粉を作ってみたんですよ
〇燭台切光忠
そうか、それでこの前座で、薬研くんと作業をしていんだね
〇燭台切光忠
にしても、骨粉か。それは盲点だったな。
確か果物に使う肥料だっけ?
〇鯰尾藤四郎
それが野菜だと実が大きくなって甘味が出るんだとか。
薬草とも相性がいいみたいですよ
〇燭台切光忠
それはいいことを聞いたな。
やっぱり新しいことに挑戦するのは大事だよね
〇燭台切光忠
…薬草は体にも良さそうだし、これを機に薬膳にも手を出してみようかな
〇鯰尾藤四郎
えー、それはちょっと…。
いつもどおりの、がっつりした料理でお願いします!
〇鯰尾藤四郎
大倶利伽羅さん!俺のお願い、聞いてください!
〇大倶利伽羅
俺は、あんたと慣れ合うつもりは…
〇鯰尾藤四郎
あの!
大倶利伽羅さんの襟足を、俺に結わせてください!
〇大倶利伽羅
…却下だ
〇鯰尾藤四郎
そんなあ!
俺、絶対にかっこよくしてみせますよ!
〇大倶利伽羅
…諦めろ
〇鯰尾藤四郎
結ったら、もっと素敵になりそうなのに…
…鶴丸さんは、快く結わせてくれたんだけどなあ
〇大倶利伽羅
…俺をあいつと同じだと思うな
〇大倶利伽羅
…俺の髪は結わせん。話は終わりだ
〇鯰尾藤四郎
くー…やっぱり手強いな、大倶利伽羅さんは。
…でも俺、諦めませんからね!
〇大倶利伽羅
おい、すぐ俺の髪を結え
〇鯰尾藤四郎
え…ええっ!
いったい、どういう風の吹き回しですか?
〇鯰尾藤四郎
…あ、もしかして鶴丸さん…ですか?
確かに櫛を片手に大倶利伽羅さんを探してましたけど…
〇大倶利伽羅
…あいつに、俺の髪を奇天烈にされてたまるか
〇鯰尾藤四郎
ははあ…鶴丸さんに髪を結われるのを防ぐために、幾分かましに出来そうな俺に声をかけたんですね
〇鯰尾藤四郎
そういうことなら、任せてください!
鶴丸さんもすでに結われた髪を見たら、きっと諦めてくれますよ
〇大倶利伽羅
…いいから、さっさと結え
〇鯰尾藤四郎
はーい、ありがとうございます!
それじゃ、お言葉に甘えさせてもらいますね
〇鯰尾藤四郎
へへ…鶴丸さんに一芝居打ってもらってよかった。
大倶利伽羅さん、奇策には案外弱いのかも…なーんて
〇山姥切国広
…おい、あんた。ふくらが鯰の尾と似た流線形であることが、名の由来だそうだな
〇鯰尾藤四郎
はい、そうですよ。
どうしたんですか、藪から棒に?
〇山姥切国広
…いや、気になっただけだ。
…鯰、か
〇鯰尾藤四郎
あ、そういえば、鶴丸さんが散策に向かった先の川で大量の鯰を捕まえてきたそうですよ
〇鯰尾藤四郎
燭台切さんは料理せずに返すつもりらしいですけど…
ねえ山姥切さん。鯰、食べてみたくないですか?
〇山姥切国広
いや…俺は、鯰など興味は
〇鯰尾藤四郎
で、鯰から無意識に俺を連想して気づいたら俺に名の由来を聞いてた…違いますか?
〇山姥切国広
…………
〇鯰尾藤四郎
…よし!それじゃ燭台切さんに頼んでみましょう!
きっと、なんだかんだおいしく調理してくれるはずです
〇鯰尾藤四郎
楽しみですね、山姥切さん!
俺、鯰って食べるの初めてなんですよ
〇山姥切国広
…どうしたものかな
〇鯰尾藤四郎
いやー…おいしかったですね、鯰料理!
思い切って燭台切さんに頼んでよかったです
〇山姥切国広
…ああ
〇鯰尾藤四郎
味にくせがないから、いろんな料理に使えるんですね。
天ぷらに、つみれに…山姥切さんは何が好きでした?
〇山姥切国広
…どれも美味かったんじゃないか
〇鯰尾藤四郎
ですよね!俺も全部おいしくたいらげました。
中でも特に、白焼きには感動させられましたね
〇鯰尾藤四郎
同じ鯰の名を持つ者としてしみじみしちゃいました
〇鯰尾藤四郎
やっぱり、過去なんか振り返らず俺もますます頑張らないと!
〇山姥切国広
…………
〇鯰尾藤四郎
へへ、すみません…今回は、俺の思いつきに付き合ってくれてありがとうございます
〇鯰尾藤四郎
また一緒に、おいしいものを食べましょうね!
鯰を食べたから…次は、山姥なんてどうです?
〇山姥切国広
…やめておこう。山姥を食ったところであんたのように感慨に浸れそうにはないからな
〇鯰尾藤四郎
長義さんってなんだか雰囲気が変わりましたよね。
前は、怖そうだなって思ってました
〇山姥切長義
怖いとは失礼だな。
俺は務めを果たそうとしていただけだよ
〇鯰尾藤四郎
へへ、わかってますよ。
でも、なにを考えているのかつかめなくて困りました
〇鯰尾藤四郎
俺が初めて長義さんと話した時だって
「君は愉快だね」
〇鯰尾藤四郎
…だなんて、真面目な顔で言われたら、そりゃあ誰だって警戒しますって
〇山姥切長義
そんな言い方はしていないだろう。
君は大げさだな
〇鯰尾藤四郎
でも今ではすっかり皆と馴染んでますよね。
頼りになるって薬研と話してたんですよ
〇山姥切長義
特に頼られた覚えはないんだけど…。
まあ、好意的な評価だと受け取っておくよ
〇鯰尾藤四郎
もちろんです!
なので、これからはいーっぱい頼りますね
〇山姥切長義
…君は現金だな
〇山姥切長義
鯰尾、君は本当に調子がいいな。
頻繁に用を押し付けるのはやめてほしいんだけど
〇鯰尾藤四郎
えー、前に頼りますねって言った時にまんざらでもなさそうだったじゃないか
〇山姥切長義
そんなことはない!
…この様子だと一期一振にもいろいろ頼んでいるんだろうな
〇鯰尾藤四郎
えっ、いち兄にはそんなことしませんよ?
自分でやるように言われます
〇山姥切長義
君というやつは…。
では、俺も今後は頼みを断るにしよう
〇山姥切長義
えっ、そんな殺生な!
長義さんは約束を破っちゃうんだー、しくしく
〇山姥切長義
下手な泣き真似はよせ。
何も変わりやしない
〇鯰尾藤四郎
ちぇっ、いち兄には通用するのになあ。
じゃ、別の誰かに頼むことにしますね
〇山姥切長義
まったく…
〇へし切長谷部
いや、それでは駄目か…
〇日向正宗
長谷部さん、最近独り言が多いけれど、何か悩み事でもあるのかな?
〇へし切長谷部
独り言?
そうか、口に出しているつもりはなかったんだが…
〇へし切長谷部
…日向、お前は最近の本丸を見て何か感じないか?
主の不在で規律が緩んだ、この状況に
〇へし切長谷部
気づけば薬研は夜を徹して薬草の研究をし、鶴丸は奔放に過ごしている。
怠慢は許さんとあれほど…
〇日向正宗
言われてみれば、前より本丸中が散らかっている気はするね
〇へし切長谷部
そうだろう!
このままでは主が戻られた時に顔向けできない
〇へし切長谷部
とはいえ、注意して回るだけだと何も変わらない気がするな
〇へし切長谷部
何か妙案があればいいんだが…。
いっそのこと、罰則でも設けてみるか?
〇日向…罰則か、なるほど。
それなら僕に一つ考えがあるよ
〇へし切長谷部
日向、この前の提案には感謝する。
まさかここまで規律正しくなるとは思わなかった
〇日向正宗
どういたしまして。
僕もこんなに効果があるなんてびっくりだよ
〇へし切長谷部
しかし、罰則で掃除をさせる、というのはいささか腑に落ちんが…
〇日向正宗
でも、言った通りだったよね?
本丸のみんなが嫌がるのはやっぱり掃除だよ
〇日向正宗
怠けると嫌な仕事が増えると思えば、進んで決められたことを守るって寸法さ
〇へし切長谷部
なるほど…。
となると、罰則の種類を増やしてもいいかもしれんな
〇へし切長谷部
皿洗いに食事の仕込み、道具の手入れに…
人手が足りていない仕事はいくらでもある
〇日向正宗
ついでに、罰則にはならないかもだけど、一緒に梅干しづくりを手伝ってもらいたいな
〇日向正宗
今回の策を提案したお礼ということで、特別に入れておいてくれないかな?
〇へし切長谷部
…抜かりがないな、お前は。
わかった、考えておこう
〇薬研藤四郎
なあ日向、お前はいつも敵のどこを狙って攻撃してるんだ?
〇薬研藤四郎
この前、いち兄と手合わせした時に「力任せに押し切ろうとするな」って言われてな
〇薬研藤四郎
その点、日向は攻め時を心得てるって聞いたから、お前にこつを教わりたいと思ってな
〇日向正宗
僕が?
うーん…改めて聞かれると難しいね
〇日向正宗
相手の動きを見るようにはしてるけど、それは薬研くんもやってるよね
〇日向正宗
この間、一緒に手合わせした時だって、無理やり押し切ってくる感じはなかったけどな
〇薬研藤四郎
だよなぁ。
だったら、なんでいち兄はあんなこと言ったんだ?
〇日向正宗
もしかすると…
〇日向正宗
ねえ、今度一期さんとの手合わせを僕に見せてよ。
二人の勝負を見れば、わかるかもしれない
〇薬研藤四郎
お、そいつはいい考えだ。
きっちり見極めてくれよ
〇薬研藤四郎
この前は、いち兄との手合わせに立ち会ってくれてありがとな
〇日向正宗
どういたしまして。
一期さんに指摘された理由がわかってよかったね
〇薬研藤四郎
ああ、自分でも驚いたぜ。相手がいち兄ってだけで、無意識に勝ちを焦ってたなんてな
〇日向正宗
うん、君、かなりがむしゃらに攻めてたよ。
見ていた僕のほうが驚いちゃった
〇日向正宗
よっぽど一期さんに勝ちたいって気持ちが強いんだね。
僕は慎重すぎるほうだから、すごいと思ったよ
〇薬研藤四郎
そうか?じっくり狙って懐に跳びこむのがお前の戦い方だろ?
それはそれでいいんじゃねえか?
〇日向正宗
でも、前に蜻蛉切さんと手合わせした時にも、たまには大胆に攻めてみろって言われちゃったんだ
〇薬研藤四郎
…ってことは、俺とお前を足してニで割るとちょうどいい戦い方になりそうだな
〇日向正宗
確かに、それならうまくやれそうだね!
一期さんと蜻蛉切さんに頼んで、二対二で手合わせしてもらおうよ
〇日向正宗
うーん、どこにいっちゃったかなあ…
〇巴形薙刀
何かを探しているのか?
〇日向正宗
そうなんだ。干しておいたはずの手ぬぐいがなくて…
どこを探しても見当たらないんだよね
〇巴形薙刀
そうだったか。
だとすると、心当たりがあるのだが…
〇日向正宗
あっ、もしかして、巴形さん見つけてくれたの?
〇巴形薙刀
ああ。
だが、どうにも回収に難儀していてな
〇日向正宗
いや、その逆だ。
縁側の下で、小猫がお前の手ぬぐいで暖を取っていた
〇巴形薙刀
それで、どう回収したものか悩んでいたところだ
〇日向正宗
なるほど、犯人は小猫か。うまく取り返す方法がないか考えてみるよ。
教えてくれてありがとう
〇日向正宗
うーん…あれはお気に入りの手ぬぐいだったんだけど…
あの状態だと、さすがに取り戻せないね
〇巴形薙刀
ふむ、あのまま置いてきてしまったな。
せっかく猫から奪還する策まで考えたというのに
〇日向正宗
ああ、猫じゃらしのことだね。
我ながらいい考えだと思ったんだけど…
〇日向正宗
手ぬぐいにくるまって気持ちよさそうにしている姿を見せられたら、隙を見て奪い返すなんてできないよ
〇日向正宗
でも、巴形さんも最初に見つけた時、同じように思ってためらったんだね。
少し意外だったなあ
〇巴形薙刀
そうか?
〇日向正宗
「これは日向の物だ、返してもらうぞ」とか言ってさらっと取り返しそうだもの
〇巴形薙刀
…確かに、初めはそう考えた。
だが、ああも必死に生きる姿を見せられてはな…
〇日向正宗
うん、一生懸命、体の周りに手ぬぐりを引き寄せて…
結局、気持ちよさそうに寝ちゃったし
〇日向正宗
そうだ!猫じゃらしより、手ぬぐいの代わりになる毛布を用意してあげるのはどうかな?
それからご飯も
〇巴形薙刀
それなら手ぬぐいも取り戻せる上、小猫も喜びそうだ。
俺も手配を手伝おう
〇日向正宗
面影さんは軽々と大太刀を振るっていてすごいなあ
〇日向正宗
あの刀身だもの、きっとすごく重いんだよね?
〇面影
そうだろうか…
いつも持っていると、よくわからない
〇日向正宗
えっ、そうなの?
重いなあとか思うことはない?
〇面影
…確かに軽くはない、と思う。
大太刀以外を持ったことがないから比較できないが…
〇日向正宗
それなら、今度の手合わせでお互いに練習用の模造刀を交換してみない?
〇日向正宗
きっと、短刀の軽さに驚くと思うんだ。
どうだろう?
〇面影
…面白そうな提案だ。
ぜひやってみたい
〇日向正宗
やった。それじゃあ約束だよ
〇面影
この前は手合わせをありがとう。
本当に短刀は軽いんだな…
〇面影
それに予想よりも短い…。
相手の懐に思い切って飛びこまないと間合いに入れないとは
〇日向正宗
ふふ、驚いてくれて何よりだよ。
僕も大太刀の重さと刀身の長さに驚いちゃった
〇日向正宗
普段よりも離れて構えられるけど、外した後にすぐ体勢が立て直せなくて焦ったよ
〇面影
慣れれば振り下ろした後のことを考えて動ける…
と思う。短刀こそ、懐に飛びこむ勇気がすごいな
〇日向正宗
それこそ慣れだと思うよ。
相手が体勢を崩した隙を見逃さなければ滅多なことはないしね
〇面影
なるほど…。
…今少し思いついたことがあるんだが
〇日向正宗
奇遇だね、僕も一つ提案しようと思ってたんだ。
よければ今度、一緒に組んで誰かと手合わせしない?
〇面影
ああ、私が日向を狙う刀を弾き、私が体勢を立て直す時は日向が私を守る。
なかなかいい相性だと思う…
〇日向正宗
いい勝負ができそうだね。
面影さんが本丸に来てくれてよかったよ
〇日向正宗
実は僕、ずっと前から鶴丸さんに聞きたいことがあったんだよね
〇鶴丸国永
お、なんだ?
〇日向正宗
鶴丸さんも僕も、人の手を渡り歩くことが多かった刀だよね?
だから親近感があって
〇日向正宗
刀だった頃のことをどう思っているのか聞きたいと思ったんだ
〇鶴丸国永
素直な感想を述べるなら「ただの刀に執着するなんざ人ってのは面白いもんだ」という一言に尽きる
〇鶴丸国永
しかし、たまにやるせない気分にはなる。
なりふりかまわず手に入れるってのは、どうにもなあ…
〇鶴丸国永
お前も人の手を渡ってきたならこの感覚がわかるんじゃないか?
〇日向正宗
うん、なんとなく理解できるよ。
僕らは刀だけれど、こうして人の形をとる以上、何も思わないわけじゃない
〇日向正宗
僕だけがこの感覚を持つのかと少し不安だったんだ
〇日向正宗
鶴丸さんに話を聞けてよかったよ。
話してくれてありがとう
〇鶴丸国永
この前、持ち主が何度も変わった話をしただろう。
今のお前になら話してもいいと思った解釈がある
〇日向正宗
なんだろう。ぜひ教えてほしいな
〇鶴丸国永
俺たちのあり方についてだ。
人ってのは、短い一生を儚んで生きた証を欲するだろう
〇鶴丸国永
そして、未来へ名を残せるように証として刀を求め、逸話を残そうとするんじゃないかって話だ
〇日向正宗
なるほど、その考えは面白いね。
僕らは刀だから生きた証という概念はわからない
〇日向正宗
だけど、生きた証として逸話を残したいと思えるほど僕らは大勢に愛されて求められたわけだ
〇日向正宗
…「やるせない」と思うのは間違いなのかもしれないって
〇鶴丸国永
いや、それはそれでいいだろ。考えはひとつじゃない。
今回俺が提示したのは、新しい解釈ってだけさ
〇日向正宗
…それが今回の「驚き」?
〇鶴丸国永
さてな。
それこそ、解釈はお任せするぜ
〇燭台切光忠
日向くんは身だしなみに気をつけているよね。
いつもいいなって思うんだよ
〇日向正宗
本当?
燭台切さんにそう言ってもらえると嬉しいな
〇燭台切光忠
おや、どうしてだい?
〇日向正宗
だって、手袋とか細部までこだわっているよね?
日によって違うものをつけているから
〇燭台切光忠
驚いたな。
僕の手袋の違いを見抜いていたなんて!
〇日向正宗
最近よく燭台切さんのお手伝いをしていたからね。
それで、よく見たら意匠が違っているのに気づいたんだ
〇燭台切光忠
そうか。でも、こんな細かな違いを見分けるなんて、日向くんは周りをよく見ているんだね
〇日向正宗
僕の癖みたいなものだよ。
そうだ、今度、燭台切さんのいろんな手袋を見せてほしいな
〇日向正宗
意匠の違いを見比べたら楽しそうだし、それぞれどこが気に入っているのか教えてほしいんだ
〇燭台切光忠
それならいくらでも語れそうだ。
いつでも大歓迎だよ
〇日向正宗
この間は手袋を見せてくれてありがとう。
楽しかったよ
〇燭台切光忠
どういたしまして。
なんだか調子に乗って話しすぎちゃったかな
〇日向正宗
ううん、もっとたくさん聞きたいくらいだったよ。
すごく勉強になったしね
〇燭台切光忠
勉強にって…もしかして、君も手袋を替えるつもりなのかい?
〇日向正宗
そうじゃなくて、本当のおしゃれってどういうことかわかったような気がしたんだ
〇燭台切光忠
どういうことだい?
〇日向正宗
燭台切さんの手袋はどれも素敵だったけど、周りからは違いに気づかれないことも多いでしょ?
〇日向正宗
でも、こだわりのある物を身につけていると、気分が変わって背筋も伸びて…
〇日向正宗
見た目だけでなく心におしゃれをするって感じかな。
そういうの…とってもかっこいいなって
〇燭台切光忠
さすが、日向くん!
その気持ち、僕も大事だと思うよ
〇大倶利伽羅
…おい、俺の手伝いは不要だ
〇日向正宗
もしかして、この前の畑仕事のことかな?
一人で畑の草むしりは大変そうだったからつい…
〇日向正宗
一緒に畑仕事をしていた三日月さんも、うまく道具を使いこなせてなかったみたいだし…
〇大倶利伽羅
俺一人で十分だ
〇日向正宗
うーん…そうは言われても、目の前で大変そうな様子を見たら放っておけないよ
〇日向正宗
しかもあの時、僕の手は空いていたしね。
あっ、もしかして邪魔だったりしたのかな?
〇大倶利伽羅
…別に
〇日向正宗
それならよかった。
その…また困っていそうだったら手伝ってもいいかな?
〇大倶利伽羅
…勝手にしろ
〇大倶利伽羅
…俺の周りをうろつくな
〇日向正宗
そんなにうろついてたかな?
…あっ、もしかして僕がよく手伝いをするから?
〇大倶利伽羅
…ああ。
最近やたらと手伝いに来るだろう
〇日向正宗
この前話した時に、迷惑じゃないって言ってたから、いいのかなって
〇大倶利伽羅
…手伝いは不要だ。
俺は俺ができることをしている
〇日向正宗
でも、前が見えなくなるくらいの書物を一人で運んでたのは危なかったよ?
〇日向正宗
野菜の収穫も、低い場所は僕のほうがとりやすいし
〇大倶利伽羅
それは…
〇日向正宗
だから、これからも僕が気になった時は手伝わせてくれると嬉しいかな。どうだろう?
〇大倶利伽羅
…好きにしろ
〇日向正宗
山姥切さんって、こまを回せる?
〇山姥切国広
それを聞いてどうする
〇日向正宗
実は鯰尾くんと本丸内を散策していた時にこまを見つけたんだ
〇日向正宗
回そうと頑張ってみたんだけれど、思ったより難しくて…
〇日向正宗
だから、こま回しが得意って噂の山姥切さんにこつを教えてもらおうと思ったんだ
〇山姥切国広
…こまぐらい誰でも回せるだろう。
もっとうまい奴に聞くといい
〇日向正宗
聞いてみたけど、みんな「山姥切が一番うまい」って言っていたよ
〇日向正宗
昔、お正月にこま回しで主に誉められたんだよね?
だから、ぜひ山姥切さんから教わりたいなって
〇山姥切国広
…引き下がる気はないのか。
…仕方ないな
〇日向正宗
まさか本当に受けてくれるなんて嬉しいな。
ありがとう、山姥切さん
〇日向正宗
山姥切さん、何度もこま回しの練習につきあってくれてありがとう
〇山姥切国広
…たいしたことはしていない。
…調子はどうなんだ
〇日向正宗
それが、教えてもらったとおりに投げたら、うまく回せるようになったんだ
〇日向正宗
こまの投げ方にこつがあったんだね
〇山姥切国広
…そうか。
これで俺もお役御免だな
〇日向正宗
ええっ、そんなこと言わないでほしいなあ。
回せるようにはなったけど、すぐに倒れちゃうんだ
〇日向正宗
山姥切さんみたいに綺麗に長く回せるように、回し方を研究させてくれないかな
〇山姥切国広
…あれは、たまたまだ。
あんたが期待するようなことは何もない
〇日向正宗
ううん、主に誉められたんだもの、偶然じゃないよ。
だから、もう少しだけ僕につきあってほしいんだ
〇山姥切国広
それも本気かどうか…。
…仕方ないな…あと少しだけだぞ
〇山姥切長義
最近何やら熱心に厨に出入りしているそうだね。
握り飯を作っているわけでもないようだが
〇日向正宗
梅干しを漬けるための壺を準備していたんだ。
数が多いから、どうしても一日じゃ終わらなくて
〇日向正宗
…もしかして迷惑だったかな?
〇山姥切長義
いや、聞いたのは俺の単純な興味だよ。
しかし、梅干し作りにそんな壺が必要なのか?
〇日向正宗
もちろん、一つってわけにはいかないよ。
味付けによって壺を変えなきゃいけないからね
〇山姥切長義
確かに梅干しにはいろいろ味があるよね
〇日向正宗
うん、しそを多めにしたり、鰹節を入れたり漬けこむ年数でも風味が変わるんだ。奥深いよね
〇日向正宗
今年は三年漬けにも挑戦してみようかと思って。
よかったら長義さんも一壺分を漬けてみる?楽しいよ
〇山姥切長義
ああ、いや…
そこまで言うなら手伝ってやるかな
〇日向正宗
この前は梅干し作りの下準備を手伝ってくれてありがとう。
あとは梅が実るのを待つだけだね
〇山姥切長義
しかし、梅を干すざるの修繕やしその世話まですることになるとはね
〇日向正宗
大事な作業だよ。しそは梅干しの味の決め手だし、ざるが壊れていたら梅に日が当たりにくくなるからね
〇山姥切長義
梅干しなんて、手軽な保存食だと思っていたが、こんなに手間がかかるのか
〇日向正宗
もしかして…もう梅干し作りが嫌になった?
〇山姥切長義
いや…多少の興味は出てきたかな。
まだ漬けてもいないのに妙な愛着が湧いてしまった
〇日向正宗
よかった!
梅干し作りに興味を持ってもらえて
〇日向正宗
でも、収穫してからが梅干し作りの本番だよ。
やることが増えるけど、覚悟しておいてね
〇山姥切長義
…わかった。
手伝えることがあれば、かな
〇日向正宗
もちろんだよ。
早く実が生るといいなあ
〇へし切長谷部
薬研…お前は一期や鯰尾と、喧嘩することはあるのか?
〇薬研藤四郎
ん?まあ、たまにな。
軽い口論になることぐらいはあるぜ
〇薬研藤四郎
近しい関係だからこそ、互いについつい言い過ぎるんだろうが…気をつけないとな
〇へし切長谷部
そうか…
〇薬研藤四郎
ま、そういう意味じゃお前も少しは物の言い方に気を付けたほうがいいかもな
〇へし切長谷部
は?どういう意味だ
〇薬研藤四郎
そのままの意味だぜ。お前は真っ直ぐな奴だが反面、熱くなるとつい語気が強くなりがちだよな
〇薬研藤四郎
せっかくお前が正しいことを言ってても、それじゃ伝わるものも伝わらないぜ、って話d。
わかるだろ?
〇へし切長谷部
…忠告には感謝する。
だが、俺はこの在り方を変えるつもりはない
〇へし切長谷部
たとえそれで俺自身が損をしようが…
正しい方向に物事が進むのならば、それこそが最善だ
〇薬研藤四郎
そうか。ま、俺としちゃ
部隊の雰囲気が悪くならなきゃそれでいいんだ
〇薬研藤四郎
お前の真っ直ぐさが、これからもこの本丸で良く活きるよう願ってるぜ
〇薬研藤四郎
よお長谷部。
お前、面影とちょっとした喧嘩をしていたらしいな
〇薬研藤四郎
調査を経て、少しは距離が縮まったかと思ったんだが…
やっぱりまだまだ、だったか?
〇へし切長谷部
別に、いまさらあいつに悪感情など抱いていない。
ただやはり、気の抜けた様がどうにも気になって…
〇薬研藤四郎
なるほどな。面影の態度に悪気があるわけじゃないのは長谷部も、もちろんわかってるよな?
〇へし切長谷部
…無論だ。あいつがああいう奴だというのは共に過ごして嫌というほど思い知らされたからな
〇薬研藤四郎
だよな。その上で、つい言いすぎたってんなら…
…やることはひとつ、じゃねえか?
〇へし切長谷部
…………
〇薬研藤四郎
…長谷部。「鉄は熱いうちに打て」だ。
何事も、やるなら早いに越したことはないぞ
〇へし切長谷部
…すまないな、薬研。
後ほど、面影のもとに向かおうと思う
〇薬研藤四郎
ああ、そのほうがいい
…うん、もう大丈夫そうだな
〇薬研藤四郎
で…どうだ?
あれからちゃんと面影に詫びられたか?
〇へし切長谷部
当然だ。
しっかりと、自らの無礼を認めてきた
〇薬研藤四郎
おお、そりゃ何より。あの長谷部が頭を下げたんだ、面影もさぞ面食らっただろうな
〇薬研藤四郎
まあ、頭を下げるのはこれで二度目か…?
なんにせよ、穏やかに済んだならよかったぜ
〇へし切長谷部
…薬研、色々と世話をかけたな
〇へし切長谷部
薬研や、面影らと困難な任務を共に乗り越えたことで俺も少しは、寛容になれたのではないか…と思う
〇薬研藤四郎
ははは、それ自分で言うか?…だがまあ、同感だ。
少しはとっつきやすくなったのかもな
〇薬研藤四郎
とはいえ…長谷部の自他に厳しい在り方が本丸の空気を引き締めてくれているのもまた事実だ
〇薬研藤四郎
これ以上丸くなることでその唯一無二の持ち味が失われないよう、願ってるぜ
〇へし切長谷部
ふん、無用な心配だな。
俺は俺のまま、これからも在り続けると誓おう
〇巴形薙刀
長谷部、お前は誰にでも厳しい物言いをする。
それは俺もよく知っている
〇へし切長谷部
急に何だ?
〇巴形薙刀
だが面影に対しての対応は、時にして当たりが強すぎるように思うぞ
〇へし切長谷部
ふん、それはお前の勘違いだ、巴形。
俺は誰にでもああいう態度だ
〇巴形薙刀
ふむ、お前がそのつもりでも、時折何か厳しいように見えるがな
〇巴形薙刀
慣れ合えとは言わぬが、お前の態度で本丸の空気を乱すのはいただけない
〇へし切長谷部
…何が言いたい
〇巴形薙刀
…いや、ただ俺が気になったというだけだ
〇へし切長谷部
俺自身はいたって普段どおりだが、…頭には置いておく
〇へし切長谷部
ここのところずっと不服そうだな。
言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうだ
〇巴形薙刀
俺が不服そうに見えるのだとすれば、それはお前が原因と言えるな
〇へし切長谷部
俺がだと?
お前に何かした覚えはないが…
〇巴形薙刀
いや、したな。
誰にも相談せず、過去のことを背負いこんでいただろう
〇巴形薙刀
主はいつも俺たちに「互いに支え合うように」と言っていたはずだ
〇へし切長谷部
だからこそ、隊長の俺が皆は支えねばと思ったんだ。
主の言を守り、主のためを思えばこそだ
〇巴形薙刀
そういう態度が「支え合い」から遠いと言っている。
責任はお前のみが負うべきものではない
〇巴形薙刀
それに主を思う気持ちは皆も一緒だ。
俺ほどではないにしてもな
〇へし切長谷部
ふん、一言余計な奴だな。
だが、お前が言わんとすることはわかった
〇巴形薙刀
伝わったのならそれでいい。
…主を思う気持ちは俺が一番だ
〇へし切長谷部
そこじゃない!
むしろそこだけは認めんぞ
〇巴形薙刀
張りつめていた本丸の空気が和らいだようだ。
お前も俺の説得をふまえてくれたようだな
〇へし切長谷部
なんの話だ?身に覚えがないが
〇巴形薙刀
面影を茶に誘っていたところを見たぞ。
気にかけてやっているようじゃないか
〇巴形薙刀
おかげで、お前が思っていたほど強情でわからずやではないということもわかった
〇へし切長谷部
あいかわらず、一言多い奴だな。
俺は強情などではないぞ
〇巴形薙刀
そうか、ならば相談がある
〇巴形薙刀
いずれ主が戻った折には、俺を側仕えするよう推薦してほしい
〇巴形薙刀
隊長の進言なら、主も快く受け入れてくれる
〇へし切長谷部
なんだと?それは主が決めることだ。
第一、この俺も側仕えに名乗りをあげるつもりだからな
〇巴形薙刀
…やはりそう簡単にはいかぬか。
ならば一刻も早く主に戻ってもらい、直接頼まねばな
〇面影
…長谷部、少し時間をもらえるか?
〇へし切長谷部
用件はなんだ
〇面影
燭台切が菓子を作ってくれたんだ。
それで、一緒に茶でもどうかと…
〇へし切長谷部
断る。
俺は隊長としてそれなりに仕事があって忙しい
〇面影
そう…か。だが、そうなると茶菓子が余ってしまうな。
せっかく燭台切が作ってくれたというのに…
〇へし切長谷部
くっ、そこまで言うなら…
時間を割いてやらんこともない
〇面影
いや、無理を言うのもよくない。
そうだ、三日月を誘ってみよう
〇へし切長谷部
…面影、もしやお前、俺をからかっているのか?
〇面影
?…よくわからないが、またお前を不快にさせてしまったようだな
〇面影
長谷部、その…忙しいことは承知の上なんだが…
燭台切が、私の気に入った茶菓子を作ってくれた
〇面影
今度こそ一緒に茶でも飲めればと思うのだが、どう…だろうか?
〇へし切長谷部
…………。
茶菓子はなんだ?
〇面影
…え?
〇へし切長谷部
お前の気に入った茶菓子とはなんだと聞いている
〇面影
まんじゅうだが…なぜそんなことを?
〇へし切長谷部
信用するには、まずお前のことを知れと言われたからな
〇面影
それはつまり、共に茶を飲んでくれるということか?
〇へし切長谷部
今日はたまたま仕事が終わって手すきだっただけだ。
次はわからんぞ
〇面影
ああ、かまわない。
…ありがとう、長谷部
〇へし切長谷部
面影、少しいいか?
〇面影
ああ、もちろんだ
〇へし切長谷部
…なんだそのしまりのない顔は
〇面影
「賤ヶ岳の戦い」から、よく私を名前で呼んでくれるようになった気がする
〇へし切長谷部
それがどうかしたか?
〇面影
名前を呼ばれるのは…こそばゆいものだな。
まだなじまないが、嬉しく思う
〇へし切長谷部
恥ずかしいことを臆面もなく言う奴だな、お前は
〇面影
何か恥ずかしくなるようなことを言っただろうか?
〇へし切長谷部
…わからないならそれでいい。
はあ、用を忘れてしまった。また今度話す
〇鶴丸国永
なあ、今朝方、やけに寒くなったか?
俺、そのせいで布団から出られなかったんだよなあ…
〇へし切長谷部
いや、俺はそうは思わなかったが…というか、お前がなかなか目覚めてこないのは、よくあることだろう
〇鶴丸国永
ははっ、バレたか。
とはいえ、朝は寒さを感じちまうと動き出すのがより億劫になるよな…
〇鶴丸国永
…そうだ!なあ、長谷部。
久しぶりにあれ、着てみようぜ!
〇へし切長谷部
あれ?
〇鶴丸国永
察しが悪いなあ。寒い日に着るもんっていったら、どてら以外にないだろ?
〇へし切長谷部
…やめておく。そもそも俺は寒く感じなかったからな。
お前も、桜が咲く中どてらはさすがにやりすぎじゃ…
〇鶴丸国永
いいや、思い立ったが吉日だ!
俺は今日、どてらを着て寝ることにするぜ!
〇鶴丸国永
そうすりゃあ、明日の朝がどんなに寒くてもバッチリ目覚められるに違いないからな!
〇へし切長谷部
…ああ、そうか。ならば好きにすればいい。
だが、後悔するなよ?俺は止めたからな
〇鶴丸国永
…………
〇へし切長谷部
おい、まだ落胆しているのか?
まあ、無理もない
〇へし切長谷部
先日あれほど意気揚々と、どてらを着て寝ておきながら次の日が、夏のような暑さだったんだからな
〇へし切長谷部
翌朝、汗だくで厨に現れたお前を見て吹き出さずに堪えた俺を誉めてほしいくらいだ
〇鶴丸国永
ははは、花冷えの次は灼熱地獄が待っていた!ってな。
まったく、気まぐれなお天道様だぜ
〇へし切長谷部
…驚いたな。俺はてっきり、さすがのお前も落ち込んだもんだと思っていたが
〇鶴丸国永
ははは、驚いたか。そりゃなによりだ。
まあ、これしきの失敗で落ち込んでたら、キリがないからな
〇鶴丸国永
だからこの失敗も、次の成功の糧にしてみせるぜ。
お前も引き続き、適当に見守ってくれよな!
〇へし切長谷部
ああ、今後も適当に、見守らせてもらうとしよう。
…この諦めの悪さ、俺も見習わねばな
〇燭台切光忠
長谷部くん、今日の晩ご飯に栄養たっぷりの汁物を作ろうと思うんだけど、苦手な野菜はあるかい?
〇へし切長谷部
いや、特にないが…
なぜ俺に聞くんだ?
〇燭台切光忠
誰より長谷部君に食べてもらいたいからだよ。
最近、ずいぶん根を詰めているようだから気になってね
〇へし切長谷部
余計な心配だ。
それなら他の連中を気にかけてやれ
〇燭台切光忠
そうはいかないよ。
今日だって、どことなく顔色が悪いみたいだ
〇燭台切光忠
そんな時は、しっかり栄養を取って休むのがいいよ。
昨日も遅くまで報告書をまとめていただろう?
〇へし切長谷部
言われなくとも自己管理ならできている
〇へし切長谷部
主の不在に、いまだ謎の多い強襲調査、その他にも本丸の管理や鍛錬…やるべきことは山積みなんだ
〇へし切長谷部
…しまった、もうこんな時間か。
俺は見回りに戻るとしよう
〇燭台切光忠
君のそういうところが心配なんだけどな
〇へし切長谷部
燭台切、先日は世話をかけたな。
あんな失態を晒すなど…
〇燭台切光忠
失態だなんて。
疲れがたまって起き上がれなかっただけだろう?
〇燭台切光忠
むしろ、一日ゆっくり休んでもらえて良かったよ。
これで無理しすぎだってことにも、気づけただろうしね
〇へし切長谷部
ああ、自覚はなかったが、お前の言うとおりらしい。
自己管理の甘さを痛感した
〇へし切長谷部
それにもう一つ、今回のことでわかったことがあるな。
…この本丸には、片付けが苦手な奴が多すぎる!
〇燭台切光忠
確かに…長谷部くんが休んでいた日は、娯楽室や茶室が少し散らかっていたかな
〇へし切長谷部
少し?少しなんてもんではなかったぞ
〇へし切長谷部
本丸を整然と保つのも自分の役目だと思っていたが、逆に皆が片付ける機会を奪っていたのかもしれない
〇へし切長谷部
だから、今後は皆それぞれが完璧に片付けられるよう俺流の整理整頓と掃除方法を仕込んでやろうと思う
〇燭台切光忠
なるほど…。でも、むしろ、自分で片づけるより疲れそうな気もするね
〇大倶利伽羅
…………
〇へし切長谷部
…お前、何かあったのか?
〇大倶利伽羅
…は?
〇へし切長谷部
いつもよりだいぶ機嫌が良さそうに見えるが、俺の気のせいか?
〇大倶利伽羅
…だろうな
〇へし切長谷部
…ああ待て。そういえば、先ほど三日月から聞いたな。
確かお前の飲んでいた茶に茶柱が立っていた、とか…
〇大倶利伽羅
…だったら、どうした
〇へし切長谷部
茶柱が立つとお前も多少なりとも喜ぶんだな。
これはいいことを知った
〇へし切長谷部
ならばしばらく、こうして共に過ごさないか?
お前の縁起にあやからせてもらいたい
〇大倶利伽羅
ちっ…勝手にしろ
〇へし切長谷部
断らないのか。これは珍しいな。
茶柱の効果、恐るべし…か?
〇へし切長谷部
…………
〇大倶利伽羅
…おい。あんた、何かあったのか
〇へし切長谷部
っ!わかるか、大倶利伽羅
〇大倶利伽羅
…しまりのない顔をしていたからな
〇へし切長谷部
それは失敬…と、そうだ大倶利伽羅、俺も立ったぞ、茶柱
〇大倶利伽羅
…くだらないな
〇へし切長谷部
くだらないとはなんだ。お前だって、先日茶柱が立って喜んでいたではないか
〇大倶利伽羅
…誰がだ
〇へし切長谷部
待て…とすると、この幸運は先に茶柱を立てたお前の縁起にあやかったおかげ、か…?
〇大倶利伽羅
…ふん
〇へし切長谷部
謙遜はよせ、きっとそうに違いない。
またとない幸運、感謝するぞ
〇へし切長谷部
山姥切。
お前は…あの話を知っているか?
〇山姥切国広
…あの話?なんのことだ
〇へし切長谷部
やはり、その様子では知らないようだな。
実は…この本丸に、近頃幽霊が出没しているらしい
〇山姥切国広
幽霊…?は、何かと思えばそのような…
どうせ、寝ぼけて草木を人影に見間違えたんだろう
〇へし切長谷部
…と、俺も思っていた、だが…
この幽霊、複数の目撃証言が寄せられていてな
〇へし切長谷部
目撃者の一人である鯰尾曰く、「夜更けに、厨を全身白い幽霊が物色していた」…とのことだ
〇山姥切国広
っ…!
…あいつ、見ていたのか…
〇へし切長谷部
ん?どうした、山姥切
〇山姥切国広
…何でもない。続けてくれ
〇へし切長谷部
あぁ…それで、目撃した鯰尾や日向などは、得体のしれない霊にすっかり恐れをなしていてな
〇へし切長谷部
たとえ霊でも、この本丸の風紀を乱す輩は捨て置けん。
そこで今夜、厨で待ち構えて撃退しようと思うんだが…
〇山姥切国広
…待て、この件、俺に預からせてくれないか
〇へし切長谷部
ほう…お前がそのように申し出るとは珍しいな。
では頼んだぞ、山姥切
〇へし切長谷部
山姥切。あれから、見事幽霊を退治したそうだな。
恩に着る
〇山姥切国広
…ああ、そんなこともあったな
〇へし切長谷部
お前が自ら退治を志願した時は、我が耳を疑ったが…
いや、見直したぞ!
〇山姥切国広
…………
〇へし切長谷部
やはりお前も、主に仕える刀として必要不可欠な勇は備えていたんだな
〇山姥切国広
…大げさだな。
霊を一体、追い払っただけだろ
〇へし切長谷部
そう卑下するな。幽霊に慄いていた連中も、ようやく枕を高くして寝られると喜んでいたんだぞ
〇へし切長谷部
さしずめお前は、皆の安眠を守った英雄といえよう!
もっと自身を誇るがいい
〇山姥切国広
…くだらないな。
そもそも霊など恐れてどうする
〇へし切長谷部
ははっ、言えているな。
ともあれ、本丸の風紀が守れて何よりだ
〇へし切長谷部
…山姥切。今回はお前の勇を買って手柄を譲ったが…
再び幽霊が現れた時は、必ず俺が退治してみせよう!
〇山姥切国広
…ああ、そうしてくれ。
…しばらくは、夜の厨に立ち入らないでおくか…
〇へし切長谷部
お前、最近は食事時に見かけない気がするが、ちゃんと食べているのか?
〇山姥切長義
もちろん食べているよ。
皆と時間が合わないだけでね
〇へし切長谷部
そうか…。
どうにか時間を合わせることはできないのか?
〇へし切長谷部
食事の片づけが二度手間になる上に、交流も図りづらいだろう
〇山姥切長義
心外だな。
片付けは自分でやっているよ
〇山姥切長義
それに、任務に支障が出ないだけの意思疎通は図れているつもりだ。
問題ないだろう?
〇へし切長谷部
いや、そういう話ではない。
もっと周りと協調できないか?
〇へし切長谷部
主もきっと、皆がより良い関係を築くことを望んでおられるはずだ
〇山姥切長義
二言目には「主」…君の考えも重々承知しているけど、これ以上、何を求めているのかな?
〇へし切長谷部
だから、その態度をどうにかしろと言っているんだ。
…はぁ
〇へし切長谷部
最近はちゃんと食事の時間に顔を出しているようだな。
感心したぞ
〇山姥切長義
このところ食事時になると部屋の前が騒がしくてね。
誰の差し金だか知らないけど
〇へし切長谷部
さすがのお前も、鶴丸や鯰尾に毎回せっつかれては、部屋にこもってはいられないだろう
〇へし切長谷部
主がご不在の今、俺たちがしっかり団結して本丸を支えねばならん。
食事一つをとってもな
〇山姥切長義
相変わらず「主第一主義者」といった様子だね。
けど、君の考えは理解したよ
〇山姥切長義
食事を共にする意義を否定はしない。
だからこれ以上、強硬手段はご勘弁狙いたいね
〇へし切長谷部
それは「強硬手段を取らずとも、食事には来る」
という意思表示だな?感心だ
〇山姥切長義
…君は意外と強情だな
〇へし切長谷部
否定はしない。
だが、お前も似たようなもんだろう
〇山姥切長義
さぁ…勝手に言っていればいい
〇薬研藤四郎
ふう、戦場に出るとやっぱり気分が高ぶるな。
戦闘の勘も鈍ってなくてよかったぜ
〇巴形薙刀
ああ、納得できる戦ができた。
薬研も果敢に敵に突っ込んでいたようだな
〇薬研藤四郎
おっと、見られてたか。
ついつい気分が乗っちまってな
〇薬研藤四郎
だが、そいうあんたもかなり強気に攻めてたぜ
〇巴形薙刀
そんなつもりはなかったが…。
いや、思い当たる節はある
〇巴形薙刀
主と離れ離れになったのも時間遡行軍のせいだと思ったら怒りがこみ上げてな…
そのせいかもしれん
〇薬研藤四郎
ああ、間違いなくそれだろうな。
なんにせよ任務は無事果たせたからよしとしよう
〇薬研藤四郎
だが、お互い無理はしないようにしようぜ。
応急処理くらいはできるが、怪我しないのが一番だ
〇巴形薙刀
そうだな。
主が戻った時に、傷だらけでは話にならぬ
〇薬研藤四郎
ははは、違いない
〇巴形薙刀
お前の元の主は確か松永久秀だったな。
戦場で再会して、戻りたくなたりはしないのか?
〇薬研藤四郎
久々にあの人の姿を見られてよかったとは思うぜ。
だが、戻りたいってのとは違うな
〇巴形薙刀
そういうものなのか?
元の主に執着する者もいると聞いたのだが…
〇薬研藤四郎
まあ、その気持ちもわからなくはない
〇薬研藤四郎
だが、今の俺には果たすべき使命がある。
元の主に心を揺らしてる暇はないさ
〇巴形薙刀
なるほど。
薬研、お前はしっかりしているな
〇薬研藤四郎
そうか?
自分じゃあんまりわからんが…
〇巴形薙刀
自分の考えを持ち、意見を述べられるのだ。
それは、しっかりしている証拠ではないか?
〇薬研藤四郎
あんたにそうも誉められるとむずがゆいもんだな。
ま、なんにせよ俺はこの本丸で頑張るだけさ
〇薬研藤四郎
これからも同じ部隊としてよろしく頼むぜ、巴形
〇薬研藤四郎
そういや「本能寺の変」に出陣した時、やけに俺のほうを見てなかったか?
〇巴形薙刀
ああ。以前にも話したが、本当にお前はぶれないのだなと感心していた
〇巴形薙刀
織田信長…彼もお前の主のひとりなのだろう?
その最期を目にしながら、あの落ち着きには驚いた
〇巴形薙刀
教えてほしい。
なぜ、ああも冷静でいられる?
〇薬研藤四郎
うーん、別に何も思わないってわけじゃないが、やるべきことを見定めているから…かもな
〇巴形薙刀
ふむ。では、お前のやるべきこととはなんだ?
〇薬研藤四郎
大将が守ろうとしていた歴史を守ることだ。
それは大将がいない今も変わらないだろう?
〇巴形薙刀
…なるほど。
主を思えばこそ、か
〇巴形薙刀
話が聞けてよかった。
しかし、お前に主は譲らんぞ
〇薬研藤四郎
ははは、こりゃおっかねえ。
お手柔らかに頼むぜ
〇薬研藤四郎
あんたは俺たちに会うまでは、単独で出陣してたんだろう?
〇薬研藤四郎
それって淋しくはなかったのか?
知らない戦場に自分だけ、ってのは
〇面影
…考えたこともなかった
〇面影
薬研はもし単独で出陣しろと言われたら淋しく感じるのか?
〇薬研藤四郎
…そうだな、やっぱり、心細いだろうな。
それに仲間がいる方が頼もしいぜ
〇面影
なるほど、そのような感情を抱くのか…。
それは、他の刀剣男士たちも同様なのだろうか?
〇薬研藤四郎
まあ、この本丸には騒がしい奴も多い。
それに慣れてるせいもあるが…
〇薬研藤四郎
他の奴らも、仲間と共に戦うことを選ぶと思うぜ。
「一人で十分だ」って言いそうな奴もいるけどな
〇薬研藤四郎
仲間がいるってのは、心強いもんだからな。
ま、あんたもこの本丸に馴染めば、わかるようになるさ
〇面影
わかった。
少しずつ慣れるように努力しよう
〇薬研藤四郎
どうしたんだ、難しい顔をして
〇面影
…長谷部との会話は難しいものだと先の出陣を思い返していた
〇薬研藤四郎
あー、まあ長谷部も悪い奴じゃないんだがな。
それに、あんたの思いは長谷部に届いていると思うぜ
〇面影
だといいんだが…。
まだうまく皆と打ち解けられない
〇面影
今まで単独で動いているからこそ、どう説明すれば相手に伝わるかを考えるのは難しいな
〇薬研藤四郎
そうか?あんたが言葉を選んで話していることは少なくとも俺には伝わってるぜ
〇薬研藤四郎
だから、きっとすぐに他の奴らとも打ち解けられるはずだ。もちろん長谷部ともな
〇面影
…そう、だろうか
〇薬研藤四郎
おっ、いい顔で笑うじゃねえか。
その調子で皆と話していこうぜ、応援してるからさ
〇面影
ああ、ありがとう
〇面影
薬研…お前の言っていたことがわかったような気がする
〇薬研藤四郎
本丸に馴染んできたら、仲間のよさがわかるってやつか?
〇面影
ああ。戦闘以外の仕事も、他の奴と会話するのも心弾むことだと、そう思うことが増えた
〇薬研藤四郎
…本丸は気に入ったか?
〇面影
ああ、居心地がいいとはきっとこんな感覚を言うのだろうな
〇薬研藤四郎
この本丸の一員として、あんたのその言葉は何よりの誉め言葉だな
〇面影
そう言ってもらえてよかった。
それに兄弟がいるというのも楽しそうだ
〇薬研藤四郎
へぇ、気分を味わいたいだけでよけりゃ、俺が兄に立候補しようか?
〇面影
薬研が…兄…?
〇薬研藤四郎
お、おい…急に神妙な顔するなてt!
…冗談だよ
〇薬研藤四郎
あれ?あんた、昨日は燭台切と畑を耕してたよな?
それにしちゃあ、随分と裾が綺麗だが…
〇鶴丸国永
よく気付いたな、薬研。確かに、昨日は不本意ながら畑仕事を行い、衣服は土で汚れきってしまった…
〇鶴丸国永
だがしかし、俺は鶴の名を背負う刀剣男士…
紅以外で染まっても、めでたくもなにもないだろ?
〇鶴丸国永
そこで俺は、鶴よろしく中を覗くなと言い残して部屋にこもり…汚れ共を残らず撃退したわけだ
〇薬研藤四郎
ああ…つまり、入念に洗ったってことか
〇鶴丸国永
…まあ、そうとも言うな
〇薬研藤四郎
しかし、意外とまめなんだな、鶴丸は。
土汚れを落とすのなんざ、割と大変だろう
〇鶴丸国永
は、ははは…誰しも、意外性のひとつやふたつは持ち合わせているもんだ
〇薬研藤四郎
なあ、俺にも汚れをよく落とす秘訣を教えてくれ。
出陣後の洗濯で、たびたび手こずってんだ
〇鶴丸国永
お…俺の技には相当な技術を要するんだ。
だからそう簡単には真似できないだろう…悪いな、薬研
〇薬研藤四郎
あ、ああ…わかった。
…鶴丸のやつ、急に態度が変わった。こりゃ匂うな…
〇薬研藤四郎
なあ、鶴丸。あんた、着物の洗濯を自分でやってたわけじゃなかったんだな
〇鶴丸国永
っ!お前、どこでそれを…
〇薬研藤四郎
いち兄に聞いたよ。
いち兄やら燭台切やら手先の器用なやつにたびたび洗濯を任せてる…ってな
〇薬研藤四郎
まったく…なんであの時正直に言わなかったんだ?
俺相手に変な見栄はっても意味がないと思うぜ
〇鶴丸国永
ははは…見栄をはるつもりはなかったんだがな。
お前が誉めてくれるもんだから、嬉しくなってついな…
〇薬研藤四郎
おいおい、俺のせいなのか?
ま、誉められて舞い上がる気持ちはわかるけどな
〇鶴丸国永
…で、だ。真実が明らかになったついでに折入って俺から頼みがあるんだが…
〇薬研藤四郎
おっと、あんたの考えはお見通しだぜ。
悪いが俺は不器用なんでな…衣服の白さは自分で守ってくれよ
〇燭台切光忠
薬研くん、近頃朝にひとりで体操してるよね?
〇薬研藤四郎
ああ…なんだ、見てたなら声かけてくれよ。
起き抜けに体を動かすと、身も心も整う気がしてな
〇薬研藤四郎
そうだ、燭台切も一緒にどうだ?
鯰尾にも声かけたんだが、寝たいって断られてな
〇燭台切光忠
うーん…参加したいのはやまやまだけど、朝げの仕込みがあるんだ、ごめんね
〇燭台切光忠
でも、薬研くんの心掛けはすごく素敵だと思うよ。
なんと言っても、朝からしっかり体を動かすと…
〇薬研藤四郎
その後の朝メシが美味いから、だろ?
ああ、そりゃ間違いない。もうとっくに実証済みだぜ
〇燭台切光忠
はは、それは何よりだね。ともあれ、こうして声をかけてもらったんだ、僕にできることはしたいかな
〇燭台切光忠
そうだ!薬研くん、次体操する時は、始める前に厨にいる僕に一声かけてくれないかな?
〇薬研藤四郎
え?でも、燭台切は参加できないんじゃねえのか?
〇燭台切光忠
うん、だから代わりにいいものをあげようと思ってね。
それが何かは、当日までのお楽しみだよ
〇薬研藤四郎
そうだ…この前はありがとな、燭台切。
朝の体操前に声をかけろっていうから何かと思えば…
〇薬研藤四郎
まさか、手製の生姜湯を渡されるとはな。
予想だにしてなかったぜ
〇燭台切光忠
本当かい?薬研くんは聡いから、渡す前にわかっちゃうかなって思ってたんだけど…
〇燭台切光忠
鶴さん風に言うなら、驚きを与えられて何よりだよ。
…で、どうだった?効果のほどは
〇薬研藤四郎
そりゃもう、てきめんに効いたぜ。あんたの言うとおり飲んでから体操したら、体が熱いのなんの
〇薬研藤四郎
おかげで、いつもよりいい汗をかけた気がする。
改めて礼を言うぜ…ありがとな
〇燭台切光忠
ああ、よかった…その言葉を聞けて安心したよ。
ご所望とあらば、またいつでも作るからね
〇薬研藤四郎
いいのか?じゃあ、またよろしく頼むぜ。
…と、そうだ。実はもうひとつ、頼みがあってな
〇薬研藤四郎
いい汗かいたらかいただけ、腹が減っちまってな…
これからは、朝メシの副菜を倍に盛ってくれないか?
〇燭台切光忠
ふふ、もちろん!
〇薬研藤四郎
お前、だいたいいつもひとりで食事してるよな。
しかも、燭台切に作らせた特製の握り飯を
〇大倶利伽羅
…俺にかまうな
〇薬研藤四郎
お前が慣れ合いを嫌うのは百も承知だ
〇大倶利伽羅
…………
〇薬研藤四郎
ただ、どうしても気になることがあってな。
…あの特製握り飯の具を教えちゃくれないか?
〇大倶利伽羅
…は?
〇薬研藤四郎
燭台切に聞いても「門外不出、一子相伝だよ」の一点張りでな。
でも、隠されると余計に気になるだろう?
〇薬研藤四郎
燭台切としちゃ栄養価も味も抜群な自信作らしい。
な、頼むよ。教えられないならせめてひと口…
〇大倶利伽羅
知るか…俺に聞くな
〇薬研藤四郎
まあ、そうくるとは思ってたけどな…。
仕方ない、自分で確かめるとするか
〇大倶利伽羅
…おい。あんた、この間食堂で…
〇薬研藤四郎
なんだ、俺が特製握り飯を食べてるの見てたのか。
あれ、やっぱり絶品だな
〇大倶利伽羅
…光忠か
〇薬研藤四郎
違うぜ。燭台切は調理法を漏らす気は一切なさそうだったからな
〇薬研藤四郎
そこで、握り飯を作る燭台切の隣で盗み食いをしていたと思しきやつに、探りを入れてみたってわけだ
〇大倶利伽羅
…鶴丸か
〇薬研藤四郎
ご名答。あいつはすごいな、数度食べただけだってのに調味料の配合含めて詳細に再現してみせたよ
〇薬研藤四郎
そういうわけで、俺はお前と慣れ合うことなく見事、握り飯にありつけたというわけだ
〇大倶利伽羅
…………
〇薬研藤四郎
なんだ、勝手に探られて不満か?
でもな…
〇薬研藤四郎
こうして間接的にでも同じ経験ができて同じ本丸に集う刀として、俺は嬉しかったぜ
〇大倶利伽羅
…言っていろ
〇薬研藤四郎
そういや、北側の塀が崩れかけてたんだったな。
早いところ補修してやらねえと
〇山姥切国広
へえ、そうか…あ
〇薬研藤四郎
ん?なんだ山姥切、お前が自分から洒落を言うなんて珍しいな
〇山姥切国広
…笑うな、ただの偶然だ。
俺にそのような面白味など、ない…
〇山姥切国広
…笑うな、ただの偶然だ。
俺にそのような面白みなど、ない…
〇薬研藤四郎
ははは、気にすんな。
会話がうっかり洒落になることくらい、よくあるさ
〇薬研藤四郎
俺もこの前、鯰尾と話してた時につい「刀が勝ったな」って言っちまってな
〇薬研藤四郎
いやあ、あの時は顔から火が出るかと思ったぜ。
俺に比べりゃ、お前の洒落はまだましなほうだと思うが
〇山姥切国広
あんた…それで俺を励ましているつもりか
〇薬研藤四郎
ん、そう聞こえたか?
俺の失敗談で少しでも励まされたんならよかったよ
〇山姥切国広
…ふん
〇薬研藤四郎
この前、三日月の着物の合わせが逆になっててな。
俺やいち兄、蜻蛉切であわてて直したんだよ
〇山姥切国広
…あいつも、着物ごときで騒がれるとは人気者だな。
…っ!
〇薬研藤四郎
おいおい、また洒落か。やるな、山姥切。
実は狙って言ってるんじゃねえか?
〇山姥切国広
なっ…そんなわけあるか!
〇薬研藤四郎
悪い悪い。だが、その言葉選びの妙はある意味才能だ。
お前、自分の評価を少し改めてもいいんじゃないか?
〇薬研藤四郎
俺からしてみりゃ、お前は十分に面白味のあるやつだと思うぜ
〇山姥切国広
…………
〇薬研藤四郎
いやあ、楽しいものを見せてもらったぜ。
こりゃひとつ、俺からたんと謝礼を弾まないとだな?
〇山姥切国広
…謝礼なら、洒落以外で頼む
〇薬研藤四郎
っ…!お前、今のって…
〇山姥切国広
いや…なんでもない、忘れてくれ
〇薬研藤四郎
長義、この前鯰尾と将棋を指したんだってな。
俺とも一局頼めるか?
〇山姥切長義
構わないけど、俺に勝負を挑んで大丈夫かい?
鯰尾なんて最後は涙目になっていたようだが
〇薬研藤四郎
ああ、鯰尾は思い切りがよすぎるからな…
理詰めで攻めるお前とは相性最悪だろう
〇薬研藤四郎
その点、俺は楽しませてやれると思うぜ?
なんせ戦場育ちなもんでな、戦局の見極めは上手い
〇山姥切長義
たいした自信じゃないか。
そこまで言うならぜひお手合わせ願いたいね
〇山姥切長義
俺も采配には自信がある
〇薬研藤四郎
これは楽しみだな。
そうだ、どうせなら本丸の全員を巻きこむか
〇山姥切長義
と、いうと?
まさか総当たり戦でもするつもりか?
〇薬研藤四郎
その「まさか」だ。
この本丸の頂点を決めようぜ
〇薬研藤四郎
さっそく対戦表でも作るとするかな。
これは忙しくなるぜ…
〇山姥切長義
……。とんだ伏兵だった。
まさか三日月と鶴丸がああも強いとは…
〇薬研藤四郎
将棋大会で一戦目からあんなに白熱した戦いが見られるとは、俺も思ってなかったぜ
〇薬研藤四郎
角換わり腰掛け銀でくるとはなぁ。
一瞬矢倉かと思ったんだが
〇山姥切長義
鶴丸が攻め手で来るのは予想できていたけど、三日月もだとは…。
しかも、あの涼しい表情のままで
〇薬研藤四郎
最終的には鶴丸を下した三日月が最高の勝ち点で圧勝。
次点は鶴丸か…
〇薬研藤四郎
それで、結局俺とお前の勝率は引き分けで…
〇山姥切長義
互いにあのふたりには勝てなかった…と
〇薬研藤四郎
なあ、長義。
ものは相談なんだが…
〇山姥切長義
ああ、お前の言いたいことはわかる。
…仕方ない、将棋盤を取りに行くか
〇巴形薙刀
数多の刀剣の逸話が集まったお前に興味があるのだが…
それはどういう状態なのだ?
〇面影
どう、と言われても説明が難しい…。
私は今の状態が当たり前だから
〇巴形薙刀
ふむ、では聞き方を変えるか。
複数ある逸話とはなんだ?
〇面影
…それも…説明しにくい。
私に関する逸話は曖昧なものが多いんだ
〇面影
その曖昧な逸話が重なったのが今の私なんだが、説明になっているだろうか?
〇巴形薙刀
なんとなくお前が言わんとすることはわかったが、正直理解できたかと問われると難しいな
〇巴形薙刀
ふむ…だが、参考にはなった。礼を言う
〇面影
私の拙い説明が何かの役に立ったのであれば何よりだ
〇面影
また何かあれば聞いてくれ。
答えられるかはわからないが…
〇巴形薙刀
ああ、その時はよろしく頼む
〇巴形薙刀
前に尋ねた逸話のことだが、逸話とは多ければ多いほどいいのだろうか?
〇面影
…考えたこともなかったな。
どうなんだろうか?
〇面影
逸話が増えたところで、私が急に強くなるとは思えないが…
〇巴形薙刀
なるほど。では、俺が多くの物語を持ったとしても必ずしも強くなるとは言えないのか
〇面影
お前は物語が欲しいのか?
〇巴形薙刀
ああ、話したことがなかったか?
俺は物語なき巴形の集まりだ
〇巴形薙刀
お前の強さの由縁が逸話を数多く持つことにあるのなら俺も物語を集めれば強くなるのかと思ったのだ
〇面影
しかし、今のお前も十分に強いと思うが…
〇巴形薙刀
いや、俺には主しかいないというのに守れなかった。
次こそは必ず守り切れるだけの強さが欲しい
〇面影
…そうか。
そういうことなら、私も応援している
〇面影
巴形の戦いぶりには目を見張るものがあった。
やはり強くあろうとしているからだろうか?
〇巴形薙刀
ああ。それもあるが、一番は主だな
〇面影
主というと審神者か?
〇巴形薙刀
ああ、俺は主を守るために力が欲しい。
だが、その守るべき相手は今ここにいない
〇巴形薙刀
主が戻る日のために、今できる最大限のことをする。
他の者の何倍も働き、薙刀を振るうだけだ
〇面影
なるほど…相手を思うからこそ強くあれるのか。
そういう相手がいるのは幸せなことなのかもしれないな
〇巴形薙刀
お前も主が欲しいのか?
〇面影
…主?考えたこともなかった。
だが、きっと私には難しいだろう
〇巴形薙刀
そうだろうか。夢も願い続ければ叶うときがくるかもしれないぞ
〇面影
本当にそれが叶うなら…きっと毎日が楽しくなるだろう
〇鶴丸国永
よお、巴形。どうした?
〇巴形薙刀
桜がこのところ見事に咲いている。
主と桜を見た時のことを思い出していた
〇鶴丸国永
お前は本当に主のことばっかりだな。
桜で思いつくのは主のことだけかい?
〇鶴丸国永
花見に向けて光坊が今年も桜餅を作っていたし、歌仙は歌を詠んでいただろう
〇巴形薙刀
そんなことがあったのか…。
まったく知らなかった
〇鶴丸国永
おいおい、少しは他の奴のことも気にかけたらどうだ?
〇鶴丸国永
主と再会した時に、皆のことを話してやったら、きっと喜ばれると思うぜ?
〇巴形薙刀
そういうものか…。
では主のために、皆の様子も気に留めておこう
〇巴形薙刀
鶴丸、あれから俺なりに仲間を観察し、意識的に話題を探してきた
〇巴形薙刀
俺の話で主が喜ぶかどうか、試しに聞いてもらえるか
〇鶴丸国永
おっ、いいぜ。
どんな面白い話を持ってきたんだ?
〇巴形薙刀
昨日の話だ。日向が熱心に梅干しを確認し、手伝いを鯰尾を行っていた
〇鶴丸国永
へえ、それでどんな事件が起きたんだ?
〇巴形薙刀
それだけだ。
今年もうまい梅干しができそうだぞ
〇鶴丸国永
…おいおい、それはただの報告じゃないか?
なんの驚きもなきゃ、面白くもない
〇鶴丸国永
次は面白おかしく相手に話すってのを学んでいこうぜ。
話題を探すってことはできたわけだしな
〇巴形薙刀
ふむ、話ひとつでも難しいものだな。
面白くか…
〇鶴丸国永
例があるほうがわかりやすいか。
よし、まずは俺のとっておきの話を聞かせてやろう
〇巴形薙刀
燭台切、少し相談がある。
かまわないか?
〇燭台切光忠
夕げの仕込みも終わってるし大丈夫だよ。
何か困っていることでもあるのかい?
〇巴形薙刀
実は、主が戻るまでに何か少しでも主の役に立つことを覚えたくてな
〇巴形薙刀
いろいろ思索した結果、やはり直接感想がもらえる料理を覚えるのがいいという結論に至ったが…
〇巴形薙刀
あいにくと俺は握り飯くらいしか自信がない。
せめて一食分を作れるようになりたいのだ
〇燭台切光忠
巴形さん…!
料理に興味を持ってもらえて嬉しいよ!
〇燭台切光忠
もちろん、僕が持っている知識のすべてを使って、あなたを立派な料理人にしてみせるよ。
安心してね
〇燭台切光忠
手始めに何から伝授しようか。
作ってみたい料理はあるかい?
〇巴形薙刀
そうだな、筑前煮を作れるようになりたい。
いつかだったか主が味付けを褒めていた気がする
〇燭台切光忠
それなら、煮物のいろはからにしよう。
善は急げだ、今から教えようか
〇燭台切光忠
料理を教わりたいと聞いてから、僕なりにみっちりといろはを叩きこんだつもりだけど…
〇燭台切光忠
まさか、巴形さんに飾り切りの才能があるとは思いもよらなかったな。
あんな綺麗な桜形は初めて見たよ
〇巴形薙刀
主には見栄えがいいものを食べてほしいからな。
かなり練習したぞ
〇燭台切光忠
どうりで包丁さばきに迷いがないわけだ。
芋を猫の形にした時なんて驚いたよ
〇巴形薙刀
主が昔、猫を愛でていたのを思い出して練習した。
だが、まだ燭台切ほどうまくは作れん…
〇巴形薙刀
そもそも、塩ひとつまみとはどれくらいなのだ?
正確な量がわからなければ、満足に味付けもできん
〇燭台切光忠
ともあれ、料理の感覚はかなり掴めてきているよ。
それは僕が保証しよう
〇巴形薙刀
そうか、ではもっと精進せねばな。
今日も指南を頼めるか?
〇燭台切光忠
もちろん。
それじゃあ、今日はいよいよ筑前煮を教えようかな
〇巴形薙刀
大倶利伽羅、お前と燭台切は旧知の仲だったな?
よく世話を焼かれているように見える
〇大倶利伽羅
…別に
〇巴形薙刀
そこで気になったのだ。
なぜお前は皆にそうもかまわれるのだ?
〇大倶利伽羅
…知らん
〇巴形薙刀
俺は主の世話をするのが好きだが、主はどう感じているのか…
世話を焼かれる立場を知っておきたいのだ
〇巴形薙刀
そこでお前に皆からかまわれる秘訣を聞こうと思ってな
〇大倶利伽羅
…知らないと言っている
〇巴形薙刀
当のお前にも理由はわからぬか。
では、俺とともに秘訣を探さないか?
〇巴形薙刀
そうすれば、お前は皆と慣れ合わずに済み、俺は主にかまってもらえるようになる。
これぞ両得だ
〇大倶利伽羅
…興味ないな。
したければ勝手にしろ
〇大倶利伽羅
…視線がうっとうしい。
まだ秘訣とやらを探しているのか
〇巴形薙刀
ああ、なかなかに難航している。
お前は言葉どおり、慣れ合いを避けているようだしな
〇大倶利伽羅
…当然だ
〇巴形薙刀
だとすれば結論は一つ。
「慣れ合わない」と公言することが、逆に皆を引き寄せていることになる
〇大倶利伽羅
…冗談はよせ
〇巴形薙刀
大真面目な話だ。
事実、お前が突っぱねるたびに燭台切がしきりに話しかけてくるだろう?
〇大倶利伽羅
そんな…ことは…
〇巴形薙刀
だとすれば、かまわれないようにする方法は明確だ。
お前から積極的に慣れ合いを求めていけばいい
〇巴形薙刀
早速、実証してみよう。向こうに鶴丸がいる。
お前から話しかけるのだ。愛想よく、しつこいぐらいに
〇大倶利伽羅
…いい加減にしろ。
それでかまわれなくなるとしても、俺は御免だ
〇巴形薙刀
山姥切国広、お前はなぜいつも隠れている。
本丸の一員として前に出るべきだろう?
〇山姥切国広
…別に隠れているつもりはない。
〇巴形薙刀
皆を押しのけてでも、さらに前へ出ればいい。
お前にはそれだけの価値がある
〇山姥切国広
…思ってもいないことを
〇巴形薙刀
お前が皆に黙ってひとり鍛錬しているのを知らないとでも思ったか?
〇巴形薙刀
俺はお前のそういう熱心さに感心してな。
もっと胸を張れと言いたくて声をかけたのだ
〇山姥切国広
…あんたに励まされる義理はない
〇山姥切国広
俺はただ与えられた仕事をする…それだけだ
〇巴形薙刀
…お前を誉めている俺に失礼ではないか。
よし、俺が直々にお前に自信を持たせてやる
〇山姥切国広
…迷惑だ、俺にかまうな
〇山姥切国広
…うっとうしいぞ
どうしてそこまで俺にかまう?
〇巴形薙刀
お前に自分を認めさせるためだ。
そろそろ自信がついてきたのではないか?
〇山姥切国広
一日中、あんたに誉められることでか?
〇巴形薙刀
…俺も主に誉められると、それだけで力が湧き、誇らしく感じたものだ
〇山姥切国広
…それはあんただけだ。
俺はあんたに誉められたところで何も変わらない
〇巴形薙刀
確かに俺と主の言葉では重みが違う。
だが、日々繰り返せば少なからず効果はあろう
〇山姥切国広
…逆だ。毎日無理に誉められて、いたたまれない気持ちになる…
〇巴形薙刀
つまり誉め方にひねりがないと…
〇巴形薙刀
それはすまぬ。
明日からは、日々違った視点からお前の魅力を讃えよう
〇山姥切国広
…そういう問題ではない
〇巴形薙刀
山姥切長義、お前は観察するのが趣味なのか?
〇山姥切長義
いや、そんな趣味は持ち合わせていないよ。
急に何かな?
〇巴形薙刀
俺たちのことを観察しているように感じてな。
趣味ではないなら暇なのか?
〇山姥切長義
別に暇を持て余してもいない。
なんならやることはかなり多い方だ
〇巴形薙刀
そうか、最近、お前からの視線をよく感じたのでな
〇巴形薙刀
手合わせをしている時や…それに食事中も観察されていた気がするのだが、勘違いか
〇山姥切長義
そういう貴方の方がよほど俺のことを観察しているようだ
〇山姥切長義
そんなに俺のことが気になるのかな?
だとすれば直接言ってくれてかまわない
〇巴形薙刀
…わかった。
だが、お前を気にしているわけではない
〇山姥切長義
そんなことはわかっているよ。
…皮肉も通じないとは、やりにくいね、貴方は
〇巴形薙刀
山姥切長義、最近は俺を観察するのはやめたようだな
〇山姥切長義
なんのことだか。
俺はいつもと変わらず過ごしているだけだよ
〇巴形薙刀
そうか。てっきり問題が解決し、観察の必要がなくなったからやめたのかと思ったが
〇山姥切長義
へぇ、参考までに聞いておこうか。
その問題とはなんのことかな?
〇巴形薙刀
俺と長谷部の口論だ。
考えてみれば、お前の視線を感じたのは、言い合いをした直後からだ
〇巴形薙刀
そして、長谷部と和解したのを機に視線も一切感じることがなくなった
〇山姥切長義
なるほど…
〇巴形薙刀
どうやら、気を揉ませてしまっていたようだ。
ここはお前に謝るべきところだろうな
〇山姥切長義
その必要はない。言っただろう?
俺は観察などしていない。すべて貴方の思い込みだと
〇巴形薙刀
そうだな。では、言葉どおり受け取ろう。
俺は皮肉が通じぬのでな
〇鶴丸国永
面影、お前がやる擬態ってのは俺にもできるもんなのか?
〇面影
…無理、だと思う。
これは私固有のものだと聞いたことがある…
〇鶴丸国永
うーん、そいつは残念だ。
面白そうだと思ったんだがなあ
〇面影
もし使えたとしたら…鶴丸は何をする気だったんだ?
〇鶴丸国永
何って、そりゃあ…いろんな奴らを驚かせるに決まってるじゃないか!
〇鶴丸国永
伽羅坊に化けて朗らかに話しかけたり、光坊に化けて変顔をするのも面白そうだろう?
〇面影
それは…確かに皆驚くだろう。
だが、大事になりそうな気もするが…
〇鶴丸国永
そうか?
案外みんな楽しんでくれると思うんだが
〇鶴丸国永
ま、なんにせよ擬態できないんじゃ仕方ないか。
別の驚かせる手段を考えてみせるぜ
〇面影
ああ、そうしてくれると助かる…
〇面影
鶴丸、私の擬態の力を利用していたずらをしているらしいな
〇鶴丸国永
おっと、もう評判を聞いたのか。
俺の擬態の腕もなかなかのもんだろう?
〇面影
お前のは擬態とは言わないと思うが…
〇鶴丸国永
いやあ、発想の転換だ。俺は面影に擬態できないが、俺に擬態した面影にならなれるだろう?
〇鶴丸国永
それで、中身は面影だというふりをして、三日月の茶菓子を盗み食いしたり伽羅坊にじゃれついたりしてな
〇面影
それだけではないだろう?
〇鶴丸国永
あとは、歌仙の前でおどけた舞を披露したり、お近づきの印にって蜻蛉切の背中に蛙を入れたり
〇鶴丸国永
いやあ、擬態は素晴らしいな。
これからも楽しませてもらうぜ
〇面影
そうはいかない。
皆に、あれは私ではないと説明してきたところだ
〇鶴丸国永
げっ、ばらしちまったのか。
となるとこれは…面倒なことになったな
〇面影
まあ、皆いたずらに慣れているようで、苦笑していたが。
…お前には本当に驚かされたな
〇面影
…明日は厨の仕事なんだが、朝から集合とはどういうことだ?
〇燭台切光忠
そういえば、面影さんは朝げの仕込みは初めてなんだっけ
〇面影
ああ、今までは使った食器の片づけや、おにぎり作りくらいしかしていない…
〇燭台切光忠
そうか、包丁を握ることも慣れていないのなら基礎から教えたほうがいいかな?
〇面影
…すまない。
そうしてくれると助かる
〇燭台切光忠
いいんだよ。みんな最初はわからないんだし。
それじゃ僕が初めて読んだ料理本を貸してあげるよ
〇燭台切光忠
図解してあってわかりやすいから、この前、鶴さんにも貸してあげたんだ
〇面影
それはありがたい…。
明日までに必ず読んでおく
〇燭台切光忠
とりあえず「猫の手」だけでも覚えておいてほしいな。
基本だからね
〇面影
猫の手…?…わかった
〇燭台切光忠
朝げの仕込みはばっちりだったね。
…ふふ、猫の手はちょっと可愛かったけど
〇面影
借りた本に「ニャーと言いながら」と書きこんであったので、そのとおりやったのだが…
〇燭台切光忠
ああ、それはきっと鶴さんの落書きだ。
ごめんね、全然気づかずに貸してしまって
〇面影
そうだったのか。
猫の手というからには鳴き声にも意味があるのかと…
〇燭台切光忠
でも、猫の手はちゃんとできてたよ。
包丁さばきもなかなかだった
〇燭台切光忠
みんなからも、君が切ってくれた野菜はちょうどいい大きさだって好評だったしね
〇面影
…そうか。それならよかった
〇燭台切光忠
だから、鶴さんのいたずらに懲りずに、また手伝ってほしいな
〇面影
私も料理するのが楽しかったから…
できればもっといろいろ教えてほしい
〇燭台切光忠
もちろん大歓迎さ。
これからもよろしくね
〇面影
大倶利伽羅、そういえば鶴丸がお前を探していた。
大事な用件があるらしい
〇大倶利伽羅
…鶴丸だと?どこで見た
〇面影
菜の花畑のほうにお前を探しに行ったようだ
〇大倶利伽羅
…しばらくそっちに近づくのはやめておくか。
あいつに俺のことは言うなよ
〇面影
…………。
ああ、わかった
〇大倶利伽羅
…………
〇大倶利伽羅
…それだけか?
〇面影
鶴丸の伝言は伝えた。
これで私の役目は果たしたからな
〇大倶利伽羅
…ふん、大概な奴だな
〇面影
…?そうか
〇大倶利伽羅
…前に鶴丸が俺を探していた時の話だが、本当に俺の居場所を黙っていたようだな
〇面影
ああ、言うなと言われたから…
〇大倶利伽羅
恩でも売るつもりか?
…言っておくが、慣れ合うつもりはない
〇面影
? 私もそんなつもりはないな
〇大倶利伽羅
…っ!
〇面影
鶴丸の伝言は頼まれたとおりきちんと伝えたし、お前が黙っていろと言うからそうしただけだ
〇大倶利伽羅
…ふん。たいした根性だ
〇面影
もしかして、私のやっていることはおかしいのか?
本当ならどうすべきなのか…
〇大倶利伽羅
…気にするな、それでいい
〇面影
そうか…そう言ってもらえて安心した。
ところで、もう少しここで休んでいってもいいだろうか
〇大倶利伽羅
…好きにしろ
〇山姥切国広
…最近足を運ぶ先々であんたを見るんだが、いったい俺になんの用だ
〇面影
お前に謝罪をしたくて話をきっかけを探していた
〇山姥切国広
謝罪?…あんたに謝られるようなことがあったか?
〇面影
戦場で勝手にお前の姿を借りていただろう。
迷惑をかけてしまったかと思って…
〇山姥切国広
…ああ、それならもう過ぎたことだ。
気にしていない
〇面影
しかし、そのせいでお前と山姥切長義の仲が悪くなってしまったのであれば、私の責任だろう…
〇山姥切国広
…あいつとは元々こんな調子だ。
あんたが気にすることじゃない
〇面影
…そうか。では今後も擬態する必要があれば姿を借りてもいいだろうか?
〇山姥切国広
なぜそうなる?
…「偽物くんの偽物くんだ」と騒がれるのはごめんだ
〇面影
わかった。
そうならないように気をつけよう
〇山姥切国広
最近、皆にやたらとお礼を言われるんだが…
あんた、俺の擬態をして余計なことをしていないか?
〇面影
駄目…だっただろうか?
お前の姿を借りて皆を手伝っていたんだ…
〇山姥切国広
手伝うのは勝手だが、なぜ俺の姿になる必要がある?
〇面影
新参者の私では皆も気を遣うだろうし…
擬態するなら山姥切の姿がいいと思った
〇山姥切国広
それは…しょせん偽物だからという意味か…
〇面影
いや、皆の手伝いをするのに合っているだろう?
〇面影
お前はいつも人知れず努力をしている。
そんな気持ちを私も学びたいと思った
〇山姥切国広
なんだそれは…意味がわからない…
〇面影
現に擬態していも、誰からも怪しまれなかった。
真摯な働きぶりを当然だと思われているようだ
〇山姥切国広
…いや、それはそれで問題だ。
やはり擬態はごめんだ。次からは別の誰かにしてくれ
〇面影
…………
〇山姥切長義
…はあ。
目の前に無言で立たれるとさすがに気になるんだが?
〇面影
ああ、すまない…。
少し考えごとをしていた
〇山姥切長義
本丸に来てからずっとそんな調子だな。
ここでの暮らしはそれほど問題が多いかな?
〇面影
…現状に少しだけ戸惑っている。
後から来たから、皆のこともまだわからないし…
〇山姥切長義
それで、昨日も一人思索して廊下に突っ立っていたわけか…
〇山姥切長義
考えこむのは勝手だけど、急に立ち止まるのはやめてくれ
〇面影
すまない、邪魔だったか。
迷惑をかけてしまっていたようだな…
〇面影
…………
〇山姥切長義
…言ったそばから思案し始めないでくれるかな?
〇面影
…ああ、また私がいることで、邪魔になっているか?
〇山姥切長義
別に、今は問題ない。
最近は廊下のすみで立ち止まっているらしいね
〇面影
ああ、思案したくなったら、端に寄るよう気をつけている
〇山姥切長義
なるほど、貴方なりの解決策というわけか。
悪くないんじゃないかな
〇面影
そうか…
お前に認められると自信が持てる…
〇山姥切長義
は?なぜ俺限定なんだ?
〇面影
お前の、そのはっきりした物言いは小気味いい。
私もそうなれたらと密かに憧れていたんだ
〇山姥切長義
憧れって…!
急に何を言い出すんだ
〇面影
やはり…迷惑だっただろうか…
〇山姥切長義
別に迷惑とは言っていないよ。好きにしてくれ。
…はあ、どうも調子が狂うな
〇燭台切光忠
うーん…
〇鶴丸国永
おっ、どうした、光坊。
さては、新作料理でも考案中か?
〇燭台切光忠
ああ…違うんだ、鶴さん。
ちょっと、正宗公のこと考えてて
〇鶴丸国永
ああ、正宗公か…
正宗公といえば、ずんだだな!
〇燭台切光忠
え?確かに、正宗公はずんだ餅を愛していたけど僕が考えていたのはそういうことじゃ…
〇鶴丸国永
あのザラリとした舌触りと、口の中に広がる枝豆のかぐわしい風味…ああ、想像するだけでたまらん!
〇燭台切光忠
…あのさ。鶴さん、もしかしてお腹空いてるのかい?
〇鶴丸国永
おお、よくわかったな!
そのとおり、俺は今腹が減ってしょうがない!
〇燭台切光忠
やっぱり…ああでも、僕もなんだか、ずんだ餅が食べたくなってきたよ
〇燭台切光忠
今すぐにとはいかないけど、近いうちに作ろうかな。
枝豆用意しておくね、鶴さん
〇鶴丸国永
ああ、任せたぜ光坊!
〇燭台切光忠
鶴さん、お待たせ!枝豆の準備ができたよ。
これでずんだ餅が作れるね
〇鶴丸国永
おお、でかした光坊!
んじゃ、後はよろしく頼むぜ
〇燭台切光忠
え?鶴さん、作らないのかい?
どうせなら一緒に…
〇鶴丸国永
いやいや。俺は、腕利きのお前が作る絶品ずんだが食べたいんだ。
な、作ってくれるだろ?
〇燭台切光忠
うーん、そこまで言われたら仕方な…って、ダメダメ!
鶴さんの口車には乗せられないからね
〇鶴丸国永
ははっ、失敗したか。
とはいえ、お前の腕を買っているのは本当なんだがなあ
〇燭台切光忠
はいはい、ありがとう…じゃあ、さっそく作ろうか。
わかってるね、鶴さん?働かざる者は…
〇鶴丸国永
…食うべからず、だろ?
ちゃんとわかってるよ、光坊
〇燭台切光忠
うん、それは何より。
ふたりで美味しいずんだ餅、作ろうね
〇燭台切光忠
…鶴さん。その…第四部隊の調査では、たくさん迷惑をかけちゃって…ごめんね
〇鶴丸国永
ああ、そんなこともあったっけか?
最近どうも忘れっぽくてな…悪いがとんと思い出せん
〇燭台切光忠
鶴さん…ありがとう。
でも、やっぱりこのままじゃ僕の気が晴れないから…お詫びさせてくれないかな?
〇鶴丸国永
…ずんだ餅
〇燭台切光忠
え?
〇鶴丸国永
詫びなら、ずんだ餅がいいって言ったんだ。
あ、光坊が作ったやつな
〇鶴丸国永
この前一緒に作ったのも、もちろん悪くなかったがやっぱりお前の絶品ずんだにはかなわないな
〇燭台切光忠
鶴さん…ありがとう!
任せて、その期待にバッチリ応えてみせるよ
〇燭台切光忠
そうだ、どうせならこの機に…正宗公が愛した料理を、ずんだ餅の他にも何品か作ってみようかな
〇鶴丸国永
おっ、いいなそれ!
いつもどおりうまい料理をたくさん頼むぜ、光坊!
〇鶴丸国永
なあ伽羅坊、聞いてくれよ!
今朝、起きたらな…
〇大倶利伽羅
…………
〇鶴丸国永
俺の寝ぐせが、鶴の形になってたんだぜ!
いやあ、独創的すぎて驚いた驚いた
〇大倶利伽羅
…そうか
〇鶴丸国永
…かーっ!まーた驚かせられなかった!
お前の仏頂面は、もう見飽きたってのに…
〇大倶利伽羅
…お前が俺をこうさせてるんだが
〇鶴丸国永
ははっ、悪い悪い。しかし、こうも驚いてくれないと、こっちも張り合いがないってもんだ
〇大倶利伽羅
…なら俺じゃなく、光忠のところに行けばいい
〇鶴丸国永
なるほど、それだ!さすが伽羅坊、冴えてるなあ。
んじゃ、ちょっくら光坊に豆鉄砲を食らわせてくるぜ
〇鶴丸国永
いつだったか、夜中に厨の前を通ったら使っていないはずの鍋からカタカタ音がしてな…
〇鶴丸国永
おそるおそる近づいて鍋の蓋を開けてみたら…
なんとビックリ、鍋の中で子猫が寝ていたんだ!
〇大倶利伽羅
それは…危ないな
〇鶴丸国永
…はあ。今日も駄目、か…。
お前はいつになったら目ん玉飛び出るくらい驚いてくれるんだ?
〇鶴丸国永
…俺がそんな間抜けに見えるのか?
〇鶴丸国永
ははっ、それもそうだな。
ああそうだ、目ん玉といえばな…
〇鶴丸国永
正宗公の目の色には、さすがの俺も驚いたな。
あんな血潮が渦巻くような赤色になっちまうなんて…
〇大倶利伽羅
…………
〇鶴丸国永
なあ、伽羅坊。
俺の目が赤くなったら、さすがに驚くか?
〇大倶利伽羅
いや…寝不足だと思う
〇鶴丸国永
そうそう、つい徹夜したら充血してな…って、違う!
しかも俺が言ったのは、瞳の色のことなんだが…
〇鶴丸国永
…まあ、いいや。伽羅坊はいつまでもそのままで…
いつ何時も動じないままでいてくれよ
〇鶴丸国永
それで、俺は仕方なしに光坊にお供をお願いしたんだがな…
〇大倶利伽羅
…………
〇鶴丸国永
…わっ!
〇大倶利伽羅
…っ!なんだ、騒々しい…
〇鶴丸国永
ははっ…ようやく驚いたな、伽羅坊!
今、ボーっとしていて俺の話を聞いてなかっただろ?
〇鶴丸国永
だからこうして驚かせてやったんだぜ
ちょっとの気の緩みが命取りだったな
〇大倶利伽羅
…チッ
〇鶴丸国永
だがまあ…別に今はそれでもいいと思うぜ。
伽羅坊、ここ最近はずっと気を張りっぱなしだったろ?
〇鶴丸国永
出陣続きだったし仕方ないけどな…
とはいえ、今は俺に驚かせる程度には気を緩められてるようで安心したぜ
〇大倶利伽羅
…気が緩むたびに耳の奥を刺されてはかなわん
〇鶴丸国永
おいおい、そう渋い顔するなよ!
次からは、耳に優しい驚かせ方にするって
〇鶴丸国永
山姥切…俺たちがこれからも仲良く過ごすにあたり、一つ俺から提案があるんだが…
〇山姥切国広
…聞くつもりはないぞ。
あんたの提案が、ろくなものだった試しはないからな
〇鶴丸国永
待て待て。今回は真面目に考えたって…
…あのな
〇鶴丸国永
この後、俺や三日月と花見でもしないか?
〇山姥切国広
…言うまでもなく、却下だ
〇鶴丸国永
いやいや!
俺はただ、お前ともと仲を深めたくてだな…
〇山姥切国広
いらん世話を焼くな
〇鶴丸国永
そう言うなって…あーあ、せっかく光坊に頼んでたんまり花見弁当作ってもらったのになあ
〇鶴丸国永
俺たちだけで、食べきれるかどうか…
あーあー、もったいないよなあ
〇山姥切国広
…ふん。
わかった、行けばいいんだろう
〇山姥切国広
そのかわり、食べたら帰るからな
〇鶴丸国永
おっ!その言葉、待ってました!
よーし、それじゃいっちょ宴と洒落こむぞ、山姥切!
〇鶴丸国永
いやあ、この間の宴は楽しかったな!
〇山姥切国広
…どこがだ。
何度も帰ろうとしたのに、あんたときたら…
〇鶴丸国永
あー、何度も引き留めて悪かったって。
またとないひと時を、できるだけ長く過ごしたくてな
〇鶴丸国永
…で、だ。この前の楽しい楽しいひと時を受けて、もう一度、頼みたいことがあるんだが…
〇山姥切国広
…断る。
どうせ、また宴に参加しろとでも言うんだろう?
〇山姥切国広
…いったい、何を考えているんだ?
〇鶴丸国永
この前も言っただろう、俺はお前と仲を深めたいだけだ
〇鶴丸国永
本丸の中でも、お前は特に壁を作りがちだからな。
手っ取り早く壁を壊すには、宴が一番だって思ってさ
〇鶴丸国永
それに、お前がどう思ってるかは知らんが
俺はこの前の宴、山姥切がいたから結構楽しかったぞ?
〇山姥切国広
…………
〇山姥切国広
まあ、そんなわけだから…
これからもいっちょ、仲良くやろうぜ
〇鶴丸国永
それでゆくゆくは、畑仕事とか代わってもらえたら…
ってのは、冗談だからな?真に受けるなよ?
〇山姥切国広
…わかってる。
…あんた、つくづく抜け目ない奴だな
〇鶴丸国永
よっ、お前だけか?相方はどうしたんだ
〇山姥切長義
もしや、偽物くんを指して相方と言ったのかい?
だとすればそれは認識違いだよ
〇鶴丸国永
ははは、相変わらず仲はよろしくないのか。
ま、それはいいとして、なんでお前はここに?
〇山姥切長義
別にいいだろう。それより…裾に泥尾がはねているぞ。
いったいどこで何をしてきたんだ
〇鶴丸国永
ちょっとばかし驚きをもたらしにな。
気持ちのいい悲鳴だったぜ
〇山姥切長義
そのうち、あわててひっくり返ったとかで、怪我人が出そうだ
〇鶴丸国永
おいおい、驚きは健康の秘訣だぜ。
人生は驚きによって彩られるんだからな
〇山姥切長義
貴方のやることは心臓に悪いことが多いんだ。
どうせなら実用的な驚きにしてくれないかな?
〇鶴丸国永
実用的…ねえ。
いいだろう、とっておきを仕込んでやるぜ
〇山姥切長義
…本気で受け取らないでもらえるかな
〇山姥切長義
おい、確かに俺は「実用的な驚き」とは言ったが、まさか不意打ちでの訓練とはね…
〇鶴丸国永
不意打ちでは、とっさの機転と対応力が求められる。
本丸内でできる実践的な訓練として申し分ないだろう?
〇山姥切長義
とはいえ、毎回俺が茶を飲んだり、書を読んだりしている時を狙わないでほしいね
〇鶴丸国永
おいおい、驚かせるためなんだぜ?
気を抜いている時のほうがいいに決まってる
〇山姥切長義
おかげでゆっくり休めたもんじゃないよ。
これでは、かえって不健康になりそうだ
〇鶴丸国永
こいつは失敬。しかし、そうは言うが、戦場での調子は良くなったらしいな?
〇山姥切長義
…悔しいことに貴方の不意打ちを警戒していたせいか、敵の気配に気づきやすくなってね
〇山姥切長義
この点についてだけは、貴方の言う「驚き」にも意味があったと認めてもいいだろう
〇鶴丸国永
おっ、こりゃいいことを聞いたぜ。
となれば、次はさらに不意打ちの難易度を上げるか!
〇山姥切長義
…そういう話ではない
〇燭台切光忠
…はあ
〇大倶利伽羅
…辛気臭い、ため息ならよそでつけ
〇燭台切光忠
ああ、ごめんね伽羅ちゃん。
…ちょっと正宗公のこと、考えててね
〇燭台切光忠
もしも、本当に正宗公に天下への野心があったとして
それが叶っていたらどうなったんだろう…って
〇大倶利伽羅
…わかっているのか。
俺たちに、その手の「もしも」はなしだ
〇燭台切光忠
うん…忠告ありがとう、伽羅ちゃん。
…でも、少しだけ気になっちゃって
〇燭台切光忠
派手好きなあの方のことだ、天下をとろうものならみんなの服装にも口を出しそうだよね
〇燭台切光忠
目にも鮮やかな着物でめかしこむ人々の姿…
ふふ、想像しただけで楽しいよね
〇大倶利伽羅
…………。
ふん、くだらんな…
〇燭台切光忠
他人事みたいな顔してるけど、今、その光景を想像してただろ?
〇燭台切光忠
伽羅ちゃんだって、もしも世が世なら水玉模様の羽織を着せられていたかもしれないよ?
〇大倶利伽羅
それは…ごめんだな
〇燭台切光忠
…はは
〇大倶利伽羅
…俺の顔が、そんなに面白いか
〇燭台切光忠
いやいや、そんなんじゃないよ
〇燭台切光忠
あれから伽羅ちゃんを見るたびに、水玉模様の羽織を着ている姿がつい思い浮かんじゃうんだよね
〇大倶利伽羅
…………
〇燭台切光忠
あはは…ごめんね、伽羅ちゃん。
でも我ながら傑作だな…って思ってさ
〇大倶利伽羅
…そうか
〇燭台切光忠
あれ?怒らないの?
なんだか珍しいね
〇大倶利伽羅
…たかがお前の妄想ごときに、腹を立てても仕方ない
〇燭台切光忠
はは、妄想ときたか。あら、お言葉に甘えて…
うーん、水玉もいいけど…あ、花柄も案外似合うかも…
〇大倶利伽羅
…おい。やっぱりやめろ
〇燭台切光忠
旅立ったね、正宗公
〇大倶利伽羅
…………
〇燭台切光忠
…正宗公は海の向こうで、いったいどんな体験をするのかな
〇燭台切光忠
もしかしたら…異国の人々に感化されて、より派手ないでたちになっているかもしれない
〇燭台切光忠
煌びやかな服で諸国漫遊する正宗公…
ふふ、想像しただけでなんだか心が躍るね
〇大倶利伽羅
…そうか?
〇燭台切光忠
ああ、そうだよ!
僕らもお供したかったね、伽羅ちゃん?
〇大倶利伽羅
…………。
俺は…
〇燭台切光忠
あ、でも、もしそうなったら僕らの服も今よりずっと派手なものに…
〇大倶利伽羅
…やっぱり、願い下げだ
〇燭台切光忠
ねえ、山姥切くん。今って暇かな?
暇ならこの後、新作の試食をお願いしたいんだけど…
〇山姥切国広
…暇じゃない、試食なら他の奴に頼むんだな
〇燭台切光忠
はは、相も変わらずそっけないね。
…でも、今日は諦めないよ!
〇燭台切光忠
お願いだ、山姥切くん。
どうしても君じゃなくちゃダメなんだ!
〇山姥切国広
…仕方ない、今回だけだ。
わかったから、あまり詰め寄るな
〇山姥切国広
…で?なんだ、その新作というのは
〇燭台切光忠
ふふ…題して、「光忠特製・こぼれ知らずのきな粉餅」だよ!
〇燭台切光忠
餅にまぶすきな粉の一部をあらかじめ練り込んでこぼさずに食べられるよう改良したんだ
〇燭台切光忠
で、本当にきな粉をこぼさずに…つまり、衣服を汚さずに食べられるかを試したくて…
〇山姥切国広
ああ…そこで、粗末な布を纏った俺で試したいと。
…それは確かに、俺に似合いの務めだな
〇燭台切光忠
あ、待ってよ山姥切くん!
君は何か勘違いを…
〇山姥切国広
…前言撤回。俺は食わん。
協力者は、他で見つけるんだな
〇燭台切光忠
ええと…これは出直したほうがいいかな。
ごめんね、山姥切くん
〇山姥切国広
…あんた、いつまで俺につきまとうつもりだ。
言っただろう、きな粉餅の試食はしないと
〇燭台切光忠
しつこくてごめんね。
でも、やっぱり山姥切くんじゃなきゃダメなんだ
〇山姥切国広
はっ…どうせ、粉汚れを確かめるのに布を纏った俺が都合がいいから…
〇燭台切光忠
それは違うよ。僕が君に頼みたいのは何より君の率直さと真面目さを信頼しているからさ
〇山姥切国広
…!
〇燭台切光忠
君なら念を押さずとも僕への忌憚なく、なおかつちゃんと身になる意見を言ってくれると思ってるんだ
〇燭台切光忠
あ、身になる…ってのが意外と重要でね。
伽羅ちゃんなんかは「不味い」「駄目だ」で終わりそうで…
〇山姥切国広
ああ、もうわかった。
わかったから…さっさと餅を持ってこい
〇燭台切光忠
山姥切くん…!
〇山姥切国広
…勘違いするな。今回は、根負けしただけだ。
…俺なんかの意見に期待するなよ
〇燭台切光忠
いや、本当に助かるよ。ありがとう、山姥切くん!
そうと決まれば、君のためにたくさんこしらえないとね
〇山姥切国広
…張り切りすぎだ
〇山姥切長義
本丸の食事情を一手に担う貴方に頼みがあるのだけど、少しいいかな
〇燭台切光忠
長義くんが頼み事とは珍しいね?
いいよ、僕にできることならなんでも聞くよ
〇山姥切長義
それは心強いな。
実は任務帰りに小腹が空くことがあってね
〇山姥切長義
軽くつまめるように、握り飯を余分に作っておいてもらえないかな?
〇燭台切光忠
なんだ、それぐらいならお安い御用だよ!
よければ陣中食も特別に用意しようか?
〇山姥切長義
いや、それはいい。他の奴に見られるのがなんとなく嫌でね。
内密にしてもらいたいんだ
〇燭台切光忠
そっか、それなら長義くんが任務の日には、帰城後そのまま厨に来てくれるかい?
〇燭台切光忠
そうすれば、誰にも見つからないだろうし、必要な分だけおにぎりを渡せると思うよ
〇山姥切長義
なるほど、わかった。
では、そうさせてもらうよ
〇燭台切光忠
腕によりをかけて、美味しいおにぎりを用意しておくね
〇山姥切長義
燭台切、この前の任務帰りにもらった握り飯のことなんだけど…
〇燭台切光忠
どうだったかな?にんにく味噌を入れてみたんだ。
疲労回復効果が高いと聞いてね
〇山姥切長義
あの匂いは、やはりにんにくか。
言ったはずだよ、他の奴には知られたくないと
〇燭台切光忠
ああ、やっぱり匂いがきつかったかな。
もしかして誰かに気付かれてしまったかい?
〇山姥切長義
そんな失敗はしないよ。
急いで飲みこんで、その後は口を利かないようにしていたからね
〇燭台切光忠
それなら良かったけど…。じゃあ次は梅干しにするよ。
梅干しにも疲れを取る効果があるんだ
〇山姥切長義
いや、次もにんにく味噌で構わない。
一口で食べればいいし、あの効果は捨てがたい
〇燭台切光忠
それなら具材の組み合わせで、匂いのないおにぎりを試作するよ。
疲労回復効果はそのままでね
〇山姥切長義
本当にそんなことができるのか?
〇燭台切光忠
難しい注文のほうがやる気が出るよね。
どんな具材を合わせるか、俄然楽しくなってきたよ
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
…?
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
…おい、あんた。さっきから俺を凝視しているが…
何がそんなに気になるんだ
〇大倶利伽羅
…別に、大したことではない
〇山姥切国広
そうか…ならいい
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
…なんだ、その目は。言いたいことでもあるのか?
〇山姥切国広
ただながめられると、嗤われているようで居心地が悪い
〇大倶利伽羅 …布
〇山姥切国広
…?
〇大倶利伽羅
…裾が、汚れている
〇山姥切国広
…その程度のことならば早く言ってくれ
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
…またか。
あんた、また俺に言いたいことがあるのか
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
裾は…いつもどおりだな。
おい、どうした?
〇大倶利伽羅
…………
〇山姥切国広
おい、聞いているのか?
あんたに限って、呆けていることはないんだろうが…
〇山姥切国広
…さては、俺を心の中で嘲嗤っているのか?
〇大倶利伽羅
…?…なんの話だ?
〇山姥切国広
な…本当に聞いてなかったのか…。
紛らわしい奴だ…
〇大倶利伽羅
…?
〇山姥切長義
大倶利伽羅、少しいいかな?
この前の手合わせのことなんだけど
〇大倶利伽羅
…何だ
〇山姥切長義
俺もそれなりに場数を踏んでいるつもりだ
〇山姥切長義
だからこそ、前回あそこまで追い込んでおきながら、最後に覆されたのが腑に落ちなくてね
〇山姥切長義
確実に追い詰めて君に膝をつかせたと思ったのに、気付いた時には、逆に刃を突きつけられていた
〇山姥切長義
いったいどんな動きをしていたのかと、気になってね
〇大倶利伽羅
…知らないな。
とっさのことだ、覚えていない
〇山姥切長義
そうかな?迷わず返事ができるということは本当は心当たりがあるのではないかな?
〇大倶利伽羅
そんなものはない。
…もういいか
〇山姥切長義
…今日のところはね。
また手合わせは頼むよ
〇山姥切長義
ここ数日の手合わせのおかげで、あの時、逆転された原因がようやくわかった
〇山姥切長義
君の膝をつかせたから勝ったと思いこんでいたけど、まさかしゃがみながら力を受け流していたとはね
〇大倶利伽羅
…やけにしつこいと思えば、以前の手合わせを再現しようとしていたのか
〇山姥切長義
君が素直に教えてくれるとは思えなくてね
〇大倶利伽羅
…あんたが俺から学ぶことなんてないだろう
〇山姥切長義
君の動きは予想外なことも多い。
戦術の幅を広げるためにはうってつけだ
〇山姥切長義
本当に面白い手合わせ相手だよ、君は
〇大倶利伽羅
…あんた、面倒だな
〇山姥切長義
心外だな。君だって大概ではないか。
まぁ、これからもよろしく頼むよ
〇大倶利伽羅
慣れ合うつもりはない
〇山姥切国広
…………
〇山姥切長義
偽物くんは相変わらずだね。
この晴れた空の下、陰気な顔をさらすとは
〇山姥切国広
…俺に構うな。今はただ出陣先で見た黒田官兵衛のことを考えていただけだ
〇山姥切国広
思うことはいろいろあるが…さすがの風情だった。
あの頭の中でいくつもの知略を練っているんだろう
〇山姥切長義
頭の中はいざ知らず、とにかく陰気に見えたけどね。
仲間にとっては、やりづらいことこの上ないだろう
〇山姥切長義
…ああ、もしかして偽物くんは、おこがましくも天才軍師に何か近しさを感じたのかな?
〇山姥切長義
まあ、周囲との距離が開かないように、偽物も工夫するといいんじゃないかな
〇山姥切国広
…そうだな、そうしよう
〇山姥切長義
おや、案外殊勝だな。
何か思い至ることでもあったのか?
〇山姥切国広
…この前、冷えこんだ日があっただろう。
何気なく「寒い」と言ったんだ
〇山姥切国広
すると、一時間後には長谷部に布団にくるまれ隣で薬研が薬を作り始めた
〇山姥切国広
俺が陰気だから…きっと病でも患ったと思われたんだろう
〇山姥切長義
それはまた違う話な気がするな。
どうも嫌味が通じない…
〇山姥切国広
…………
〇山姥切長義
おや、また陰気な偽物くんがいる。
それにいつもより、どうもまとう影が濃いような…
〇山姥切国広
…どうせ俺は陰気だ。
だから、戦場でも俺の偽物にかき乱される
〇山姥切長義
ああ、なるほど。
戦場では俺の偽物は出なかったからな
〇山姥切長義
偽物くんが二振り生じたほうが、不気味で恐ろしい。
だから、あれほど騒ぎになったのかもしれないね?
〇山姥切国広
…そうか。俺は不気味か
〇山姥切長義
…なんだ?そこまで声を落とすことか?
〇山姥切国広
言っていただろう。陰気な仲間はやりづらいと…。
不気味の域まで達すると、いよいよ改めなくてはな
〇山姥切長義
今度は軽い嫌味を深刻に受け止めすぎじゃないか?
…なんなんだよ、一体
〇山姥切国広
…………?
〇山姥切国広
…………
〇山姥切長義
おや、今日の偽物くんは陰気ではないね。
何か心境の変化でもあったのかな
〇山姥切国広
…改めて「聚楽第」の出来事を思い返していた。
難所はいろいろとあったが、なんとか乗り越えられた
〇山姥切国広
お前とここで会えたのもちょうどいい。
…その、終わったら話したいと言っただろう?
〇山姥切長義
ああ、言っていたな。それで?
〇山姥切国広
あれから考えたんだが
…ふさわしい話題が見つからない
〇山姥切長義
…ははっ、今交わしている軽口こそすでに「話」にあたるんじゃないのか?
〇山姥切長義
ごちゃごちゃと考える暇があったら、今みたいなほうが…不気味じゃなくていい
〇山姥切国広
…今みたいな、とはどんなだ
〇山姥切長義
多少堂々としていたほうがいい、ということかな
〇山姥切国広
…ふん、そうか。
たまにはお前と話しをしてみるのもいいかもな
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